覚醒救世主と夢を目指す少女達   作:火の車

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才能

 Morfonicaが練習に来るようになってから、

 

 なんだかんだ一週間くらい経った

 

 全員、練習には真面目で技術は上がりつつある

 

 だが、気になる部分が一つ......

 

蓮(__まだまだ底が見えないなー。)

 

 どういう意図か全く分からないが

 

 本当に完璧に周りに合わせている

 

 むしろ、完璧すぎて違和感すらある

 

 いや、演奏自体は普通に上手いんだ

 

 でも、まじで目立たないんだ

 

 まさしく普通って感じで

 

蓮(なんだかなー。)

 

 練習中に話す機会もあるけど

 

 所々、少しずれた発言があった

 

 ほんとに違和感がすごいんだよなー

 

瑠唯「__どうしましたか?」

蓮「あ、瑠唯。」

瑠唯「お疲れ様です。」

 

 Morfonicaの練習後、

 

 俺が室内で資料を見てると、

 

 瑠唯が話しかけて来た

 

 そう言えば、瑠唯はやけに話すようになった

 

 現時点では一番仲が良いかもしれない

 

蓮「少し考えてる事があってな。」

瑠唯「考えてる事ですか?」

蓮「あぁ。七深の事なんだが。」

瑠唯「!」

 

 俺が七深の名前を出すと瑠唯の表情が変わった

 

 この顔をみる限り、

 

 瑠唯も同じようなことを考えてたんだろう

 

蓮「なんで、あんな頑なに能力をセーブしてるんだ?」

瑠唯「前に話を聞いたことがあります。」

蓮「なに?」

瑠唯「普通じゃないと友達が出来ない、と言っていました。」

蓮「......ふむ。」

 

 これだけ聞いても大体の話は分かった

 

 七深は俺や日菜とは違う、

 

 所謂、周りの言う才能に潰されたタイプか

 

 期待かはたまた嫉妬なのか

 

 そう言うのが今の七深を形成したと

 

瑠唯「私には理解できません。自分の才能を隠すなんて。」

蓮「まぁ、本人にしか分からない事もあるんだよ。」

瑠唯「?」

蓮「でも、このまま放置してるのも良くないよな。」

 

 俺はそう言って座ってる椅子から立ち上がり

 

 そして、机に資料を置いた

 

蓮「ちょーっと、面談行ってくるー。」

瑠唯「はい(?)」

 

 俺は軽く瑠唯に手を振りながら

 

 ベースの片づけをしてる七深の方に歩いて行った

__________________

 

蓮「__七深ー。」

七深「あ、神谷先輩ー。」

 

 七深はいつも通りゆるい顔をしてる

 

 こうしてみると隠し事してるとは思わないな

 

 まぁ、目的を達成しに行くか

 

蓮「調子はどうだ、七深。」

七深「絶好調ですよ~!」

蓮「はは、それはよかった。」

七深「それで、どうしたんですかー?話しかけてくるの珍しいですけど?」

蓮「あぁ、少し話があってな。」

七深「?」

 

 俺がそう言うと、七深は首を傾げた

 

 まぁ、七深からすれば話す理由はないしな

 

蓮「バンドの事について七深の話を聞きたくてな。」

七深「あ、そういう事ならー。」

蓮「じゃあ、片付けが終わったら話しかけてくれ。」

七深「はい~。」

 

 それから、七深の片付けが済むのを待ち

 

 敷地内のある場所に向かった

__________________

 

 俺と七深が来たのは、

 

 ガラス張りで綺麗な景色の見える部屋だ

 

 ここマジですごいんだよな

 

 ガラスの向こうとか別世界みたいだし

 

 なんか、オシャレなカフェみたいで、

 

 お茶とかするならこれ以上ない場所だ

 

七深「お~、すごーい!」

蓮「俺もそう思うよ。よくこんなの作るよな。」

 

 俺はそう言いながらテーブルの方に歩き

 

 ゆっくり腰を下ろした

 

 そして、手招きをした

 

蓮「ま、座れよ。」

七深「は~い。」

 

 七深は少し小走りでテーブルまで来て

 

 俺の前に座った

 

七深「それで、お話って何ですか~?」

蓮「まずは、七深に今のMorfonicaがどう写るかを聞きたい。」

 

 俺は最初にそう尋ねた

 

 その質問に七深は迷うことなく答えて来た

 

七深「そうですね~、皆楽しそうですよ~。」

 

 七深は笑顔を浮かべながらそう言った

 

 まぁ、それは間違いないな

 

 俺が見ても楽しそうに練習してるし

 

七深「私も頑張らないとですね~。」

蓮「そうかそうか。」

 

 さてさて、速攻で荒を出してきたな

 

 七深の心音が少し乱れた

 

 でも、表面には全く出してないな

 

 上手く嘘をつける子だな

 

蓮「バンドの仲間同士で高め合えるのは良い事だな。」

七深「はい~。」

蓮「でもなー。」

七深「?」

蓮「高め合うなら、目標が高い方がいいと思わないか?」

七深「!」

 

 俺は七深の目を見ながらそう言った

 

 瞳の奥が少し揺れた

 

 動揺してるな

 

蓮「例えば、ベースのレベルが高かったら最高と思わないか?」

七深「そ、そうなんですかね~?」

 

 七深は目に見えて慌ててる

 

 さっきまでの落ち着いた様子は無い

 

 目も泳ぎまくってる

 

蓮(なんとかして七深の過去とか分かんねぇかな。)

 

 未来見れるくらいなんだからさ

 

 なんか相手の思考を読み取れるの無いのか?

 

 テレパシー的な

 

咎『__あるぞ。』

蓮(え?マジ?)

咎『一応、相手の頭らへんに接触すれば出来ない事はない。』

蓮(おい、そんな便利なのあるなら教えろよ。それがあれば鈍感とか言われないで済んだのに!)

咎『いや、知らねぇよ!』

蓮(まぁ、いいや。)

 

 そういう事が出来るなら、

 

 後は簡単な話だろ

 

 俺は七深に話しかけた

 

蓮「七深、少し目をつぶってくれ。」

七深「え?は、はい......?」

 

 七深は不思議そうな顔をしながら目を閉じた

 

 俺はその瞬間、七深の頭に手を置いた

 

七深「!」

蓮(後はチュチュの時の応用で......)

七深(何かが、入ってきてる......?)

 

 出来た

 

 俺の脳内に七深の記憶が入ってきてる

 

 これは多分、再現性と夢への介入の応用か

 

蓮「......」

七深(なに?なんなの、これ......?)

蓮「......大体わかった。」

七深「っ!」

 

 おおよそ俺の予想通りだ

 

 ぶっつけ本番にしては上手くいったな

 

七深「何を、したんですか......?」

蓮「七深の過去を見た。そして理解した。」

七深「......」

蓮「その上で聞くぞ。なんで才能を隠す?」

 

 俺は七深を見ながらそう尋ねた

 

 七深は下を向いてスカートを握りしめてる

 

七深「......離れてほしくないから。」

蓮「?」

七深「折角、出来た友達を無くしたくないからです......」

蓮「!」

 

 そう言う七深の声はひどく悲痛だった

 

 過去を見た俺ならこの気持ちは痛いほど分かる

 

 でも......

 

七深「何事も程々で、普通でいいんです。それなら、誰も私から離れないから......」

蓮「いや、違うな。」

七深「え?」

蓮「七深は大きな間違いをしてる。」

七深「ま、間違い......?」

 

 七深は震えた声で聴き返して来てる

 

 俺はそんな七深を見ながら

 

 ゆっくり口を開いた

 

蓮「今のままじゃ、七深と他の4人の心の距離は開き続ける。」

七深「え......?」

 

 俺がそう言うと、

 

 七深は大きく目を見開いた

 

 目に見えて顔色が悪くなった

 

七深「な、なんで......?」

蓮「他ならない、七深が拒絶してるからだ。」

七深「ど、どういう......」

蓮「Morfonicaはその程度のやつらかってことだ。」

七深「っ!」

 

 俺がそう言うと七深の身体が跳ねた

 

 俺は話を続けた

 

蓮「Morfonicaは七深が才能を見せたところで離れる奴らだと思うか?」

七深「最初は良くても、いつかは......」

 

 七深は下を向きながら、

 

 消え入りそうな声でそう言った

 

蓮「はぁ......じゃあ、ダメだな。」

 

 俺はため息をついて七深を睨んだ

 

 それを見た七深の肩が少し跳ねた

 

蓮「そう思ってるなら、バンドはやめた方がいい。」

七深「え......?」

蓮「向いてないよ。俺から言っておいてやる。」

 

 俺はそう言って椅子から立ち上がった

 

 そして、出口の方に体を向けた

 

 やばい、すごい心が痛い

 

蓮「仲間を信頼できない奴はダメだ。そんな奴、いくら続けたって時間の無駄だよ。」

 

 出来れば、こんなことは言いたくない

 

 女の子にこんなこと言うの忍びないし

 

 てか、本当に心が痛すぎるんだよ

 

七深「う、嘘だよね......?」

蓮「......」

七深「ま、待って......」

蓮「......」

七深「私、やめたくないよ......」

蓮「......」

七深「か、神谷先輩......」

蓮「......」

 

 後ろから七深の涙声が聞こえる

 

 今にも歩くのを止めてしまいそうだ

 

 でも、七深が自分から4人と向き合うようするんだ

 

 そうしないと、俺の存在意義はない

 

七深「嫌だ、嫌だよ......」

蓮「......」

七深「なんでもするから、私を捨てないでぇ......」

蓮「......今。」

七深「え......?」

蓮「なんでもするって言ったよな?」

 

 俺は振り向きながら七深にそう言った

 

 七深は椅子から落ちて床に座り込んでる

 

 やっと、きっかけにできる発言してくれたな

 

蓮「言ったよな?」

七深「は、はい......?」

蓮「じゃあ、あいつらと全力で向き合え。」

 

 俺は座り込んでる七深の前にしゃがみ

 

 そして、優しく頭を撫でた

 

 七深は目を丸くしてる

 

蓮「まだそんなに見てないけど、Morfonicaはそんなに脆くない。きっと、七深が七深でいられる場所になる。だから踏み込んでみな?」

七深「神谷、先輩......」

蓮「絶対に大丈夫だからさ。」

 

 七深の目の周りが赤くなってる

 

 女の子泣かせちまったよ

 

 もう、最悪だ......

 

蓮「七深__」

透子『__もう我慢できない!』

蓮、七深「!?」

 

 バン!と言う音を鳴らしながら、

 

 部屋の扉が勢いよく開いた

 

 そこから、Morfonicaの4人が入ってきた

 

七深「み、みんな......?」

ましろ「さっきの話、全部聞いた。」

七深「!」

透子「もうちょっと、あたしらの事信頼しろっての!」

七深「と、とーこちゃん......?」

蓮「......これが、答えだよ。」

 

 俺はそう呟いてから、

 

 5人から距離を取った

 

 そして様子を見ることにした

 

透子「たく、このバカ町!」

つくし「うん、今回はちょっと私も怒ったよ!」

七深「ふ、2人とも......?」

ましろ「私もちょっと怒ってる。」

七深「し、シロちゃんまで、なんで......?」

つくし「だって、ななみちゃん、今まで全力でしてないって事なんだもん!」

透子「バンドは全力でぶつかるもんでしょ!」

七深「!!」

 

 透子はそう言いながら七深の肩を持ち

 

 そして、七深にこう語りかけた

 

透子「広町が凄いなら、あたしらも練習して追いつくし!手加減なんて全然いらないし!」

七深「!」

ましろ「うん!私も頑張る......!」

つくし「私も絶対にななみちゃんに負けないもん!」

瑠唯「......そういう事よ。」

七深「うん、うん......!」

 

 4人に囲まれる七深の表情は笑顔だ

 

 初めて自分を受け止めてくれる仲間に出会えたからだろうか

 

 俺はそんな事を考えながら少し息をついた

 

蓮(よかった......)

 

 こうやってバンドは成長するんだな

 

 これからMorfonicaはもっと大きくなるだろう

 

 そう言う風に思える、優しい光が見えるからな

 

蓮(さてと、邪魔は退散しますかね。)

七深「神谷先輩。」

蓮「っ!......な、なんだ?」

七深「ありがとう!」

蓮「!」

 

 七深はそう言って頭を下げて来た

 

 俺は七深から目をそらし、頭を掻いた

 

蓮「俺は何もしてないよ。」

七深「ううん。神谷先輩のお陰で勇気が出たよ。」

蓮「......」

 

 七深は笑顔でそう言ってきた

 

 いや、過程が酷かったから、

 

 あんまり持ち上げないで欲しい......

 

七深「神谷先輩、少し屈んで?」

蓮「え?まぁ、いいけど。」

 

 突然、そんなことを言われ驚いたが

 

 俺は七深に言われた通り少し屈んだ

 

 すると、七深は俺に耳打ちをしてきた

 

七深「......先輩たちの仲間ってまだ入れますか?///」

蓮「んえ?」

 

 ん?今、なんて言った?

 

 仲間?バンド仲間の事か?

 

蓮「えーっと、何の事だ?」

七深「だから、その、お付き合いの......?///」

蓮「!?」

七深「神谷先輩の事、好きになっちゃったみたいで......ダメ、ですか......?///」

蓮「え、い、いや、それは......」

七深「ん......っ///」

 

 俺がしどろもどろしてると

 

 頬に柔らかい感触を感じた

 

 似たような感覚を感じたことがある

 

 七深が頬にキスをしてきたんだ

 

蓮「!」

七深「先輩方には私が話すので、考えておいてくださいね~......?///」

 

 七深はそう言って俺から離れ

 

 4人の方に小走りで近づいて行った

 

 俺は目元を抑えた

 

蓮(......なんでだ。)

 

 俺は緊張から解き放たれ息をついた

 

 そして、壁に体を預け

 

 再度、大きく息をついた

 

瑠唯(......先を越されたわ。)

 

 この後、七深はマジであいつらに話したのか

 

 俺はあいつらに色々と質問(尋問)され

 

 必死の弁解の末になんとか納得してもらえた

 

 交際についても、特に反対の意思を見せず

 

 俺に一任すると言う事になった

 

 

 

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