Saint Snowと無口の居候。   作:七宮 梅雨

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お久しぶりです。短いです


11話「オリエンテーション合宿③」

 お昼ご飯を食べ終わったあと、私たちは施設内にて自分たちが通っている中学校の由緒あるルールや伝統をモニターに映るスライドを目にしながら先生の話を聞いていた。

 

 正直言って凄く眠たかった。コクリ、コクリと首を下に向けてはハッ!?となってさり気なく上に顔を上げて、また下に向く…………という行為を何度も繰り返した。

 

 それは私だけでなく他の子もそうだ。なんなら、ガッツリと睡魔に敗北して寝てる子とかもいる………ってよく見たら紀平さんじゃない!?何やってるのよ!?

 

 そして、チラッと伊吹の方に視線を移すとあいつは普通に先生の話を真顔で聞いていた。

 

 そんな伊吹の顔を見ていると、またしても以前のショッピングモールでの出来事を思い出す。

 

 あの時の伊吹の姿を思い出すだけで、身体が恐怖で身震いしてしまう。

 

 普段は無口で大人しい伊吹が、どうしてあんな行動に出たのだろうか。

 

 考えてみても分からない。当然といえば当然だ。

 

 

 なにせ、天草 伊吹という男の全てを理解していないのだから。

 

 

 ここ数年、一緒に暮らして伊吹が一体、どういう人間なのかということはある程度分かったつもりだ。

 

 

 しかし、それだけ。数年暮らして、得れたのはそれだけなのだ。

 

 

 どうして、伊吹が親元から離れて鹿角家にやってきたのかは分からない。特に気にしたことはなかったが、よくよく考えてみるとおかしい。

 

 パパは大人の事情と言っていたが、きっと複雑な事情が絡んでいると今更ながら思う。

 

 

 あいつの過去に…………きっと、何かがあるのは確実だ。

 

 

 恐らくだけど………伊吹が無口になってしまったきっかけもそこにあると私は睨んでいる。

 

 その過去を知りたいか知りたくないか、と聞かれたら知りたくないと言えば嘘になる。

 

 もし、あいつのその領域に足を踏み入れたら、今まで築いてきた私達の関係が崩れるかもしれない。

 

 

 そんなのは私は……………嫌だ。

 

 

 出来れば、もっとあいつと一緒にいたいと……………私は思ってる。逆に、あいつがいない日常なんて今思うと考えられない。それは、姉様も同じ気持ちだろう。

 

 伊吹がいなくなってしまうと考えると………胸が痛くなる。どうして、痛くなるのかは分からない。分からないが、痛いのだ。

 

 

 

 

 だから、私は………………

 

 

 

 

 

 「おーい、鹿角〜。話、聞いてるか〜??私、今、とても大事なこと言ってんだぞ〜??分かってんのか〜??ぶっ飛ばずぞ〜??」

 

理亞「ーーーひゃい!!聞いてます!!」

 

 唐突にちとせんから声を掛けられ、変な対応をしてしまった。周りの子達は、それを見てクスクスと笑っている。めちゃくちゃ恥ずかしい…………。

 

 私の返答を聞いて、ちとせんは言葉を続ける。ヤバい………。なんの話をしていたんだろう。全く聞いてなかった。

 

 ちとせんに、ぶっ飛ばされる前に紀平さんに聞いておこう。って、紀平さん、まだ寝てるじゃん!!どうして注意しないのよ!!不公平じゃない!!

 

 「こらぁ!!紀平!!何、寝とんじゃい!!大事な話してるって言ってるだろうがぁぁぁ!!」ビュン

 

 「ぎゃあ!!」バタン

 

 あ、そんなことなかった。バリバリ怒られてましたわ。なんなら、持ってたチョークを全力投球されて、それが直撃して紀平さんは気絶してしまった。こ、怖ぇ…………。

 

 てか、気付いたら他の何人かも、そのチョークの犠牲になっていた。

 

 どうしよう…………。これで、ちとせんが何を話していたのか全く分からなくなってしまった。

 

 

 ーーーコツン

 

 

理亞「痛っ」

 

 戸惑っていると、前から何かが飛んできておでこに直撃する。なんだろう………、と思い、見てみると

 

 

 何度かに折られて小さくなっている紙だった。

 

 

 それを、ちとせんにバレないようにコソッと広げると、その紙にはこの後に行うカレーライス作りの注意点について幾つか書かれていた。

 

 恐らくだが、ちとせんが言っていた大事なことについての内容だろう。

 

 それに、この紙に書かれている文字。

 

 

 

 見間違えるはずがない。伊吹の文字だ。

 

 

 

 伊吹の方に顔を向けると、あいつは何事もなかったかのように前を向いて先生の話を聞いている。

 

理亞「伊吹……………」

 

 予想外の助けに驚くが、それと同時に何だか嬉しいと思う。

 

 あいつもあいつで、きっとこの状況をどうにかしたいと思っているはずだ。じゃなきゃ、こんなことはしない。

 

 だけど、お互いにどうすれば良いのか分からないまま時間が無駄のように流れてしまっている。

 

 

 一体、どうしたら…………

 

 

 

聖良『伊吹のこと、よろしくお願いしますね』

 

 

理亞「ーーーーーーーーッッ」

 

 ここで、私はふと姉様の言葉を思い出す。

 

 

 ……………そうだ。以前のような生活を望んでいるのは私や伊吹だけじゃない。

 

 

 姉様に任されたんだ。本当は姉様自身も動きたかったはず。それなのにも関わらず私に任せてくれた。

 

 

 偉大なる姉様に任されたからには………、絶対に成し遂げてやる。

 

 

 覚悟を決めた私は、ちとせんの話が終わったあと、とりあえず気絶していた紀平さんに内容を教えるのであった。

 

 

 




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姉様のポンコツ具合

  • 現状維持
  • 控えめ
  • いいぞ。もっとやれ
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