訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。
「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」
するとクラスメイトの騒めく声が聞こえてくる。
思ったよりも早かったな
俺はそんなことを思ってしまった
今まで外にも出たことがない分俺たちは何も知らないが魔物についてはかなり厳重に教わったのである程度は分かっていた
だからこうなることが分かっていたのだろう
「……大丈夫か?」
「……えぇ。」
すると明らかに弱り切っている八重樫の部屋に俺は料理を作っていた
「本当にごめんなさい。」
「その反応が普通なんだよ。ほら。香草を使ったスープと黒パン。お前今日ほとんど晩飯食ってなかったからな。少しでもいいから何か口に入れとかないと。」
「……本当に何から何まで。」
すると弱り切っている八重樫は明らかにきていた。
「なんかお前って普段はしっかりとしている雰囲気なのにやっぱり普通の女子だよなぁ。」
「どういう意味よ。」
「そういうことだよ。」
俺は隣いいか?と八重樫に聞くと少し警戒していたが頷く
「……怖いか。」
「……えぇ。」
「だろうな。俺だって怖いし。」
「えっ?」
すると八重樫は驚いたようにしている
「……あんな。怖くないわけないだろうが。俺だってまだガキだぞ。さすがに未だに異世界の情報も戦場もみたことないのにモンスターと戦えって。それも俺は火力的には天之河よりも上だ。……意味は分かるだろ?」
「……」
つまりは最前線で戦わなければならないことを八重樫も理解したのだろう
「……なんかしてないと壊れてしまいそうなんだよ。いつ死ぬのかの恐怖に襲われてしまいそうで。実際もう既に何日もねれてないしな。だからこうやって気を逸らしているわけ。俺だって戦争に参加するってことは自分が生き残るために人を殺すってことだからな。」
「……やっぱりそうなの?」
弱々しい声が聞こえてくる
「そうだよ。だから八重樫は反対すると思ったんだけど。まさかの賛成だったからなぁ。」
「仕方ないでしょ。光輝あのままじゃ完全に一人でも突っ走っていたわよ。」
あぁ。なるほどそういうことか
「……お前まず自分のこと考えろよ。そうした結果無茶しているじゃねーか。」
「うぅ。そうだけど。」
「お前も白崎みたいに時には素直に誰かに甘えてもいいのじゃないのか?お前白崎や谷口、天之河や坂上がいるじゃねーか。」
俺はそういうと少し苦い顔をしている
「えぇ、でも、どうしたらいいのか。」
「……」
俺は呆気にとられてしまう。こいつ本当に不器用すぎる
「普通に助けてっていえばいいんだよ。」
俺は自然と声に出していた
「初日みたいに泣きたかったら泣けばいい。やりたくないければやりたくないって言えばいい。逆にやりたいことならやって見たいって一言言えばいいんだ。どうしようもならないことだってあるし。時には失望されることだってある。でもな。自分の気持ちを黙ったままじゃ本物の幸せっていうものは手に入らないんだと思うぞ。」
実際この言葉は俺ではなくどこかの先生の一言も含んでいるのだが
「まぁ、俺でよければ愚痴くらいなら付き合うさ。もうお前の弱さは知っているしお前だって俺の弱さを知っている。だから頼れよ。」
「……」
「辛いってことは吐き出してしまえ。誰にも言わないでやるしそれに怖いって思っているのはお互い様なんだから。」
「……」
すると八重樫は何をトチ狂ったのかわからないが俺に抱きついてくる
「えっ?は?」
「……怖い。」
するとポツリと呟く八重樫
「怖い。なんでこんなことになったの。ねぇ。どうして私たちが戦争に出なくちゃならないの。」
流れ出した言葉は止まることがなくそしてどんどん流れていく
それでいい
人間は弱い生き物である
誰かに嫌われるから
誰かに好かれたいから
人は仮面を着けたがる
涙が溢れ弱さを吐きそして仮面を外す
ダンジョンだけではなく元の世界、地球でのことも
剣なんて持ちたくなかったこと
可愛い服やアクセサリーが欲しかったなどと自分の本心を言葉にする
そして本心を吐き出してしまえば、こいつは現状を理解する
大丈夫
八重樫は弱くて、強いのだから
そして次第に泣き疲れたのか寝息をつき始めるのだが俺は八重樫が抱きついたままだったため俺は帰れず翌朝起こしに来た白崎に見られたため俺も八重樫もダンジョンが始めるまでお互いに気まずかったのは言うまでもなかった。