BURN   作:はち8

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005.爆発

「フゥー。何だこいつら、スゲェ弱いな」

 

 

俺は出会いがしらに攻撃してきた海軍を、皆殺しにした。いや、だってしょうがなくない?

バッタリ会って、うお海軍じゃん。てなったら、覚悟ー! だぜ?

なんか"反乱軍"に間違われたらしい……。

 

 

「……う、くそォ………」

 

 

あ、まだ生きてた。さすが隊長ぽい女性。あの中ではズバ抜けてたね。素早い剣技だった。けど弱ェ。

 

 

「しつこいな、あんた……」

「貴方は…何者ですか………? 何故、貴方ほどの剣士が、ハッ…うう、反乱など……」

 

 

苦しそうに、今にも死にそうに、女性は聞いてくる。

死にそうなのに頑張って、頑張って、生き延びようとするその姿は、妙にうざったくて、俺をイラつかせた。

自分が死にそうなのに、他人のために最後まで自分の命を棒に振る。その素晴らしい正義感が、俺のカンに障る。

 

だから、俺は握りしめた斬魄刀で彼女の腹を突き刺すことで、それに返答した。

 

 

「しつこいな、あんた……。俺は"反乱軍"じゃない……!」

 

 

だが、彼女の耳は既にその役目を果たし終えてた様子で、彼女は俺を無視した。

 

 

「それに……その刀は、ハァハァ……一体?」

 

 

腹に刺さっている斬魄刀を、血にまみれた手でつかもうとする。俺はその手を避け、両断する。

 

 

「……?」

 

 

彼女の脳は痛みを拒否し、痛覚を切断した。腕の先が無く、血を噴き出しているのにもかかわらず、彼女は首を傾げるだけだ。

俺は、恐怖を感じるとともに、新鮮な気分になった。

 

 

「けど、飽きたな……」

 

 

今度はこの娘をどうしよう、と考える。

その俺に、地べたを這いつくばりながら近寄る彼女。

 

 

「反乱は……あぁ、阻止ィ、しなければ……ハァ、いけないんで――ブゥほっ!!」

 

 

近寄る彼女の顔を蹴り飛ばした。右頬が腫れ上がり、赤くなっている。そんな醜い顔を再度こちらに向け、なおも地べたを這いつくばりながら、こちらに近寄ってくる。

 

 

「……ううっ、ハァ…私、たちは、市民をばもる……海軍、なんでず! だがら……がへぇ!!」

 

 

うっとおしい。動かないでほしい。

そう感じたから、今度は少し強く蹴った。

 

……なのに、彼女はもう赤くなるところの無い顔をこちらに向け、地べたを這いずりながら近寄ってくる。足を掴もうとする。

 

 

「だがらァ、罪のない人達同士を……戦わせたくないんです!!」

「遊びはやめだ」

「……あははぁ」

 

 

俺は彼女が足を掴むのを、止めなかった。

片方の手でしっかり掴み、満面の笑みを浮かべたところで、その手も切り落とした。

 

 

「……………」

 

 

その時の表情は、とても言葉では表せない。というか、表さないほうが良いだろう。

闇に飲まれるときの顔は、気分のいいものじゃない。

 

彼女が、その市民とやらに今できる事は、"反乱軍"だと勘違いしている俺を、ここに引き止めておくことだろう。

彼女の足は既に身体を離れ、歩くことはできない。

残った片方の手で、俺を引き止めることしかできない。

 

その彼女が、残った手まで失ったら、どうなると思う?

 

 

「ウゥアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!」

 

 

こうなる。

 

 

「うるせェな」

 

 

人をやめ、叫ぶだけの壊れたスピーカーになったので、最後の彼女も、首を落として殺した。

地面に落ちた彼女の顔は、とても、醜かった。強い正義感を持った人は、絶望を知ると酷い表情になるんだと、俺はこの時知った。

 

 

「あら……」

「ん?」

 

 

俺がメガネっ娘を観察してると、後ろから声がかかった。振り向くとそこにいたのは、黒長髪のナイスバディと、血だらけのおっさん。

なんか、見たことあるわけないかな?

 

 

「これをやったのは、あなた?」

「ま、そうだけど……」

「む、君は……リクト君かね?」

 

 

おっさんが俺の名前を言い当てた。この人は俺を知っている。けど、俺は知らない。なら、記憶を失う前に会ったってことか。

 

 

「そうすけど……お」

 

 

俺今記憶失ってるんで、あなたの事を知りません。

と、そう続けようとした。

 

けど、

 

 

「その惨状は、君がやったのだね?」

 

 

そう、遮られた。

その剣幕は鋭く、俺は答えざるを得なかった。

 

 

「ええ。そうです……」

「……ぜだ…」

 

 

はっきりと俺が答えた瞬間、目の前のおっさんは肩を震わせはじめた。

そして、顔を俯かせ何かをつぶやく。

俺はどうしていいのか分からず、立ち尽くしていた。

 

 

「何故だ!!」

 

 

おっさんが突然怒鳴り散らした。

 

 

「何故君はこんなことをした!!? この人たちが何をした!!? 海軍の方々じゃないか!!?」

 

 

矢口早に捲くし立て、返答する余地も与えてもらえない。

 

 

「私が会った小さいころの君は、それは礼儀正しい男の子だったよ……。それが何故!! こんな、非人道的な事をする子になってしまったんだ!!?」

「……うるせェよ!!」

 

 

ついに、俺の堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「昔の事なんか知るかよ!! 俺が目覚めたのはついさっき、それまでの事は全部忘れてる!! 記憶喪失なんだよ!!」

 

 

俺がそう、半ば叫ぶように言うと、おっさんは笑い出した。

 

 

「ハハハ。またそれか?」

「はい?」

「私が始めて君にあったときも、君は記憶を無くしていたよ」

 

 

おい……俺。どんだけ記憶喪失だよ。何度目? これ今何度目?

 

 

「それは理由になどなっていない!!」

 

 

おっさんは俺の目を見つめながら、強く言い放った。

 

 

「記憶喪失? だから何だ、それが人を殺していい理由なのか? な訳無いだろう!! 全てを話せ、リクト君……」

 

 

最後はやさしく俺を促してきた。

俺は、俯きながら言葉を紡いでいく。

 

 

「……俺の中の何かが、こいつらの行動を見て、俺を、黒く染めていった。それで妙にイラついて、ただ殺すだけじゃ済まなくて……。それで、こんな事に」

「君から仕掛けたのかい?」

「いや、違う……こいつらが俺を"反乱軍"と勘違いして………こいつらから斬りかかって来た。これは本当だ…!」

 

 

俺は必死に信じてもらえるように、真剣な表情を作った。

それを聞いていたおっさんは優しく微笑んで、

 

 

「そうか」

 

 

と、それだけ言った。

 

俺は生まれて初めて、『人』というものに触れ合った感じがした。

身体の中を不規則に奔流していた、不安と言うものを洗い流してくれたような、そんなものをおっさんの微笑みを見て、感じた。

 

 

俺は口角を上げ、少しニヤついてから聞いた。

 

 

「んで、どんな状況ですかねコレ。穏やかじゃないっすね」

「あなたには関係ないわ。道を開けなさい、急いでいるの」

 

 

黒髪に睨まれる。けど、それは今関係ない。

 

 

「おっさん。俺はビビって女の子を捜してるんだ。俺が覚えているのはそれだけで……何か知らないかな?」

「ハハハハっ! 知っているも何も、ビビは私の娘だ」

 

 

何!? 初めて出た、あの娘への手がかり。これを逃す手は存在しない。詳しく聞きたいところだが、それも出来ない様子。

なら……

 

 

「そうか、なら俺はあんたを救ってやる」

「そう、邪魔をするのね……なら、殺しかねないわよ!!」

 

 

俺は戦闘準備をするが、おっさんの声によって妨げられる。

 

 

「待てリクト君! 私のことはいい!! 今反乱の起きている宮前広場に、午後4時半!! 砲撃予告を受けている!! 何とかそれを止めてくれ!!」

 

 

砲撃? てか、今何時だ?

でも………それで? って感じだなー。

 

 

「おっさん。俺それを聞いてもモチベーション今一あがんないんだけど」

「え?」

「は……?」

 

 

黒髪とおっさんが同時にアホ面になる。

んー、俺この国のこと全然覚えてないし、だから救おうとも思わないんだよなー。残ろうが滅びようが、俺には関係ない。

 

 

「俺が信じてるのは、俺自身とビビだけだ」

「フフフッ。変わってるわねあなた」

「そーですか?」

「ええ。こんな形じゃなければ、知り合いになりたかったけど、今のあなたは邪魔よ」

 

 

黒髪が、胸の前で両手を交差する。すると、俺の首の後ろに人の腕が生えてきた。

 

 

「……は? 何コレ……」

 

 

後ろを向こうとするが、地面から生えてきた腕に足をつかまれる。

続けて、首の後ろの腕に首の骨を折られそうになる。

 

 

「……おい、お…い、嘘、だ……ろ……」

「……しつこい人ね」

 

 

次々に生えてくる腕に、身体を倒され、足に4本の腕が生える。その腕に2本ずつ両側に足を折り曲げられる。

 

 

「が、ああああああっ!!」

 

 

右足が折れた。恐らくもう歩けない。

 

 

「リクト君!!」

「うふふ、その足じゃもう追ってはこれないわね。……さようなら、不思議な護衛兵さん」

「ち、くそ。待てよおい! ああ、もう! 動かねェ……!」

 

 

黒髪とおっさんは、倒れている俺の真横を素通りしていった。俺は最後の悪あがきに、おっさんに向かって叫ぶ。

 

 

「おい、おっさん! 待ってろよ!! 絶対助けに行くから!!」

「………うむ!」

 

 

俺は誰もいなくなった路地で、仰向けになり空を見上げた。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「ハァ、ハァ…。ずいぶんロスしたわ」

「しょうがねェよ。B.W(バロック・ワークス)の残党も呼び寄せちまったんだから……」

 

 

ビビとウソップが走る横で、"反乱軍"、"国王軍"関係なく、人が死んでいく。ビビはその光景に、一瞬眼を取られる。

ウソップはそのビビを見て、無理やり前を向かせる。

 

 

「バカ、他所見(よそみ)するな!! 砲撃が止まらなかったら、被害はこんなもんじゃねェぞ!!!」

「………………………うん………!!」

 

 

ビビは涙をこらえて、返事をする。

ウソップも歯を噛み締めて、必死に前だけを見る。

 

 

「祈ったって、砲撃は止まらねェ!!! 2分後のおれ達は、死体か!! 勝者か!!! まだ、1分半ある!!」

「うん!!」

「みんないる!!」

「うん!!」

「いた!!」

「ビビ!! ウソップ!!」

 

 

辺りを埋め尽くす塵旋風の中から、ナミとチョッパーがこちらに向かって来た。

ビビとウソップもそれに気づき、駆け寄る。

 

 

「お!」

「ナミさん!! トニー君っ!!」

「砲撃手いたのか!?」

「いたんじゃないけど……!! 間違いないっ!! この塵旋風も作戦のうちだとしたら……、それでも照準を失わない場所にある筈……!! そして大きな大砲を置ける広い場所で空からは見えない」

 

 

ビビが思い出すは、幼い日の記憶。

 

 

「もうあそこ以外に考えられない。目をやっていた筈なのに……盲点だった!! 砲撃手は間違いなくあの……!!」

 

 

そこでビビは時計台を指差した。

 

 

「―――時計台の中にいるわ!!!」

「え!?」

 

 

全員が時計台を見て、驚きの声をあげる。

 

 

「時計台!!?」

「……そうか。あそこなら広場をよく狙えるぞっ!!!」

 

 

時計台の下につくが、そこからがまた問題だった。

ナミが叫び声をあげる。

 

 

「ビビ!! 場所はわかっても1分じゃあんなとこまで登れないわよ!!!」

 

 

ビビは辺りを見渡しながら、それに答える。

 

 

「ペルさえ来てくれればと思ったんだけど……!!」

「階段で行くしかねぇだろ、入り口は……」

 

 

4人で話し合ってる中、時計台の中に人影が揺らめく。

 

 

「え!?」

「おーい!! ナミさーん!! ビビちゃーん!!」

「何でお前がそこにいるんだー!!」

 

 

人影の正体はサンジだった。

そのサンジに、ウソップが我先にと突っ込んだ。

 

 

「何でって、てめェが煙の下にメッセージ残してたろ。『時計台』って書いてあったから、登ってきたんじゃねェか」

 

 

サンジは下をのぞき見ながらそう言った。

 

 

「どうすりゃいい!? 砲撃手はどこにいるんだ!!」

 

 

真剣な顔で聞いている。さすがのサンジでも、ふざけてはいられない。

その顔に、ウソップも応える。

 

 

「てっぺんだてっぺん!! そのまま登ってブッ飛ばして……」

「ダメ…」

「え!?」

 

 

突然の事に、ウソップは理解が遅れた。

 

 

「2人の位置からは時計台の内部へは入れない。あそこへ行くには1階の奥にある階段が唯一の到達手段なの」

「でも、サンジならあの塔の壁を壊して……」

「そんな衝撃に耐えられる砲弾とは限らないわ!!」

 

 

ビビは食い気味にそう叫ぶ。

 

 

「やっぱり階段から行くしか……」

 

 

ビビは走り出す。そこにチョッパーが追走する。

 

 

「ビビ!! おれの背中に乗って!!」

 

 

チョッパーは既に獣型になっていた。その姿はトナカイ。

ビビは飛び乗る。チョッパーは走った。そして、階段を駆け上った。

 

ビビは救わなければならない。アラバスタ王国を。この、国を。故郷を。

そのために危険を冒し、何年にもわたって、B.W(バロック・ワークス)に潜入したのだから。その際に、アラバスタの護衛隊長であり、育ての親みたいな人を失った。名は、イガラム。

その人のためにも、その人の死を無駄にしないためにも、砲撃を止め、戦争を終わらせる。

王女だから、この国が大好きだから。だからこそ、国同士(,,,)が争っているのは見過ごせない。

愛しているから――。

 

決意を胸に燃やし、ビビは前を見据える。

 

 

「トニー君! もっと早くならない!?」

「……わ、わかった!!」

 

 

焦らなければならない状況。遠慮などはしてられない。

チョッパーは文句を言わず、スピードを上げた。

 

扉をぶち抜き入った時計台の中。

中には、ドでかい砲弾があり、既に点火されていた。

 

 

「あっつ……」

 

 

ビビは急いで駆け寄り、素手で火を消す。

そんなビビに近づく、2つの影。

 

 

「ビビ!!」

「オホホ!!? ミス・ウェ~~~ンズデイ!!」

「ゲロゲロ!! あたし知ってんの!! コイツ我が社の裏切り者よ!!!」

 

 

銃口を突きつけられるビビ。チョッパーが動きだす。

 

 

「ランブル!! 腕力強化(アームポイント)……」

 

 

チョッパーは音もなく2人に近づき、アッパーを食らわす。

 

 

刻蹄(こくてい) (ロゼオ)!!」

 

 

2人の顎にトナカイの蹄の跡が残る。2人は後ろへ仰向けに倒れた。

 

 

「ビビ、大丈夫!?」

「…………そん、な……」

「……ビビ?」

 

 

ビビは、その場に崩れ落ちる。彼女が見たのは、砲弾。不思議に思い、チョッパーもチョッパ^も砲弾を見る。

砲弾は、時限式だった。

必死になって、火を止めた。砲弾を撃たせないために。

国を救うために。

 

でも、時限式。

これじゃ、国を救えない。戦争も止まらない。

ビビのしてきたことは、全て、無駄だったのだ。

 

 

「…ここまで探させておいて……!! 砲撃予告をしておいて……!! 一体どこまで人をバカにすれば気がすむのよ……!! どこまで人を嘲笑えば気がすむのよ!!」

 

 

爆弾が時限式と知って、いままで身体の中にあったいろんな感情を、ぐちゃぐちゃに混ぜ、遂には真っ白になった感情を全て吐き出すように、奴の名を叫んだ。

 

 

「クロコダイル!!!!」

 

 

もう、終わりだ。ここまでされたら、何もできない。

チョッパーは下のナミ達に、事情を伝えた後、叫びながら辺りをうろうろしている。

だがビビは、何もせず、その場にずっと座っていた。

 

これ以上何をすれば良いのか、わからなかった。

ずっと、無駄なことをして過ごしてきたのだ。正しい事がわからない。有益なことは何なのか?

何をすれば良いのか、わからない。わからない。

 

あと10秒。

 

ああ、私は、無駄な命だったんだ。だって、バカみたいじゃない。国のため、国民のため、一生懸命働いてきた。

危険なこともした。けれどそれは、決して報われないことだった。所詮私は、クロコダイルの掌の上、踊らされたピエロだった。

 

あと5秒。

 

最後に思い出すのは、ずっと昔の出来事。

ペルの背中に乗せてもらって、初めて言った海。そこに1人の男の子が倒れていた。

その子の名は、ヤマダ・リクト。

記憶喪失といって、何も覚えていない病気をわずらわっていた。

その子を連れて『砂砂団』のみんなの所に行った。そこで私はレインに殺されそうになり、それをリクトは助けてくれた。そして死んでしまい、『砂砂団』のみんなはテロ集団になった。

たった1日だけどの思い出だけど、劇的な思い出。

私の理想の王子様。

 

あと1秒。

 

最後に会いたかったな。

 

 

「ビビ様!!」

 

 

ギリギリでペルがビビに覆いかぶさり、爆弾が爆発した。

 




今回は少し短めです。
すいません。ですが、この引きをやってみたかったんです。ご了承ください。

批評受け付けております。よろしくお願いします。
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