覚醒救世主と夢を目指す少女達   作:火の車

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1日バイト

 突然だが、俺はそこそこ金を持ってる

 

 それこそ、就職するまでにかかる費用なんて簡単に払える

 

 そんな俺は今まで、バイトなんて無縁に生きてきた

 

 だが......

 

蓮「__いらっしゃいませー。」

 

 そんな俺は今、バイトをしてる

 

 いや、厳密にはバイトではないが

 

 どうしてこうなったかと言うと、

 

 それは今朝に遡る

__________________

 

 朝、俺はいつもより遅い時間に起きた

 

 程よい気怠さを感じながら

 

 携帯画面を確認すると

 

 一件のメッセージが来ていた

 

蓮「ん?イヴから?」

 

 俺は珍しいなと思いつつ

 

 メッセージを確認した

 

 それを見て、俺は愕然とした

 

蓮「イ、イヴが風邪をひいただと!?」

 

 いつも元気なイヴが

 

 ブシドー系女子のイヴが

 

 風邪をひくだと?

 

 そんなことが有り得るのか!?

 

蓮「面倒は麻弥が見てるのか。それで、ん?」

 

 メッセージには続きがあった

 

 それを見て、

 

 俺は再度、愕然とした

 

蓮「ば、バイトに代わりに行って欲しい、だと!?」

 

 どうやら、今日はイヴのシフトの日で

 

 人手が足りなくなるらしい

 

 他の奴らも考えたが、

 

 安心できるのは俺だと

 

蓮「いやいや、俺のどこが安心できるんだよ。」

 

 これは流石に断ろう

 

 バイト経験ゼロの俺が行ってもだし

 

蓮「......」

 

 そう思ってたが、文章を打つ手が止まった

 

 本当にこれを断るのは正解なのか?

 

 イヴは俺を頼って、最初に連絡してきた

 

 そんな頼みを断っていいのか?

 

蓮「.......」

 

 それからしばらくして

 

 俺はイヴにメッセージを返した

__________________

 

 と言うことがあった

 

 いやさ、女の子の頼みって断れないだろ?

 

 それに加えてイヴの頼みだし

 

蓮(まぁ、何とかしよう。)

 

 幸いにも、ここは羽沢珈琲店

 

 赤の他人と一緒に働くわけじゃない

 

 なんとかなるだろ、多分

 

A子「すいませーん!」

B子「注文お願いしまーす!」

蓮「はい、ただいま。」

 

 俺は呼ばれた席の方に向かった

 

 そして、注文を取る準備をした

 

蓮「ご注文は?」

A子「えっと、カフェオレとこのケーキ!」

B子「私はカフェモカとA子と同じケーキで!」

蓮「はい、かしこまりました。」

A子「あ、それと!」

蓮「?」

B子「店員さんのスマイル1つ!」

蓮「」

 

 いや、なんだよその注文

 

 ここは某ファーストフード店か

 

 てか、なんで俺なんだよ

 

 つぐみに頼めよ

 

 つぐみに頼めば可愛いエンジェルスマイルもらえるぞ

 

蓮「はい、かしこまりました。」

 

 俺は心の中で文句を垂れながら

 

 笑顔を作った

 

 2人は顔を赤くし

 

 礼を言われたので、注文を通しに行った

 

蓮(はぁ、俺そういうキャラじゃねえよ。)

つぐみ「お、お疲れ様です。」

 

 注文を通しにいくと

 

 つぐみが苦笑いを浮かべていた

 

 まぁ、そうだろな

 

蓮「これ、注文だ。」

つぐみ「あ、はい!お預かりします!」

蓮「それにしても、大変だな。カフェって。」

つぐみ「確かに、大変ですね。蓮さんは特に。」

蓮「......だよな。」

 

 何を隠そう、今日、ここに来てから

 

 スマイルの注文は10を超えてる

 

 しかも、今日はやけに

 

 女の客が多い

 

蓮(今日はそういう日なのか?)

 

 ガールズデー?的な?

 

 女がカフェに行く日とか?

 

 なんか、そう言うのがあるんだろうか

 

 そんな事を考えてると、

 

 店の扉が開いた

 

リサ「__あ、ホントにいた。」

友希那「蓮。」

蓮「あれ?リサに友希那?珍しいな。」

リサ「いや、蓮がいるって見て、来てみたんだよ。」

蓮「ん?」

 

 リサは驚いたような顔をしてる

 

 そして、少し引っかかるぞ?

 

 見たってなんだ?

 

蓮「今日は女がカフェに行く日なのか?異様に多いんだが?」

リサ「あー、違うよ?そういうの無いよ?」

蓮「そうなのか?」

友希那「今日のお客さんは蓮がいるのを知って来てるのよ。」

蓮「......ん?」

 

 なんで、俺がいるのを知ってるんだ?

 

 別にそんな情報が漏れるところはないはずなんだが

 

蓮「え?なんで?」

リサ「蓮、今、すごいバズってるよ。」

蓮「はい?」

 

 俺が首を傾げてると

 

 リサが携帯画面を見せてきた

 

 そこには、いつ撮られたのかわからない

 

 俺の隠し撮り写真が載せられていた

 

蓮「」

リサ「多分、今日、女子のお客さんが多いのはこれだねー。」

友希那「流石、蓮ね。」

蓮「いやいや、マジで?」

 

 俺がそう聞くと、

 

 リサと友希那は深く頷いた

 

 俺は頭を抱えた

 

リサ「まだだよ、蓮。」

蓮「え?」

友希那「これからが本番よ。」

 

 俺は店の外を見た

 

 そこには女ばかりの長蛇の列が見えた

 

蓮「」

リサ「まぁ、頑張れ☆」

友希那「あ、私達も何か食べいくわ。」

リサ「スマイル、よろしくー☆」

 

 それからのバイトは

 

 まさしく、苦行だった

 

 来る客来る客にスマイルを求められ

 

 注文は俺に集中し

 

 落ち着くかと思えばすぐにまた客が来る

 

 そして次第に俺は心を失いながら

 

 無感情にスマイルを振りまく

 

 機械と化していった......

__________________

 

 あれから、どのくらい時間が経っただろうか

 

 大体、昼過ぎからバイトに入り

 

 気づけばもう閉店時間

 

 そんな中、俺は

 

蓮「......」

 

 一切、表情が動かなくなった

 

 なんで、こうなったかと言うと

 

 表情筋の筋肉痛だ

 

つぐみ「だ、大丈夫ですか?」

蓮「顔痛い。」

 

 そんな俺を

 

 つぐみは心配そうに見てる

 

 顔痛すぎて訳がわからない

 

 一体、今日、どれだけ笑顔だったんだろう

 

 もう、しばらく笑顔は勘弁だ 

 

蓮「ほんと、なんでさ、勝手にSNSに投稿しちゃうんだろうな?」

つぐみ「さ、さぁ?」

蓮「そんでもってさ、なんで、あの投稿見てこんなに人が集まるんだろうな。」

つぐみ「.....それは、蓮さんがかっこいいからだと思います。」

蓮「ん?なんだって?」

つぐみ「っ!///な、なんでもないです!///」

蓮「お、おう。そうか。」

 

 それにしても、まずいことになった

 

 この状況で某弦巻さんが来てみろ

 

 俺の表情筋が死滅するぞ

 

つぐみ「あの、蓮さん。」

蓮「なんだ?」

つぐみ「お礼と言ってはあれなんですけど、顔のマッサージ、しましょうか?」

蓮「え?顔のマッサージ?」

 

 そんなものがあるのか

 

 全く知らなかった

 

 てか、つぐみそんなの出来るんだな

 

つぐみ「あ、嫌ですよね!」

蓮「いや、頼む。」

つぐみ「え?」

蓮「マジで顔痛い。」

 

 俺がそう言うと、

 

 つぐみはギョッとして

 

 そして、俺の前に立った

 

つぐみ「じ、じゃあ、目をつぶってください。」

蓮「あぁ、分かった(?)」

 

 俺はつぐみに言われるまま目を閉じた

 

 すると、つぐみが意気込んでる気配を感じ

 

 顔のマッサージが始まった

 

蓮「.,,,,,」

つぐみ「ふっ、ん.....,!」

 

 つぐみの手は頬に当てられ

 

 顔をほぐすような動きをしてる

 

蓮(すごい。まじで効いてる気がする。)

 

 俺は少し驚いていた

 

 なんか、目元の血行もよくなってる気がする

 

 咎使うと負担かかるし、気持ちいい

 

つぐみ(......すごく、綺麗な顔。)

蓮「.......?」

 

 少しすると、つぐみの手の動きが変わった

 

 なんか、触るみたいな動きだ

 

つぐみ(女の子みたいって訳じゃないけど、すごく綺麗。まつ毛も長くて、肌も綺麗。)

蓮(なんだろう、すごく視線を感じる。)

つぐみ(蓮さんの顔が、こんな近くに.....///)

 

 つぐみの手が完全に止まった

 

 終わったんだろうか?

 

 俺はそう思い、目を開けた

 

蓮「__ん!?」

つぐみ「ん.....///」

 

 目を開けると視界はつぐみでいっぱいだった

 

 そして、唇には柔らかい感触がある

 

 俺は驚きで目を見開いた

 

 すると、つぐみは唇を離した

 

つぐみ「ごめんなさい、蓮さん。」

蓮「いや、謝ることは無いけど、どうした?」

つぐみ「蓮さんな顔を見てたら、我慢できなくて......///」

 

 つぐみは赤く頬を染めている

 

 この状況、かなり覚えがある

 

 昨日、こんな感じの出来事が六花とあった

 

つぐみ「初めて会った時から、かっこいいって思ってました///」

蓮「え?」

つぐみ「それで、関わっていくにつれて、さらに蓮さんはかっこよくなりました///」

蓮「!」

つぐみ「ん....っ///」

 

 つぐみは再度、キスをしてきた

 

 今度はさっきよりも時間が長い

 

 数秒後、つぐみは離れた

 

つぐみ「蓮さん、好きです///」

蓮「!」

つぐみ「優しくてかっこいい蓮さんに、ずっとそばにいてもらいたいです///」

蓮「つぐみ......」

 

 つぐみは言葉を言い切ると

 

 俺から少し距離を取り

 

 笑みを浮かべた

 

つぐみ「蓮さんが色んな人に告白されてるのは知ってます。」

蓮「.......」

つぐみ「そんな中で私は特別に可愛いわけでもないですが.....」

 

 つぐみはそう言いながら俺に近づいてきた

 

 そして、耳元でこう言った

 

つぐみ「出来れば、私を選んでくださいね.....?///」

蓮「っ!」

つぐみ「わがまま、です///」

 

 そう言うとつぐみは、

 

 恥ずかしくなったのか、店の奥に引っ込んだ

 

蓮(わがまま、か。)

 

 つぐみのそれはわがままと言うには、あまりにも可愛らしい

 

 あれは、全くわがままじゃない

 

蓮「......」

 

 むしろ、わがままなのは俺だ

 

 あんなに気持ちをぶつけられて、

 

 未だに答えを出していない

 

蓮「わがままなのは、どっちだよ......」

 

 それからしばらく

 

 俺は店の椅子に座り

 

 時間を過ごした

 

 その間、

 

 つぐみの告白が頭から離れることはなかった


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