早とちりしてすみませんでした。
学校から出発して約2時間ほどが経過してようやくバスはオリエンテーション合宿で1泊2日を過ごす施設へと到着した。
場所は意外に森の中にある施設であり自然が視界いっぱいに溢れていて空気が澄んでいて美味しい。
今、トイレ休憩の件で調子が優れない私にとってはちょうどいい環境かもしれない。実際、さっきより大分落ち着いてきている。
因みにトイレ休憩以降、私は持参したアイマスクを目に装着して寝るふりをしていたため、余り関わらなかった。
これ以上………、伊吹に悟られる訳には行かない。なんとか、顔を見られないようにしなくては。
ちとせ「よーし、お前ら。A、B、Cという順で進んで行くから先頭にいる奴はBクラスの奴に続けて進めー。」
ちとせんの言葉により、Cクラスの先頭である伊吹はBクラスの1番最後の子に追うような形で歩き出し、他のCクラスの子も伊吹に続く。
それにしても、今、歩いている坂の傾斜が結構キツいわね。普段、鍛えている私にとっては何事もなくヘッチャラだけど、あまり運動しない子達にとっては厳しいんじゃないかしら。
「ぜぇ………ぜぇ………。」
と思った矢先に、隣に歩いていた子が顔を赤くして息を切らしている。確か………紀平さんだったかしら。偏見で申し訳ないけど、見た目的に運動が余り得意ではないタイプに見える。
話しかけた方が良いわよね??紀平さんも、上野さんと一緒であんまり話しかけたことがないから声を掛けづらい所はある。
だけど、見た感じ相当苦しそうに見えるから見逃したら可哀想だ。
理亞「あの………紀平さん」
「鹿角さん??」ゼェゼェ
理亞「荷物…………も、持とうか??」
「え??」
私の言葉に紀平さんは目を丸くしてしまう。ヤバい………、少し踏み入れすぎちゃったかしら!?
理亞「いや、嫌だったら別にいいんだけど………。ちょっと苦しそうに見えたから………体力ある私が紀平さんの荷物持った方が少しでも負担が減るかなって思って………………。あ、ごめんね。急に話しかけちゃって。」
顔を赤くして早口で私は言葉を出すと、紀平さんはニコッと微笑んだあと、荷物を私の方に差し出す。
「お願い………してもいいかな??」
理亞「ーーーーーうん!!!」
私はコクリと頷いたあと、彼女から荷物を受け取ろうとした瞬間
「天草くーーーーーーーん!!!」ダダッ
ーーードンッ!!
理亞「あっーーーー」
背後から猛スピードで駆け出てきた八代さんが私の肩に思いっ切りぶつかる。それによって、手を滑らせ紀平さんの荷物を手放してしまった。
理亞「しまっーーーーー!!!」
ここは傾斜が急になっている坂道。こんな所で落としてしまったら紀平さんの荷物が転がり落ちてしまう。
私はすぐに荷物を掴もうと手を伸ばした所
「ざまぁ」ニヤニヤ
理亞「ーーーーーーーッッ!!!」
背後から突然、八代さんの声が笑い声と共に耳に入ってくる。それによって、私は身体を動かすことが出来なかった。
この人…………、もしかして、わざとぶつかってきた??
信じたがいことではあるけど、恐らく間違いではいない。実質、八代さんは私のことを嫌っている。
この嫌がらせをすることによって、伊吹に私の無様な所を見せようとしているんだ。
ただでさえ、伊吹との関係はギクシャクとしてるのにこんな所、あいつに見られる訳にはいかない。
私はすぐに荷物を追いかけようとするが、時すでに遅し。荷物が地についてしまい既に転がり落ちてしまっている。しかも、運が悪く背後にいる人達は雑談していてそれに気付いていない。最悪なパターンだ。
早く手にしないと重心がかかってしまい転がり落ちるスピードが更に上がってしまう。
私は転がり落ちてる荷物のあとを全力で追いかける。
「えっ!?速っ!!」
背後にいるクラスメイトを通り過ぎる時、誰かそう呟いた。
そんなことはない。50秒メートル走を6秒前半で走れるぐらいの速さだ。姉様や伊吹なんて5秒を切ってしまう。私なんてあの二人に比べたらまだまだよ。
そして、スピードが上がる前に私は紀平さんの荷物まであっという間に追いつき掴み上げる。良かった…………。
ギギギ!!!と全力で摩擦でブレーキをかけるように足元に重心を掛け、減速させる。
その後、くるりと身体を捻らせながら振り返り、紀平さんの荷物を肩にかけて坂道を登る。
数分で紀平さんの所まで戻った私はすぐに申し訳なさそうにして頭を下げる。
理亞「ごめんなさい、紀平さん。荷物落としちゃって…………」
私が頭を下げるのを見て、紀平さんは驚いたのか「えぇえ!?」と声を上げる。
理亞「私のせいで………お弁当とか台無しにしちゃった…………」
荷物の中には昼食用にお弁当が入っているはずだ。だけど、転がり落ちてしまったことによって中身がぐちゃぐちゃになってるはずだ。
「大丈夫、大丈夫!!今日の弁当はおにぎりだけだから!!………ほら!!少し形がペちゃんこになってるけど食べれるから!!」
紀平さんは鞄の中を漁り、凹んだおにぎりを私に見せつける。なるほど。確かに、食べれないほどではない。
「それに、ありがとうね!!私のために拾ってくれて!!」
え、えぇ!?どうして私がお礼を言われるの!?私のせいで転がり落ちてしまったって言うのに…………!?
けど、なんだろう………。悪い気はしないわね。
「それにしても、鹿角さん。凄い足の速さだったね!!」
紀平さんが少し興奮気味でグイグイと話しかける。パーソナルスペースって知ってるのかしら。凄い近いんだけど…………。
理亞「そ、そう??」
「うん!!とってもかっこよかったよ!!」
理亞「あ、ありがとう。てか、疲れてるんじゃないの??」
「理亞ちゃんの姿見たら疲れなんて吹っ飛んじゃった!!」
理亞「そ、そうなんだ……………。」
この人、見た目に反してめちゃくちゃ喋る子じゃん。ペラペラと話しかけてくるんですけど!?
「ねぇ、鹿角さん!!今日の昼食………私と一緒に食べてくれないかな??私、もっと鹿角さんと話してみたい!!」
これは、もしかして……お昼のお誘い!?
聖良(天使)「理亞!!これはチャンスですよ!!」ピョコ
頭の中に、再び天使姿の姉様が現れる。相変わらずビキニだ。
聖良(天使)「ここは紀平さんの誘いを乗りましょう!!友達が出来るチャンスです!!釣りで例えるならば、高級食材である金目鯛がhitしてますよぉぉ!!!」
なるほど。天使の姉様の言う通りかもしれない。釣りの例えがよく分からなかったけれども。
聖良(悪魔)「いや、ダメです!!断りましょう!!」ピョコ
まぁ、分かってたことだけど今度は悪魔の姉様が現れる。こちらも黒いビキニを装着している。
聖良(悪魔)「紀平さんにはきっと理亞に対して何か裏があると思います!!理亞、トイレ休憩でのあの出来事を忘れてしまったんですか!?」
そんな訳ない。忘れるわけないだろう。
確かに、悪魔の姉様の言ってることも一理ある。一理あるけど…………
紀平さんの表情を見た感じ、裏があるようには見えない。
だって……………
「……………」ワクワク
凄い楽しそうにしてるもん。犬のような尻尾が彼女の腰から激しく揺れてるのが見えてるもん。偶に嬉しくなると姉様もこんな感じになるのを見る。
それに、伊吹以外の人に初めての昼食の誘いだ。引き受けるのに決まっている。
今回ばかりは天使の姉様の勝利だ。
理亞「う、うん!!いいよ!!一緒に食べよう!!」
聖良(天使)「ふふん」o(`・ω´・+o) ドヤッ
聖良(悪魔)「ぐぐ………」(‘ᾥ’ )
天使の姉様はドヤ顔をし、悪魔の姉様は歯を食いしばりながら消えた。
そして、私と紀平さんは会話をしながら坂を登った。
オリエンテーション合宿………参加して良かったかもしれない。
「ねー、天草くん。私、足が疲れちゃったー。だから、おんぶしてくれないかな??ねぇ、いいでしょう??ね、お願い!!」
伊吹『………………』
その後、私達は無事に施設に辿り着き、注意事項を聞かされたあと、紀平さんと一緒に昼食を楽しんだ。
「天草くん、私ね。今日、お弁当作ってみたんだけど、味見してくれないかな??この卵焼きに自信あるんだ!!」
伊吹『……………』
ポンコツ姉様の代わりとして天使と悪魔の姉様を出しました。個人的にはお気に入りなキャラクターなので今後ちょいちょいと出していきたいです。
紀平さんは中学時代では一応、クラス内の伊吹以外の唯一の友人となりますが、高校では離れ離れになるため、最終的にはぼっちに後戻りします。
あと、活動報告にて、とあるテーマについて募集してるので、良かったら目にしてくれると嬉しいです。
お気に入り・感想・高評価お待ちしております。
姉様のポンコツ具合
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現状維持
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控えめ
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いいぞ。もっとやれ