Saint Snowと無口の居候。   作:七宮 梅雨

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今回は少し長めです。

あと、少し彼の過去について触れます。


16話「オリエンテーション合宿⑧」

 気付いたら、私は見覚えのない薄暗い場所へと立っていた。私は確か…………………あれ?何してたんだっけ??頭をひねって思い出そうとしたけど、何ひとつ思い出せない。自分の名前も、出身地も、これまでの人生も。

 

 そして、ここはどこなのだろうか。見た感じ、誰かの家だと思うんだけど…………。

 

 ん?あそこの棚に何かが飾ってある?行ってみることにした。

 

 

 これは……賞状?一体、何のだろうか?

 

 

 

 『賞状 最優◼賞 天◼◼吹殿。貴方は「第◼◼回、○○県 こどもピアノコンクー◼」において、日頃の練◼の成果を十分◼発揮さ◼◼秀◼成績をーーー』

 

 

 

 字が所々、霞んでいて読めない。けど、なんかピアノのコンクールで優勝したっていうのは分かる。

 

 ……………うわ!!よく見ると、このピアノの賞状以内にも数多くの賞状とトロフィーが飾られていた。す、凄い…………。学校の校長室の隣とかに飾られている景色を見てるみたいだ(分かる人には分かる)

 

 

 さっきとは別のピアノのコンクールの賞状にトロフィー、勉強関係、作文、絵、そろばん、空手、水泳に料理にパソコン………………数えきれない程の種類の賞状があった。な、なんなの………これは。

 

 

 そして、その隣には1つのゴミ箱らしきものがあつた。中を覗いてみると、そこにはくしゃくしゃにされた1枚の紙が。

 

 汚いと分かっても、気になったのでそれを手にして広げてみる。すると………

 

 

 2位 ○草 ■吹

 

 

と書いてある賞状であった。くしゃくしゃすぎて、文字がダメになってしまい、どんな大会のやつなのかは分からなかった。けど、2位って凄いじゃん。どうして、捨てられているの?

 

 

 『全くこの子は!!!』

 

 

 ーーーッッ!?び、びっくりした。突然、ここから離れた場所から大声が聞こえてきたから、跳ね上がってしまった。

 

 それよりも今のは…………

 

 私は声が聞こえてきた方に向かって足を進める。すると、とある場所にだけ光がついていた。きっと、あそこにさっきの大声を発した人物がいるに違いない。

 

 少しだけ身体を震わせながら、その部屋をバレないように気をつけながら除く。

 

 

『ねぇ。私、言ったよね??何で、違うことをやってるの??ねぇ!ねぇ!ねぇ!?』

 

 

 ーーーバキッ

 

 

 あらゆる物が至る所に拡散し、悲惨な状況へと陥っているリビングらしき部屋で、怒りに満ちた表情をした白髪の女性が、彼女と同じ白髪の少年に向かって怒号を浴びせながら何度も何度も手を挙げていた。

 

 何よ…………これ。

 

 『どうして○○しているの!?ママ、✗✗しろって言ったよね!?何、自分勝手なことをしているの!?お前ら私の言うことだけ聞いていればいいって言ってるだろ!!次はねぇからな!!』

 

 

 ーーーバキッ、バキッ、バキッ

 

 

 私の瞳に映る景色は予想を遥かに超えるものだった。正直いって、見てられないため、思わず手を顔に当ててしまった。だけど、耳に聞こえてくる音は生易しいものでは無かった。明らかに何かが砕けるような生々しい音がひたすら私の耳に入ってくる。

 

 『ちっ、この出来損ないが!!』

 

 しばらくした後、女性の酷い言葉が耳に入ってきたあと、私の方に向かって歩く足音が聞こえてきた。

 

 やばいと思った私はすぐにここから離れて隠れそうな場所を見つけ、そこに隠れる。

 

 『ーーーーーー!!』

 

 女性はスマホを手にして誰かと会話をしながら階段に登っていき、姿を消した。

 

 私はすぐに先程覗いていたの部屋へと戻る。罵声を浴び、手を挙げられていた子が心配になったからだ。

 

 部屋に戻ると、前髪が鼻の下まで伸びてしまっている白髪の少年がちょこんと座っていた。私は何も言わずにその子の傍へと駆け寄る。

 

 『………………』

 

 私の存在に気付いたのか、少年は私の方に顔を向ける。しかし、前髪で目が隠れてしまっているため、表情は分からない。驚いているのだろうか、それとも怒っているのか、またまた真顔かもしれない。

 

 私は少年が何も言わないことをいい事に、彼の顔や身体を見る。

 

 …………案の定、酷い状態だった。至る所に血や青あざが出来ている。しかも、タチが悪いことにあまり目にいかない所ばかり。

 

 これはもう………確信的に虐待だ。どうして手を上げているのかは分からないが、理由はどうであれ、あの女は犯罪を犯している。

 

 すぐに警察に電話してーーー

 

 ……………ん?あれ?

 

 

 この子…………誰かに似てーーー

 

 

 

 

 『………………て』ボソッ

 

 

 

 ーーーッッ!?少年は私の方に向かって、何かを呟いた。だが、あまりにも小さすぎて何を言ったのか聞き取れなかった。

 

 もう一度行ってもらうように私は彼にお願いしようとしたがそれは叶うことは無かった。

 

 

 ーーーバキバキベキベキ

 

 

 え………!?どうしてヒビが!?

 

 私がいるこの空間のあらゆる場所にヒビが入り、崩れていく。その速度は異常に早く、あっという間に私と少年がいるところ以外は何も無い空間へと化してしまった。

 

 そして、私と少年の間にもヒビが入り、少年側の方から崩れていく。

 

 私は手を伸ばし声を上げる。これだけ言わないと後悔すると思ったからだ。例え、相手が知らない人物だとしても。

 

 

 「さっきの言葉………、もう1回教えて!!」

 

 

 これを言った瞬間、私の方も崩れてった。多分、あと数秒もすれば私はこのまま崩れ落ちることとなるだろう。

 

 

 

 そして…………、最初に崩れ落ちた少年は落下の浮遊によって前髪が浮き、表情が完全に露となる。

 

 

 少年は泣いていた。

 

 

 それは、まるでーーー

 

 

 

 

 『誰か僕を…………助けて。』

 

 

 

 

 誰かに助けを求めているかのように。

 

 

 

 

 そして、彼はその表情のまま崩れ落ちた。

 

 

 

 少年の最後の言葉を聞いた私の方も完全に崩れ落ちて意識が途絶えた。

 

 

 

 

 ♠♠♠♠♠

 

 

 

理亞「……………ん?」

 

 

 

 頭が悲鳴をあげるほどガンガンに響き渡る痛みを感じながら我慢しながら私は目が覚めた。なんだか凄い夢を見た気がする。全く覚えてないけど。

 

 てか、あれ?…………ここは??どうして、私はこんな所にいるんだっけ??確か、銅像に崇拝して帰ろうとした所で…………

 

 

 『てめぇが悪いんだからな。鹿角。』

 

 

 ーーーッッ、そうだ。思い出した。帰ろうとしたら、頭に強い衝撃を感じて気絶したんだ。

 

 そして、最後に聞こえてきたあの声………。間違いない。あれは八代さんの声だった。つまり、私を気絶させたのは彼女だということが分かる。

 

 

 ーーーガサガサ

 

 

理亞「ーーーーーーーッッ!?」ビクッ

 

 急に私の傍にある草むらが音を鳴らせて揺れる。それによって、つい私は身を固めてしまった。

 

 ここは…………本当にどこなの??本来ならあるロウソクが無いため、指定の道では無いということが分かる。つまり、光がない。

 

 

 私の周りは本当の闇で包まれている。

 

 

 しかし、私は人並みに視力がいいため、集中すればなんとかギリギリ視ることは可能だがーーー

 

 

 ーーーガサガサ

 

 

理亞「きゃあ!!」ビクッ

 

 この怖がりの性格のせいで、その視力は全く役に立たない。集中したくてもできないのだ。

 

 集中出来ないため、今の私は周りが何も見えない。その結果、ただ震えて蹲る事しかできない。

 

 

 怖い。ただひたすら、怖い。

 

 

 何もかもが怖く感じてしまう。ただの夜風も、草木がそれによって揺れる音も。逆に何も音が聞こえない時も返ってそれが恐怖を感じる。

 

 恐怖というものは、判断能力を鈍くさせてしまうというのはよく聞くけど、正に本当のことだった。本来なら、何とかするべきなんだろうけど、それを考える暇がない。

 

 

 ーーーガサガサ

 

 

 ーーービュービュー

 

 

 ーーーユサユサ

 

 

 ーーーバサバサ

 

 

 ーーーガーガー

 

 

 ーーーブォーブォー

 

 

理亞「ーーーーーーーッッ!!」ビクビク

 

 

 私は闇の世界で涙を浮かべ、恐怖心を煽られながら蹲まるのであった。

 

 

 ♠♠♠♠♠

 

ちとせ「あれ?八代、鹿角は?」

 

 「なんか、疲れてから休憩するって言って〜。私は待つって行ったんですけど、どうしても先に行って欲しいって言われたので先に戻ってきました。」

 

 理亞を気絶させ、指定の道から離れた場所へと置き去りにした張本人である八代は、堂々たる態度をとってちとせに嘘の言葉を告げる。

 

ちとせ「そうか………。それにしても、少し遅い気がするけどなぁ」

 

 八代が戻ってきてからは最低でも10分は経っている。いつ戻ってきてもおかしくは無い。それでも理亞は戻ってくる気配はない。

 

 「あ、天草くーん。」

 

  愛しの伊吹を見つけた八代は声を高くして彼に近づく。そして、腕をからませながら言葉を出していく。

 

 「私ね……、この肝試し、とても怖かったの〜。」

 

 八代は更に嘘をつく。元々、八代は肝試しに、おいては理亞が泣け叫びたいほど怖がっていたのに対し、八代は全く表情を崩していなかった。

 

 彼女の言葉に対し、伊吹はポケットからいつもコミュニケーションをとるためのメモ帳を取り出して文字を綴ったあと、八代に見せる。

 

 

伊吹『八代さん………、理亞ちゃんは……??』

 

 

 「ッッ……。鹿角さんは少し疲れて休憩したいって言ってたの。だから、先に私が戻ってきたんだ〜。」

 

伊吹『………………』

 

 「別に鹿角さんのことはいいじゃん。あのさ、天草くん。今度、私とーーー」

 

 

 

伊吹『嘘………だよね?』

 

 

 

 「ーーーッッ!?」

 

 

 

 八代が話している途中に、伊吹はさらに文字を綴って彼女に見せた。それを見た八代はつい言葉を詰まらせてしまう。

 

 

 「や、やだなー。天草くん、何言ってんの?そんな訳ないじゃ〜ん。」

 

 

伊吹『………あんまり皆は知らないけど、理亞ちゃん、毎日最低でも10km走ってるんだ。朝と夜に。』

 

 

 「は?」

 

 伊吹の言う通り、理亞は毎日、日課として朝と夜に10kmのランニングを行うようにしていた。伊吹との一件があったあとはやる気が起きず、何回かサボってしまうことはあったが、それまでは1日もサボることなくこなしていた。伊吹や姉である聖良も何回か彼女のランニングに付き合うことがあるので認知していた。

 

 

 しかし、理亞は学校ではあまり人と関わろうとはしなかった。今回の合宿で紀平と上野という友人と呼んでもいい人物は出来たが、それでも彼女達を含めたクラスメイトは理亞のことをあまり知らない。強いて言うのならば、伊吹しか友達のいない人見知りっていうイメージがついていることだろう。

 

 

 だからこそ、八代は信じられなかった。そんな奴が毎日、10kmランニングをしているということに対して。

 

 

伊吹『だから、理亞ちゃんはそう簡単に疲れるはずがないんだ。たかが1km。彼女にとっては屁でもない。』

 

 

 伊吹は止まることなく、文字を書いては八代に見せる。その文字を見る度に、八代の表情はどんどんと青くなっていく。

 

 

伊吹『八代さん、もう1回言うよ?理亞ちゃんは??』

 

 

八代「ひぃ……!!!」ビクッ

 

 

 八代は伊吹の表情を見て、ビクリと身体を震わせる。肝試し大会であれだけ余裕だった彼女が恐怖という感情を抱いた。

 

 伊吹は………………あのショッピングモールの時の同じ顔を八代にしていた。つまり、彼は怒っているということが分かる。

 

 

八代「あ……あ………」

 

 

 伊吹から放たれる恐怖に八代は言葉が上手く出せないでいた。もはや、彼女は蛇に見つかった鼠みたいなもんだった。

 

 

伊吹『もういい…………。けど、これだけ書いておくよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度、彼女に手を出したらタダじゃおかないからね

 

 

 「……………」コクコク

 

 警告と等しい文字を見せたあと、もう言葉を出せない八代は肯定の頷きをするしかなかった。

 

 

 

 

 そして、伊吹はそのまま肝試しの時に通った道に向かって走り出した。

 

 

 

ちとせ「おい、天草!?お前、どうした!?お、おい!!!」

 

 担任の先生が背後から響き渡るが、伊吹は止まることなく走り続けた。

 




次回でなんとか合宿編は終わらせたいなぁ笑

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姉様のポンコツ具合

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  • 控えめ
  • いいぞ。もっとやれ
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