ディザスター・ア・ライブ 〜Returns of Missing〜 作:ふぇるみん
第30話 時を操りし精霊.....なはずなんだがなぁ
その日、士道は出会った。
「私、精霊ですのよ?」
自らを精霊と名乗る転校生と。
「時崎狂三....か。」
「むぅ....やはりあやつもか?」
士道と十香は思案していた。授業も終わり今は放課後、教師と生徒の関係であるヴィンセントとクロエは既に帰宅しており、ではなぜここに残っているのか。
「あらあら....二人で内緒話ですことで?」
「どこを案内しようか悩んでいるだけだよ....。」
この至って普通の学校にどう案内しようか悩む二人、そこに狂三が、
「よろしかったら、また別日にこの街のことでも教えていただければそのほうがありがたいですわ。」
どうも彼女はここに来てまだ浅く地形を知らないらしい。士道はなるほど、と納得すると、
「うむ!それなら私達に任せるのだ!」
十香もやる気満々らしい。精霊とはいえ事前素性の知れてないのだから、この案内で少しでも....。
だが、それは甘いのだと知らされるのはこの半日後のことであったのだ。
「というわけで自然に擬似デートを取り付けましたの。」
「草。」
「知ってた。」
「速いねぇ...。」
「はんのううすすぎませんこと!?!?」
その夜、狂三は放課後あったことを話しその反応があまりにも薄いため絶叫していた。
「いやぁ....だってねぇ?」
「...なんですの?」
「全然町並み案内してもらうだけではデートじゃないじゃん。良い狂三ちゃん?デートっていうのはね、いろんな名所を多数の会話デッキから切り出して初めてデートとして成り立つんだよ?そもそも士道は唐変木だからそうだとは全く思ってないはず...!!」
「それに、海外から一人あなたの天敵が来てるよ?確かアプデタス2...だっけかな?」
「....真那さんがこの日本に....。」
「そしてこちらが入国早々ボッコボコにして引っ捕らえた真那になります。」
「ナイトメア!これ一体どういうことでいやがりますか!?!?!?」
「なにやってんですの!?!?!?!?!?!?」
まさかの事態に狂三の声が裏返った。真那が自分を殺すために日本にやってきたのは想定内だったが、すでに捕まったのは想定外だった。
「どうしてナイトメアが日常を謳歌していやがるんですか!?そもそもどこですかここ!?ASTの基地からあなたの反応をキャッチして殺しに行こうと出たらいきなり背部ブースターを破壊されて落とされて....気がついたらこれですよ!?」
「そら狂三を邪魔するやつは落とす。誰だって落とす、俺だってそうした。」
「それに、狂三ちゃんはもう前みたいな殺戮マシーンじゃないよ?私達から定期的に寿命を吸い取ってるからよほどのことがない限りは時喰みの城も使う必要なくなったしね!」
「どういうことでいやがりますかナイトメア!吐きなさい!!」
「いや、どうもこうも必要分が3人だけで賄えてしまうのでもう必要がなくなったといいますか...。」
「えぇ....。」
予想外の事実に開いた口が塞がらない真那。そこにさらに驚くべき事実が知らされた。
「あ!ヴィンス、解析終わったよ!全体に処理がかけられてて記憶処理もされてるみたいだけど治療する?」
「早いな。」
「...?記憶処理?全体処理?なんのことでいやがりますか?」
「真那...お前何も聞かされてないんだな?」
「貴方、真那とか言ったわね?あなた、このまま気づいてなかったら2年と立たずに死んでたわよ?」
「.....はい?」
真那は自身の身体にされている処理についてこのとき初めて知った。異様なまでのユニット適性は記憶処理と全体の魔力処理により強制的に引き上げられたものであり、その代償に肉体に多大な負担をかけていた。しかも、その負担は数年と立たず再起不能な損傷になるとも試算されていて、それを聞いた真那は呆然としていた。
「真那...だっけか、今後ナイトメアについて認識を改めてくれるなら、こちらとしては根本からの治療をする用意がある。」
「そんな....すぐにハイそうですよとナイトメアを味方と認識できるわけがないじゃないでいやがります!.....ですが、いちどアイクに真相を聞かないとどうすればいいか....。」
「そうなると思って前もってアイザックを呼び出しておきました。おいアイクこいつに何したまじで?」
「ふむ.....適正を引き上げるために軽度の魔力処理は施したが....そこまでの処理と記憶封印はしていないぞ?」
「....なんだって?」
アイクから告げられたのは適正を上げるために表面処理こそ施したものの、記憶制御や重度の魔力適正処理までは上げていないとのことだった。これを聞いたヴィンスは激怒した。
「クロエ、真那をこのまま医務室へ。魔力処理と記憶封印を解除する。狂三、時間は負担してやる。【九の弾】を真那に使ってくれるか?」
「合点承知の助!」
「え、ええ。わかりましたわ。ですがなんの意味があって....。」
「真那をASTからこちら側に転属させる。」
「はい????」
狂三は今日何度目かもわからない困惑した声を上げた。真那ですら初耳のようで、アイクに至っては爆笑していた。
「良いじゃないか。真那は治療もできるしそこにいるナイトメアを常に監視できる。そっちは貴重な魔術師を戦力にできる。まさにwin-winじゃないか。だが、これだけだと私に利がないように思うが?」
「ASTに俺の知り合いを奇襲させる。それで戦闘能力の経験を積ませる。それで手を打ってくれないか?」
「.....実力にもよるな?」
アイクとヴィンスの応酬は尚も続く。完全に置いてけぼりにされた三人は何を言っているのか完全に訳がわからずにいた。
「ヒントは【キヴォトス】。これだ。」
「っ....まさか君がそこと知り合いだとはね....。」
「何度か共同戦線も張ったことがあったのでな。そのつてだ。そのつてを使って人員はよこすつもりだが。」
「ちなみに具体的には誰を送るかは決めているのかね?」
「【ミレニアム】から四人、【ゲヘナ】から【二人】かね?」
「....本気なんだね君は。」
「そういうお前こそ、社員の管理ができていないから今回の出来事が起きたんだ。一層規律を厳しくするべきなのでは?」
「たはは、これは一本取られたか。了解した。後日正式な転属文章を配送しよう。アプデタス2、いや崇宮真那。」
「は、はい!?」
突然社長から名前を呼び出された真那は裏返った声で返事した。
「後日正式な文章で送るが、君はASTではなくAXIS所属とする。本来の任務である精霊である【ナイトメア】は殺害から監視へとその命令を変更する。」
「え、えぇ....?」
「しばらくはその身体を休め給え。余計な処理までされていたことに気づけなかったのは私の落ち度だ。誠に申し訳ない。」
「いえ!?」
通信越しに頭を下げられた真那はあたふたしていたが、通信が切れるとやがてその緊張の糸が溶けたからかふっとへたりこんだ。
「....ヴィンスさん、どこまでコネがあるんですか....。」
「まあ、言えないわなそれは。とりあえず二人は真那の治療を頼んだ。俺はキヴォトスのアイツと連絡を取ってから向かうとするよ。」
ヴィンスと分かれた三人はそのまま治療のため医務室へと向かって行く。それを見届けたヴィンスは懐から端末を取るとどこかへと通信をかけた。そして出た人物は....。
「お久しぶりですね、先生?」
「久しぶりだな。さっそく本題で悪いがミレニアムのセミナー及びゲーム開発部、それにゲヘナの生徒会に通達してほしい。」
「はい?」
眼の前に映る人物は少し首を傾げていた。
「【ヒナ】、【アコ】、【モモイ】、【ミドリ】、【アリス】、 【ノア】、そしてお前もだ、【ユウカ】。7人に特別な任務を任せたい。」
「.....わかりました。先生の要請とあらばすぐにでも招集をかけましょう。...で、その内容とは?」
「詳しくはこちらに来てもらってから伝えるが、長期的な任務になる。十分な用意はしておいてほしい。あとは弾薬生成用に余分に弾倉は用意してもらえるとありがたいかな?」
「了解いたしました。どこに行けば?」
「来てほしい場所は俺たちが今いる天宮市の南側にある港だ。以前俺たちがキヴォトスに来た際の船を覚えているか?」
「あ!あの船ですか!?わかりました!数日のうちに合流しますね!」
「頼んだ!」
通信が切れ端末をしまったヴィンスはすっかり夜になってしまった空を見上げる。
「精霊によって世界は変わりつつある。だが、俺たちの生活だけは変えさせない、たとえ何があっても。世界を敵に回したとしても、この生活だけは....!!」
ヴィンスの目先には薄暗く光る月の光が照らし出されているのであった。
To be continued....
何故か唐突に出てきたブルアカ要素。
ブルアカ復帰したからせっかくならちょこちょこ出していきたいと思います。選出メンバーは全員うちのレギュラー(二人を除く)。