ディザスター・ア・ライブ 〜Returns of Missing〜 作:ふぇるみん
ユウカ達と合流し撤退の旨を伝えるクロエ。だが、ユウカ達はそれを聞きなお、引く気はないようだった。
「へぇ....それをもっと早く言ってくださいよっ!!」
「ええ、そういうことでしたらまだ耐えてみせますよ!」
「....ここから先は、通しません!!!!」
ユウカは残った弾薬をすべてリロードし、ノアもありったけの弾倉をポーチから取り出す。アリスは最大出力のレールガンを打つ気満々。もはやこれは止められないと察したクロエは再び小型レールガンを右手に握った。
「……やれやれ」
そして、クロエも覚悟を決める。
「―――ッ!?」
その瞬間、全員が息を飲むような感覚に襲われた。
それはまるで巨大な獣が大口を開きながら迫ってくるかのような威圧感だ。
「な、何ですかこれ……」
「....せめて、私が最後に退く。みんなはじわじわ下がって!もうそろそろお兄ちゃんが当初の目標を達成するはず...!!」
クロエの言葉に従い、じりじりと後退する三人。
すると、轟音と共に天井が崩れ落ちた。
「……あれ?」
そこには見慣れた人影があった。
「っ....あなた達....!?」
「あれ、折紙ちゃん。ようやく手に入れたんだね、それ。」
「あの人が居なかったらすんなり強奪できなかった。とても感謝している。」
そう言うと彼女は懐から何かを取り出した。
「私が作った特製手榴弾。これで目くらましする。」
「…………。」
「....威力はさっきのでわかってるはず。」
(((あ、ダメだコレ)))
三人とも直感的に悟る。折紙はその巨大な機体....【ホワイト・リコリス】から片手を離し、手榴弾のピンを抜くとそのまま基地の軍人のもとに投げ込んだ。と同時に三人はクロエの機体に抱えられるなり、捕まるなりして、逃げる準備を整えていた。
「総員退避ぃ!!!!」
軍人の声が響き渡る中、爆音が響く。
爆風によって巻き上げられた砂煙の中、ホワイト・リコリスとブラックリッターだけが粉塵から姿を表した。
「…………。」
『クロエ!?大丈夫か!?』
「こっちは平気!先に戻ってるよ!お兄ちゃんも早く帰ってきてね!」
「分かっている!あとは主要施設を爆破するだけだ!」
通信機からはヴィンセントの声とタイマーのような音が聞こえている。どうやらこの作戦の要となる兵器の破壊工作の設置に成功したようだ。
『よし、このまま一気に離脱しよう!』
「了解!」
『このホワイトリコリスは頂いていく!アクシズ再興のために!!!』
「いいぞー!!やっちゃえー!!」
「……なんだろう、凄く不安になるんですけど……。」
「……奇遇ですね、アリスさん。実は私も同じ気持ちです。」
こうして、AST達の抵抗虚しく、クロエ達は無事に脱出に成功するのであった。そして基地はしめやかに爆散。これによりASTは一時復旧作業に追われることとなる。
一方その頃、DEMインダストリー本社ではアイザックが社長室にてエレンと話し合っていた。
「それで、例のものは手に入ったのかい?エレン。」
「はい、ここに。」
エレンが差し出したのは黒い箱のようなものだ。一見ただの小物入れのように思えるがアイクにはそれが何なのかわかっていた。
「...失礼ですが、これは....?」
「....エレン、すぐにこれを開発、設計班に渡して解析を始めさせてくれ。これの中身がわかったらもう人材不足は解消できる。」
エレンは首を傾げる。
「お言葉ですが、このような小箱でどうやって?」
「この小箱には、人類の代謝機能を大幅に活性化させることのできる薬剤の調剤法が書いてある紙が入っているはずなんだ。それを解析し、生産できれば、治癒能力が一気に上がり怪我の心配をする必要がなくなる。」
「なっ……!?そんなことが可能なのですか!?」
「可能だ。現に今だって私はその薬のおかげで身体の調子が良い。」
「しかし、なぜそのようなものを?」
「それは言えない。だが必ず必要なものだ。」
「わかりました。早速手配いたします。」
「ああ、頼んだよ。」
「……それと、一つご報告があります。」
「……何だい?」
「……先程から、ヴィンセントと名乗る男がこちらに向かってきています。恐らくは。」
「……そうか。ならこちらもそろそろ動くとするかな。」
「え?」
アイザックは立ち上がると、窓の外を見つめた。そこには巨大な機体が悠々と空を飛んでいた。
「まさかあれが!?」
「そうだ。あれこそが我々が開発した最強にして最高傑作の機体【リコリス・ツヴァイ】、通称【アルティメット・リコリス】だ。そしてこいつはあいつから譲ってもらった自己治癒機能付きの装甲を持つ。故に長期間の作戦行動が可能となる。まさに夢のような機体だとは思わないかね?まぁ、あの男がいなければ完成しなかったがね。」
「……つまり、あの機体はあの男の……」
「そういうことだ。さて、そろそろ来る頃だな。迎えに行ってくるよ。」
「……かしこまりました。」
アイザックは部屋を出ると、ヴィンセントの元へと向かった。
「やあやあ、息災のようだね?」
「あの浮いてる機体、まさかな?」
「君たちのエルと呼ばれている少女の身体の一部を解析し、それを組み込んだ機体だ。また今度襲わせてやる。」
「あいも変わらず容赦がないな....。」
『もー!そんなこと言うならあなた侵食して殺しちゃうよ!』
ヴィンセントの腕から垂れ落ちた液体金属が形をなし、ヴィンセントの腕にひっつく少女となる。アイクに対して敵意は出していたが、殺意までは出してなかった。
なぜならヴィンセントのそばにいるだけで幸せだからである。
「おや、久しぶりだねぇ。元気だったかい?」
『うん!お兄ちゃんのおかげだよ!』
「そりゃよかった。ところでヴィンセント・グライスナー、やってくれるじゃないか。」
「よくいう。ところで、アイツラの手捌きはどうだったかな?」
「良くも悪くもさすがはキヴォトスの住民、というべきか。お陰様でしばらくは足止めを食らってしまったよ。」
「変に挑発しなければ襲わなかったのに。」
「......。」
「まあいい、話したいことはそれだけだ。ああ、それとあと一つ。」
ヴィンセントは体を翻すと一言だけ呟いた。
「....お前、ALICEからデータを抜いたな?」
「......黙秘権を行使させて貰おうか。」
「.....そうか、まあ、何があろうと制御権は強奪するがな。」
ヴィンセントはその言葉を最後に部屋をあとにした。エルもアイクに頬擦りすると名残惜しそうに部屋をあとにした。数分すると、エレンが再び部屋へと入ってきた。
「....よろしかったので?」
「いずれ手札を切ることになるのだ、見せるタイミングとしては悪くないだろう。それに、バレたとしてもこれは最高傑作だ。そう簡単にはやれまい。」
「そうだろう?.....ハートの女王よ。」
その次の日であった。
「決着をつけてきますわ。」
「....そうか、けりをつけるのか。」
「今の私ならば充分にけりをつけることができますわ。器はあればあるほど良いですし。」
「.....間違っても死ぬなよ?万が一の場合は俺のエルを呼び出せ。」
「ふふ、過保護ですわね?」
「昨日本社を訪れて分かった。アイクは間違いなくこのタイミングで来るだろう。一昨日の襲撃とて忘れたわけではあるまい。」
「分かっておりますわ。では、行ってまいります。」
影に埋もれて消えた狂三を見送り、残された三人組とアリスは思案する。
「心配だね....。」
「ひとまず俺とクロエが見ておくから安心しておけ、最悪の場合はアイツラを呼び出すことになるだろうがな....。」
ヴィンセントは風が漂う屋上でそうつぶやくのだった。
「目標視認、命令が在りシダイ、殲滅を開始スル。」
「おい、お前早まるなよ?」
「分かってイル.....それに。」
「それに?」
「私はアイツに数え切れないほどの恩を貰ったカラナ....、貸しは返さなければ。」
「そうか.....。」
どこかのビルの屋上で、ドレスを着た少女とパーカー姿の少女は街を見下ろしながらそういうのだった。
To be continued......
ひとまず年始の投稿です。今年もよろしくおねがいします。