Saint Snowと無口の居候。   作:七宮 梅雨

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お久です


21話『合格祝い』

 あの身震いするほど寒かった合格発表から早数ヶ月が経過し、少しだけ暖かくなりながら4月を迎えた。

 

 そして、今日は待ちに待った入学式。学校先は姉様と同じ学校である函館聖泉女子高等学院だ。

 

 私は勉強机の上に置いてある学校の制服を丁寧に手にする。2年近く姉様が学校に行く時に来ていたやつと同じもので、制服とは思えないほどのお洒落で可愛いものとなっており、ずっと前から着たいと思っていた。

 

 ここで、姉様のやつを借りれば良かったのでは?と思う人がいるかもしれない。当然、私も馬鹿じゃない。勿論、姉様が入学してから間もない頃に着たいと思ってお願いして裾を通したことがある。

 

 あの頃の私はまだ若かった。それが間違いだったということに気づかなかったのだから。

 

 まずサイズ自体が全く違った。着た時に真っ先に思ったけど、ブカブカだったのだ。姉様の身長が162cmで私の身長が153cmだから当たり前かもしれない。

 

 けど、問題はそこじゃない。そこじゃないのよ。

 

 

 ……………胸部分がとても空洞感があった。

 

 

 あの時の衝撃は今でも忘れられない。恥ずかしい話、私の胸は中学の頃に比べれば大きくなったものの、姉様やママほどまで大きくはならなかった。サイズ的には………ギリギリみかんぐらい。

 

 おかしいな。毎日、欠かさずに牛乳飲んでるしお風呂の後はバストアップのストレッチをやってるんだけどな………。あれ、目から涙が………。

 

 と、こんな茶番はこれぐらいまでにして私は寝巻きを脱いでから制服を着る。当然だけど、私が着れるようにサイズを調整しているため、ピッタリだった。感動だぁ………。

 

聖良「理亞、そろそろ朝食が出来まし………」コンコン

 

 制服を着て感動していると、姉様が扉をノックしながら扉を開けて部屋へと入って来て否や、私の制服姿を見た瞬間にピクリとまるでマネキンのように動かなくなった。

 

理亞「ね、姉様?」

 

 ちょ、急にそんなことされると困るんだけど。どうすればいいの?

 

聖良「うぅ………」ポロポロ

 

理亞「泣いてるぅ!?」

 

 動かないと思ってたら、すごい泣いてた。それはもう尋常じゃないほどに。涙で寝巻きがビショビショになってた。

 

聖良「と、尊いですぅ。」パシャパシャ

 

 と、姉様はそう言いながら、いつの間にか手にしていたスマホで私の制服姿を連写していた。

 

理亞「姉様!!」

 

 私は顔を真っ赤にさせながら姉様からスマホを取り上げようとするがーーー

 

 ーーースカッ

 

理亞「ーーーッッ!?」

 

 

聖良「残念でしたね、理亞。それは……残像です」( ・´ー・`)ドヤァァァァァァァ

 

 

 スマホを取り上げようでした腕が、何故か空振りし驚愕していた所、いつの間にか私の背後に移動していた姉様がドヤ顔で言葉を出す。

 

 いや、普通にうちの姉がさらっと人間やめてる件について。

 

聖良「ふふ、理亞も頑張れば出来るようになりますよ」

 

 出来なくて大丈夫だから、姉様。私はまだ人間でいたい。

 

聖良「って、こんな所で時間を潰す訳にはいきません。理亞の次は伊吹を起こしにーーーあ」

 

理亞「ッッ………姉様」

 

 姉様が思い出したと言わんばかりに言葉をだすが、途中で気づいてしまったのか、言葉を出すのをやめて俯いてしまった。

 

 多分………、私も今は姉様と同じ俯いていると思う。視線に移るのは部屋の床に敷いてあるカーペットだから。

 

聖良「そうですか、もうあれから数ヶ月も経つんですね。時が流れるというものは早いものです」

 

理亞「…………うん。」

 

 

 そう…………、あの日………。高校の合格発表の日から伊吹は…………………

 

 

聖良「うぅ……」バタン

 

理亞「ね、姉様!!」

 

 口元に手を押え、泣きながら膝から崩れ落ちる姉様。それを見て、私は慌てながらも姉様の側へと近づく。

 

聖良「理亞………、私は最低な人間です」

 

理亞「そんなこと!!」

 

聖良「いいえ、そんなことありません。私は………私は………」

 

理亞「あれは仕方がないことだった!!姉様が責任を感じる必要なんてないのよ!!」

 

聖良「でも!」

 

理亞「でもじゃない!!………そんな姉様が苦しむ姿を見て伊吹が喜ぶと思っているの??」

 

聖良「ッッ………そうですね。理亞の言う通りです。情けない所を見せてしまいました。こういう時だからこそ、姉である私がしっかりとしないといけないというのに。………まだまだですね。」

 

理亞「姉様………!!」

 

 私は微笑みながら姉様に手を差し伸べる。それを見た姉様も微笑みながら私の手を掴み、立ち上がった。

 

聖良「さぁ、理亞!私達は私達で、伊吹が胸を張れるような………そんな人間を目指していきましょう!!」

 

理亞「うん!!」

 

 こうして、私と姉様は互いの手をしっかりと握り、互いの目を見ながら今、この場で改めて誓い合った。

 

 

 

伊吹『2人とも、朝食が出来てるのに一向にリビングに出てこないから母さんが範馬勇次郎みたいな表情して……………2人は何してんの?』ガチャ

 

 

 

 

 …………てへっ(´>∀<`)ゝ

 

 

 ♤♤♤♤♤

 

 

理亞・聖良「ご馳走様でした」

 

 私と姉様は頭に大きなたんこぶを作りながら、ママが作ってくれた朝食を完食した。いやぁ、伊吹が言ってた通り、リビングに来たら本当にママが範馬勇次郎みたいな表情してたから、死を覚悟したわ。実際にゲンコツを貰った時も三途の川がうっすらと見えたもん。

 

 食べ終わったお皿を片付け、私は再び自分の部屋へと戻る。そして、時間に余裕があるのを確認した私は先程の姉様とのふざけたやり取りをやったおかげですっかりとシワが出来てしまった制服を、一旦脱いでアイロンをかける。

 

 せっかくの入学式だ。シワが出来てしまった制服なんて来て出たらみっともないし、どうせ姉様のことだ。中学の入学式や卒業式みたいに一緒に写真を撮るように頼んでくるだろう

 

理亞「よし」

 

 アイロンでシワを伸ばし、見た目も綺麗になった制服に裾を通した私はそろそろ髪を結ぼうといつも使っているヘアゴムを手にして結ぼうとしたがーーー

 

 

 ーーーブチッ

 

 

理亞「あ」

 

 結んでいる最中に嫌な音が聞こえた。ヘアゴムを目にすると、思った通りヘアゴムがちぎれてしまっていた。お気に入りだったのになぁ。でも、これ……、長いこと使ってたやつだから仕方がないのかもしれない。

 

 うーん、どうしようか。さすがに今からヘアゴムを買いに行くっていうのも無理だしな。今日の入学式だけはそのまま髪はおろした状態で行こうかな。でも、ずっと何かしらし結んでいた者としては落ち着かないし………。

 

 ママか姉様持ってないかな?少し聞いてみるか。

 

 リビングに行くと、今日は入学式だからか、綺麗な白色のワンピースを着たママと私と同じ制服を着た姉様がいた。

 

理亞「ねぇ、ママと姉様。ヘアゴム持ってない?いつも使ってるやつが結んでいる途中にちぎれちゃって………。」

 

 「あら、そうなの。あるかしら??」

 

聖良「あ、母様。大丈夫です。理亞、こっちに来てください」

 

理亞「?」

 

 姉様に呼ばれたため、私は彼女の近くまで移動する。すると、姉様は近くに置いてあった小さな紙袋を私に差し出した

 

理亞「これは?」

 

聖良「合格祝いです!私と伊吹からの」

 

理亞「え!?」

 

 突然の家族の合格祝いに戸惑いを隠せなかった私は驚きの声を上げる。

 

理亞「開けてもいいの?」

 

聖良「はい!」

 

 姉様に許可を貰ったため、丁寧に紙袋を開けていく。すると、中に入っていたのはーーー

 

 

理亞「ッッ、ヘアゴム」

 

 

 ちょうど、私が現在進行形で欲しがっていたヘアゴムだった。しかも、ほとんど髪を2つに結んでいるからか、ご丁寧に2つも。

 

 それに、このヘアゴムって………

 

 

聖良「ふふ、気付きましたか?私のやつとお揃いです♪」

 

 

 そう、何か見覚えがあるヘアゴムだと思ったら、姉様が高校に行きだした辺りで使い始めたヘアゴムと全く同じやつだった。すごく可愛いから、同じやつを手に入れたいと思っていたが、どうやら限定品だったらしく手に入れれなくて残念だった覚えがある。けど、どうしてこれがここに??これはさっきも述べた通り限定品のはずなのに……………。

 

 

聖良「伊吹と2人でヤフ○クやメル○リなどのアプリで探して購入したんです。あ、勿論新品未開封ですよ。」

 

 

 探すのに苦労しましたよ、と苦笑いしながら言葉をだす姉様。その瞬間、私の視界が滲み、歪み始める

 

聖良「理亞!?も、もしかしてあまり気に入らなかったですか!?」

 

 泣き始めた私を見て、姉様は心配そうに声をかける。違う、違うの姉様。

 

 

理亞「むしろ、逆よ、姉様。凄く嬉しいの!!ありがとう!!姉様、大好き!!」ダキッ

 

 

 私は姉様の胸に飛びつくように抱き締める。すると、姉様も「良かった………」と安堵の息を漏らしながら私の背後に腕を回して抱きしめる。

 

 

理亞「そうだ、伊吹!伊吹にもお礼を言わないと」

 

 

 こんなに素敵なプレゼントを貰ったのだ。姉様だけでなく、あいつにもちゃんとお礼を言わなくてはならない。

 

聖良「あ、伊吹ならもう行きましたよ」

 

理亞「えぇ!?早くない!?」

 

聖良「色々と準備があるみたいです。」

 

理亞「そっか………。お礼言いたかったのになぁ…………。」

 

 

聖良「ま、すぐに会えますけどね」ボソッ

 

 

理亞「ん?姉様、何か言った?」

 

聖良「いいえ?何も?それより、そろそろ時間ですね、理亞」

 

理亞「あ、本当だ」

 

 姉様が壁についている時計に指をさすとそろそろ出る時間帯になっていた。

 

 私は早速、姉様と伊吹がくれたヘアゴムを手にして髪を結ぶ。ふふ、姉様とお揃いだ♪

 

理亞「どう?姉様」

 

聖良「尊い!!」パシャパシャパシャパシャ

 

 姉様のお揃いのヘアゴムで髪を2つに結んだ私の姿を見て姉様は口元に手を当て、涙を流しながらまたしてもおかしな言葉を言いながらスマホで連写を行う。

 

理亞「もう、姉様!!」

 

 私は顔を真っ赤にさせながら姉様のスマホを取り上げようと腕を出すがーーー

 

 ーーースカッ

 

理亞「ーーーッッ!?」

 

 

聖良「それは残像です!」( ・´ー・`)ドヤァァァ

 

 

 もう!!それはいいから!!

 

 

 その後、私は姉様とママの3人で高校へと向かった。この場に伊吹がいなくて少しだけ寂しい。

 

 

 …………てか、よくよく思い出してみれば、あいつ………どこの高校に入学したのかしら??




天草伊吹→最近、理亞と聖良の2人が自分のいない所でおかしな行動を取り始めて将来に心配を感じている。第1志望校は落ちたものの、第2志望高校は受かっているため、最初はやっぱり落ち込んだものの、すぐに気持ちを入れ替えた。そして、その第2志望高校は前年度まで女子校だったとか…………。

鹿角理亞→合格発表日からは特にやることがないため、ダンスの練習や運動に力を入れるようになった。聖良とよく2人で伊吹が不合格になったショックで家出をしてしまったというよく分からない設定の芝居をやるようになった。
伊吹がどこの高校に入学したのかは分からない。

鹿角聖良→幽遊○書を読んで以降、自分でも残像が出来るのでは?と思いやってみたら思いのほか出来てしまった。他にも分身の術や変わり身の術、口寄せの術などを会得している。もう、ポンコツ通り越して人間辞めているのでは??と妹に思われている。

姉様のポンコツ具合

  • 現状維持
  • 控えめ
  • いいぞ。もっとやれ
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