伊吹が登場したことによって、ざわめきがオーバヒートに達しようとしていた。それは、女子校という中で異性が加わることに対しての動揺、困惑、絶望、怒り。もしくは、伊吹の容姿に歓喜をあげている者もいた。
よりによって、あいつがテスト生として入学するなんて。一体、いつから決まっていたことなのだろうか。少なくとも、伊吹が第1希望の高校に落ちてしまった後にこの話がどこかであがったとは思うけど。
ママやパパはテスト生について必要な書類やらで知ってて当然だと思うけど、姉様はこのことを知っていたのかしら………
多分だけど、姉様のことだから知ってたな。なんなら、姉様がきっかけでテスト生の話が上がったのかもしれない。それを引き受けた伊吹、ママやパパもおかしいけど……。
理亞「ん?」
ーーーあれ?私、今………少し喜んでる?口角が嬉しそうに上がっているのに気づく。
そっか………。落ち着いて考えてみれば、またあいつと一緒に学生生活を過ごせるんだ。そう考えると、なんだか楽しみになってくる。なにせ、ここは女子高校であり、あいつは元々は違う高校を目指していたため、中学と同じように過ごせるとは思ってもみなかったから………。
そうなると、不可能だと思われてた部活も一緒に出来るかもしれないってこと…………だよね?そうなんだよね?え、やば。
『共学化の可能性、そしてテスト生の対処については、クラス発表のあと、担任の先生からプリントで渡されると思うので各自、目に通しておくようにしてください。それでは、これで入学式を終わります。』
学園長の言葉で入学式が終わり、私たちは教師の指示に従いながら体育館を出ようとする。
その際、ふと、姉様と目が合った。すると、姉様は微笑みながら
姉様『良かったですね、理亞』
理亞「ッッ………」
こっそりと、手話で私にメッセージを送る。その後、『バッチーん☆』という擬音がハッキリと浮かび上がりそうなウィンクをして同時にサムズアップする。言動からして、やっぱりテスト生の件は姉様が絡んでいたと分かる。
「鹿角ぉ!!何立ち止まってんだ!!後ろが渋滞してるからはよ歩きなさい!!」
聖良「ハッ!ごめんなさい!音を置き去りにする勢いですぐに行きますね!」クラウチングスタートシマス
「そこまでやらんでいいわ!お前の場合、マジでやりそうだからやめろ!普通に歩けばいいから!!」クラウチングスタートヤメテ
「ほら、聖良。おてて繋いであげるから早く行きましょうね〜〜」オテテツナギマショ
聖良「はーい。」オテテツナギマス
と、先生やらクラスメイトらしき人物が姉様にツッコミを入れたり、上手く扱ったりとしていた。とうやら、姉様は相変わらずやらかしているようだ。
っと、私も早く行かないと後ろが渋滞しちゃうな。早く教室に行くことにしよう。
多分、本館に戻ったら私達のクラスが貼り出されることだろう。つまり、伊吹と同じクラスなのかどうかもそれで分かるということ。
ゔゔゔぅぅ……。出来れば、伊吹と同じクラスがいいな。同じクラスだったら、今後学校生活を送る時に効率よく過ごすことができる。
あと、あいつと同じクラスじゃないのが普通に嫌。ここだけの話、中学2年生のとき、クラス替えであいつと離れ離れになった時があった。その時に、真っ先に感じたのは"寂しい"という感情だった。
1年生の時はいつも私の傍にいてくれたのに………。姉様はもう卒業してしまっていたので、一緒に帰る人物は伊吹しかいない。そのため、放課後は伊吹が来るまで校門で待っていたものだ。
3年生では再び同じクラスになったということが分かった時は心の底から嬉しかった覚えがある。そして、同じ教室に伊吹がいることで心地良く いと感じているのを改めて認識した。
だからこそ………だからこそ!!
伊吹と同じクラスがいい。願わくば、ここは女子校なので色々と伊吹は不便だと感じることが今後、出てくるだろう。例え、器用でも多少は苦労するはずだ。なら、私はそれを支えてあげたい。フォローしてあげたい。力になるかどうかは分からないけど、多少は役に立つはずだ。
そして、遂にクラス分けが載っている紙が貼りだされている所までやってきた。私たち1年生は2クラスに分かれている。つまり、2分の1。
ーーードクンドクンと、自分の心臓の音が前に進む度に大きくなっていく。
私は目を閉じて手を合わせながら心の中で言葉を呟いていく。
お願いします、神様仏様姉様。
これからはもっと、『茶房菊泉』の営業のお手伝いをこれまで以上に頑張るし、学校の課題も怠らずしっかりとやります。なんなら、トイレやお風呂掃除も毎日やります。
だから、どうか………どうか!!
伊吹と同じクラスでありますように…………!!!
そして、私はゆっくりと目を開けた。
A組 鹿角理亞
・
・
・
B組 天草伊吹(テスト生)
・
・
・
理亞「終わった」ガクッ
どうやら、私は神様仏様姉様に見放されてしまったらしい。
♤♤♤♤♤
聖良「理亞、いつまでも落ち込んでてはいけませんよ。」
理亞「だってぇ………」グズ
入学式が終わり、家に帰宅した私はすぐに、自分の部屋に行き、ベットの上においてあるぬいぐるみを抱えて横になり、涙を浮かばせながらぐずっていた。
少しした後に帰ってきた姉様は心配そうに私を励ましてくれるが、まだ立ち直れそうにない。
因みに、伊吹はテスト生としての話が残っているようでまだ学校に残っている。
聖良「クラスが別だったとしても、すぐ隣じゃないですか。」
理亞「いーやーなーの!!いーやーだー!!」ドタバタ
珍しく、私はまるで欲しいものを買って貰えなくてグズっている幼稚園児みたいにバタバタと暴れる。それを見て、姉様も額に手を当てため息を吐いていた。
聖良「あー、もう!!分かりました。分かりましたよ!!少し待っててください!!」
理亞「姉………様?」
バタン!と音を立てながら部屋から出ていく姉様。5分ぐらいで戻ってきたが、制服姿だった姉様は何故かツナギを着ていて、頭にはライト付きのヘルメットに両手は軍手。そして、両手には電動コンクリートハンマーを手にしていた。
聖良「これで壁を貫いて、2つの教室を1つにしましょう!!そうすれば、伊吹と同じクラスになれますよ!!」グィィィィィィィン!!!
本来ならば、私は姉様にツッコミを入れることだろう。だけど、今の私は違う。
理亞「流石、姉様!!早速、明日やろう!!証拠隠滅は私に任せて!!」
聖良「私に任せて!!じゃありません!!そこはいつもみたいにツッコミを入れるところでしょう!?貴女までこっち側に来たらこの作品、ツッコミ役いなくなっちゃいますから!!」
理亞「ママがいるわ」ドヤ
聖良「いや、流石にもう40過ぎの人にツッコミをさせるのは少し読者層的に厳しい気が………。って、何を言わせるんですか!!メタ発言はもう禁止です!!」
理亞「いや、姉様しか言ってないわよ。」
全く……、と言いながら姉様は呆れたような表情を浮かべていた。少しふざけすぎたかもしれない。
互いに落ち着いたところで、私は姉様に向かって言葉を出していく
理亞「伊吹のテスト生の話はいつからあったの?きっかけは?」
聖良「………伊吹が第1希望の高校に落ちた5日後です。学園長自らが家に尋ねてきたのがきっかけです。」
理亞「学園長が?」
聖良「はい。元々は学園長は今回の共学化に向けて、テスト生の男子を探していたようです。しかし、女子しかいない学校の中で男子を招き入れるとなると、人は確実に今後のことを考えて選ばなければならない。だから、学園長はテスト生として相応しい男子を自分の目で探していた」
理亞「そこで学園長は伊吹に目をつけたってこと?」
聖良「はい。たまたま、休憩でうちの店に訪れたようで。その時に掃除していた伊吹を見つけたみたいです。そこからは、母様に軽く話をしたあと、後日、改めてテスト生としての話を持って家に来たのが発端ですね。」
なるほど。姉様の話を聞いてある程度は理解することが出来た。けど、まだいくつかは疑問は残っている。
理亞「そのテスト生の話を聞いて、伊吹は了承したっていうの?だって、あいつ、滑り止めは合格してたんでしょ?」
進学する高校が一つもないというのならば、テスト生を引き受けたのはまだ分かる。しかし、既にあいつには道があった。なのに、それを蹴ってまでテスト生を引き受けた理由がわからない。
聖良「あれ……嘘ですよ?」
理亞「え?」
う、嘘?え、どういうこと?
聖良「伊吹は滑り止めところか、第1希望の高校以外、受験は受けていません」
理亞「は?」
そんなこと、一言も………
聖良「第1希望の高校に不合格するのであればどこも同じことだということです。だから、落ちた場合はうちで就職するという形になっていました。貴女に言わなかったのは受験に影響を与えてしまう可能性があると思って言わなかったのでしょう。」
理亞「ッッ」
聖良「勿論、それは母様や父様は反対しました。しかし、伊吹はそれを貫き通しました。そんな時に、学園長からのテスト生の話が来たんです。」
事の本末を知って、私はぬいぐるみを抱き抱えてえいる力を無意識に強めてしまう。私の知らないところでそんなやり取りがあったなんて。
ーーーガラガラ
聖良「帰ってきたみたいですね………理亞??」
扉が開く音が聞こえてきた瞬間、私は直ぐに部屋から出ていき、玄関はと向かう。
理亞「伊吹………」
伊吹『理亞ちゃん』
靴を脱ごうとしてる伊吹の姿があった。
本当なら、今すぐにでもふん殴ってやりたい。罵倒してやりたい。どうして、私に一言も言わず、嘘をついたのか。
理亞「姉様から聞いた。あんた、私に嘘をついてたそうじゃない」
伊吹『ーーーッッ、それは』
私が口にすると、伊吹は少し動揺する。少しは罪悪感を感じていたようだ。
私に怒られるとこいつは思っているんでしょうね。
理亞「だから、伊吹。許してあげる罰として………
明日から帰る時私が来るまで教室か校門で待ってなさい!!」
伊吹『え?』
予想外の言葉に、伊吹はぽかんとした表情を浮かべる。
理亞「いい?分かった?分かったら今すぐ敬礼しなさい!!」
伊吹『( ; ˘•ω・):ゞビシッ!!』
理亞「よし!」
さりげなく、一緒に帰る口実を作った私は内心、嬉しく思いながら部屋へと戻ろうとする。
あ、これだけ言っとかないと………。
私は再び、伊吹の方に振り返って、想い人の名前を呼ぶ。
理亞「伊吹!」
伊吹『?』
理亞「明日からまた3年間。よろしくね!!」
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