〝ベヒモス〟という魔物は、大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。
「グルァァァァァアアアアア!!」
「ッ!?」
その咆哮で正気に戻ったのか、メルド団長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」
「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」
「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」
「俺も障壁を張るの手伝います。」
するとメルドさんは俺の方をみる。止めようとした矢先俺は怖いけど本当のことをいう
「サポート能力や火力に関しては俺は天之河以上です。俺だけが残った方が数倍他のクラスメイトの生存率が上がります。」
「…えっ。」
八重樫が、谷口がそしてメルド団長が俺の方を見る
「メルドさんも下がってください。火力は俺と天之河に次いであります。天之河とメルドさんがあっちに参戦した方が多くの人数が生き残る可能性が高いです。それに天之河は冷静ではないですし。一緒に行動してください。一応作戦があります。」
「……何?」
俺は作戦を話す。俺だけ危険であり、そして俺が生き残る可能性がかなり低い作戦を
谷口も八重樫もその作戦を聞いて驚いている
「……それは坊主の危険がつきものだぞ。」
「知ってます。でもそれしかないでしょ。生存率もこれなら俺以外の生存率は極めて高い。」
「……じゃあ何故。お前は死ぬのが怖くないのか?」
「怖いですよ。今でも泣きそうで。こいつらがいなければ多分俺はやってません。でも。」
何度も泣きそうな声を堪え小さく呟く
「……愛子先生からクラスメイトを助けるよう。そう頼まれてますから。」
俺はするともう振り向かなかった
「土壁。」
俺は魔法を唱える。すると他の人よりも明らかに分厚い土の障壁が何十枚もできあがる
「すいません。ここは俺が引き受けます。今のうちに退避を。」
俺はそういうと魔力回復薬を飲む
ただ死ぬ恐怖も
全てを捨ててまで
俺はクラスメイトを守る選択をした
「……分かった。」
すると俺の覚悟が分かったのであろう。悔しそうに俺の後ろへ掛けていく
そして集中力を高める
俺はどうするべきかすぐさま考える
やばいな。
この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。
しかし障壁よりも脆い土壁は相手の攻撃を緩めるや相手の足を止めることにしかできない
土魔法は便利だけどあくまでも地形を作る程度しかできない
「……疲弊させるしかないよな。」
俺が唯一助かる方法はそれしかなかった。
ベヒモスの突進を誘導しながら俺はクラスメイトの方を完全に遠ざけるためになるべく出口から離れるように攻撃していく
多分俺がもう助かるってことはほぼないだろう
それでも俺は魔力をぎりぎりにまで抑え安全性を確保していたはずだった
そうはずだったのだ
詠唱と共にまっすぐ突き出した聖剣から極光が迸る。
同系統だが威力が段違いだ。橋を震動させ石畳を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。
「渋谷助けに。」
俺が叫ぶと光が辺りを満たし白く塗りつぶす。激震する橋に大きく亀裂が入っていき崩壊していった。
あのバカ俺の逃げ道をなくしやがった。
俺の前には大きな穴ができこれはさすがに積みだ。
まじかよと思いこれはさすがにため息を吐かなざるを得なかった
「お前まじで何やっているの。」
俺は素でキレてしまう
まさか味方にトドメを刺されるとは思いにもしてなかった
メルド隊長も俺の状況が理解したのだろう顔がさっきよりも青ざめているのが分かる
しかしこれ本当に困ったんだけど。
と思った矢先だった
すると後ろから気配を感じる
「おいおいマジかよ。」
多分地形の変化によって魔法陣が現れたのであろう。
俺は冷や汗がたれる
するとそこにはあっち側にいるのと同じ魔物
ベヒモス二体目かよ。
本当に笑い事じゃねーぞ。こんなの。
乾いた笑いが響く
俺の後ろは崖でそして前にはベヒモス
こりゃ詰んだな
さすがに対抗する気が起きない
「……まぁ逃げ道がないわけじゃないんだけど。」
俺は風魔法で落下ダメージが20mくらいなら無効化できる
でもこの崖おそらくもっと深いのだろうなぁ
……まぁ賭けだけど助からないよりましか
俺は覚悟を決め自ら飛び降りる。
そして誰も見ていない中で俺はただ暗闇の中へ落ちていった。