理亞「はじめまして、鹿角理亞です。趣味はお菓子を作ることで特技はバク転です。実家で甘味処をやっているので良かったら食べに来てください!よろしくお願いします!!」
高校生活がもうすぐ始まろうとしている中、私は朝から洗面台の鏡に向かって自己紹介の練習を行っていた。
未だに忘れもしない中学一年生の時の自己紹介。あれは予め決めてなかった私が悪いが、緊張が勝ってしまい、上手くいくことが出来なかった。伊吹の助けがあったものの、自己紹介の内容も酷かった覚えがある。
そのため、私は自己紹介が行われる際、前もってこうして鏡の前で自己紹介の練習をやっている。そのおかげで、中学2年、3年の自己紹介では大きな失敗はしていない。
しかし、今回は中学とは違う。
今日から共に1年間過ごすクラスメイトは全員、初見の方だ。名前も知らなかければ、どういう性格なのかさえも知らない。
しかし、それは相手も同じこと。クラスメイトも私のことを知らない。知ってもらうためにはどうするか。自己紹介でしっかりとわたしのことを知ってもらうしかない。
ふふ、なんだかこの考え。昔、伊吹と初めて会った時に、姉様が私に言ってくれたものと同じね。でも、確かに本当のことだから、やっぱり姉様は凄いということが分かる。
理亞「んー、言葉はこれで……いいかな?でも、もっと捻った方が………」
私は傍に置いてあった『自己紹介ノートvol.4』と書いてあるノートを手にして開く。そこには何度も何度も書き直した跡がくっきりと残った文章が並べられている。
理亞「ちゃんと自分の趣味や特技もはっきり伝えてるし………あ、けど最後はなんか店を宣伝してるみたいでいやらしい子って思われない………かな?うーん、難しいな……」
髪の毛を乱暴に掻きむしりながら、私はノートを睨みつけるように眺める。あと、数十分で家を出なくちゃ行けない時間なのに………。
「理亞ー、もうそろそろ行った方がいいんじゃない〜?まだ着替えてないんだから〜!」
あー、もう!!時間が足りない!!残りは学校行きながら考えるしかないや。
はーい、と玄関に向かって言葉を出したあと、私は最後に洗面台の鏡に再び向かいーーー
理亞「………」ニコッ
頬を緩ませ、口角をゆっくりと上げた。いわゆる………笑顔の練習である。
どうして、こんなことをしているのか。私は普段からツリ目だからか、周りからは怒っているような印象を与えてしまっているのこと。そのおかげで、話しかけたくても話しかけれない人が多かったということを聞いたことがある。
そのため、微笑む癖をつければ少しでも印象を変えることが出来ると思ったため、笑顔の練習を行うようになった。
こんなところ、誰かに見られたら死ぬほど恥ずかしいけどやむを得ない。
もう少し頬を緩ませようと思って、両手を使ってむにーっと頬を緩ませたところでーーー
ーーーガチャ
伊吹『理亞ちゃーーー?』
理亞「んにゃ?」(ノ)・ω・(ヾ)
突然、伊吹が入ってきてしまい、未だに両手でむにーっと頬を緩ませている私の姿を見られてしまう。その瞬間、全身が熱くなるのを感じながら真っ赤にさせる。
理亞「♡☆&@#+@♡☆&$!!?」
言葉にならない叫びとはこういうことを言うんだな、と実感するぐらいの叫び声をあげる。もはや、奇声に近いものかもしれない。
伊吹『…………』キィィ
そんな私の姿を見て、伊吹は目を逸らしながら扉を閉め、タッタッタッと逃げるかのような足音が廊下に響き渡る。
理亞「ふぅー」
私は1度、大きな息を吐いたあと、その場から何回か屈伸や伸脚をしたあと、クラウチングスタートの体勢をとり、
理亞「伊吹ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」ダッダッタ
私は叫びながら、最高のスタートダッシュを決め、逃亡をしている伊吹の後を全力で追う。
あんな恥ずかしい姿を見られたんだ。コ〇ス!!もしくは少なくとも半殺しにしてやる!!
ーーーガラガラ
扉が開閉した音が素早く、そして短く玄関の方から聞こえてくる。ちっ、ひと足先に学校に向かったわね!?だったら、私も!
「こら、理亞!廊下を……あーれー!!」グルグル
玄関に向かう途中、ママが廊下を走る私の姿見て注意しようとするが、私はそのまま通行する。通行する際、肩がママに当たったらしく、昔のアニメでよく目にしたシーンみたいにママは勢いよく回転していた。本当に出来るんだアレ………。
玄関に目の前まで到着してが、ここで私は1度頭が冷めたからか今の自分の現状を把握する。今の私はまだ寝巻きでかつ、学校の鞄すらも手にしていない状態だ。このまま学校に向かうのは流石にまずい。けど、それだと伊吹との距離の差は開いてしまう。くっ、どうしたら………
聖良「任せてください、理亞」ドヤ
理亞「ーーーッッ、姉様!!」ダッダッタ
まるで救世主かのように制服姿の姉様はドヤ顔をしながら玄関の前でサムズアップをする。一体何を……!?
姉様は胸ポケットから1枚の大きな赤色の布を取り出し、ヒラヒラとさせる。いや、本当に何をする気なの!?
聖良「理亞!このままこの布を通り過ぎてください!」
理亞「何で!?」ダッダッタ
聖良「いいから!とにかく私を信じてください!!」
理亞「わ、分かったわ!」ダッダッタ
何をするのかよく分からないけど、私は姉様を信じて赤い布を通り過ぎる。
もちろん、私は全力で赤い布を通り過ぎたため、その間1秒もなくコンマ秒だ。それなのに、どうして……。
どうして、さっきまで寝巻きだった私は制服姿でかつ学校の鞄を肩に背負っているのだろうか。
通り過ぎる際、一瞬だけ視界が赤い布で覆われたが、通り過ぎたら何故か着替えが完了していた。
聖良「こんなこともあろうかと、実は早着替えの技術を磨いていたんです。どうでしたか?」ドヤァァ
どうでしたか?ってドヤ顔で言われても、普通に凄いしか言いようが無いんですけど………。早着替えっていう次元を軽く超えてたんですけど……。しかも、姉様の手には綺麗に畳まれている私が先程まで着ていた寝巻きがあった。もう何から何まで怖いよ。
しかし、姉様のお陰でタイムロスすることなく伊吹の事を追いかけることが出来る。姉様に感謝しなくちゃ。
聖良「あ、理亞の鞄の中に伊吹が忘れた弁当が入っているので渡してもらってもいいですか?」
理亞「分かったわ、姉様。」ダッダッダ
そう言って、最後に姉様とハイタッチ&グーをしてから私は外に出た。周りを見回すと、ギリギリ伊吹の背中を視界に捉えることができた。そこか!!
理亞「待てぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
私は叫びながら伊吹が逃げる方向に向かって全力で走る。ここから、私と伊吹とのチェイサーゲームが始まった。
伊吹が狭い道や路地裏の方に逃げ込んでも、何事もなく追いかけ、道中に置いてあるバケツやゴミをバリケードとして設置しても、私はそれを大きくジャンプして乗り越え、信号が赤になっている時は2人で足踏みをしながら横に並んで待ったり(←??)と、合計して15分ほど追い続けた。
伊吹『…………』ダッダッダ
理亞「あい………つ、やっぱ…………速い!!」ゼェゼェ
全力で走り続けているからか、体力に自信がある私でも息を上げてしまい、走るスピード低下している事がわかる。そんな中、前に走る伊吹のスピードは下がる様子は見えなかった。むしろ、上がっているようにも見える。どんだけ、体力があるのよ!?
昔からそうだった。あいつは馬鹿みたいに体力があってどんなに行動しても疲れの表情を浮かばすことはなかった。元々、感情自体あまり出さないが、汗や息を上げたところを見たことがない。
身内にほぼ人間をやめているに近い存在である姉様がいるため、そんなに気にはとめていなかったが、伊吹もまた、私と同じ人間なのか疑ってしまうことがある。
伊吹『…………』タッタッタ
理亞「…………くっ!!」
まずい………。このままだと、学校に着いてしまう。流石に学校につかれたら追うことは出来ない。周りに不振な目で見られてしまう。
何とかそれまでに伊吹を捕まえなくては!!
その時、私は伊吹しか眼中になかった。周りの視界を全て遮断させ、伊吹の姿だけしか捉えなかった。
だからだろう。本来ならすぐに気付くことに気付くことが出来なかった。
「きゃ、きゃあ!!!」キキー
理亞「ーーーーーーッッッ!!!」
隣から女性の驚きの声が聞こえてきた。振り向くと、そこにはすぐ私の目の前には自転車に乗った女性がいた。
そう、私は周りを見ずに伊吹だけしか見なかったため、曲がり角から自転車が接近していたことに気づかず、そのまま飛び出した形になっていた。
私と自転車との距離は既にあんまりなく、女性は必死にブレーキをかけているがそれでも、接触してしまうことは確実だろう。
運が悪く、体勢も良くないため、接触したあとに受け身をとるのも難しそうだ。
あれ?これ、もしかして授業初日は病院で過ごすことになるのでは??
終わった……………。
そして、自転車の前輪が私の身体に当たりそうになったところでーーー
ーーーグイッ
理亞「うわっ!!」
左腕を捕まれ、そのまんま引っ張られる。一瞬、肩が外れると思ったが、それのおかげで自転車と接触することはなかった。
理亞「はぁはぁはぁ」
引っ張られた先は誰かの胸元だった。それは誰の胸元なのかは匂いで分かる。
恐る恐る顔を前にすると、そこには伊吹の顔があった。案の定、私を助けてくれたのは伊吹だった。
理亞「うぅ、伊吹ぃぃぃぃ!!!」ダキッ
伊吹『ーーーッッ!?』
大怪我を負うかもしれなかったという恐怖感があったからか、私は思わず泣きながら伊吹に抱きついてしまった。その衝動に耐えられなかったのか、伊吹はそのまんま倒れてしまい、最終的には2人ともその場で倒れる形となってしまった。
理亞「……………あ」
伊吹『…………』
それによって、伊吹と顔が近くなってしまったということに気付く私。自分からやらかしておいきながら、顔を赤くさせてしまう。てか、こいつ………。男の子のくせに案外、まつ毛が長かったのね。知らなかったわ。
理亞「……………」
伊吹『……………』
互いに倒れ込み、互いに言葉が一言も出さない状態が暫く続く。なんだこれ、なんだこれ!?これ、少し顔を近づけたらもうキス出来ちゃうんじゃ………って、急に何を考えてんのよ、私ったら!!アホアホアホ!!てか、伊吹も何か表情浮かべてよ!!私だけ顔を赤くしてるのが馬鹿みたいじゃん!!バーカバーカ!!もう、この状況、どうしたら………
「はいはいはーい。君たち、ラブラブするのはいいけどここではやめよーね。」
理亞・伊吹「『ーーーッッ!!』」
すぐ近くから誰かの声が聞こえてきた。しかも、聞き覚えがある声だ。声が聞こえてくる方向を見ると、丸型のメガネをかけた灰色のポニーテールが特徴である見覚えのある女性だった。その女性はしゃがみこみ、頬に両手を付けながら意地悪っぽく微笑み一言口にした。
「近くにいるのが私で良かったね♪こんなの他の生徒や先生が見たら良い意味と悪い意味で事件が起きる所だったよ♪」
理亞「………花咲先生」
私たちに声をかけたのは、今年からこの学校に赴任してきた生物学の花咲 聖那先生だった。
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来週から病院実習が始まるため、少なくとも12月中頃までは執筆が出来ない状況になってしまいます。ただでさえ、普段でも執筆できない状態なのに、何いってんだ、と思いますが実習が終わってからの冬休みには多く投稿する予定ですので許してください<(_ _)>
姉様のポンコツ具合
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現状維持
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控えめ
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いいぞ。もっとやれ