「愛子様、万歳!」
ハジメが、最後の締めに先生を讃える言葉を張り上げた。すると、次の瞬間……
「「「「「「愛子様、万歳! 愛子様、万歳! 愛子様、万歳! 愛子様、万歳!」」」」」」
「「「「「「女神様、万歳! 女神様、万歳! 女神様、万歳! 女神様、万歳!」」」」」」
とウルの町に、今までの様な二つ名としてではない、本当の女神が誕生した。どうやら、不安や恐怖も吹き飛んだようで、町の人々は皆一様に、希望に目を輝かせ先生を女神として讃える雄叫びを上げた。遠くで、愛子が顔を真っ赤にしてぷるぷると震えている。その瞳は真っ直ぐにハジメに向けられており、小さな口が「ど・う・い・う・こ・と・で・す・か!」と動いている。
「……おぉ。うまくやったなぁ。」
俺がニヤニヤ笑いながら上に上がる
「精霊を演出に使うとかお前もやるな。」
あえて俺の魔力で全員に精霊を見えるように先生の周りに回らせ幻想的な風景を演出していたのだった
「まぁ、これが一番手取り早かったからな、それに愛子先生はここの町では影響力は教会よりこれによって上になった。のも俺にとって都合がいい。好きで教会と争いたいわけじゃないしな。」
「だろうな。」
元々争うのは嫌いだからな
すると魔物が目で見えるくらいにまで近づいてくる
「さぁやるか。」
「あぁ。」
俺は魔力を込めると
「〝凍雨〟」
鋭い針のような氷の雨が降り注ぐ。
氷魔法は俺が使うことが多く、迷宮攻略の時にも重宝した魔法の一つだ
今では一番戦闘で使う魔法だろう
「紅蓮の炎よ全てのものを焼き尽くせ。煉獄。」
俺は威力を高めるため詠唱を行い火の精霊魔法を放つ
魔力がある限り燃え続ける炎は一体また一体の勢力を広げつつある
しばらく魔法を撃ち続けるけど全く減る様子はない
「あ〜もう数が多すぎるだろ。めんどくさいったらありゃしない。」
「仕方ないですよ。てか余裕ですね。」
「俺の目の前は炎か氷漬けで基本全滅だしな。基本精霊術使っているから。てかハジメ。これ裏に魔人族やっぱりいるっぽい、山脈に生息していない魔物が1万くらいいるわ。」
俺の言葉にハジメが反応する
「何?」
「狙いはやっぱ多分先生だ。〝国家としての体力〟の問題だな。戦争は、あらゆる面で国力を食い潰す大食らいの怪物のようなものだ。なのに、食糧という面では敵の継戦能力が全く衰えないなど敵からしたら悪夢だろ?」
「……なるほどな。」
「……悪いけどあいつの処遇は俺に決めさせてくれないか?多分どっちにしろ殺される運命は変わらないだろうし先生に自分のせいで殺されたなんて思わせないようにしたいから。」
実際俺も覚悟を決めないといけない。
やがて、魔物の数が目に見えて減り、密集した大群のせいで隠れていた北の地平が見え始めた頃、遂にティオが倒れた。渡された魔晶石の魔力も使い切り、魔力枯渇で動けなくなったのだ。
「むぅ、妾はここまでのようじゃ……もう、火球一つ出せん……すまぬ」
うつ伏せに倒れながら、顔だけをハジメの方に向けて申し訳なさそうに謝罪するティオの顔色は、青を通り越して白くなっていた。文字通り、死力を尽くす意気込みで魔力を消費したのだろう。
「……十分だ。変態にしてはやるじゃねぇの。後は、任せてそのまま寝てろ」
「……ご主人様が優しい……罵ってくれるかと思ったのじゃが……いや、でもアメの後にはムチが……期待しても?」
「そのまま死ね」
変態のいうことはおいといて
「……ハジメ。俺とユエがここを保つお前は主犯を連れてこい、それで侵攻は完全に止まるはずだ。お前も気付いただろ?敵の魔物の法則性。」
「あぁ。ユエ魔力残量は?」
「……ん、残り魔晶石二個分くらい……重力魔法の消費が予想以上。要練習。ケンは?」
「俺は残りユエ一人分かな。結構使った割に。あんまり殺せなかったなぁ。」
「いやいや、2人で4万以上殺っただろ? 十分だ。残りはピンポイントで殺る。援護を頼む」
「んっ」
「了解。」
俺はそういうと弾幕を広げ集団放火する
これはユエの魔法の時間を稼ぐために唱えた魔法だ。
「後何分ユエはいける。」
「5分。いやケンの助けがあれば10分くらいなら。」
「いや。5分で使いきってくれ。ハジメなら5分でなんとかするだろうし。どうせあいつユエ基準だろ?5分間で全力をかける。もし長引くようなら俺が精霊術でなんとかする。」
「ん。」
そしてお互いに切り札のカードを切って行く
「絶対零度。」
「雷竜」
全ての魔物を氷漬けにして、寒さに強い魔物は即座に立ち込めた天の暗雲から激しくスパークする雷の龍が落雷の咆哮を上げながら出現し、前線を右から左へと蹂躙する。
そしてハジメとシアが突撃してから丁度5分後
全ての侵攻が終了した