「フゥー。何だこいつら、スゲェ弱いな」
俺は出会いがしらに攻撃してきた海軍を、皆殺しにした。いや、だってしょうがなくない?
バッタリ会って、うお海軍じゃん。てなったら、覚悟ー! だぜ?
なんか"反乱軍"に間違われたらしい……。
「……う、くそォ………」
あ、まだ生きてた。さすが隊長ぽい女性。あの中ではズバ抜けてたね。素早い剣技だった。けど弱ェ。
「しつこいな、あんた……」
「貴方は…何者ですか………? 何故、貴方ほどの剣士が、ハッ…うう、反乱など……」
苦しそうに、今にも死にそうに、女性は聞いてくる。
死にそうなのに頑張って、頑張って、生き延びようとするその姿は、妙にうざったくて、俺をイラつかせた。
自分が死にそうなのに、他人のために最後まで自分の命を棒に振る。その素晴らしい正義感が、俺のカンに障る。
だから、俺は握りしめた斬魄刀で彼女の腹を突き刺すことで、それに返答した。
「しつこいな、あんた……。俺は"反乱軍"じゃない……!」
だが、彼女の耳は既にその役目を果たし終えてた様子で、彼女は俺を無視した。
「それに……その刀は、ハァハァ……一体?」
腹に刺さっている斬魄刀を、血にまみれた手でつかもうとする。俺はその手を避け、両断する。
「……?」
彼女の脳は痛みを拒否し、痛覚を切断した。腕の先が無く、血を噴き出しているのにもかかわらず、彼女は首を傾げるだけだ。
俺は、恐怖を感じるとともに、新鮮な気分になった。
「けど、飽きたな……」
今度はこの娘をどうしよう、と考える。
その俺に、地べたを這いつくばりながら近寄る彼女。
「反乱は……あぁ、阻止ィ、しなければ……ハァ、いけないんで――ブゥほっ!!」
近寄る彼女の顔を蹴り飛ばした。右頬が腫れ上がり、赤くなっている。そんな醜い顔を再度こちらに向け、なおも地べたを這いつくばりながら、こちらに近寄ってくる。
「……ううっ、ハァ…私、たちは、市民をばもる……海軍、なんでず! だがら……がへぇ!!」
うっとおしい。動かないでほしい。
そう感じたから、今度は少し強く蹴った。
……なのに、彼女はもう赤くなるところの無い顔をこちらに向け、地べたを這いずりながら近寄ってくる。足を掴もうとする。
「だがらァ、罪のない人達同士を……戦わせたくないんです!!」
「遊びはやめだ」
「……あははぁ」
俺は彼女が足を掴むのを、止めなかった。
片方の手でしっかり掴み、満面の笑みを浮かべたところで、その手も切り落とした。
「……………」
その時の表情は、とても言葉では表せない。というか、表さないほうが良いだろう。
闇に飲まれるときの顔は、気分のいいものじゃない。
彼女が、その市民とやらに今できる事は、"反乱軍"だと勘違いしている俺を、ここに引き止めておくことだろう。
彼女の足は既に身体を離れ、歩くことはできない。
残った片方の手で、俺を引き止めることしかできない。
その彼女が、残った手まで失ったら、どうなると思う?
「ウゥアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!」
こうなる。
「うるせェな」
人をやめ、叫ぶだけの壊れたスピーカーになったので、最後の彼女も、首を落として殺した。
地面に落ちた彼女の顔は、とても、醜かった。強い正義感を持った人は、絶望を知ると酷い表情になるんだと、俺はこの時知った。
「あら……」
「ん?」
俺がメガネっ娘を観察してると、後ろから声がかかった。振り向くとそこにいたのは、黒長髪のナイスバディと、血だらけのおっさん。
なんか、見たことあるわけないかな?
「これをやったのは、あなた?」
「ま、そうだけど……」
「む、君は……リクト君かね?」
おっさんが俺の名前を言い当てた。この人は俺を知っている。けど、俺は知らない。なら、記憶を失う前に会ったってことか。
「そうすけど……お」
俺今記憶失ってるんで、あなたの事を知りません。
と、そう続けようとした。
けど、
「その惨状は、君がやったのだね?」
そう、遮られた。
その剣幕は鋭く、俺は答えざるを得なかった。
「ええ。そうです……」
「……ぜだ…」
はっきりと俺が答えた瞬間、目の前のおっさんは肩を震わせはじめた。
そして、顔を俯かせ何かをつぶやく。
俺はどうしていいのか分からず、立ち尽くしていた。
「何故だ!!」
おっさんが突然怒鳴り散らした。
「何故君はこんなことをした!!? この人たちが何をした!!? 海軍の方々じゃないか!!?」
矢口早に捲くし立て、返答する余地も与えてもらえない。
「私が会った小さいころの君は、それは礼儀正しい男の子だったよ……。それが何故!! こんな、非人道的な事をする子になってしまったんだ!!?」
「……うるせェよ!!」
ついに、俺の堪忍袋の緒が切れた。
「昔の事なんか知るかよ!! 俺が目覚めたのはついさっき、それまでの事は全部忘れてる!! 記憶喪失なんだよ!!」
俺がそう、半ば叫ぶように言うと、おっさんは笑い出した。
「ハハハ。またそれか?」
「はい?」
「私が始めて君にあったときも、君は記憶を無くしていたよ」
おい……俺。どんだけ記憶喪失だよ。何度目? これ今何度目?
「それは理由になどなっていない!!」
おっさんは俺の目を見つめながら、強く言い放った。
「記憶喪失? だから何だ、それが人を殺していい理由なのか? な訳無いだろう!! 全てを話せ、リクト君……」
最後はやさしく俺を促してきた。
俺は、俯きながら言葉を紡いでいく。
「……俺の中の何かが、こいつらの行動を見て、俺を、黒く染めていった。それで妙にイラついて、ただ殺すだけじゃ済まなくて……。それで、こんな事に」
「君から仕掛けたのかい?」
「いや、違う……こいつらが俺を"反乱軍"と勘違いして………こいつらから斬りかかって来た。これは本当だ…!」
俺は必死に信じてもらえるように、真剣な表情を作った。
それを聞いていたおっさんは優しく微笑んで、
「そうか」
と、それだけ言った。
俺は生まれて初めて、『人』というものに触れ合った感じがした。
身体の中を不規則に奔流していた、不安と言うものを洗い流してくれたような、そんなものをおっさんの微笑みを見て、感じた。
俺は口角を上げ、少しニヤついてから聞いた。
「んで、どんな状況ですかねコレ。穏やかじゃないっすね」
「あなたには関係ないわ。道を開けなさい、急いでいるの」
黒髪に睨まれる。けど、それは今関係ない。
「おっさん。俺はビビって女の子を捜してるんだ。俺が覚えているのはそれだけで……何か知らないかな?」
「ハハハハっ! 知っているも何も、ビビは私の娘だ」
何!? 初めて出た、あの娘への手がかり。これを逃す手は存在しない。詳しく聞きたいところだが、それも出来ない様子。
なら……
「そうか、なら俺はあんたを救ってやる」
「そう、邪魔をするのね……なら、殺しかねないわよ!!」
俺は戦闘準備をするが、おっさんの声によって妨げられる。
「待てリクト君! 私のことはいい!! 今反乱の起きている宮前広場に、午後4時半!! 砲撃予告を受けている!! 何とかそれを止めてくれ!!」
砲撃? てか、今何時だ?
でも………それで? って感じだなー。
「おっさん。俺それを聞いてもモチベーション今一あがんないんだけど」
「え?」
「は……?」
黒髪とおっさんが同時にアホ面になる。
んー、俺この国のこと全然覚えてないし、だから救おうとも思わないんだよなー。残ろうが滅びようが、俺には関係ない。
「俺が信じてるのは、俺自身とビビだけだ」
「フフフッ。変わってるわねあなた」
「そーですか?」
「ええ。こんな形じゃなければ、知り合いになりたかったけど、今のあなたは邪魔よ」
黒髪が、胸の前で両手を交差する。すると、俺の首の後ろに人の腕が生えてきた。
「……は? 何コレ……」
後ろを向こうとするが、地面から生えてきた腕に足をつかまれる。
続けて、首の後ろの腕に首の骨を折られそうになる。
「……おい、お…い、嘘、だ……ろ……」
「……しつこい人ね」
次々に生えてくる腕に、身体を倒され、足に4本の腕が生える。その腕に2本ずつ両側に足を折り曲げられる。
「が、ああああああっ!!」
右足が折れた。恐らくもう歩けない。
「リクト君!!」
「うふふ、その足じゃもう追ってはこれないわね。……さようなら、不思議な護衛兵さん」
「ち、くそ。待てよおい! ああ、もう! 動かねェ……!」
黒髪とおっさんは、倒れている俺の真横を素通りしていった。俺は最後の悪あがきに、おっさんに向かって叫ぶ。
「おい、おっさん! 待ってろよ!! 絶対助けに行くから!!」
「………うむ!」
俺は誰もいなくなった路地で、仰向けになり空を見上げた。
―――――――
「ハァ、ハァ…。ずいぶんロスしたわ」
「しょうがねェよ。
ビビとウソップが走る横で、"反乱軍"、"国王軍"関係なく、人が死んでいく。ビビはその光景に、一瞬眼を取られる。
ウソップはそのビビを見て、無理やり前を向かせる。
「バカ、
「………………………うん………!!」
ビビは涙をこらえて、返事をする。
ウソップも歯を噛み締めて、必死に前だけを見る。
「祈ったって、砲撃は止まらねェ!!! 2分後のおれ達は、死体か!! 勝者か!!! まだ、1分半ある!!」
「うん!!」
「みんないる!!」
「うん!!」
「いた!!」
「ビビ!! ウソップ!!」
辺りを埋め尽くす塵旋風の中から、ナミとチョッパーがこちらに向かって来た。
ビビとウソップもそれに気づき、駆け寄る。
「お!」
「ナミさん!! トニー君っ!!」
「砲撃手いたのか!?」
「いたんじゃないけど……!! 間違いないっ!! この塵旋風も作戦のうちだとしたら……、それでも照準を失わない場所にある筈……!! そして大きな大砲を置ける広い場所で空からは見えない」
ビビが思い出すは、幼い日の記憶。
「もうあそこ以外に考えられない。目をやっていた筈なのに……盲点だった!! 砲撃手は間違いなくあの……!!」
そこでビビは時計台を指差した。
「―――時計台の中にいるわ!!!」
「え!?」
全員が時計台を見て、驚きの声をあげる。
「時計台!!?」
「……そうか。あそこなら広場をよく狙えるぞっ!!!」
時計台の下につくが、そこからがまた問題だった。
ナミが叫び声をあげる。
「ビビ!! 場所はわかっても1分じゃあんなとこまで登れないわよ!!!」
ビビは辺りを見渡しながら、それに答える。
「ペルさえ来てくれればと思ったんだけど……!!」
「階段で行くしかねぇだろ、入り口は……」
4人で話し合ってる中、時計台の中に人影が揺らめく。
「え!?」
「おーい!! ナミさーん!! ビビちゃーん!!」
「何でお前がそこにいるんだー!!」
人影の正体はサンジだった。
そのサンジに、ウソップが我先にと突っ込んだ。
「何でって、てめェが煙の下にメッセージ残してたろ。『時計台』って書いてあったから、登ってきたんじゃねェか」
サンジは下をのぞき見ながらそう言った。
「どうすりゃいい!? 砲撃手はどこにいるんだ!!」
真剣な顔で聞いている。さすがのサンジでも、ふざけてはいられない。
その顔に、ウソップも応える。
「てっぺんだてっぺん!! そのまま登ってブッ飛ばして……」
「ダメ…」
「え!?」
突然の事に、ウソップは理解が遅れた。
「2人の位置からは時計台の内部へは入れない。あそこへ行くには1階の奥にある階段が唯一の到達手段なの」
「でも、サンジならあの塔の壁を壊して……」
「そんな衝撃に耐えられる砲弾とは限らないわ!!」
ビビは食い気味にそう叫ぶ。
「やっぱり階段から行くしか……」
ビビは走り出す。そこにチョッパーが追走する。
「ビビ!! おれの背中に乗って!!」
チョッパーは既に獣型になっていた。その姿はトナカイ。
ビビは飛び乗る。チョッパーは走った。そして、階段を駆け上った。
ビビは救わなければならない。アラバスタ王国を。この、国を。故郷を。
そのために危険を冒し、何年にもわたって、
その人のためにも、その人の死を無駄にしないためにも、砲撃を止め、戦争を終わらせる。
王女だから、この国が大好きだから。だからこそ、
愛しているから――。
決意を胸に燃やし、ビビは前を見据える。
「トニー君! もっと早くならない!?」
「……わ、わかった!!」
焦らなければならない状況。遠慮などはしてられない。
チョッパーは文句を言わず、スピードを上げた。
扉をぶち抜き入った時計台の中。
中には、ドでかい砲弾があり、既に点火されていた。
「あっつ……」
ビビは急いで駆け寄り、素手で火を消す。
そんなビビに近づく、2つの影。
「ビビ!!」
「オホホ!!? ミス・ウェ~~~ンズデイ!!」
「ゲロゲロ!! あたし知ってんの!! コイツ我が社の裏切り者よ!!!」
銃口を突きつけられるビビ。チョッパーが動きだす。
「ランブル!!
チョッパーは音もなく2人に近づき、アッパーを食らわす。
「
2人の顎にトナカイの蹄の跡が残る。2人は後ろへ仰向けに倒れた。
「ビビ、大丈夫!?」
「…………そん、な……」
「……ビビ?」
ビビは、その場に崩れ落ちる。彼女が見たのは、砲弾。不思議に思い、チョッパーもチョッパ^も砲弾を見る。
砲弾は、時限式だった。
必死になって、火を止めた。砲弾を撃たせないために。
国を救うために。
でも、時限式。
これじゃ、国を救えない。戦争も止まらない。
ビビのしてきたことは、全て、無駄だったのだ。
「…ここまで探させておいて……!! 砲撃予告をしておいて……!! 一体どこまで人をバカにすれば気がすむのよ……!! どこまで人を嘲笑えば気がすむのよ!!」
爆弾が時限式と知って、いままで身体の中にあったいろんな感情を、ぐちゃぐちゃに混ぜ、遂には真っ白になった感情を全て吐き出すように、奴の名を叫んだ。
「クロコダイル!!!!」
もう、終わりだ。ここまでされたら、何もできない。
チョッパーは下のナミ達に、事情を伝えた後、叫びながら辺りをうろうろしている。
だがビビは、何もせず、その場にずっと座っていた。
これ以上何をすれば良いのか、わからなかった。
ずっと、無駄なことをして過ごしてきたのだ。正しい事がわからない。有益なことは何なのか?
何をすれば良いのか、わからない。わからない。
あと10秒。
ああ、私は、無駄な命だったんだ。だって、バカみたいじゃない。国のため、国民のため、一生懸命働いてきた。
危険なこともした。けれどそれは、決して報われないことだった。所詮私は、クロコダイルの掌の上、踊らされたピエロだった。
あと5秒。
最後に思い出すのは、ずっと昔の出来事。
ペルの背中に乗せてもらって、初めて言った海。そこに1人の男の子が倒れていた。
その子の名は、ヤマダ・リクト。
記憶喪失といって、何も覚えていない病気をわずらわっていた。
その子を連れて『砂砂団』のみんなの所に行った。そこで私はレインに殺されそうになり、それをリクトは助けてくれた。そして死んでしまい、『砂砂団』のみんなはテロ集団になった。
たった1日だけどの思い出だけど、劇的な思い出。
私の理想の王子様。
あと1秒。
最後に会いたかったな。
「ビビ様!!」
ギリギリでペルがビビに覆いかぶさり、爆弾が爆発した。
今回は少し短めです。
すいません。ですが、この引きをやってみたかったんです。ご了承ください。
批評受け付けております。よろしくお願いします。