死神の力が個性になったら   作:鮫田鎮元斎

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とりあえず主人公の容姿としては身長160cmくらい、癖のある灰色ロングの髪型、胸は(A組の中では)小さめを想定しています。

どこぞの世界の夜姉様には似てない設定。


いきなり体力測定とかきいてないし

 私の朝は早い。

 いつも日が昇る前に起きて身支度をしている。超が付く程朝型生活だと思う。

 

 ご飯は私が作る。洗濯も自分でしている。母さんは放っておくとずっと寝てるからこれは仕方がない。これだけ聞くと育児放棄(ネグレクト)だと思われるかもしれないが、そんなことはない。私が小さかった時は今の怠惰さが嘘のように働いていた。

 あまりに大変そうだったから私が手伝う、と言ったらこの有様だ。言わなければよかった。

 そして父さんは家に帰ってこない。両親の中は完全に悪いので別居中らしい。

 

 顔を洗ったあと寝室に戻り、母さんを起こしに行く。寝ていて三日目だからそろそろ食事をしないと死んでしまうだろう。

 

「母さん、起きて」

「…………ん」

 

 この程度で起きたら苦労しない。母さんは少しうめいて寝返りを打った。布団がはだけてうなじの刺青があらわになる。どうして数字の“0”を入れたんだろう? もう少しましな文字があったと思う。

 

 じっと見ていると母さんが細く目を開く。

 

「そろそろご飯食べないと干からびるよ」

「そう……そうね」

 

 と、言ったはいいが母さんの動きはのろい。

 まるでナマケモノみたいなスローさだ。

 

 でも起きるならそれでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 ……結局起こすのに時間がかかって出るのがギリギリになってしまった。

 入学初日から遅刻とか本当にシャレにならない。

 

 お行儀が悪いけど最短距離を行くために家の屋根の上を走る。

 父さん曰く、頑張れば空を駆けることができるらしいが、私には怖くてできない。

 

 走ること十数分、雄英高校の敷地が見えてくる。

 久しぶりに見ると本当に広い。某ネズミランドが何個か入りそうなぐらいでかい。

 

「はぁ……はぁ……疲れた」

 

 全力で走ったせいで体力が尽きかかってる。でも今日はガイダンスだけだろうし何とかなると思う。

 

 私のクラスは1-Aだった。

 どうか、どうかA組にやばい人が居ませんように。あと今度こそ、仲良くなれる人がいますように。累計友人数ゼロはさすがに卒業したい。

 

 

「――アア!? テメェどこ中だ!?」

 

 

 あ、無理だ。

 私の高校生活の終わる音が聞こえた。

 

 恫喝する声の聞こえたまえの扉を避け、後ろの扉からこっそりと教室に入った。みんな前の方で繰りひろげられている諍いに夢中で私に気付かない。どうやら友達づくりのファーストコンタクトも失敗しそうな予感がする。

 

 争いの渦中の男子、どこかで見覚えがあるような。

 

 そんなこんなでチャイムが鳴り、担任の先生と思われる寝袋が教室に侵入してくる。

 本当に寝袋だ。この先生も常時睡眠するタイプの人なんだろうか?

 

「早速だが、体操服(これ)きてグラウンドに出ろ」

 

 いや、これはただの面倒くさがりなやばい先生だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 聞いてない。

 いきなり個性把握テストという名の体力測定なんて聞いてない。

 

 今日走っていたせいで疲れているときにやられたら絶対記録が悪くなる。

 加えてトータル成績が最下位だったら除籍とか理不尽にもほどがある。教育委員会に訴えてやろうか。

 

 しかも除籍されて欲しい金髪男子は入試一位だから記録的に上位に行きそうで悔しい。

 

「――次、砂藤と四楓院」

 

 男女混合出席番号順。

 いや、個性ありきだから男女の体力差はあまり考慮しなくていいのかも。

 

 とはいえ体格差が激しすぎる。彼は私の1.5倍の体格を有している。

 

『――用意、スタート』

 

 瞬歩。

 父さんから教わった走法。今の私なら50mくらい――

 

『――0.57秒』

 

 走り抜けたところで足がもつれた。私は顔面からグラウンドへダイブしてしまった。

 

「いてっ」

「わっ大丈夫?」

 

 エイリアンみたいな子が助けてくれた。

 

「うん、なんとか」

「すごい速かったね! 速さを上げる個性なの?」

「あ、えっと……」

「??」

 

 どう説明しようかと迷っているうちに興味をそがれたのか、つまらなさそうにどこかへ行ってしまった。

 私の後に走る人たちも多種多様な、それこそ好奇心をくすぐるような個性を使っているから仕方がないかもしれない。

 

 私は転んだ拍子に乱れた髪を整え、ため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 続けて握力、これは大したことなかったので省略。

 その次は立ち幅跳び。

 

「おおおお!?」

「すげえ! 二段ジャンプ!」

 

 空中を走るのは少し気が引けたので落ちる寸前で再ジャンプする、所謂多段ジャンプに近い動きで距離を稼いだ。

 父さん曰く『宙に浮くのではなく宙に立つ』だそうだ。意味が分からない。

 

「わっ!」

 

 30m跳んだ辺りで調整を間違えて墜落した。

 

 

 

 その次の反復横跳びではコケるのが怖かったので慎重にやったらあまりいい結果は出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよメイン(?)のボール投げ。

 円からでなければ何でもしていいとのことで、個性の応用力が試されているともいえる。

 

 この種目は麗日さん? の独壇場だろう。まさか記録が無限に到達するとは思ってもいなかった。

 

 私の番が来てもあまり注目はされていないようだった。緊張しなくて済む。

 

「――破道の三十三」

 

 ボールを軽く前方に放り投げる。

 右手を前に出し、タイミングを合わせて技を放つ。

 

「“蒼火墜”!」

 

 照射された炎の柱にボールがかすり、しかも一瞬で消えてしまったため記録が伸びなかった。

 

「――29.8m、二投目行くぞ」

 

 クラスメイト達は雑談を止め、私に視線を向けた。

 特に紅白頭の男子からの視線が突き刺さるようだ。

 

 

 


 

「……君臨者よ」

 

 目を閉じて深呼吸をする。

 体内の霊圧に呼応して灰色がかった髪がなびく。

 

「血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ、真理と節制、罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ――」

 

 ボールは再び宙に舞い、緩やかな放物線を描いて落ちていく。

 綺麗に指をそろえた右の掌の中心とそれが直線状で重なる。

 

 

「破道の三十三“蒼火墜”ッ!」

 

 

 

 炎の柱はその真芯でボールを捉え、遥か彼方へと吹き飛ばしていく。

 

 

「――892.6m」

 

 

 技が遺した狼煙が旭の顔を神秘的に飾る。

 ただ、彼女の心臓が早鐘を打ち、今すぐ立ち去りたいと思っていることに誰も気づいてはいなかった。

 





次回、結果発表――――!!
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