死神の力が個性になったら   作:鮫田鎮元斎

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モチベは下がったままだ。
適当にやりすぎてタグ忘れ、運営に叱られてしもうた。














斬魄刀、そういうのもあるか

「なあ、黒い孔って聞いたことあるか?」

「なんだよそれ」

「噂じゃ、どこかにぽっかりと空いた黒い孔で、落ちたら最後、世界から存在から消えちまうって」

「んなバカなことあるかよ」

「それがよ、四楓院家の誰かが落ちたみたいで、その方の記録が不自然になくなったそうだ」

「ははは! いくら退屈だってそんな話信じる奴――な、なあ……その黒い孔って、お前の目の前にあるみたいな形なのか?」

「え――――?」

 

 

 

 

 

 

 ――――とある下級隊士の会話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 斬魄刀。

 それは己の魂を投影した現身のような存在。

 

 ()()には名前がある。

 ただし、最初に教える名は偽りで、もう一つの真の名前があるようだ。

 

 

『――来たな』

 

 劇場のような空間。舞台の上で微睡んでいる女性が、私の斬魄刀の姿。

 

「今日こそ教えて。貴方の本当の名」

『そうさなぁ』

 

 艶やかな声。彼女は片目だけを開き、私の方を一瞥する。

 

『その分だと、教える気にはならんわぁ』

「どうして!? 私は雄英高校の――日本最高峰のヒーロー高校の入試を突破できた! 実力なら十分」

『甘い』

 

 気が付けば彼女は私の前にいた。

 甘い吐息が吹きかけられ、私は思わず頬を赤くした。

 

『お前さんは何も変わっちゃいない。妾が名を教えてやった日から、ずうっと』

 

 顎を持ち上げられ私は目を背けそうになる。潤んだ黒い眼は私の体から力を奪っていく。砕けた腰をかかえられる。

 

『強さとは暴力に非ず。それが分からなければ妾の本当の名は教えぬよ』

 

 熱に浮かされるように意識が霞み、気が付けば私は舞台の上に立っていた。

 

『さあ、舞え。可愛らしく舞うのじゃ』

 

 扇子が足元に落ちる。言われるがままに拾い、広げる。

 恥ずかしい。

 下手くそな舞いを見られる。震える姿をつぶさに観察される。

 

 それでも私は舞を披露した。

 見えない糸で操られているように、夢を見ているかのように。

 

『お前さんは妾の人形。ゆめゆめ、忘れるでない』

 

 客席の奥の闇に、動物の骸骨が見えた。

 あれは一体何なんだろう――――?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――っ」

 

 体が跳ねる。

 その拍子に落ちた投影機からオールマイトが映し出され、横向きのまま彼がしゃべりだす。

 

『――私が投影されたッ!』

「…………」

 

 さっき見たばかりだったのでそのまま消した。

 膝の上から刀をどかし、胡坐を崩す。

 冷汗で髪の毛が頬に張り付いて気色悪い。

 

 彼女は私を認めてくれない。

 名前を教えてくれるのは認めた証だと父さんは言った。

 でもそれは嘘だ。彼女は決して私を認めてなんかいない。

 

「はぁ……」

 

 どうすれば卍解――斬魄刀の真の力を開放できるのだろうか。

 いったいどうすれば、あの人に追いつけるのだろうか。

 

 合格通知には得点まで記載されていた。

 

 四楓院 旭。

 敵P:28点、救助P:30点。総合順位:第9位。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 死神。

 それは人を死へといざなう存在。

 

 もしくは――

 

「くそっ! なんなんだこいつッ!」

 

 廃ビルの一室。埃の被った資材が散乱している中、黒い着物をまとった青年が刀を振り回している。

 月明かりは二人目の人物の影を落とし、青年はその主に向けて刀を振るう。

 しかし切っ先は空を斬るのみで肝心の相手にはかすりもしない。

 

「こうなったら――“清めよ”清龍!」

 

 青年が名前を呼んだ瞬間、刀の形状が変化した。刀身は流れる川のように、切っ先は竜の咢のように。

 

「……面白い刀だね」

 

 どこからか声が響く。影がうごめき、一人の少年が姿を現す。

 白かったと思われるシャツは赤茶けた汚れだらけ、制服のズボンは暗い色で目立たないが、よく見ると血の汚れが見受けられる。なによりその幼い顔のいたるところに血を拭ったような跡があった。

 

 少年は口角を上げる。牙のような犬歯が姿を覗かせる。

 それが笑顔だということを、本人以外は分かっていない。

 

「行けっ! 清龍!」

 

 水の竜は少年を飲み込まんとうねる。

 

(清龍の水に洗われた者は一時的に力を失う! これで奴は影に潜めない……!)

 

 膨大な水圧で吹き飛ばされた少年の体が泥のように崩れ落ち、一糸まとわぬ少女の姿となる。

 

「!?」

 

 青年は首筋に痛みを感じた。

 先程まで戦っていると思っていた少年がいつの間にか背後に回っており、鋭い牙でかみついてきたのだ。

 

「……キュウくん寒いです」

 

 水を浴びせられた少女はかわいらしくくしゃみをして見せる。

 

「脱いでくる方が悪いだろ?」

 

 キュウくんと呼ばれた少年は、首筋から流れる血をなめとりながら答えた。

 

 青年の手から刀が落ち、水の竜は元の刀身へと姿を戻す。

 

「くそ……なに、しやがった」

「僕の唾液には弛緩効果があるんだ。あと、血の凝固を止める効果も」

 

 彼の言う通り、首筋から流れる血は止まることなく流れ、黒い着物を濡らし続ける。

 

「この程度で勝ったと――っんぐ!?」

 

 吸い付かれた。

 少年は流れる血を飲んでいく。その姿は御伽話やホラー映画に出てくる“吸血鬼”そのものだった。

 

「安心しなよ――んぐ――君の魂は――永遠に僕の中で生き続ける――」

「あ……ぁぁ……」

 

 青年の頭を走馬灯が駆け巡る。初めて真央霊術院に入学した日、斬魄刀を支給された日、その名を初めて聞けた日、護廷十三隊の配属が決まった日――そして任務中に黒い孔へ落ちた日。

 その手から斬魄刀が滑り落ち、砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の体から最後の血が吸い取られ、亡骸が放り捨てられる。

 

「はあ……おいしかった」

 

 斬魄刀の欠片が再び集まり、少年の手でもう一度刀の姿を取る。

 それを腰に差し、亡骸から着物をはぎ取った。

 

「ほら、これでも着ときなよ」

「さむい……温めてください」

「チッ」

 

 少年は舌打ちし、彼女の体を抱き寄せる。凹凸のはっきりとした体を感じるも、彼は表情を一つも変えない。

 

「キュウくん、好き」

「あっそ」

「……欲しい、血」

 

 鋭い爪で自分の指先を傷つけ、少年は能動的に血を流す。

 滴り落ちる赤い雫を余すところなくなめとろうと少女――トガは口を開く。

 

「ん……チウ、チウ」

 

 指にしゃぶりつき、恍惚とした表情で血を吸い取っていく。

 先程とは対照的に、子供のような愛らしさを感じさせた。

 

「ほら、これでいいだろ。行くぞ」

「あっ……けち」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――数時間後。

 

 

「遅すぎたか」

 

 黒いノースリーブの着物を着た男――四楓院 陽夕間(ひゅうま)は頭を抱えた。

 

 血を抜かれて死んでいる青年。棄てられた死覇装には椿の花が刺繍されている。

 彼と同じ孔に落ちた隊士だろう。

 

「ったく……斬魄刀盗んでいきやがったな」

 

 この世界に迷い込んだ死神の末路は二つ。

 上手く溶け込むか、殺されてしまうかのどちらか。

 

 彼はため息をついて懐のスマホを取り出す。

 

「ふん……旭のやつ、合格か。ま、この俺に似たんだ、この程度は楽勝か」

 

 落ち込んでいた気が少しだけ晴れる。

 

「いつになったら、俺は戻れるのかね?」

 

 孔に落ちて十数年、いつの間にやらこの世界で一定の地位と家庭を築いてしまった。

 向こうの家族は心配してないだろうか?

 それだけが心残りだった。

 

 

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