BURN   作:はち8

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006.冷却

クロコダイルの仕掛けた爆弾が爆発し、半径7キロが消滅・倒壊した。

時計台は建物の殆どが熱で溶け、チョッパーは死に、ビビを守ったペルも死に、ビビは吹飛ばされ、時計台の瓦礫に挟まれる。意識がなくなり、右腕の骨が折れた。

下にいたナミ達も瓦礫に飲まれ、少なからずの傷を負った。

 

宮前広場で戦っていた"反乱軍"、"国王軍"は生き残っていた兵士の大多数が死に、もはや死人の数が生き残った数を上回ってしまった。

 

宮殿の庭でルフィは、ナオヤの作った土の壁によって、爆発の影響はあまり受けていなかった。

 

 

「……まずいですね。まさか水ルフィの登場がなかったとは。僕としては、あのお茶目なルフィさんを間近で見たかったものなんですが…………」

 

 

ツチカタ・ナオヤはルフィの事が大好きだ。それは、愛してるといっても過言ではない。

だからこそ、水ルフィというタルの水を全て飲み込み、タルンタルンの水っ腹になったルフィの姿が見たかったのだろう。

とまァ、冗談はここまで。冗談ではないのだが……。

実際、水ルフィの登場がなかったというのは、非常にまずい事だ。

干からびたルフィの回復手段がないということなのだ。

 

原作では、水ルフィの口から放った水鉄砲をクロコダイルが避け、クロコダイルがルフィの水分を奪う。干からびたルフィが地面に落ち、クロコダイルは砂になってどこかへ消え、ルフィが自分で放った水鉄砲を飲み込み、晴れて復活。

という流れだ。

 

これでわかっただろう。水ルフィがいかに大切な存在か。

 

 

ナオヤは干からびたルフィを抱きかかえ、宮殿の中に水を探しに行く。

 

 

「くそっ……。"フレイヤ"さんは嘘をついたのですか? 近くにいる"転生者"の数が少なければ、ルフィさんの物語の変化はそれだけ少なくなると、そう仰っていたのに……」

 

 

ナオヤは走る。走りながら、

 

 

「まさか、ほかにも"転生者"が……」

 

 

と、呟いた。

 

 

 

―――――――

 

 

少し時間を戻す。

爆発する前、ルフィがクロコダイルに敗れた後。

 

 

俺は地面に落とした斬魄刀を拾い、解号を唱える。

 

 

「世界を直せ、"女禍(じょか)"」

 

 

斬魄刀は形を変え、呼び出されたものが姿を現す。

その姿は、二又に分かれた剣が絡み合っていた。そして、能力を行使する。

 

目の前の空間に現れたルーレット。ルーレットは全部で6つに分かれている。それぞれに色がついており、赤・青・黄・緑・黒・桃。

ここで俺が出さなきゃいけないのは、桃だ。けど、何が出るかまでは俺も干渉できない。

 

意を決してルーレットを回す。ある呪文を唱えて。

 

 

「……ル、ルーレット。スタァアアアアアアトォオオオオオオオオオっっ!!」

 

 

これを言わなきゃルーレットは回らない。何でこんな能力? 作った奴は性格が悪いに違いない。

そんななかにもルーレットは回り、だんだんと速度が落ちていく。このルーレットは針は動かず、円盤自体が動くタイプだ。

そして止まった。

 

 

「……赤」

 

 

赤の能力は確か、辺りに灰を撒き散らし、それを爆破させる。

その通りのことが起きた。

もう一度回す。続いて出たのは。

 

 

「……黒」

 

 

黒は確か、はずれ♪

何も起きなかった。

もう一度回す。続いて出たのは。

 

 

「……黄」

 

 

黄は確か、身体を物に変化させる。取り合えず身体を岩にしてみた。ホントに岩になって少し驚いた。驚いて少しの間岩でいたのだが、その際に砂がチロチロと当たって、ウザかった。何なんだろう?

砂が無くなってから人に戻り、もう一度回す。続いて出たのは。

 

 

「……桃。やっとか」

 

 

やっと桃が出る。桃の能力は、回復。生きている限り、身体の怪我が治る。どんなに重傷でも……とはいかず、内臓の復活はさすがに出来ない。精々骨折まで。

今はそれで十分。足の骨折を治す。

 

回復を終え、確認のため一度立ち上がる。歩いてみたが、きちんと治ってるようだ。

 

 

「よし。行くか」

 

 

おっさん達が向かった方向に向き直り、走り出す。

 

あのおっさんが、ビビの唯一の手がかりだ。逃がすわけにはいかない。俺が死ぬ気で助けたかった女の子。どんな子なんだろう? 今からドキドキする。生き返ってから初めて芽生えた人間らしい感情かもしれない。

それを認めてから、ビビがより一層魅力的に感じれた。

俺に人間らしい感情を思い出させてくれた。

 

ああ、もうダメだ。

 

俺、

 

ビビの事……好きかもしれない。

 

 

………なんてな。なわけあるかよ。そんな筈ない。ありえない。

やめよ、考えんのやめよ。

 

興味あるだけ、絶対そう! 初めて他人に興味持っただけ。それだけ!!

 

 

よし、さっさと行こう。

俺は頭に浮かんだ感情を消し去るように、より早く走り出した。

 

 

 

―――――――

 

 

 

ああ、あそこかな?

 

 

「ハァ…ハァ……」

 

 

と、息を荒く吐き出しながら、地下へつながる階段らしきもののそばに寄る。

あれから、速度を保ちながら走り続けた。走ってる間は何も考えなくて良いので、非常に楽だった。

 

階段の中は暗く、酷く淀んで見えた。

 

けど、階段を過ぎると、所々に火がついており明るくなる。中は入口からは想像出来ないほど広かった。壁面には絵や文字が刻み込まれており、遺跡と思われる。

おそらく、王家の先祖が造ったものじゃないかな? 後世に残したい何かがあったんだろう。

 

そして、その予想は当たったと言っていいだろう。

 

 

「よおォ……黒髪のねーちゃん。死にそーじゃねェか」

「……ああ……あなたね…………」

「おう、俺だ」

「…どうやって足を治したのか………知らないけど、ここまで来るなんてね……。バカじゃないの?」

「それはどうでもいいだろ、おっさんはどこだ?」

「……フフ…。いずれ死ぬわ………悪いことは言わない、早く帰りなさい」

「じゃ、いいよ! 言わねェなら、自分で探す……」

「ちょっと、聞いてるの!? ……あなた………死ぬわよ?」

「うるせェ!! 死なねェよ…」

「………………!!」

 

 

俺は黒髪を無視して、横を素通りした。そしてすぐにおっさんに出会った。おっさんにはオマケが付いていた。そいつは耳から耳へ横に縫い目があり、とても特徴的な顔だった。さらに特徴的なことに、左手が金のフックになっていた。

 

 

「おっさん……」

「……リクト君」

「助けにき、たっ……!!」

 

 

まだ喋ってる途中に、蹴り飛ばされた。俺は口から血を吐きだす。

 

 

「げほっ……」

「…誰だお前ェは」

「おいおい、いきなりとは穏やかじゃないな……」

「あと少しなんだ!! あと少しでこの国はおれの物になる!! 加えて、世界最高峰の軍事力。古代兵器"プルトン"が手に入る!! なのになんで、こんなにも邪魔が入る!!? 可笑しいじゃねェかっ!!」

 

 

世界最高峰の軍事力……?

古代兵器"プルトン"……?

 

素敵な響きだ。それがあれば……

 

 

【この世界を支配できる】

 

 

久しぶりだな、スルト。

 

 

【おう、久方ぶりだな】

 

 

やっぱ魅力的だよな。古代兵器。

 

 

【ああ、絶対手に入れるんだ】

 

 

お任せあれ。

 

 

「おい、あんた……!!」

「ああ? 何だ小僧」

「とりあえず、おっさんを返せよ」

 

 

まず、当初の目的を達成しないとな。

なので俺はおっさんの返却を求めた。

血だらけの危なそうな奴は、それを快く承認しれくれた。

 

 

「クハハハハ!! お前ェも"麦わら"と同じくクチかよ!! ………いいぜ。もはやコブラに用は無い」

「そうか、ありがとう」

 

 

俺はおっさんを背負い、黒髪のところへ連れて行く。黒髪の隣に座らせる。

 

 

「おっさん、聞きたいことがある。ビビは無事なのか?」

「ああ、さっき会ったときはまだ生きていたよ」

 

 

おっさんの答えは要領を得なかった。その答えを聞き、少し鼓動が早まる。

 

 

「なんだその答え……はっきり言えよ。意味分かんないから……!!」

「あやつ――クロコダイルが言っていた……先ほど、宮前広場に砲撃をしたと……」

 

 

は? 宮前広場? どこだ、そして、それが何だ?

 

 

「だがその砲撃は時間通りには起きなかった。おそらく、ビビが阻止したのだ」

 

 

フゥ……なんだよ、やるじゃねェかビビ。でも、そしたらそれが何だ?

 

 

「だがクロコダイルは姑息な奴でな、予めその事態が起こったときのため、砲弾を時限式にしたそうだ」

 

 

……!! 

そうか……『時限式』ね……

 

 

「そして、先ほど爆発した……ビビは巻き込まれたと、思われる」

 

 

コブラは俯きながら、そう言った。

 

ビビが……爆発に……!?

 

それを聞いた瞬間、俺の脳内に様々な最悪の展開が駆け巡る。

 

爆破の時近くにいて焼死。

爆破によって崩れた建物に潰され死亡。

爆風に飛ばされ頭をぶつけて死亡。

 

考えれば考えるほど嫌な予感しかしない。否定しても否定しても、心のどこかでもしかしたらと想像してしまう。

そんな自分が嫌になる。

今すぐここを出て、広場に向かい、ビビを探したい衝動に駆られる。気を抜くとすぐにでも体が動き出しそうだけど、俺はそれを必死に抑える。

そしておっさんに問う。

 

 

「この国を(おびや)かしているのは、アイツだろ?」

「……ああ、そうだが」

「なら、俺がこの国を救ってやるよ。ただし―――"プルトン"を寄こせ」

「…………正気かい? リクト君」

 

 

おっさんは俺の頭を疑ったようだが、あいにく平常運転だ。"神"になるためにも、古代兵器は絶対欲しい。

 

 

「あんなもの……人がどうこうしていい代物ではない……」

「ますます興味深ェよ。だが、その点は心配すんな。俺は"神"になるんだからな……」

「…………国を救ってくれるのか?」

「ああ。任せろ」

「……わかった。"プルトン"の場所は教えよう」

「ありがとな、おっさん。待ってろよ、すぐに終わらせてくる!!」

 

 

俺は斬魄刀を抜く。金属の擦れあう音を聞きながら、敵を見つめる。すると、奴は俺の視線に気づき、口を大きく開け、笑った。

 

 

「クハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…………。何だよその目はよォ!! おれは今、虫の居所が悪い。怪我したくねェなら、ここから消えろ……!!」

 

 

俺は何も言わず、俺の間合いを取る。そして斬魄刀を構えた。

 

 

「クハハハハハ……!! 粋がったところで、てめェはおれを殺せねェ……。かかってこいよ、小僧」

「噛み砕き、其の血肉としろ。"異竜(アロサウルス)"」

「その刀……何の能力だ……?」

「…さァな。食らってみれば、わかるんじゃねェかァアア!!?」

 

 

異竜を振り回し、動かないクロコダイルの腹を薙ぎはら………えず、その身体をすり抜けた。

 

 

「……は?」

「クハハハハハ、おれの能力(ちから)も知らずに挑むとはなっっ!!」

「がはっ………」

 

 

クロコダイルの裏拳を食らい、背中から倒れる。

すぐに立ち上がり、異竜を構えるが、対処法が分からない。てか、能力(ちから)って何よ……。

 

 

【ったく、しゃーねーなー】

 

 

「リクト君、水だっ!!」

「……!! ありがとよ、おっさん!!」

 

 

残念だったな、スルト。今回お前の出番は無しだ。

 

水、水、水……。アレだな……。

 

俺は異竜を持ち上げ、刃先を上に向け、胸の前で構える。

 

 

「水中より現れし伝説の刀よ……定めて天下の霊刀となるべし……!! "鵜丸(うのまる)"!!」

 

 

異竜はその形を変え、新たな斬魄刀が姿を現す。その姿は、様々な金銀に飾り付けられた1本の日本刀だった。

クロコダイルは眼を見開いて驚いている。

 

 

「また、変わった……」

「ぼさっとしてんじゃねェよ。クロコダイル!!」

「くっ…………」

 

 

俺は間合いを詰め、刀を振るう。その流れに沿って空間を水が支配する。刀を振り終えても、しばらくはその空間に水は留まる。やがて、数秒してから水が床に落ちた。クロコダイルは後ろに下がることによってそれを避けた。

 

 

「"砂嵐(サーブルス)"」

 

 

クロコダイルが掌から砂嵐を作り出す。俺は刀を横に一閃することで、それを霧散させた。

 

 

「んなっ………!!?」

「水刀流 "二怒斬(にどぎ)り"!!」

 

 

上から下に振り下ろした後、その跡を下から上へ振り上げる2連撃。

クロコダイルはもろに受け、身体を水で濡らしながら後ろに倒れる。 クロコダイルは笑っていた。

 

 

「クハハハハハハハハハハハハハ!! クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……!!!」

 

 

笑いながら立ち上がった。

 

 

「いいだろう…。お前を"敵"として認めよう。妙な奴が現れたと思っていたが、なかなかの使い手らしいな……名を名乗れ、小僧」

「……ヤマダ・リクト」

「聞かねェ名だ……海賊か?」

 

 

俺は頭を横に振る。

 

 

「………"神"になる者だ」

「クッ……ハハハハハハハハハハハハ!! クハハハハハハハハ……!!! まさかそんな答えが出るとはな……!! 面白れェ、けど腹が立つ……!!」

 

 

クロコダイルは左手のフックの部分をとった。

 

 

「……なんだ?」

「"毒針"さ」

 

 

毒針……まずいな、どれだけの威力があるかは知らねェが、触れればおしまいだ。卑怯だな。

 

 

「ここで邪魔されるわけにはいかねェんだよ。決着(ケリ)つけようじゃねェか!!」

 

 

地面を力任せに蹴り飛ばし、クロコダイルのところまで飛ぶ。身体を回転させ、回し斬り。刀の刃は当たらなかったが、発生する水を鋭くさせ切断性を持たせたため、クロコダイルの腹が斬れ、血が噴き出た。

それを気にした風を見せず、毒針を突き出してくる。俺は横の壁を蹴り、避難。

 

俺は再度地面を蹴り、間合いを消す。クロコダイルは俺に向けて、右手を差し出す。俺はぎりぎりで反応し、前転、踵落としでその手をどかす。今度は顔を狙い斬る。クロコダイルは顔を反らすが、水の剣の間合いをまだ把握できておらず、眼の上を斬った。頬を伝い、血が流れる。

俺が地面に足をつけた瞬間、クロコダイルは毒針を横に振るった。俺は身体を後ろに反らし、バク転で回避。

 

 

「ハァ……ハァ…」

「…ハァ……ハァ…」

 

 

再度地面を蹴ると、クロコダイルも同様に地面を蹴り、突撃してきた。回避行動を取ろうとしたが、間に合わない。

相打ち覚悟で、刀を下から振るった。クロコダイルも下から毒針を振った。

 

俺の攻撃で、クロコダイルにはわき腹から胸にかけての刀傷がつく。けど、かわりに俺にも首に毒針の傷ができた。

 

 

「クハハハハ、勝負ありだなヤマダ・リクト……。直、毒が身体をめぐる」

 

 

クッソ……。まずい、まずい。やばい、やばい。

毒なんかに耐えられるわけがない。どうする? 今はまだ毒が回り切ってない。動ける! なら、今()るしかねェ!!

 

あれを使う!!

 

 

「はっ……!! 舐めんじゃねェよ、クソ(,,)コダイル!! 俺はまだ死んじゃいねェ!! まだ倒れちゃいねェ!! 俺はまだ、戦えんだよ!! "(ばん)"…"(かい)"!!!」

 

 

前に突き出した刀が、より強い武器へと形を変える。

 

 

「"人間(にんげん)無骨(むこつ)"………これでお前をぶち殺してやる……!!」

 

 

俺の身の丈を超す十文字槍となった斬魄刀を構え、クロコダイルに向かって走り出す。槍の表には人間、裏には無骨と刻み込まれている。

突き出した槍の周りに水が纏い、巨大な水の槍と化す。

 

だが、その水は全て、クロコダイルの右手に吸い込まれた。

 

 

「クハハハハ……!! 頭が回らねェクズがっ!! "砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)"」

 

 

俺の槍は勢いを失い、クロコダイルの右手に止められた。唖然とする俺に、クロコダイルは腕を砂の刃に変え、巨大化して放ってきた。

 

横っ飛びで砂の刃から逃れたのだが、俺の身体は限界だった。

 

 

「クハハハハハハハハハ………!! 口では偉そうなことを吠えるも、結局身体は言う事聞かねェか!? クハハハハハハハ!! クハハハハハハハハハ!!」

 

 

俺の身体は仰向けに倒れたまま、動かない。

 

クソ……!! 動けよ俺の身体っ!! こんなにもムカついてんじゃねェか!! こんなにも、腹が立ってんじゃねェか!! こんなにも……あいつをぶち殺してェと感じてんじゃねェか!!

おっさんの話を聞いてからっっ!!

 

立て、立てよ俺! 立ち上がってあのクソコダイルを、ぶった斬れよ!

 

 

「お前じゃおれに勝てねェってことだ! ………………どうしようもねェ事なんざ世の中には腐る程ある………!!」

「ふざ……けん、じゃ…ねェ、よ………!!」

 

 

俺は歯を食いしばって立ち上がろうとするが、足に力が入らず前に倒れる。

 

くっそ……毒、強すぎない…………?

足がプルプルしてる。何の毒だこれ…? 身体のどこにも力が入らない。

 

 

【何やってんだよ、リクト……!】

 

 

スルトか…。そうは言うけどよ、力入んないんだもん。

 

 

【入んないんだもん…、じゃないよ……。しゃーねーなァ! 俺が力を貸してやる。残った神力(しんりょく)が少ねェから、たいしたことはできないけどね】

 

 

マジか……具体的には何を?

 

 

【20分。この間だけ、毒による身体への弊害を感じなくしてやる。まァ、20分後にはその間の痛みが一気にクルんだけど。別にいいでしょ?】

 

 

う……、いいぜ! やってくれ。後のことは気にしない、今アイツを殺せればそれだけでいい。

 

 

【オーケー。行くぞ!】

 

 

ホントに、痛みが無くなり、力を入れられるようになった。

 

俺は近くにある斬魄刀を掴み、立ち上がる。

 

 

「……テメェ………」

「ハッハッハァ! 俺はお前をぶち殺す!!」

 

 

"人間無骨"を片手で持ち、矛先をクロコダイルに向ける。人間無骨を振りかぶり、投げ飛ばした。

 

 

「"無骨(むこつ)大砲(たいほう)"!!」

 

 

人間無骨は水を纏い始める、と同時に俺は走り出した。

 

 

「クハハハハハハ!! お前ェは学習能力がねェのかよ!!」

 

 

言うが早いかクロコダイルは右手をだし、水を吸収し始める。それを見て俺は、人間無骨に追いつきそれを蹴る。

人間無骨はその力に逆らわず、前に出る。結果、クロコダイルの右手を貫く形となった。

 

 

「ぐ、ぉおおお……」

「言っただろ? 舐めんじゃねェって」

「……どこの馬の骨とも知れねェ小僧が、図に乗るんじゃねェよ!! この海は、甘くねェ……!!」

 

 

クロコダイルは血を垂れ流す右手で砂嵐をつくりだし、俺と人間無骨を吹き飛ばした。

俺は空中で手を伸ばし、クルクルと回転している人間無骨を掴みとる。それを地面に突き刺し、砂嵐を耐える。

クロコダイルは憎悪のこもった目で、俺を睨み付けている。

 

 

「テメェみたいなチャランポランが、生きていけるような場所じゃねェ!」

「……だからなんだよ。そんなの今は関係ねェだろ…。お前は傷つけてはいけない娘を傷つけた……。その代償を払ってもらうだけだ……」

「傷つけてはいけない娘だァ……?」

「……ビビだ…………」

「……クハハハハハハ! 何だよテメェ、あの王女に惚れてんのか……!! ……なら、その王女とともに、あの世に行けばいい!! "砂嵐(サーブルス) (ペサード)"」

 

 

先ほどよりも数倍でかく勢いのある砂嵐が、あたりを崩壊に招く。遺跡もガリガリと削られ、後ろのおっさん達は飛ばされないように必死だ。俺も人間無骨に掴まることで、何とか保っている。

 

心の中で舌打ちをする。

このままじゃまずい。あの野郎をここで仕留めねェと、どこかに逃げられたら追いかけられねェ。

なにより、この憤りが収まらねェ。

胸の内から熱いものが流れ出る。マグマのように沸騰し尽しているものが。怒りが。

 

まだまだ足りねェ。もっとだ、もっとぶつけねェと。

 

 

「冷やせ…冷やせ…冷やせ冷やせ冷やせ!! "超過冷却"!!」

 

 

砂嵐はおさまり、一気に静けさが押し寄せてくる。

俺は人間無骨を地面から引き抜く。

腰を落とし、片手で人間無骨を支え、肩より上に担ぎ、引き絞る。

俺が何かをしようと気づいたクロコダイルが、砂の剣を4本放ってくる。

 

 

「"砂漠の金剛宝刀(デザート・ラ・スパーダ)"ァ!!」

 

 

迫ってくる砂の剣を認識はするが、気にもならなかった。今頭の中にあるのは、人間無骨を飛ばしクロコダイルを殺すことだけ。

 

俺の腕は綺麗な曲線を描き、手元から人間無骨が離れて行った。

 

 

「………"無骨大砲"!!」

 

 

人間無骨の通る空間が凍り付いていき、クロコダイルの身体を貫通し、凍らせたところで人間無骨はその動きを止めた。

 

 

「俺のっ………勝、ち……だなっ!」

 

 

俺はそれを見届けると、身体が突然痺れた。

おそらく、20分の痛みが一気に来たのであろう。痛みが強大過ぎて、逆に何も感じない。なのに、身体は痺れたままである。それが、とても奇妙に感じる。

口からは体中全体のが流れているのではないか? と、いう程の血が流れている。

 

 

「う……うう、をぉぉ…………」

 

 

俺はその後、意識を手放した。




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