私たちのスクールアイドルグループ名が『Saint Snow』と決まってから次の日の朝。私と姉様と伊吹は学校の職員室の前へとやって来ていた。
ここにやって来た目的はただ1つ。私のクラスの担任である花咲 聖那先生に顧問の先生をお願いしに来たのだ。自らスクールアイドルオタクを自称する先生にお願いすれば引き受けてくれる可能性は高いはず。
聖良「失礼します。花咲先生はお見えですか?」ガラガラ
姉様が職員室の扉を開けて、軽く頭を下げながら声をかける。すると、「はいはーい」と声を出しながら奥で花咲先生が手を振ってくれた。
花咲先生のいる場所を確認した私たちは姉様を先頭に職員室の中に入り、そのまま先生の前まで移動する。
聖良「おはようございます、花咲先生。私、3年生の鹿角 聖良といいます。お話したいことがあるんですが、今、お時間大丈夫ですか?」
初対面ということで、姉様は自己紹介を交えながら、花咲先生に話しかけた。
「おはよう。鹿角さんのお姉さんね。よく話は職員室で色んな先生から聞いてるよ♪時間はそうだね………、このあと、朝の職員会議があるから15分程度だったら大丈夫だけど。」
聖良「はい、構いません」
「そっか。どうせだったら、隣の会議室で話聞こうか?」
聖良「そうですね、お願いしてもいいですか?」
「分かった。それじゃあ、行きましょうか。」
花咲先生はそう言って立ち上がり、「会議室借りますね」と職員室の先生方に声をかけながら鍵を借りて隣の会議室へと向かう。私たちは先生のあとに続いて歩いていく。
「はい、どうぞ。」ガチャ
聖良「失礼します」
理亞「し、失礼します」
伊吹『…………』ペコリ
会議室の扉を開けて、花咲先生は私たちを招きいれたあと、椅子に腰を下ろして話を聞く体勢へとなった。
「それで、話ってなにかな?」
聖良「はい。実は私達、スクールアイドルをやろうと思ってまして。」
「…………へ?」
姉様の言葉に先生は目を丸くしてポカンとさせる。
聖良「スクールアイドル部の顧問を引き受けてくれないか、花咲先生にお願いしにきたんです」
「…………ほ?」
聖良「理亞から先生はこの学校でスクールアイドルを結成してほしいという願望があるということを聞いたんですが………どうでしょうか?顧問の件、是非とも引き受けてくれませんか?」
「…………それ、マジで言ってる?」
聖良「言ってます。本気って書いてマジと呼ぶレベルでのマジです。」
「oh……、ちょっと待ってね」
花咲先生はポケットからハンカチを取り出して顔に当て動かなくなる。……え、そんな気持ちを落ち着かせる時によくやる行動を取るほどなの?
「ふぅ……。OKOK」
数分後、落ち着いたのか花咲先生はハンカチを顔から離してポケットの中に戻したあと、私たちの方へと顔を向けた。
「申し訳ないけど……、この話は無かったことにさせてもらうね」
「「「ーーーーーーーーッッ!」」」
花咲先生のお断りの言葉に、私たちは言葉を失う。ど、どうして…………。スクールアイドルが好きな先生にとっては、得でしかない話なのに。
「鹿角さん……….、あ、妹ちゃんの方ね。いくら、私がスクールアイドルが好きだからといっても確実に顧問を引き受けるとは限らないわ。」
ッッ………。もしかして、表情に出てた?
「私はね、できるだけ仕事と趣味は分けるタイプなの。この教師という仕事に就いているからには生徒達の今後の道標になれるように動き、動いたからこそ趣味を楽しむときは仕事のことを忘れてとことん楽しむのが最高なのよ。だからこそ、仕事の内容に趣味と絡むようなことはできるだけしたくな「でも、顧問になれば色んなスクールアイドルに会えますよ。」……………うぐぅぅ!!」
気持ち揺らぐの早っ!!あんだけ真剣な顔で語っておきながら姉様の一言で一気に堕ちかけちゃったよ、この先生。これなら、あと一言二言声を掛けたらいけるかもしれない。
理亞「そうですよ、先生!!もしかしたら、今後先生が推してるスクールアイドルに会えるかもしれないんですよ!!」
「くぅぅぅ!!!」ビクンビクンビクン
私も姉様に続けて声を掛けると、花咲先生はまたしても悶える。所々、痙攣させている理由は敢えて追求しない。
伊吹「………」トコトコ
「ハァハァ………え?」
膝をカクカクとさせ、まるで産まれたばかりの小鹿みたいな姿勢をとる花咲先生に伊吹は近づき、いつの間にか手にしていた書類らしきものを花咲先生に見せる。
「くぅぅぅぅぅうううううう!!!!」ビクンビクンビクン
書類を見た花咲先生は更に痙攣させながら悶えた。あいつは一体、先生に何を見せたのだろうか。少なくとも朝の時間帯には決して目にすることはない光景が目の前に広がっていた。
ハァハァと息を荒くしながら膝を地につける花咲先生に近づくと、キリッと睨みつけ言葉を出した。
「くっ………殺せ!」
いや、そんなオークに穢される寸前の敗北女騎士みたいな発言されましても。担任にくっ殺発言される生徒の気持ちを考えて欲しい。
聖良「どうしましょう、理亞。今の先生の姿を見てると……内に秘めてる何かが目覚めてしまいそうです♡」
理亞「ずっと内に秘めてて貰えると助かるわ、姉様。お願いだから目に光を取り戻して。」
前はMに目覚めかけそうになって今度はSか!!姉様は案外、その場の雰囲気で何かに目覚めかける傾向があるみたい。
聖良「ところで、そろそろこの雌鹿をどうしましょうか?」
いや、もう目覚めてる。Sに目覚めてるよ、姉様。先生に対して雌鹿とか言っちゃったよ。しかも、素の表情で言ってるから多分、Sに目覚めてること無意識だよ。ちょっとネクタイ外して鞭みたいにパチンパチンするのやめて。
聖良「理亞?」
理亞「はい、女王様……じゃなかった、姉様。私的にはもう諦めた方がいい気がしてきたわ」
ここまでして折れないなら、きっと何言っても無理だろう。てか、今の先生を見てたら可哀想でとても罪悪感を感じてるから、これ以上先生に負担をかけたくないっていうのが本音。だって、私のクラスの担任の先生だもん。教室とかで会う時気まずくなるわ
聖良「………仕方ありませんね。先生に謝罪してから、他にあたることにしましょう」
「………待ちなさい。」
諦めようとした瞬間、花咲先生が声を掛ける。乱れていた服装や外れかけていたメガネを整えながら私たちに向かって言葉を出していく。
「私が知る限り、北海道内に存在するスクールアイドルは全国で比べると小規模だけど、それでも300近くのスクールアイドルがいる。」
理亞・聖良「「ッッ!!」」ゾワッ
な、なんなの。この威圧は………!!先生は明らかにさっきのくっ殺ムードから一変して息をするのを忘れてしまうぐらいの雰囲気を漂わす。
「そして、その中でも特にここ函館区内はその7から8割が数を占め毎年、ラブライブの予選は激戦区になっている。………この意味は分かる?」
聖良「…………はい。」
「じゃあ、貴女たちは言ったわよね。私が推してるスクールアイドルに会えるかもって。それはすなわち……………
ラブライブを勝ち抜いて決勝に連れてってくれるっていう認識でOKかしら??」
理亞「ーーーッッ!!」ゾワ
なるほど。確かに私と姉様は先生にスクールアイドルに会えるかもしれないと軽率ながら発言した。しかし、それを実現するためには函館だけのスクールアイドルが集まるのではなく、全国の予選を勝ち抜いたスクールアイドルが集まる決勝に進まなければ行 いけない必要があるということ。
彼女の一言に対して、私と伊吹と姉様は顔を見合わせる。そして、何も言葉を出さずに頷き、3人揃って先生に向かって大きな声を出した。
覚悟と真意を込めて。
聖良・理亞「はい!!」
伊吹「…………」コクリ
「……………分かった。引き受けるよ、貴女たちのスクールアイドル部の顧問」
聖良・理亞・伊吹「!!!」
「その代わり、ちゃんとラブライブでは勝ち進んでよね。推しのスクールアイドルちゃん達に会えるように!あ、もちろんやるからには私も全力でサポートしてくから!」
聖良・理亞「はい!!ありがとうございます!!」
伊吹「……………」パチパチ
やった!!メンバーも揃った。顧問の先生も決まった!!あとは、書類に記載して生徒会に提出すればスクールアイドル部を設立することができる!!
そんなウキウキ状態だった私たちだったが…………
「残念だけど………設立は認められないですわ」
理亞「え?」
放課後に部活申請の提出をしにいった際、生徒会長らしき人物に申請拒否されてしまった。
姉様のポンコツ具合
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現状維持
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控えめ
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いいぞ。もっとやれ