BURN   作:はち8

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007.戦艦

「あの…クロコダイルを、討ち破った……だと?」

「まさか本当に倒すとはね……ウフフ、将来大物になりそうね………」

 

 

コブラ、ロビン、ともに驚きを隠せない表情をしている。

何せ"七武界"であるサー・クロコダイルを、単身で倒したのだ。……元々、血だらけで傷ついていたというのもあるが、ほぼ単身だ。

 

胸元から血を流すニコ・ロビンは、懐からビンを取り出し、コブラに渡す。

 

 

「……早くこれを飲ませて…」

「何だこれは?」

「…解毒薬よ。フフっホントよ…何なら私が先に飲みましょうか………?」

「いや、いい。今更君が、私達を殺そうとする事は無いだろう……」

 

 

コブラは解毒薬を受け取り、リクトに近づき、薬を飲ませていった。

その様子を見ていたロビンは、上を仰ぎ見て、呟いた。

 

 

「アハハっ…、私の居場所、無くなっちゃったなァ……」

 

 

 

―――――――

 

 

 

俺は目を開ける。

すると声を掛けられた。

 

 

「リクト君。礼を言う」

 

 

おっさんの声だった。そうか、俺はやったんだな…。

軋む身体を持ち上げて、おっさんに返事を返した。

 

 

「ははっ、別に良いよ。交換条件だろ?」

「はっはっは! そうだったな、よし、"プルトン"の場所を教えよう。ニコ・ロビンを連れてきてくれ」

 

 

俺は言われた通りに、壁に背を預けているニコ・ロビンと呼ばれた、黒長髪の腕を首の後ろに回しその身体を支えた。

黒長髪は俺に話しかけていた。

 

 

「凄いわね、あなた……。できれば名前を教えてくれないかしら」

「ヤマダ・リクトだ」

「……ヤマダ・リクト、私と組まない?」

「あ……?」

「私と組んで、この世界の最果てまで行きましょう」

 

 

最果てねェ……。

悪戯っぽく言い放ったニコ・ロビン。その仕草が妙に様になっていて、瞼にこびりついた。

少し迷ったが、答えは決まっていた。

 

 

「断るよ……」

「あら、なんで?」

「興味が湧かない」

「そう? 楽しいわよ、きっと……」

「だから、興味が無いんだよ。そういうのに」

 

 

しつこく誘ってくるニコ・ロビンに、俺が若干キレ気味に答えると、急にしおらしくなった。

 

 

「そう……じゃ、いいわ………」

 

 

俺はニコ・ロビンの方へ目を向けないように注意しながら、おっさんのもとへ急ぐ。

このままだと、この魔性の女に負ける!

そこまで女に弱い男だと思っていなかったが、この女……レベルが違う! きっと、あの手この手で男を手玉に取ってきたのだろう。ちょっとした仕草が錬成されている…………! この女、恐い!!

 

 

「さァ、ニコ・ロビン。この"歴史の本文(ポーネグリフ)"に書かれた"プルトン"の事を教えてくれ……」

 

 

おっさんの目線の先にあったのは、とても大きく迫力のある石版だった。名は"歴史の本文"。

 

 

「フフフッ。王様でも知らないのね……」

「なんだよ、これに書かれてんのか?」

「私が先王から聞いたのは、"歴史の本文"に"プルトン"の事が書かれていることと、この場所だけだ」

「そう、なら聞かせてあげるわ…リクト、放して……」

 

 

ビクンっ!

く、くそ……色っぽい声を耳元で囁くなっ!!

条件反射で腕を放した。

ニコ・ロビンは薄く笑ってから、"歴史の本文"に寄り添った。

 

 

「『…古代兵器"プルトン"またの名を……"ハーデース"。50の巨大戦艦をまとめて、"プルトン"と呼ぶ。一昔前、世界を巻き込む大きな戦争が起きた。世界を変えようとした一つの国と、それを止めようとした世界。その際、作られたのが"ハーデース"だ。その威力は国を消す。そのことから、戦争が終わりを告げると、すぐさま地下深く"ゲヘナ"へ封印された。地下深くに"ハーデース"が存在するため、その土地は草木が育たず砂漠となった。

 ……時が来て、再び地上へ姿をあらわすことになれば、世界は火の海と化すだろう』…と、書いてあるわ」

 

 

ロビンはこちらに視線をくれ、口を閉じた。

俺は先ほどから、胸の高まりが止まらない。これ以上ない、というぐらい興奮している。

世界を、火の海に……。

 

スルト…!

 

 

【何?】

 

 

何じゃねェよ。聞いてただろ?

 

 

【まあね。俺も気に入った、"ハーデース"。聞いたこと無い名だが、面白れェ…】

 

 

俺も気に入ったぜ。よーし、早速とりにいこう!

 

 

「ロビン、そんで場所はどこ?」

「言ったでしょ、この下」

 

 

ロビンは床を指差す。

 

まさか……

 

 

「だから、この下地下深くよ…」

「マジかよ…!」

 

 

 

―――――――

 

 

 

「なんでおれを叩き起こさなかった!!?」

 

 

ルフィがナオヤに掴み掛かる。

場所は崩れた宮殿の下。下というのも可笑しな表現だが……。

ナオヤは顔を悲しそうに歪めて、答える。

 

 

「僕は……ルフィさんの事だけを考えて、行動しました……」

「それが余計だって言ってんだよォ!! ……チョッパーは死んだ、他のみんなも怪我してる」

 

 

俯き、声が震えてきたルフィに対しても、ナオヤは言うべきことなので言った。

 

 

「ルフィさんがいても、結果は変わりません」

「…!! わかんねェだろ!」

「いえ、分かります」

 

 

くそっ! という言葉を残し、ルフィはただの肉片となったチョッパーに向き直った。そして、涙と鼻水を垂れ流す。

 

それを見て、ナオヤは思考を始める。

 

 

(しくじった…。こんな事になるとは、思いもよらなかった…。何が起こっている、この国で何が起こっている……?)

 

 

その時、後ろから近づいてくる足音がした。

近づいてきたのは、海軍本部大佐"白猟(はくりょう)のスモーカー"。

 

 

「良い様だな、"麦わらのルフィ"」

「ケムリン……!」

 

 

ルフィは立ち上がり、動けない仲間を守る様にスモーカーに立ち向かう。

 

 

「落ち着けよ。おれは別に危害を加えるつもりはない」

「…フゥ……フゥ……」

 

 

ルフィはスモーカーの話を聞かず、荒い息を吐きながら鋭い視線をスモーカーに向け続けている。

 

 

「……おれの部下も殺された…。舐めてた訳じゃねェんだが、これが……"偉大なる航路(グランドライン)"か…………」

 

 

スモーカーは空を仰ぎ見て、悲しそうな声でそう呟いた。

ナオヤは胡散臭そうな顔でスモーカーを見て、一つ問いかけた。

 

 

「それで、スモーカー大佐。あなたは何の用でいらしたのでしょうか?」

「ああ…、それなんだがな。先ほど本部から通信が入ってな…。何でもここ、"アラバスタ王国"から強大な生体反応を感知したとかなんとかでな……」

「それが僕らに何か関係がありますか?」

 

 

ナオヤがそう尋ねると、スモーカーは眼を泳がせながら言いにくそうに、

 

 

「あー、何つーか……お前らも気をつけろってこった……!」

 

 

と、言った。

ナオヤはその事に、感じたことのない驚愕を感じる。

 

 

(嘘だ嘘だ嘘だ……。スモーカーはこんな奴じゃない…!! まさか、性格までも改変するのか…? それほどまでに、転生者の影響は強いのか……!? なんてこった、それなら今まで以上に慎重に動かざるを得ない……)

 

 

さらにナオヤは考える。

 

 

(待てよ…? こいつ、このスモーカーはこのまま野ばらしにしていいのか? いや、ダメだろ……。性格の変わったスモーカーは、どんな行動に出るのかわからない……。ルフィさん達にどんな影響が出るのかわからない……。なら、ここで殺しておくべきか…? たとえその結果、ルフィさんに嫌われようと……、いや、ダメだ。ルフィさんに嫌われるなんて、考えられない。生きていられない。じゃぁ、どうする!?)

 

 

考えに考えた末、ナオヤは右手を地面に平行になるまで上げ、スモーカーに向ける。

 

 

「…あ?」

「すまない、スモーカー………」

 

 

死んでくれ。

 

と、続けようとしたその時、地面が揺れた。

 

縦に。

横に。

斜めに。

 

地面に立つ事が難しくなり、倒れこむようにしゃがむナオヤ達。

揺れは治まる事無く、酷くなっていく。

 

 

「なんですか、コレは!!」

 

 

スモーカに向かって怒鳴り散らすナオヤ。

理不尽に怒鳴られ、スモーカーも怒りを表す。

 

 

「おれだって知らねェよ!!」

 

 

場を一瞬の静けさが支配した。

その静寂を打ち破ったのは、新たな変化だった。揺れが治まったのだ。

 

困惑するナオヤ達。

 

だが、それだけでは終わらなかった。再度強烈な地震が、"アラバスタ王国"を襲う。

同時にヒトの笑い声が響き渡る。

 

 

「ハハハハハハハハハ!! ハァ~ッハッハッハッハッハッハッハ!! アハハハハハハハハハハハハハハ!! アハハハハ………」

 

 

止むことのない揺れと笑い声。

さらに、段々と地面が膨れ上がってきた。

恐怖を感じずにはいられず、たまりかねたナオヤは叫びだす。

 

 

「なんでだよ!! なんでこんなにも訳わかんねェ事ばっか起こるんだよ!! ふざけんなァアア!!」

 

 

地面を何度もその拳で殴るナオヤの目には、涙が溢れていた。

そのナオヤの背にかかる黒い影。

 

顔を上げナオヤが目にしたのは、

 

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

顕現せ示し、世界の恐怖。

 

 

 

―――――――

 

 

 

場所は地下の遺跡。"歴史の本文(ポーネグリフ)"前。

 

 

「いいの? Mr.コブラ……」

「……何がだい?」

 

 

ロビンはコブラの様子を窺う様に聞く。

少し笑って、

 

 

「ウフフ……"あの子"の事よ」

 

 

と、言った。

 

 

「ああ…リクト君か」

「"あの子"、放って置いたらビビ王女連れ去って、どこかに行っちゃうわよ?」

「ハハ、君は疑ってないのか? リクト君が死ぬ可能性を」

「……!?」

「記されてない筈がない。だが、今はよそう」

「……そうね」

 

 

少し声色を変えて、コブラは会話を戻す。

 

 

「……ビビの事だが、正直言うと心配だ。そもそも生きているか分からないからな」

 

 

天井を見上げ、涙をこらえるようにコブラは続ける。

 

 

「生きていたとしても、リクト君が連れて行くだろう。あの狂気性だ。何が何でもだろうな……」

 

 

コブラの頬を一筋の涙が流れる。

 

 

「願わくば、リクト君の向ける刃先の前にビビがいるなどという、最悪の展開だけは避けてほしいところだ」

「ええ。そうね…」

「ビビも……母親と同じ最期は嫌だろう………」

 

 

最期のほうはかすれた声だったので、ロビンにも聞こえなかった。

 

 

 

―――――――

 

 

 

俺が掘って掘って掘りまくってやっと見つけたこの場所。

"ゲヘナ"か……。

真っ暗で何も見えん。

 

取りあえず、足の踏み場はある。踏みしめた感触は石だと思う。左右に腕を伸ばすと、壁がある。これも石みたいな感触。

横幅は俺の伸ばした腕いっぱい。天井は暗くて見えないが、広い空間がありそう。

 

手で壁を触りながら進んでみるか…。

 

鼻を突くカビの匂い。その中に少しだけ混じった深い潮の香り。

その香りを頼りにまっすぐ突き進む。

 

やがて、開けた場所に出た。手で触れていた壁が無くなり、言い知れぬ圧迫感を前方から感じる。

 

こ、これは……想像以上だな………。殺されそう……。

 

 

【相当だね…。俺も緊張してるよ……】

 

 

うっはー。マジですか、神であるスルトをもこうまで言わせる兵器とは……一体………。

思わず変な口調になってしまうぐらい、俺も緊張している。

 

覚悟を決めて先へ進む。

 

そして、ついに見つけた。

 

並び立つ巨大戦艦達。その堂々とした出で立ちに、思わず息をのむ。闇に慣れた目で見つめていると、一番前の戦艦が突然光りだした。

 

 

【汝が、王か?】

 

 

は?

え?

スルト?

 

 

【俺じゃねェよ……!!?】

【我等だ】

 

 

聞こえてくる言葉とともに、目の前の戦艦がピカピカと点滅する。

鼓動が早まるのを感じながら、尋ねる。

 

 

「まさか……」

 

 

【いかにも、我等"プルトン"の声だ】

 

 

「しゃ、喋れるのか……?」

 

 

【否、全艦が喋れるわけではない。会話を為せるのは我のみ。だが、人の言葉ならば、全艦理解できる】

 

 

「す、すげェ……」

 

 

【それで、北欧の巨人よ……。我等に何用だ?】

 

 

「は? え? それ俺の事?」

 

 

【汝以外に誰が居る】

【俺がいる】

 

 

突然、スルトが話に入ってきた。

通じんのかな、と俺が不安に思っていたがどうやら通じるようだ。

さっきから戦艦の点滅がすごい速さで行われてる。ビックリしたんと思う。

 

 

【これはこれは……驚いた。まさか、目の前の青年はヒトか?】

【ああ。俺は今、その中にいる……】

【おお~。そんな事が可能な、醜く生にしがみつくヒトがまだいたのか】

【それは良いんだ。話があんたに――西洋の冥府の神さんにあるんだよ】

【ほう。それは何だ? 申してみよ】

【俺らの下につけ】

 

 

大胆に偉そうに、この50の巨大戦艦に向かって、スルトはそう言い放った。

プルトンは笑った。点滅している光の量も定まってない。

 

 

【フハハッハハハハハアハハハ!! 一介の巨人如きが、神ですらない貴様が我等"冥府の神"に下につけと!! フハハハハ、面白い冗談だ】

 

 

可笑しそうに、思ってもみなかった冗談を聞いて、腹を抱えて転げまわるように面白可笑しく笑っていた。

けど、スルトは……

 

 

【冗談じゃねェよ……!!】

【身の程を弁えろ!! それ以上言うつもりなら、容赦はできないぞ?】

 

 

空気が震えた。

先ほどから足ががくがくしてる。身体の震えが止まらねェ。

恐怖。そうだ、俺は恐れている。目の前の神に。

 

 

【落ち着きなよ、リクト。深呼吸するんだ】

 

 

俺は言われた通り、深呼吸する。上手くできなかったけど、何とか落ち着いた。

 

 

【俺らが"神"になるためには、"プルトン"は必要不可欠だ】

 

 

ああ。それはわかる。これほど恐ろしい船が手に入れば、そうそう相手になる敵はいないだろう。

 

 

【けど、奴は拒むようだ。そこで、お前が奴を屈服させろ】

 

 

は? え? 無理でしょ……。

 

 

【俺が今まで抑えてた、(ホロウ)の力も解放するから。"プルトン"に負けんな。虚にも負けんな】

 

 

身体の中で、自分とは別の何かが暴れだす。途端に苦しくなり、身体を折り曲げる。

 

 

【ヒャッハー!! 解放されたぜ。ふざけんなよあの野郎!! 今までオレを縛り付けてたこの苦しみを、今日ここで!! 発散させてもらうぜェエエ!!】

 

 

スルトとは違う、何者かの声が聞こえた。コイツが、虚。頭の悪そうなやつだな。

 

 

「ぐっ……!!」

 

 

顔に、仮面の様な物が張り付いてくる。次第に、身体の制御も奪われていく。

 

 

「くっそォ……何しやがる………!!」

「何だよ何だよォ! まだ抵抗しやがるか……ハハハ!! いいねェ、イイネェ!! ヒャハハハ!!」

 

 

【汝は何者だ!? なぜそこまで強大な力を2つも持ち合わせていられる!! どこまで強大な精神を、身体を持っているのだ!!?】

 

 

"プルトン"が何か言ってやがるが、聞こえねェ。

 

 

「もういいよ、俺!! あの船ぶっ壊せばいいんだろ? 後はオレが殺る!!」

「ふざけんじゃねェよ、オレ!! 壊しちゃダメだ、屈服させるんだよ。俺がやる!!」

 

 

右手は仮面を押さえて、左手は斬魄刀を抜いている。

 

 

「解放しろ、オレの"斬月"!!」

 

 

俺の意識が、消えた。

 

 

「ヒャハハハハハ!! ここからは、オレのターンだ!!」

 

 

オレの顔面には心地よい仮面が張り付いている。気分がいい。身体が震えている。早く殺れと、オレを叱咤してくる。

さァ、敵は前方。数は50。その姿は、巨大戦艦。

 

始めようか

 

 

「ぅぅぅうううううううううらぁっ!!」

 

 

白い斬月を振り回し、月牙天衝を放つ。

 

 

【フハハハハハハ!! 本当に向かってきおったわ。その意気や良し! だが、そう簡単にはやられんわ!!】

 

 

オレの月牙天衝をものともせず、戦艦どもは、その姿を変えていった。

それはこの世の恐怖を具現化させたような、さすがのオレでも、恐怖せざるを得ないような姿だった。

 

 

【フハハハ!! これが我等の戦闘モードだ】

 

 

巨人だった。

目の前にはいくつもの壁がそびえたつように、巨人がいた。

 

 

「ハァー……ハァー………」

 

 

息を整える。さすがに、無理じゃないか。そんな考えを払拭する様に。

斬月を構え、目を向ける。

そのドデカい拳を振り下ろしていた。

 

 

「うおっっとォォ!!」

 

 

間一髪でそれを避ける。

だが、それで終わりじゃない。

敵は50だ。それほどの数の巨人がいても、広々としている空間がここにある。

奴らはオレを殺そうと、腕を振り回して向かってくる。

 

小さな体を駆使しながら、なんとか避け続ける。けれど、勝利の女神はそうそう、振り向いてはくれない。

 

避けそこなった拳が、オレの身体にぶつかった。

 

 

「ぐおォっ!!!」

 

 

オレの身体は一度も地につかず、壁に減り込んだ。

 

ああ……。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!」

 

 

やられっぱなしは、性に合わねェんだよ!!!

 

 

「来いよデカ物。斬殺してやる。"卍解"!!」

 

 

白い日本刀を振り回すし、白い月牙天衝を敵のデカい図体にぶつけまくる。

切り口が浅かろうと関係ねェ。ただ…斬りまくるだけだ。

 

 

【小賢しいわァ!!】

 

 

「うるっせェェ!!」

 

 

殺し合いは数時間に及んだ。

 

 

 

―――――――

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

気がついたら、なぜか息が荒かった。

俺を囲むように膝付いている、巨人達。

 

現状を把握し損ねそうだ。

 

 

【気が付かれましたか、リクト様】

 

 

「ストップ。はいストップ。どういう状況?」

 

 

【ああ。そうでしたね、わかりました説明致しましょう】

 

 

説明を聞いた結果。どうやら、虚がやってくれたようだ。

何やら釈然としない事もないが、何はともあれ"プルトン"を配下につけた。これは大きな成果だろう。

それに、先ほどから笑いが止まらない。

 

 

「アハハハハハハ。良しお前ェらァ!! 地上に出るぞ!!」

 

 

天井を崩し、穴をあける。遺跡が崩れてくるが、巨人達が俺を守ってくれる。

会話ができる巨人の肩に乗り、俺はずっと笑っていた。

 

 

「ハハハハハハハハハ!! ハァ~ッハッハッハッハッハッハッハ!! アハハハハハハハハハハハハハハ!! アハハハハ………」

 

 

地上に出ると、周りは瓦礫だらけだった。

人間がとても小さく見える。いい気分だ。風が心地よい。

 

あまりに気持ち良くて、もう少しで眠りそう……。という時に、スルトが話しかけてきた。

 

 

【ご苦労だったな、リクト】

 

 

おう。けど、俺じゃないぞ正確には。

 

 

【細かい事は気にするなよ。それで、ビビだっけ? は、いいの?】

 

 

おっと、そうだった。

ビビ………だったな。

俺の大切な女の子。もし、死んでしまってたら、俺自身どうなってしまうか分からない。

 

その時は多分、この国めちゃくちゃにしてしまうかもな………。

 

 

「"プルトン"……瓦礫をどかしてくれ」

 

 

【御意に】

 

 

俺を乗っけている巨人以外が一斉に動きだし、瓦礫の撤去を始めた。

1人の巨人が、撤去の途中にこちらへ来た。

 

 

【リクト様、確か青い髪の少女を探しておられると……】

 

 

「そうだ」

 

 

【その少女を見つけたと申しています】

 

 

「何!?」

 

 

目の前の巨人が手を開いた。そこに倒れているのは、まぎれもなくビビだった。

俺は巨人の肩を蹴り、ビビのそばへ着地する。

そして、血にまみれたビビの身体を抱き寄せた。

 

 

「ビビぃ……ビビぃ………!!」

 

 

意識はなかった。けれど、息はしていた。それだけで、良かった。

生きていることが嬉しかった。

俺が命を懸けて助けた女の子は、まだ、この世界で生きている。十分だ。

 

目に溜まった涙を拭きとり、ビビを抱き上げた。

 

そして、巨人達に海へ向かうことを伝える。

巨人達が移動を始めた。

 

 

「ま、待て!!」

 

 

俺らを引き留める声が聞こえた。

巨人達は先に進ませ、俺と俺を乗っけている巨人はその場に残る。

 

 

「何だ?」

 

 

高いところから見た限り、俺を引き留めたのは麦わら帽子の男みたいだ。それを認めた途端、鋭い頭痛が俺を襲う。

 

なるべくそれを表に出さないよう、麦わらの男の話を聞いた。

 

 

「お前ェら、何もんだ? ビビを返せよ!!」

「お前から名乗れよ」

「………モンキー・D・ルフィだ」

 

 

頭痛が酷くなって、額からは脂汗が出る。務めて平常心の顔で、名を名乗る。

 

 

「ヤマダ・リクトだ。ビビは俺の女だ。俺がどうしようが、関係ねェだろ」

「……!!? ビビからお前の名前は聞いたことがねェ……!!」

「黙れよ」

 

 

強く突き放す。

これ以上会話を続けたくない。頭が突き破れそうだ。

 

 

「おい、返せよ!! おい!!」

 

 

無視して、巨人を海へ向かわせる。ここからでも手が震えているのが見えた。

どうせ、向かってなど来れないだろう。そう、高を括っていた。

 

 

「ゴムゴムのォ……"銃弾(ブレット)"!!」

 

 

だが、そいつは無謀にも殴りかかってきた。

 

 

【どう致しましょう……リクト様】

 

 

「放っておけ」

 

 

俺はそれだけ言って、もう奴には目もくれなかった。ムカついていたのかもしれない。身体中を震わせ、虚がいなければ立ち向かえなかったかもしれない俺とは違い、麦わらの男は一人で立ち向かってきたから。

 

海に着くまで、麦わらの男は巨人の足に向かって、攻撃をし続けていた。

 

けれど、巨人達が戦艦へと変形し、海に入ってからは追ってこなかった。

 

 

「そのまま進むぞ……」

 

 

島を離れ、短い指示をだした俺の耳には

 

 

「くそォ!! 返せよォォ!!」

 

 

悲痛な男の叫びがこだましていた。

 




これで、一章は完結です。読んで下さった方、ありがとうございます。
二章は今書いている途中なので、しばらく間を空けようと思っています。ご了承ください。

批評受け付けております。よろしくお願いします。
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