「今日から、僕達の家に住むことになった天草 伊吹くんだ。2人とも、仲良くしてあげてね」
それは、本当に突然のことだった。
私、鹿角 理亞は姉様である鹿角 聖良と共にパパに呼ばれたため、赴くとパパの隣には男の子が1人立っていた。
まるで、雪のように綺麗な真っ白なミディアムな髪型とまるで濁っているかのように真っ黒な瞳が特徴的な子だった。
一体、どうしてこの子が私達の家にいるのだろう…………と疑問に思ったら、まさかのここに住むことになるらしい。
理由を聞いたら、大人の事情と言われ、詳しいことを教えてはくれなかった。
そんなの………反対に決まっている。理由も知らずに、他所から来た男の子と一緒に暮らすと言われても困るだけよ。
断固反対!!そうよね!?姉様!!と、思い、隣にいる姉様をチラッと見てみるが………
聖良「〜♪」キラキラキラ
ダメだぁぁ…………。姉様、すごく嬉しそうな表情を浮かべてる。既に、母性溢れるオーラをめちゃくちゃ放出してるぅ……。
「歳は確か………10歳だったね。理亞と同い年だ。」
え、私と同い年なの!?見た感じ、歳下だと思ってたのに………。
聖良「はじめまして。私、聖良といいます。よろしくお願いしますね。」
あ、目を離した隙に姉様が彼に近づいて自己紹介を行っていた。流石は姉様。コミュ障である私と違って初対面の人にすぐに話しかけられるところは本当に凄い。
伊吹「……………」
聖良「私は身体を動かすことが大好きです!!貴方は何か趣味とかありますか??」
伊吹「……………」
聖良「…………あれ??」
姉様の言葉を聞いて、彼は何も答えない。ただ、じっと姉様を見つめているだけだった。
なんで、何も答えないの??まさか、恥ずかしいとか??それもありえるわね。だって、世界一可愛い姉様だもの。照れて当たり前か。
「あぁ。伊吹くんはね。とある事情で声を出すことは出来ないんだ。」
パパが思い出したかのように彼について補足を入れる。それにしても、声を出せれない??そういう病気なのかしら??
声を出せれないってことはコミュ障以前の問題じゃない。どうやって、やりとりをしていくのよ。
「それに関しては問題はないよ、理亞。別にコミュニケーションは言葉だけでやりとりするもんじゃない。文字を書いたり、音声アプリを使用したりと、他にも色々な方法はある。それに…………」
パパの言葉の途中で、彼は私達に近づく。そして……………
伊吹「……………」シュシュシュ
彼は真顔で手を使って、何かをしていた。人差し指を曲げたり、クルクルと回したりして………。何してんの??
聖良「これは………手話ですか??」
手話??手話って、耳が聞こえない人達に向けてやるやつよね??
「そう。伊吹くんは声を出すことは出来ないが、手話を使ってコミュニケーションを取ってくれる。ちなみに、今の翻訳すると『こんにちは。はじめまして』だ。」
聖良「父様も手話を??」
「基本的な所まではね。良かったら2人もこの機に覚えるといいよ」
え、嫌だよ。なんで、そんな奴のためにわざわざ、そんな面倒くさいことをしなければならないのよ。
「それじゃあ、僕は伊吹くんを連れてこの辺りを道案内したり、ご近所さんに紹介したり、彼の家具や服を買いになどして出掛けてくるよ。2人とも、留守番よろしくね」
聖良「分かりました」
理亞「…………はい。」
パパはそう言って、彼………天草 伊吹を連れて店へと出て行った。
聖良「それにしても、嬉しいですね!!理亞!!」
姉様が嬉しそうにキャッキャッしながら私に話しかける。
理亞「何が??」
聖良「家族が増えるんですよ!!早く、私も彼と仲良くしたいです!!理亞もそう思うでしょ??」ニコニコ
えぇ…………。どうして、そこまで嬉しそうな表情ができるの??男なんだよ??女の子だったらまだ、分かるのに……。
聖良「あ、そういえば父様の本棚にあれがあったような……………」タッタッタ
姉様はそう呟いて、早足で2階の方へ登って行った。バタンガタンと慌ただしい音が上から聞こえたあと、早足で再び私の方へ戻ってくる。
ホコリの被った本を1冊抱えながら。
聖良「ありました!!ありましたよぉ、理亞!!」
理亜「姉様、何それ??」
聖良「手話の本です!!」
理亞「ーーーーーーーッッ!?」
手話の本!?まさか、姉様………。
聖良「早速、手話を覚えましょう!!」ペラリ
バン!!と持っていた本をリビングのテーブルに置いたあと、姉様はペラリと手話の本を開く。
理亞「ちょっと待ってよ、姉様!!」
姉様「どうしたんですか??理亞。」
どうしたんですか??じゃない!!この姉は何を考えてるの!!??
理亜「本当に手話を覚えるつもり!?あいつのために!?」
聖良「そうですが………??」
理亜「どうして!?あいつは得体が知れないのよ!?不気味だし!!それなのに……」
私の言葉に対して、姉様はニコッと微笑みながら一言だけ言葉を出した。
聖良「家族になるからですよ」
理亜「ーーーーーーーッッ!?」
姉様のたった一言で、私は身震いをしてしまった。
聖良「確かに、私たちはまだあの子の事をよく知りません。ですが、その逆も然り。彼も私たちのことをよく知らない。当たり前ですよね??今日、初めて会ったんです。だから、彼とはこれから先、コミュニケーションを取って互いのことを知り合わなければなりません。その方法が手話ならば、私は覚えます。私自身も彼と会話したいですしね。」
理亞「……………………」
姉様の言葉を聞いて、私は何も言えなくなる。普段は、可愛くてポンコツな姉様のくせにこういう時に限って核心をついてくるような事を発言してくるから、少しだけズルい。
姉様はそれからは何も言わず、本に目線を移して、ボソボソと呟いたり手を動かたりしていた。
全く………本当に面倒くさいんだから。
聖良「ん??」
私は姉様の隣に座っていた。それを見て、姉様は目を丸くしている。
聖良「理亞??」
理亜「べ、別に。あいつのために覚える訳じゃないわよ。これから先、一緒に住むってことは店も手伝わせるんでしょ??それなら、先輩として色々と教えなきゃいけないし。姉様1人に負担をかけさせないためよ。」
顔に熱を感じながら目線を逸らして、そう言うと姉様は微笑む。
聖良「ふふ。素直じゃないですね」
理亞「……………」プイッ
聖良「じゃあ、2人で覚えましょうか!!」
理亜「……………うん。」
こうして、私と姉様は本を読み合って2ヶ月かけて手話をマスターした。
3話目から、姉様ポンコツへと化します。
お楽しみに!!
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