伊吹を無理矢理と自分達の班に追加させたあと、先生に報告してから私達はカレーライス作りを始めようとした。
「調理器具持ってきたよ〜」
「私は食材を………」
理亞「ありがとう、2人とも。」ニコッ
紀平さんが鍋とか飯盒を、上野さんがカレーライスの食材を手にして、私たちが行う調理場へと戻ってきた。
伊吹「………………」
伊吹は両手に大量の薪を持って立っていた。
理亞「伊吹も……ありがとう。その薪で火をつけといてくれる?その間に私達で野菜とかの下処理しとくから。」
私の指示に、伊吹はコクリと頷いてから、薪を組み立てたあと、先生から配布されたチャッカマンを取り出して火をつける。
手先が器用な伊吹なら、すぐに火をつけてくれることだろう。ならば、私達も急がなくてはならない。
私と紀平さんと上野さんの3人で野菜を洗っているとーーー
「前から気になってたんだけどさ、鹿角さん」
じゃがいもを洗っている紀平さんが人参を洗っている私に話しかける。何なのかしら?
「天草くんと………どういう関係なの?」
理亞「え?」
洗う手を止めて、私は紀平さんの方に顔を向ける。
「だってさ、あのモテモテの天草くんと結構、仲良い感じだからさ〜。その………付き合ってるのかなって………」
「それは……私も気になります。」
紀平さんの言葉に、玉ねぎの皮を剥いていた上野さんもボソボソとした声で意外にも食いついてきた。恋バナとか好きなのだろうか。
理亞「べ、別に付き合ってないよ。あいつとは、ただの友達。友達だから」
ーーーズキン、ズキン
うっ………、自分の口で"友達"という発言をすると、胸が痛くなった。前より少しだけ痛みが増している気がする。
ワイワイと楽しそうに野菜の下処理をしている2人の隣で伊吹の方に視線を移すと
あいつはバタバタと必死こいて団扇を扇いで火に勢いをつけていた。なんか………見てて面白いわね。
作業しながら、伊吹の様子を眺めていると
理亞「あ………」
伊吹「…………」
一通り仕事を終えて汗をタオルで拭おうとしていた伊吹とバッチリ目が合ってしまった。その瞬間、ドキッと胸が高揚しているのを感じる。
普段ならすぐにお互いに恥ずかしさで目を逸らしてしまう。けど、今回は何故かそんなことなくずっと私は伊吹の顔を、伊吹は私の顔を見つめていた。
何だろう………。今なら不思議と永遠に伊吹の顔を見ていたい気持ちになっている。
「鹿角さん、下処理終わったよー。次は何しようかー??」
理亞「へぁ?……あ、あぁあ!!そ、そ、そ、そうね!!じゃあ、お米研ごっか!!」
「どうしたの?そんなにテンパって」
理亞「な、何でもないよ!!早くやろ!!」
私は、先程の行動を誤魔化すかのように言葉を出して飯盒を手にした。
「「できたぁーーー!!!」」
調理を初めて数時間後、なんとかカレーライスを完成させることができた。カレーライスの出来は他の班と比べて高いと思う。まぁ、一応実家が飲食店である私と、居候である伊吹がいたからっていうのもあるけど。
「早く食べようよ!!私、お腹ペコペコだよ!!ね、上野さん!!」
「そ………そうだね。私も………ペコペコかも」
お腹に手を当てて、早くカレーライスを食べたいアピールをする紀平さんと上野さん。てか、いつの間にか仲良くなってるわね。
手を洗った私達は皿に炊きたてのご飯をついで、その上からカレーのルーを流し入れる。うわぁ………、お世辞抜いて本当に美味しそう。
「よし!じゃあ、食べようか!!」
「ちょっと待って…………。天草くんは?」
上野さんの言葉で、私達は伊吹が居ないことに気づく。あれ?おかしいな。カレーライスが完成した時はいたんだけど。
「お手洗い…………とかかな?」
「だとしても少し遅くない?」
伊吹がいないことで2人は心配そうにする。どこに行ったのよ、あいつ。
理亞「…………あ」
ここで、私はあることに気づく。
理亞「あいつの分の………皿がない。」
そう。カレーライスを早く食べたい欲によって、気づかなかったが伊吹の分のお皿が無くなっていた。よくよく思い出してみると、お皿に盛る時に米とカレーのルーが1人分減っていたような気がする。
まさか、あいつ……………
理亞「ちょっと行ってくる」
私はスプーンをテーブルの上に置いて、その場から立ち上がる。
「「鹿角さん!?」」
理亞「大丈夫大丈夫。すぐに戻ってくるよ。あいつを連れて」
そう言って、私はとある場所に向かって走り出した。
理亞「いた」
あいつを探すために2人の傍から離れたが、案外すぐに見つけることが出来た。
目の前にこの山の目玉である大きな滝を眺めることが出来る場所の前に、伊吹が1人で座りながらみんなで作ったカレーライスを食べていた。
私は歩いて伊吹のところまで近づき話しかける。
理亞「何、1人で勝手に食ってんのよ」
伊吹「………………」
声をかけられて、伊吹は私の方に顔を向けるが、特にあいつからは反応があるわけではなかった。
どうして、伊吹がこんな行動をしたのか。理由は確定とは言えないものの、ほぼ予想はついている。
シンプルに私と一緒にいることがまだ気まずいから。
以前よりかはマシになっているものの、やっぱりショッピングモールでの出来事があるからこそ、あまり一緒にいたくない、またはいれないのでしょうね。
それは、私も同じ。今もこうしてアンタと一緒にいるだけでアレを思い出して怖くなって震えてしまう。
だけどね、伊吹。もう…………頭の良い貴方なら分かってるんでしょ??このままの現状はあまり良くないってことを。
だから、私はーーーー
理亞「待ってるから………」
伊吹「ーーーーッッ」
私の呟いた言葉に、伊吹はようやく反応を示した。それを確認しながらも、私は発言を続ける。
理亞「待つよ。いつまでも待つ。伊吹がいつか…………私や姉様のことを受け入れて伊吹自身のことを教えてくれる時が来るまで。だから、無理して今は……………言わなくてもいい。」
伊吹「………………」
理亞「だけど、これだけは覚えておいて。例え、伊吹がどんな過去を送ってきたとしても私と姉様は……………アンタを受け入れる。だって…………もうアンタは私達の家族だから。」
言いたかったのはこれだけだから、と伊吹に言い残して私は背を向けて歩き出す。
これだけ言えば私は満足だ。前を向いて歩ける。以前と変わらない態度で、伊吹と接することも出来るはず。
私のやるべきことは終わった。あとは………伊吹の気持ち次第。
だけど、その心配も杞憂に終わる。
理亞「伊吹…………」
伊吹はその場から立ち上がって、私の隣に並ぶ。言葉は発さないものの、表情が以前と同じようになっていた。こいつもこいつで………覚悟を決めたように見える。
よかった…………。内心、本気でそう思いながら、私達は紀平さんと上野さんの元へと戻った。
ちなみに、ここだけの話、2人の元に戻ろうとしたらちょうどカメラを持った先生がいて遅れた罰として伊吹とツーショットを撮らされた。
悪い気分ではなかったと言っておこう。絶対に口には出さないけどね!!!!
「鹿角のめ…………。私の前であんな行動をとったことを後悔させてやるわ!!!」ニタァ
あと2、3話でオリエンテーション合宿編を終わらせるように頑張ります。
姉様のポンコツ具合
-
現状維持
-
控えめ
-
いいぞ。もっとやれ