ディザスター・ア・ライブ 〜Returns of Missing〜 作:ふぇるみん
四糸乃が封印されてからはや数日。もはや一大港湾基地と化した天宮支部の港。ドッグとも呼べる何かにはビッグ・トレー級であるティーレやレウルーラが鎮座していた。そのドックのさらに奥にある寮の真下に彼らはいた。
「.....ふう、なんとか完成しそう、か。」
「.....おや?ヴィンセントさん、何をなされているので?」
「ん?ああ....。いずれ来る二人のための機体をな。」
そういうヴィンセントの目の前には、王冠みたいな飾りをつけた白亜の機体とブームセンサーみたいな装飾品をつけてバイザーが隠された機体。
「AMX-018-3[BR]、通称【ブラックリッター】。フラクシナスの技術を流用しており、その技術を小型化させて新しく建造したトーリスリッターに載せたって感じの機体だな。」
「しかし、こんなに大きいならまず運用するにも色々根本的に練り直さないとだめなのでは?」
「この機体はあの左の機体とのニコイチでの運用が前提だからそれは気にしなくていい。」
左に鎮座している白亜の機体に彼女....狂三は目を向けた。
「こいつはAMX-018-1[WR]、通称【ホワイトリッター】。トーリスリッターが作られるためにデータ収集のために建造された機体でそれを俺が復元した。こいつにはこの前俺が持って帰ってきたエルも同化させてあるからな。この機体の一番の問題点でもあった試作型シェキナーの冷却機構は実質解決したと言ってもいい。」
「白と黒、まるで正反対の性質ですわね?」
「コンセプトがそうだからな。本来ならこれを未だアストレアとラジエルで運用してくれてるハナヨとハヤナに渡すつもりだったんだが.....。」
「.....何か不都合でも?」
「よくよく考えれば、俺たちもまともな機体無かったなって思い出してな。」
ヴィンセントは隣にあるブレーカーを立ち上げる。光で覆われ表したその全体像は狂三を改めて驚かせた。
「トーリスリッターシリーズの3機。トーリスリッター改、トーリスリッター・キャバルリー、トーリスリッター・デュラハン。」
「改はクロエが使って、俺がキャバルリー、クーがデュラハン。もう長いことここに鎮座しているが、これが使われる機会はもう来てほしくないものだ。」
「それは困りますわね?そろそろ私も動こうと思っておりますのに?」
「......そうか、いよいよか。」
狂三は霊装に身を包むとその短銃と長銃を両手に掲げる。
「五河士道さん....彼がほんとに私の時間となってくれるお方なのか、見極めさせてもらいますわ。」
「頼むから無駄遣いはやめてくれよ?いくら無尽蔵といえど流石に短期間で時間を吸われ続けたらいくら俺でもキレかねんからな。」
「肝に銘じてますわよ。......ところで、先日回収してきたあのシステム。どうなされるおつもりで?」
狂三からその質問が飛んできたのは意外だった。あのシステムというのは初期の頃にあった残留品を取り込んだものでその正式名称を【ALICEシステム】という。その実態はHADESとは違う完全な人工知能でその人工知能は良く言えば、理不尽な男を求めていた。
※例の演出はめんどくさいのでカットします。
「ALICE....ね、彼女が聞いたらどう返すか。」
『....カエス.......返す.......キライ?』
このころ、引き取って機体に取り込んだ直後の当時のヴィンセントはこのALICEシステムの処遇をどうするか悩んでいた。完全なる人工知能など誰もが喉から手が出るほどほしい存在である。しかし、ヴィンセントはすでにそれを超越するAIに山程出会ってきた。そのためこの1から育てなければならないAIをどうするべきか考えていたのである。コックピットでぼやいていたヴィンセントはふとALICEにこう聞いた。
「なあALICE、お前はどう生きていきたいんだ?」
ALICEは思考し点滅で答えを返した。
『....もっと.......もっとアナタたちと.......ふれあいたい......。』
その点滅での打電を感じ取ったヴィンセントは項垂れた。
「触れ合いたいって.....アレか、クロエたちとも触れ合いたいのか。」
即座に帰ってくる点滅。それは肯定の意を持っていた。ヴィンセントはどうするべきかしばらく思案する。AIにアリスみたいなボディを作るだけだと擬似的な動きしかできない。ならば、いっそのことISやMS自体にAIを詰め込んでしまえばいいのではないか。
そこからのヴィンセントの動きは早かった。早速束に例のAIを持って行きこのAIが自分自身で思考、行動できるように適応したボディ、もしくは機体を作れないか頼み込んでみた。束が面食らっていたのは記憶に新しいが、それよりも彼女が返した答えの方にヴィンセントはもっと驚いた。
「それなら、ヴィー君の機体の中に入ってたあれが使えるかも。」
そう言い束は膨大なデータファイルの中から一枚の設計図を取り出した。
「ブラックボックスの中に隠されてたんだよね、これが。設計図の名前で言うなら【Sガンダム】って言うらしいんだけどどうもヴィーくんのトーリスリッターのブラックボックスの中枢部に隠されてたんだよね。なーんか怪しい。」
それでも使えるのなら使わない手段はない。ヴィンセントは迷わず建造依頼の為に端末ごとALICEを束に預けることにした。最初、起動直後のALICEの反応を見て束は思いっきりテンションが上がっていたようだったが。
『.....マスt.......御兄様、この人すごい......あつくるしい.....。』
「しれっと呼び名変わってないか.....。というかその人は気に入ったらずっとこうだ。自分で自由に動けるようになりたいなら博士の言う事にはしっかり従ってくれ、いいな?」
『....了.....解.....。』
「そんなわけで博士に今そのAIを用いた機体を建造してもらってる。一応コアはできてあるから見るか?」
「ええ、ご一緒させてもらいますわ。」
「どうせそのうち、こいつはお前に任させることになりそうだからな。」
「....それってどういう?」
狂三の問いに彼は答えることなく進んでいく。ハンガーの通路を横切っていく中、見えるのは整備を受けている彼らの機体達。
そんなときだった。一回り小さな機体が目に写った。
「もしかしてこれが。」
「ああ。こいつがコード【スペリオル】のコア、【イクスェス】だ。」
ハンガーに装着されている機体はCRユニットより一回り大きいだけでほとんど既存のユニットと大きさが変わらない物だった。しかし、狂三がふと疑問を呈した。
「この機体、私乗れますの?」
「一応はな。だが無人で動くこと前提だから多少既存のユニットよりは空間は狭くなるだろうな。」
「無人?」
「ああ、なんたって........。」
『お兄様ァァァァァァァ!!!』
「ふぉっぐ!?」
唐突な叫び声と衝撃でヴィンセントが吹っ飛んだ。狂三がふと見るとその姿は水色のワンピースとミニスカで身を包んだ少女が目の前にいた。
「だ、誰ですの!?」
「.....いてて、こいつがさっき言ったALICEだよ。ハナヨとハヤナが居ただろ?そいつ等のクローン技術を用いて作った。」
「作った!?」
目の前にいる天真爛漫な人物がクローン人間ということに驚きを隠せない狂三。そこに彼女たちも割り込んできた。
「ごめ〜んお兄ちゃーん!!」
「ったく、何があったんだ?」
「アリスちゃんにこの子のこと話して今後の処遇考えてたらいつの間にか居なくなってて。」
「アリスにか?」
目の前で息切れしているもうひとりの相棒、クロエに何があったのかを聞いていく。
「一応ハヤナちゃん達の技術で現実顕現は出来たけど、今後どこに本籍を置くかで揉めてね。それでそれを見るのが嫌になったアリスちゃんが逃げ出しちゃって.....。」
「は、はぁ.....。ですが.....。」
「狂三の言いたいことは分かる。俺だって当初はそうしたかったさ。だがな、これはハヤナが先に言い出したから強く言えないんだよな...。」
そう、この騒動には続きがおるのである。
「では、彼女の所有権は全員で取り分け、と。」
『ふざけないで頂戴!!!私達がせっかく生成したのにすぐ没収なんてあんまりだよ!?』
『だけど彼女自身がやるよりかはよっぽどマシだよ?』
生成してしばらく安静にさせた直後、誰がALICEの肉体の管理権を得るのかという問題で3人が集まっていた。
ハナヨは生成はしたが、もともとはヴィンセントのものなのでヴィンセントにALICEを預けると進言、ハヤナは生成はしたからそのままこっちで管理させろの一点張り。対してヴィンセントは有事の際にいつでも指示できるよう分散して権利を置くように進言した。
そしてこうなった。
「ハヤナ、いい加減分かれ。」
「そうですよハヤナ。私達はあくまで生成を頼まれただけ、それ以上のことに首を突っ込むと死にかねませんよ?」
「でも姉さん、それじゃ意味が!!!」
「.....はぁ....こんな手札を切りたくなかったんだがな....。」
「手札....?」
「お前の最も上に当たる姉を生成させるぞ。」
「上の...?」
「.....まさか!?ヴィンセント、流石にそれはやめてください!?あの子をここに置かせたらどうなるか....!!」
上に当たる存在、というだけで誰か分かったハナヨとピンときていないハヤナ。ヴィンセントもこの策を切るのは割と苦渋の決断だった。
「いいな、これ以上意見に従えない場合、基地司令部命令として言うぞ、【数日以内にハーミヤを顕現させよ】と。」
「っ!?ヴ、ヴィンセント...それってマジモンのガチ?」
「何もガチも本気も本気さ。喧嘩するならハーミヤ混ぜるぞ?」
「や、やめて!?私が悪かったから!?だから姉さんは一人だけでいいわ!!だからハーミヤは......あのドジっ子の面倒だけは見たくないわ!!!!!」
二人からの全力拒否。流石にここまで拒絶反応を見せるとは思わなかったヴィンセントは満面の笑みを見せた。それを見た二人は顔がひきつる。
「え?」
「そんな.....。」
「どうせ嫌がりそうな気がしたからとっくの昔に作り出しておいた。」
「えへへ、ふたりとも、久しぶり!」
「「........。」」
二人は今後の日常が崩れるのを理解して泡を吹いて倒れた。
「とまあ、そんな関係があってALICEが肉体を持ったってわけ。」
「なんとなく二人が今頃トラウマを抱えているのは想像に難くないですわ....。」
一人狂三が白目をむいていた。
説明をしている合間にアリスは完全にひっついているようで離れようとはしないらしい。
「まあ、そんなわけで今後は狂三のサポートにこいつがつくことになる、うまく扱ってくれよ?」
「ん?ヴィンセントさんに託されたからヴィンセントさんが一緒に連れていくのでは?」
「俺がアリスを連れているとクロエたちが病むから無しで....な?」
「は、はぁ.....。」
このあと、他愛のない雑談をして二人は分かれた。
そして、翌日。
「皆さん、はじめまして。時崎狂三と申しますの。そして私、精霊ですのよ?」
最悪の精霊が彼に最接近した。
To be continued.......
なんでここまで遅れたんだろうねぇ.....やっぱ複数同時進行は辛いや。