Saint Snowと無口の居候。   作:七宮 梅雨

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14話「オリエンテーション合宿⑥」

 みんなでカレーライスを食べ終わり、雑談やダンスの個人練習を行って適当に時間を潰していたら、日が暮れ辺りは暗闇に包まれた。山の中であるため、相当暗い。

 

 そんな中、私たちは広場へと集まっていた。何故かと言うとーーー

 

 

ちとせ「只今より、肝試し大会を始める!!野郎共、準備はいいかァァァァァァァ!!!」

 

 

 

 「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」

 

 

 

 メガホンを手にし、耳に手を当てたいと思うぐらいまで大きな声を出すちとせん。彼女の言葉によって、感化された周りの人達は雄叫びを上げる。うるさい…………。

 

 私たちが通う中学校のこの合宿で1番の目玉と言っては過言では無いイベントらしく、部活の先輩も楽しかったと口にしていた。

 

 私の合宿の冊子をパラパラと見ていた姉様も懐かしながらーーー

 

 

聖良『肝試し大会ですかぁ、懐かしいですね。とても楽しかったですよぉ!!まぁ………、何人か還らぬ人がいましたが………(ボソッ)』

 

 

 って、楽しそうに言っていた気がする。けど、最後の一言だけ声が小さくて何を言っていたのか聞き取れなかった。なんて言ってたんだろう……。

 

 それにしても、肝試し大会……………かぁ。

 

  「鹿角さーん」トントン

 

理亞「ひぁぁぁぁ!?」

 

 唐突に紀平さんに肩を叩かれた私は、驚いて思わず声を出してしまった。び、びっくりしたー。

 

理亞「な、なに!?」

 

 「いや、少し声を掛けようかな………と。てか、今の反応………。もしかして鹿角さん………」

 

理亞「やめて」

 

 何かを察した紀平さんに対して、私はこれ以上、その先に出るであろう言葉を喋らないようにお願いする。

 

 「…………」ニヤニヤ

 

 それによって、紀平さんは小悪魔のようにニヤニヤと口元を緩ませる。これは確実に気づいたわね………。

 

 

 「鹿角さんって、こういうの……苦手なの?」

 

 

 遂に言われてしまった。私は何も答えずにぷいっと頬をふくらませながら横に顔を向いた。

 

 

 そう。私、鹿角 理亞はお化けや幽霊などのホラー系が大大大の苦手である。周りからは、得意だと勘違いされるときがあるけど、絶対に無理!!無理すぎて、馬になるレベル。

 

 

 それを知っている癖に姉様(ホラー系大好き人間)は………

 

 

聖良「理亞〜。TSU○AYAであの有名な『貞子VS伽椰子VSてけてけVS鬼婆ァVSペニーワイズin犬鳴村』を借りてきました。なので、一緒に観ましょう♪」

 

 

 と、偶に私にホラー映画の鑑賞を誘ってくる。もちろん、全力で拒否してるけど…………。てか、よくよく思い出してみれば凄い作品名だったなぁ。1人だけハリウッド出身のやつもいたし……。

 

 ちなみに、私が拒否った場合、伊吹が姉様と一緒にホラー映画を観ている。鑑賞後、会いに行くと高確率で気絶しているから伊吹もホラー系とかは苦手な部類に入ると思う。あいつと一緒な所があると思うと少しだけ嬉しくなる。

 

 まぁ、そんな感じで。とにかく私は怖いものが苦手だ。だから、今も私の頭の中は『帰りたい』という言葉で埋め尽くされていた。

 

伊吹『……………』カタカタカタ

 

 伊吹も相変わらず真顔で、こういうのには特に何も思わない風に見えるが、全身が微かに震えてた。あいつもビビってるわね。

 

 

ちとせ「今から説明を行うからしっかりと聞くように。ルールは至ってシンプル・イズ・ベストだ。あれを見ろ」

 

 ちとせんは後方に指をさす。なので、私たちは振り向くとそこには1本の不気味な道があった。私たちが来たやつとは勿論、違う道で先生達に念強く通行禁止と言われていたものだった。

 

 

ちとせ「この道は約1kmほどある一本道だ。その先にはこの山に司る神様の銅像がある。その銅像まで辿り着き、今回の合宿のお礼と中学校生活の抱負を込めて崇拝してくるのが今回のミッションだ。」

 

 

 ルールは至って普通の肝試しって感じね。

 

 

ちとせ「肝試しは2人1組でやっていくぞ。ペアの決め方はこのくじ引きで行う!!なので、今から各クラスの担任が持ってるくじ引きを引いてペアを作れ!!それじゃあ、開始!!」

 

 

 ちとせんの言葉で私たちは自分のクラスの担任の方へと向かう。私の場合、ちとせんだ。

 

ちとせ「出席番号順で引いていけー。同じ番号のやつがペアだからなー。あ、みんなが引き終わるまでは引いた番号を他のやつに教えないように!!」

 

 出席番号順ということは、伊吹から引いていくことになる。

 

 出来れば、ペアは難しいけど伊吹が良い。あいつもホラー系は苦手だからこの場においては頼りにはならないとは思うけど、それでもやっぱりあいつの隣がいいな。

 

 難しければ、紀平さんか上野さん辺りを願う。それ以外は少し厳しい。

 

 伊吹はちとせんが持つくじ引きに目を突っ込み、ゴソゴソとさせてから1枚の紙を引く。そして、伊吹は自分の引いた紙を開いて中身を見た。あいつ、何番だったんだろう………。気になる。

 

 

 そして、いよいよ私の番となった。

 

 

 ちとせんが出しているくじ引きの箱に手を突っ込み、辺りを探る。当然ながら、紙は沢山ある。どれにしよう………。迷うなぁ………。

 

 でも、時間はあまり取れない。えぇい、こうなったらこれにしよう。

 

 私は1枚の紙を手にして取り出す。その後、少し離れてからドキドキと心臓が鳴っているのを感じながらゆっくりと紙を開く。

 

 

理亞「4番………」

 

 

 私が引いたのは『4』と書かれた紙だった。もし、伊吹も『4』を引いていれば………。

 

ちとせん「よーし。全員、くじを引いたな。それじゃあ、同じ番号の奴を探せー。」

 

 私はすぐに伊吹の方へと駆け寄り、手話を交えながら声を出した。

 

理亞「伊吹!!な、何番だった!?」

 

伊吹『……………』ピラッ

 

 伊吹は紙を私に見せようとする。4番来い!!4番4番4番4番4番4番4番4番4番4番4番4番!!

 

 

理亞「ッッ…………17番」

 

 

 伊吹が引いたのは4番ではなく、17番だった。すなわち、私たちはペアではないということになる。そんなぁ………。

 

 「お。天草、17番?俺と一緒だな!!」

 

 17番の紙をヒラヒラとさせながら、クラスの男児が伊吹に声をかける。こいつが、伊吹と同じペアの奴か。う、羨ましいとかじゃないからね!!でも、ペアが女じゃないだけでも安心………かも。

 

 

 伊吹じゃないなら、私のペアは誰だろう。

 

 

 紀平さんと上野さんはもうペアらしき人と一緒にいるため、違うと予測される。あと、ペアが見つかってなさそうなのは………。

 

 

 「アンタが……………4番?」

 

 

理亞「ーーーーーーッッ!?」ビクッ

 

 

 背後から私に向かって声がかけられる。それによって、思わず私は身震いさせてしまった。

 

 この声は……………。

 

 私はゆっくりと背後に振り向くとそこには………

 

 

『……と鹿角のやつ、死んでしまえばいいのに』

 

 『ざまぁ』ニヤニヤ

 

 『は??意味分かんないんですけど。鹿角、ちょっとどいてくれない??あんた、一体、なんなの??』

 

 

 「八代…………さん。」

 

 

 「私も4番なんだよね。よろしく、鹿角さん」ニコッ

 

 

 『4番』という紙を手にした八代さんが、笑っているようで笑っていない表情を浮かばせながら私の目の前に立っていた。

 

 

 

 どうやら、この肝試し大会………。穏便には絶対に終わらないだろう。と確信的にそう思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、色々と動きます。お楽しみに。

姉様のポンコツ具合

  • 現状維持
  • 控えめ
  • いいぞ。もっとやれ

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