先生「蓮君は生まれてすぐにこの孤児院に来たんだ。」
先生は静かな声で話し始めた
俺は何もいう事なく聞き手に徹してる
先生「連れて来たのは君のお母さん。名前は小田佳奈恵さんだった。」
蓮(小田佳奈恵。俺の母親か。)
初めて知った、俺のルーツ
まさか、ここで知ることになるとはな
流石に少し驚いた
先生「君のお母さんは二十歳で結婚した。私も式に呼ばれたよ。」
蓮「......」
先生「小田さんの夫、君の父親、八代晴馬の第一印象は好青年だった。だが、実際には違った。」
蓮「違った?」
先生「八代はとんでもない男だった。君が生まれる一か月前に失業し、酒におぼれ、小田さんに暴力を振るった。」
先生はこぶしを握り締めてる
多分、大切な教え子だったんだろう
取り合えず、父親の名前も把握した
先生「一か月間、小田さんは君を守り続け、やっとの思いで君は生まれる事が出来た。だが、八代はそれをよく思わず、君を殺そうとしたそうだ......」
蓮「......」
先生「それで、退院して間もなく、小田さんは私のもとに蓮君を連れて来た。あの時、彼女は泣いていたよ......」
俺の母親は俺を捨てたんじゃなく、
守るために孤児院に連れて来たのか
つまり、長年、誤解してたのか
先生「自分の子を育てられなかった彼女は、どんなに悔しかった事か......!」
蓮(母親、か。)
今まで、自分を捨てた人間、
もしくは他人としか思ってなかった
でも、実態は俺が思ってる真逆
全ては俺を守るためだったのか
先生「小田さんは精神を病み、ずっと病院で生活してる。私は、八代が許せない......!」
蓮「......(先生がここまで激昂するとは。)」
先生「蓮君は本当に、強くなってくれた。だからこそ、今回、これを仕組んだ。」
蓮「......」
先生「お願いだ、蓮君。八代を、何とかしてくれ......!」
蓮「!」
先生は俺に頭を下げて来た
本気で先生は悔しがってる
ズボンにいくつも涙が落ちて、
体は小刻みに震えている
蓮「......」
正直、戸惑ってる
突然、俺の本当の親の話を聞いて
母親を助けてくれと頼まれて
どうするのが正しいかなんて分からない
蓮「......分かりました。」
先生「!」
だが、何をしたいかははっきり分かる
俺は会った事もない父親を許しちゃいけない
それだけは分かる
蓮「母親は俺の命の恩人。助ける理由なんて、それだけで十分です。」
先生「蓮君......」
俺はそう言いながら椅子から立ち上がり
出口の方に歩いた
蓮「......ありがとうございました、先生。」
先生「はい。」
俺は少し頷き、部屋から出た
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孤児院を出て、俺は家に帰ってきた
今の俺はどんな感情を抱いてるんだろう
自分の親に抱く感情なんて一切ない
だから、今回の話に気負いなんてものはない
蓮(__なんだろ、これ。)
腹の奥が焼けるように熱い
無性に何かに当たりたくなる
これは、怒りだろうか
蓮「......やってやる。」
徹底的に、人間ならざる人間を
ぶっ潰してやればいい
今の俺にはそれが出来る材料がそろってる
ひまり「あ、蓮さん!」
蓮「ひまりか。」
考え事をしながら歩いてると、
向こうからひまりが歩いてきた
相変わらず、元気がいい子だ
ひまり「今からおやつなんですけど、蓮さんも行きますか?」
蓮「悪いけど、やることがあるから遠慮しとくよ。」
ひまり「え~!そうですか~......」
ひまりは残念そうに肩を落とした
俺はそれを見て、とっさに頭を撫でた
ひまり「!///」
蓮「そんな顔するな。ひまりは笑っててくれないと、俺も悲しくなる。」
ひまり「は、はい......!///」
蓮「夕飯、俺の隣においで。おやつの分の埋め合わせをしよう。」
ひまり「やったー!///」
ひまりは嬉しそうに両手を挙げた
そして、いきなり俺の方に抱き着いてきた
蓮「!」
ひまり「蓮さん大好きー!///」
蓮「あぁ、俺も好きだよ。」
俺とひまりはしばらくその場で抱きしめ合い
ひまりはおやつを食べに、
俺は自分の部屋に向かった
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部屋に戻ってきた
俺は鞄を置き、ベランダの椅子に座った
そして、おもむろに声を出した
蓮「メイドさん、いますか?」
メイド「ここに。」
蓮「すいませんが、八代晴馬という男について調べてくれないでしょうか?出来るだけ早く。」
メイド「かしこまりました。明日にはご報告いたします。」
メイドさんはそう言って部屋を出て行った
流石に優秀すぎるんだが
まぁ、早ければ早いほど助かるしいいけど
つくし『__蓮さん、いらっしゃいますか?』
蓮「ん?つくし?」
つくし「失礼します。」
つくしは俺の部屋に入ってきた
制服のままだし、学校帰りか
俺はつくしの方に目を向けた
蓮「どうかしたか?」
つくし「えっと、怒ってますか?」
蓮「え?そんな事ないけど?」
つくしは不安そうな声でそう言ってきた
今、俺そんなにヤバい顔してたか?
ちょっと不安になってきた
蓮「いやー、ちょっと眠いから声がだれてたのかもなー。」
つくし「そうなんですか?」
蓮「多分なー。」
俺は出来るだけ笑顔を意識してる
つくしは安心した様に胸をなでおろした
蓮「それで、何か用か?」
つくし「あ、そうだった!今日、学校で調理実習があって、それで、お菓子を作ったんです!」
蓮「へぇ、美味そうだな。」
つくし「えっと、自信作なので、どうぞ!」
蓮「お、くれるのか。」
俺はつくしから小さいケーキを受け取った
かなりうまく出来てるな
形もかなり綺麗だし
蓮「上手だな、つくし。」
つくし「ありがとうございます!」
ましろ、七深、透子、瑠唯「__失礼します。」
蓮「ん?」
とうとうモルフォニカ全員揃ったな
すごいヌルっと入ってきたし
まぁ、いいんだけど
蓮「4人も用か?」
ましろ「調理実習で作ったケーキを食べてほしくて......」
透子「持ってきちゃいましたー!」
七深「つーちゃん、抜け駆けは良くないよー?」
瑠唯「中々、姑息ね。二葉さん。」
つくし「ご、ごめんなさい......」
なんか、つくしが小さくなった気がする
てか、調理実習ってこんな被るの?
すごい学校だな
瑠唯「味は保証します。」
七深「何も入ってませんよ~。」
蓮「あ、うん。元から疑ってないよ。」
透子「じゃあ、どうぞー!」
俺は4人からケーキを受け取り、
合計5つになった
甘い物好きだし、嬉しいな
ましろ「あの、全部食べられますか......?」
蓮「余裕余裕。全部、食べるよ。」
つくし「それじゃあ、私達は練習してきます!」
蓮「おう。頑張れよ。」
瑠唯「失礼しました。」
5人は俺の部屋から出て行った
俺は椅子に座りなおし
外の景色を眺めた
蓮(わざわざ持ってきてくれて、いい子達だな。)
俺は少し笑みをこぼし、
5人が持ってきてくれたケーキを眺めた
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”モルフォニカ”
5人は敷地内の練習場で練習をしている
最初に比べ格段に上がった技術に、
少しずつ自信を深めて言ってる空気がある
透子「__ちょーいい感じじゃね!?」
ましろ「うん、すごく音があってた!」
七深「やっぱり、蓮先輩は偉大だね~。」
つくし「うん!蓮さんのアドバイス通りにすれば絶対に上手くいくもん!」
瑠唯「本人の演奏技術も高く、指導も敏腕。あの人の優秀さは目を見張るわ。」
5人は練習の合間、
楽しそうにそんな会話をしてる
本人が聞けばおおよそ否定するだろう
透子「そう言えば昨日さ、夜に千聖さんが蓮さんの部屋に入るの見たんだよね。」
ましろ、七深、つくし、瑠唯「!」
透子「あれってさ、そういう事だよね?」
瑠唯「......そう考えるのが妥当、かしら///」
七深「羨ましいな~......」
つくし「で、でも、いつか私達だってその時が来るかも!」
ましろ「っ///」
5人は顔を赤らめ、
慌ただしく体を動かしている
想像しただけで落ち着きが無くなっているようだ
友希那「__モルフォニカ、いるかしら?」
ましろ「友希那さん?」
瑠唯「どうかしましたか?」
友希那「あなた達、少しついて来て。」
七深「?」
友希那「話さないといけない事があるの。」
友希那がそう言うと5人は首を傾げた
そして、透子が質問を投げかけた
透子「えーっと、話さないといけない事ってなんですか?」
友希那「蓮と付き合ううえで知らないといけない、蓮の過去についてよ。」
つくし「蓮さんの過去、ですか?」
友希那「覚悟して聞きなさい。飲み込まれないように。」
モルフォニカ「......?」
友希那(あなた達に、どこまでの覚悟があるかしら。)
5人は疑問に思いつつ友希那について行った
そしてこの後、モルフォニカは
蓮の過去を知ることになる