「失礼します。」
「あっ。渋谷くん。」
俺は戦争を参加することが決定した夜に先生の部屋に訪れていた。
「うす。すいません。お疲れのところ。」
「別にいいですよ。それで何の用……って今日のことですよね。」
「はい。ちょっと話したいことがあって。ちょっとこの後八重樫のところにもいかないといけないのでちょっと時間は短いですけど。現状の確認をしたいので。」
「……しっかりしてますね。渋谷くんは。」
「俺も結構動揺してますけど、それでもちょっと最悪の事態に近いので。八重樫もちょっと冷静じゃなさそうでしたし。まだ事態の把握をできている先生に少し話したかったんですけど。」
「八重樫さんがですか?」
驚いたようにしている
「……かすかに声が震えてました。一度聞きましたけど、やっぱり怖いらしいです。八重樫も女子ですよ。怖いって思うのが当たり前ですし、冷静さを失ってもおかしくないです。」
実際少し冷静にしていたが八重樫は普通なら暴走を止める方だ。俺が従っておいた方がいいと言っていたが普通なら止める方に参加するのが八重樫だろう。
「……そうですか。」
「だから少しの間はメンタルケアに回ろうと思います。他にも結構理解している人は何人かいるので。」
「理解している人ですか?」
「八重樫、ハジメ、後おそらくですけど谷口あたりですね。ハジメも分析できてますし。おそらくみんなは現実逃避をしているだけで。人を殺すってことに気づいていませんですから。」
すると先生は俺の方を見る
「……渋谷くん。やっぱりそういうことですか?」
「えぇ。戦争っていうことは基本的に人を殺すことですしね。だから先生は必死に止めていた。違いますか?」
「……はい。私は先生です。私はみんなが無事に帰れるようにする為に必死に止めましたが。」
「天之河に全員流されましたからね。俺も戦争参加は反対なんですけど。というよりも教会側が結構黒いです。話術によって同情心を誘い天之河に参加を誘おうとしてました。」
「えっ?」
「冷静じゃないうちに参加をさせたかったと思います。何が狙いか分かりませんが。」
俺は少し恐怖を感じた理由でもある
「……正直俺も率直な気持ちを言うならば怖いです。この後俺たちは多分戦闘訓練を受けることになると思います。最初は多分モンスターなのかそれとも人間なのか分かりませんが。それでもいつかは何かを殺すことが普通になります。」
正直なところ俺も何かしていないと恐怖が上回り発狂するだろう。だから誰よりも現状を確認したかった。
「……正直なところ俺たちは地球に帰れるかさえ分かりません。でも今のままじゃ多分すぐに死者が出ると思います。」
「……そうですか。」
「恐らく自分に酔っているのかと。ただの人間が力を持ったら自分の正義に向かいたくなるので。」
「渋谷くんはそんなことないですよね?」
「俺はまず不利益から考えますし、八重樫が動揺していたので余計に冷静になれましたから。」
元々判断力は悪くない方だと理解し、自分の気持ちを抑えることは昔から慣れている。
「……それでどうしますか?下手にやったらクラスメイトが壊れますよ。」
「渋谷くんはどうしますか?」
「俺は当分の間は合わせようかと。危険になったらまた報告をすることになると思いますが。」
「えぇ。分かりましたそれじゃあ八重樫さんのこと、お願いします。」
「了解です。それで先生は大丈夫ですか?」
するとピクリと反応する
「なんのことですか?」
「……」
俺はため息を吐きそして先生の方へ向かう
「もう少し話しましょうか。」
「えっ、でも。」
「八重樫の方は時間を言ってませんし、少し遅れても先生と方針を話し合っていたっていえば誤魔化せます。さすがに弱っている人を見て見過ごすほど俺は腐ってませんよ。目は腐ってますけど。」
「渋谷くんはもう少し生活リズムも整えた方がいいです。仕事が忙しいのも分かりますけど。」
とお説教を始める愛子先生に俺はただ耳を傾げる
多分この世界でもこの先生だけはずっと変わらないんだろうな
俺はたった1人の恩人の話を聞きながらありがたい説教を聞き続けた
そして帰りしなありがとうございますと愛子先生に言われた俺は八重樫のところに向かうのだった。
翌日俺たちは早速訓練と座学が始まった。
まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
と俺は簡単なメモを取り始める。
昨日は結局、八重樫も我慢できなかったのか、涙を流して結局泣き疲れるまで俺は付き添い続けた。
八重樫のことはメイドさんに任せ、後は起きている生徒の愚痴や不安をただただ聞き続ける。
メンタルを壊さないように細心の注意を引き寄せて最終的に寝たのは日が回って4時間ほどたったことだった。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
俺は首を傾げる。するといわゆる現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだと説明を受ける。
そして俺は感覚的にこの人は信用出来る人物だと判断した。
ちゃんと一人一人の疑問点を答え説明してくれる。
昨日のあの教皇とはえらい違いだ。
そして俺は針を指に刺しそして血を擦りつけると表を見る。
渋谷健太 16歳 男 レベル:1
天職 賢者
筋力 50
体力 50
耐性 50
敏捷 30
魔力 1000
魔耐 50
技能 全属性適性・魔力操作・複合魔法・高速魔力回復・魔力感知 無詠唱 消費魔力軽減 魔法威力増加 家事【+料理の達人】【+洗濯】【+掃除】言語理解
なんというか基準値はわからないけど魔力の数値がいかれているのが分かる。
「全員見られたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
てかこれじゃ完全に魔法使いの技能だからなぁ
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」
メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。
「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
なるほどな本当に家事以外は完全に魔法使いよりのスキルなんだなぁ。まぁ家事については俺の両親は両方苦手だから俺がやっているからだろうけど
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
「ぶほぉ。」
俺は吹いてしまう。するとみんなから見られるが関係ない
これ魔力本当にチートじゃないか。
「どうした?」
「いや。なんでもないです。」
俺はステータスプレートを隠す。
と言うわけだが俺はどうしようか悩み始めるのだが
「どうしたの?」
すると隣の席の谷口が聞いてくる
俺はステータスを開き机の下に見せる
すると谷口は俺のステータスを見た途端
「……」
ぽかーんと口を開けるとステータスと谷口は俺を見る
「……えっ?何このステータス。」
「バグってないよな?」
「バグってると思うよ。」
「そういえば谷口は?」
と俺が見た谷口のステータスはなんとも普通なもので結界師だった。
「なんとも普通なステータス……ツッコミどころがねぇ。」
「……鈴思うんだけど、渋谷くんって鈴に面白さを求めてない?」
「えっ?お前愛子先生枠じゃないの?」
「失礼な!!」
「ちょっと渋谷くん、谷口さんどういうことですか!!」
すると笑いが起こる。
その間にも勇者のステータスを喜んだり俺のステータスをみて絶句したりなど色々あったが普通に進行していく。
そしてハジメの番になるとその団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。そして、ジッと凝視した後、もの凄く微妙そうな表情でプレートをハジメに返した。
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。
檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
「あのな。非戦闘系なら戦わなければいいだけだろうが。お前バカか?」
俺はそういうと檜山が睨みつけてくる
「武器の手入れに新武器の開発などいろいろできることがあるだろうが。バカか?バカなのか?あっ。ごめん。バカだったな。」
「……てめぇ。」
「…こらー!喧嘩は止めなさい!」
すると愛子先生が止めに入る。まぁこれを予測しての挑発なんだけど
「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」
「……今ほとんどって言ったよな。つまり平均以上のものがあるんじゃ。」
俺の疑問に谷口は小さくあっと呟く
俺もこっそりのぞいてみると
畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
「食物チートじゃねーか。」
俺のツッコミに全員がハジメを同情したようにそしてハジメは目が死んでいた
「あれっ、どうしたんですか! 南雲君!」
とハジメをガクガク揺さぶる愛子先生。
確かに全体のステータスは低いし、非戦系天職だろうことは一目でわかるのだが……魔力だけなら勇者に匹敵しており、技能数なら超えている。糧食問題は戦争には付きものだ。
一人じゃないかもと期待したハジメのダメージは深い。
「あらあら、愛ちゃんったら止め刺しちゃったわね……」
「な、南雲くん! 大丈夫!?」
「ごめん谷口。あれは先生にしかできないな。」
「うん。南雲くんがかわいそうだよ。」
空回りをしている愛子先生を尻目に俺はため息を吐く。
ハジメの不幸はまだ始まったばかりである。