Saint Snowと無口の居候。   作:七宮 梅雨

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なんか、投稿ミスってたぽいですね。
教えてくれた方、ありがとうございます<(_ _)>

改めてどうぞ。


20話「高校受験」

 試験から数日が経ち、遂に合格発表日がやってきた。私はママが作ってくれた朝食をなんとか喉に通し、中学の制服へと着替えていく。

 

 ちなみに、今日は試験日と同じく、伊吹と一緒に向かう予定だ。

 

聖良「理亞〜」コンコン

 

 制服に着替え終えると同時に、私服姿(『理亞の姉ですが何か?』とプリントされているTシャツ)の姉様がドアをノックしながら部屋に入ってくる。

 

聖良「遂にこの日がやって来ましたね。理亞、緊張してますか?」

 

 姉様は少し心配そうにして私に言葉を出す。何か…………申し訳ないな。だから、私はなんとか笑顔を作って返答した。

 

理亞「うぅん、全然平気よ、姉様。大丈夫!!」

 

 はい、嘘です。めちゃくちゃ緊張してます。もう、さっき食べた朝食を吐きそうなぐらい緊張してます。てか、緊張関係なしで吐きそう。だって、今日の朝食………カツ丼だったもん。

 

 いや、ママの気持ちは分かるよ?今日は私にとってとても大切な日だもん。試験当日もカツ丼だったし…………。でもね………、やっぱり朝からカツ丼は超絶ヘヴィだよ、ママ。それを完食する私も私だけど。

 

聖良「母様、とても心配していましたよ。………こんな大切な日に朝食で出したカツ丼をペロッと完食した理亞のことを。」

 

 そっち!?私の高校の合否の心配じゃなくてそっちの心配!?

 

聖良「母様自身も面白半分で理亞にカツ丼を出したつもりだったのに………まさか完食するとは思ってもいなかったらしいです。」

 

 え、何??ママ、私に面白半分でカツ丼出したの!?それ聞いてすごくショックなんだけど!?完食した理由も普通に残すと勿体ないから無理してまで食べたのに……………。

 

聖良「ちなみに、私の時も試験と合格発表日の朝食はカツ丼でしたよ」

 

理亞「そうだったの?」

 

聖良「はい。」

 

 容姿端麗と奇怪千万が組み合わさった存在である姉様のことだ。どうせ、どんぶり1杯どころか3杯ぐらいお代わりして何事もなく完食してるに違いない。

 

聖良「流石に朝からカツ丼はキツイので、半分くらいしか食べれませんでした」(´・ω・`)ショボーン

 

理亞「そこは普通なの!?」

 

聖良「り、理亞?」

 

理亞「あ、なんでもない。こっちの話………。」

 

 どうしてこういう時に限って普通の行動をとるの??少しだけ姉様を馬鹿にしてしまったことに関して罪悪感を覚えたんだけど………。

 

 私はその罪悪感を和らげるために、姉様に話しかけることにした。

 

理亞「そういえば、姉様は合格発表日の時はどんな感じだったの?やっぱり緊張した?」

 

 よくよく思い出してみれば、姉様の合格発表日は私と伊吹は学校だったため、どんな感じだったのか分からないし、よく覚えていない。やっぱり、緊張したのかな?

 

聖良「はい、もちろん緊張しましたよ。」

 

 姉様は懐かしむように言葉を出した。流石の姉様もどうやら緊張していたらしい。まぁ、これが普通よね。

 

聖良「合格してるか不安になって、たまにウェンディに大丈夫かなって話しかけてましたもん。」

 

理亞「いや、ちょっと待って?姉様。もしかして………ウェンディと一緒に行ったの??」

 

 ウェンディとは、私達が通っていた中学で飼育されている馬のことであり、馬術部に所属していた姉様のかけがえのないパートナーである。

 

聖良「はい。1人だと心寂しかったので………。何か問題ありました?」

 

 大ありよ!?毎度の事ながら、何してるの!?

 

聖良「そういえば、あの時は周りの目線が凄かったですね。」

 

 でしょうね!?そんな合格発表日に馬に跨ってやって来るなんて誰も想像してないわよ!!恐らくその場にいた人々は合格した喜びや不合格だった悲しみを遥かに上回ったに違いない。

 

聖良「あ、でも合格だって分かった時は安心しましたよ。嬉しすぎて、帰りは少しだけはしたなかったですけど、色んな場所に足を運んで買い食いしながら帰りましたね。」

 

理亞「まさかだと思うけど、ウェンディに乗りながら…………じゃないよね?違うよね?」

 

聖良「え?乗りながらでしたけど………。」

 

理亞「oh……………。」

 

 この瞬間、私の頭の中で馬に乗りながらスーパーの肉まんを頬張っている姉様の姿を思い浮かんでしまった。可愛いけど、その光景がカオスすぎる。

 

 「理亞〜、時間大丈夫〜??もうそろそろ時間じゃないの〜??伊吹、玄関でずっと待ってるわよ〜。」

 

理亞「あ、もうそんな時間か。」

 

 ママの声が聞こえたあと、時計を見てみると、もう出発する時間となっていた。姉様と話しているうちにだいぶ時間が経っていたらしい。

 

聖良「どうですか?緊張………薄れましたか?」

 

 そう言って、ニコッと微笑む姉様。まさか………

 

理亞「緊張を和らげるために………わざわざあんな作り話を?」

 

 落ち着いて考えてみれば、姉様の過去は普通におかしい部分が沢山あった。もしかしたら、姉様は私のために作り話を話してくれたのかもしれない。

 

聖良「いえ?どれも本当の話ですが………。」

 

 え、あ………うん。そうだよね。姉様だもんね。

 

 私は深く考えるのをやめて、そのまま荷物を持って合否を確認するために玄関で待ってた伊吹と共に高校へと向かった。

 

 

 ♠♠♠♠♠

 

 

理亞「ってことがあったのよ。普通に考えてありえなくない??」

 

伊吹『いや、何してんの?あの人』

 

 伊吹と並んで高校に向かっている途中に、私は先程あった内容を伊吹に口にしていた。それを聞いて、伊吹も無表情だが、呆れているように見える。

 

伊吹『でも、そのおかげで緊張………なくなったんじゃない?』

 

理亞「…………悔しいけどその通りね。してやられた感じ。」

 

伊吹『結局今まで聞いてこなかったけど………、試験はどうだったの?』

 

 そういえば、こいつ………。遠慮してなのか私の試験について聞いてこなかったわね。

 

理亞「筆記はよく出来た方だと思う………。面接は…………何回か緊張してどもっちゃったけど、しっかりと自分の気持ちは伝えたつもり」

 

 筆記は姉様や伊吹のおかげでしっかりと解けた方だと思う。自己採点しても最低でも7割はとっている。あとは周りの出来次第だ。

 

理亞「あんたはどうなのよ」

 

伊吹『僕?……………いつも通りかな』

 

 こいつのいつも通りはほぼ完璧といっても過言ではない。しかしーーー

 

伊吹『ほら、僕って………、こんなんじゃん??面接とかほぼ執筆で伝えてたし………。』

 

 そう。だいたいの高校の試験には面接がある。面接となると、優秀な伊吹も少なからず周りと比べて不利になってしまうだろう。

 

 だいたいの受験者はどの質問が来ても答えられるように事前に考え、口にする。その様子を見て、面接官は高校に入れるべき生徒を選別する。

 

 しかし、伊吹は言葉を出すことができない。それだけでも、失礼ながらマイナスへとなるだろう。いくら適切な文字を試験官に伝えたとしても、やはり言葉と比べてしまったら自分の気持ちを相手に伝えることはできない。

 

 伊吹の場合は本当に運で決まることになると考えられる。学校側も特例である伊吹に関しての話し合いを何度も何度も行ったことだろう。

 

伊吹『ま、滑り止めには合格してるし何とかなるよ。』

 

 伊吹はそう言いながら、道中に設置されていた自販機で購入したミルクティーを開けて口にする。

 

 私も一緒になって自販機で購入したホットティーを開けて口にする。体内に入ってくるホットティーが冷えてしまっま体を温めてくれる感触が全体に伝わってくる。買って正解だった。

 

 飲み終わり、缶をゴミ箱に捨てて再び高校へと向かう。

 

 そして、ようやく目的地へと到着しようとした瞬間ーーー

 

 

 「ぐず………、ダメだったよぉ……。ママ、ごめんなさい…………。ごめんなさい」ボロボロ

 

 

 「あんなに頑張ったのにね………。」

 

 目の前から、両手に涙を大量に流し、嗚咽を交えながら隣にいる母親らしき女性に何度も何度も謝る1人の女子が現れた。彼女の制服は見覚えがある。隣町にある中学校の制服だ。つまり、彼女はこの高校に受験して、様子を見るからに…………、

 

 

 

 落ちてしまった子だ。

 

 

 

理亞「ーーーーーッッ………。」

 

 私は彼女の姿を見た瞬間、今、自分がどのような立場にいるのかハッキリと………いや、改めて認識させられた。それも、とても最悪な方法で。

 

 恐らく、これから私が目にする光景は簡単に分かりやすくいえば、天国と地獄だろう。もちろん、合格になった子の喜びが天国で、不合格になってしまい、先程のような女性のように嘆き悲しむ姿が地獄。

 

 あと数分も満たさないうちに、私もその2つのどれかへと所属することになる。

 

理亞「あれ??」ブルブル

 

 気付いたら、私の手は震えていた。手だけじゃない。体も足も何もかもが震えていた。なんとか止めようと思っても震えは止まることは無い。

 

理亞「うぷ」

 

 そして、体内にある何かが込み上げてくるのを、私は口に手を当て全力で抑えた。もし、一瞬でも気を緩んでしまったらそれが口から吐き出てしまいそうだった。

 

 『やばい』

 

 今の私の頭の中にはその3文字しか思い浮かばない。そしてひたすら、その3文字を心の中で連呼する。

 

 このままだと、確実に危ない。どうしたら……、と思ったそんな時だった。

 

 

 ーーーガシッ

 

 

理亞「…………伊………吹?」

 

 急に左手に温かさを感じた。見てみると、伊吹が私の左手を握っていた。

 

伊吹『………………』

 

 伊吹は手話や執筆で何かを伝えることなく、じっと私の顔を見つめる。彼の濁った瞳からは、明らかに何かに怯えてそうな私の顔が映っていた。

 

 こいつが何をしたいのか、全く分からない。

 

 伊吹『……………』グイッ

 

理亞「わわ………ちょっと!!」

 

 私の左手を掴んだまま、伊吹は高校の校門に向かって歩を進める。無理やり、引っ張られる私はこいつの手を解こうと力を入れるが、離れることは出来なかった。私自身、力はある方なのだが、それでも無意味に近かった。

 

 そして、校門がすぐ目の前まで連れてった瞬間に、伊吹は私の手を離したあと、すぐに私の後ろへと移動し、思いっきり背中を押した。

 

理亞「わわっ!?」

 

 それによって、私はけんけんぱという形で片足で何回か飛びながら、校門をくぐった。

 

理亞「あ、あんた!なにするのよ!!」

 

 

伊吹『こんな所でうじうじしても結果は変わらない。』

 

 

理亞「………ッッ」

 

 私が声を上げると、伊吹は手話で私に返答をする。その時の伊吹の威圧に思わず、言葉を詰まらせてしまう。

 

 

伊吹『僕の知ってる理亞ちゃんは………どんな相手だろうが、勝負前で挫けることなく真っ向に突き進む優しい子のはずだ。』

 

 

理亞「伊吹……………」

 

 

伊吹『んで、どうする?行くの?行かないの?』

 

 

理亞「……………すぅぅ………はぁぁ。」

 

 伊吹の問いに、私はその場で大きく深呼吸を行った。それで、だいぶ気持ちが落ち着き、冷静になることが出来たと思う。

 

 私は馬鹿だ。伊吹の言う通り、こんなところで怖がろうがびびろうが、うじうじしようが、受験結果が変わることは無い。受かってるか、落ちてるか。その二択のどっちかだ。

 

 むしろ、こんなところでつまづいている時点で、応援してくれているママやパパ、そして勉強を必死に教えてくれた姉様やこいつに失礼な行為だ。それを今になって気付くなんて。

 

 私は真剣な表情を浮かべて伊吹の顔を見ながら言葉を出した。

 

 

理亞「行ってくる」

 

 

伊吹『………行ってらっしゃい』

 

 伊吹が手を振るのを最後に、私は1人で学校の奥へと進む。恐らく、あの人貯まりになっている掲示板に合格発表が掲示されているのだろう。

 

 私はポケットから受験票を取り出す

 

 『604』

 

 これが、私の受験番号だ。もし、あの掲示板にその番号があれば、私は無事に合格したことになる。

 

 私はゆっくりと、掲示板の方へと進める。できるだけ、周りを見ないように足を進めるが

 

 「わーい、受かったー!」

 

 「うぇぇん!落ちだァァァ」

 

 「よく頑張ったねぇ」

 

 「ま、こんなもんか。」

 

 「ほらぁ、だからあんなにーーー」ガミガミ

 

理亞「…………ッッ」

 

 視界を遮っても、周りの声が耳の中に入ってくる。それは想像通りのものだった。

 

 またしても、少しだけ吐きそうになってしまったが、堪え前に進む。

 

 そして、遂に掲示板の前へとやってきた。その掲示板にはずらーっと数多くの番号が乗っている。

 

 私は590番辺りからゆっくりと目をやる。この時の私の心臓は周りにも聞こえるんじゃないかと思うぐらいまで鳴り響いていた。

 

 

 590

 

 

 593

 

 

 595

 

 

 596

 

 

 597

 

 

 600

 

 

 601

 

 

 603

 

 

 60…

 

 

 そして、私の番号は…………

 

 

 ♠♠♠♠♠

 

 

 番号を確認した私は校門へと戻っていく。さっきの場所から変わることなく伊吹はその場で立って、私を待っていた。

 

 私の姿を捉えた伊吹はこっちへとやってくる。

 

伊吹『理亞ちゃん…………』

 

 心配そうに見つめる伊吹に対し、私は………

 

 

 

理亞「あったよ、伊吹。私の番号………。合格………してた!!」ボロボロ

 

 

伊吹『ーーーーーッッ!?』

 

 ずっとずっと堪えていた涙を流しながら、スマホで自分の受験番号である『604』が掲示されている写真を伊吹に見せる。

 

伊吹『おめでとう、理亞ちゃん!!』

 

 伊吹は手話でそういった後、私の両手を握り、ブンブンと上下に大きく振る。私のことなのに、自分のように喜んでくれるなんて。

 

 それよりも4月からは姉様と同じ高校かぁ。色々とありそうだけど楽しみだ。

 

伊吹『聖良姉さん達には伝えた?』

 

理亞「一応、LINEで………。あ、返信きてるわ」

 

聖良『今日はお祝いですね!朝まで寝かせませんよ♪』

 

 なんか、超絶意味深な返信が来てるんだけど。これはお祝いで寝かせないってことだよね?決してやましい意味とかではないよね??

 

伊吹『姉さん、なんて?』

 

理亞「…………おめでとうだって」

 

 この内容を伊吹には言いずらかったので、適当に嘘をついておいた。

 

理亞「それより、伊吹は大丈夫なの?今から一緒に行こうか?」

 

 私は受かったけど、まだ伊吹がいる。せっかくここまで着いてきてもらったんだ。もし、今から伊吹の高校に足を運ぶとならば、是非とも一緒に行こう

 

伊吹『あぁ、大丈夫。僕の場合、インターネットで合否見れるから』

 

理亞「あ、そうなの?で、どうだった?」

 

 私が受かったんだ。なんやかんやで伊吹も受かってるに違いなi…………

 

 

伊吹『落ちた』

 

 

理亞「……………は?」

 

 

伊吹『普通に落ちたよ。僕の番号………無かった。』

 

 

 何一つ表情を変えずに手話をやる伊吹だったが、瞳が何十倍にも濁っていた。これ………、相当きてるな。

 

理亞「……………帰りさ、ラッキーピエロ寄る?奢るよ?」

 

伊吹『………………寄る。』

 

 

 この日、合格した私のお祝いと落ちてしまった伊吹の慰め会が同時に行われることになった。

 

 

 

 




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