最果ての航路 作:ばるむんく
敗走、と呼ぶこともできないくらいの一方的な戦いだった。通信機越しに聞こえる指揮官の罵声と怒声を、何処か他人事の様に思いながらヨークタウンは傷ついた身体を引きずってユニオンの最前線基地まで戻っていた。
エンタープライズ含めて十九の艦船と二十隻以上の量産型艦で挑んだ今回の作戦は惨敗だった。量産型艦全ての轟沈。エンタープライズ、ヨークタウン、ノースカロライナ、ブルックリン、ホノルルの大破。ワシントン、ミネアポリス、チャールズ・オースバーン、エルドリッジ、クリーブランド、ホーネット、ヘレナの中破。フレッチャー、ボルチモア、エセックス、シャングリラの小破。無傷だったのは殿を務めるために余力を残して回避に徹していたラフィー、高雄との間合いの計算だけで戦いが終わったモントピリア、後方から戦場全体への支援砲撃を行っていたポートランドの三人だけである。
『聞いているのか!?』
「……はい。申し訳ありません」
神代恭介に全てを読まれたことで、後方で勝手に自信喪失して碌な指示も出せなかった指揮官に対しても、ヨークタウンは力なく返事をすることしかできなかった。横で明らかに不機嫌になっているホーネットとモントピリアとボルチモアに、内心ため息を吐きながらもヨークタウンは罵声を何度か浴びせられてから通信を切った。
「……ヴェスタルがこっちに向かってきているそうよ」
「エンタープライズは重症だからな」
ヨークタウンが危惧した通り、エンタープライズによる奇襲は最初から読まれていた。結果がこの轟沈寸前で、意識が未だに戻ってすらいない。今は船体が無傷だったモントピリア、ポートランド、ラフィーにそれぞれが力なく横たわったり、傷の応急処置を施していたりしていた。
「神代恭介が最高指揮官に立ったのがアズールレーン離脱直前。戦線の指揮を執り始めたのがレッドアクシズ発足直前……そこから私達は勝利することができていない状況。やはり奪還作戦を許したのが一番痛かったわね」
「あれは……上が厳重警備など必要ない、って言い切ったからだろ?」
ボルチモアの言う通り、神代恭介を奪還されたのはユニオンが厳重警備する必要などなければ、そんなものに割く人員はないと言い放ったのが原因と言ってもいい。しかし、その言葉を聞いてヨークタウンは違和感を覚えた。
「……そもそも、あそこまでの大規模作戦を行った当初の目的は神代恭介の捕縛だったのよ? それを拷問をしないどころか話も聞かず、厳重警備もしないなんて……いくら何でも意見が変わり過ぎている気がするわ」
「どういうことだ?」
ヨークタウンの言葉に何か不審点があることは理解できても、その正体が何かを理解できていなかったボルチモアはヨークタウンの言葉に首を傾げていた。すると、少し離れていた場所で応急処置の手伝いをしていたシャングリラが口を挟んだ。
「つまり、ユニオン司令部の行動で前後の整合性が取れていないんです。まるで……
今度はボルチモアもその違和感と共に、それが真実だった場合の重大さに気が付いて目を見開いた。
「そ、それはつまりだぞ? ユニオンの中に裏切者がいるってことなのか?」
自分達の陣営の上層部に、重桜と繋がっている裏切者がいるかもしれないという事実にボルチモアは焦った様な声を出してヨークタウンとシャングリラを見ると、それ以上に恐怖を感じている表情をしていた二人にボルチモアは底知れない畏怖を感じ取った。
「そんな可愛いものじゃないわ。ユニオンの上層部に裏切者、というだけならそんな簡単に指令が変わったりしない」
例えユニオン海軍元帥がその指令を下したとしても、周囲の大将全てに反対されることだろう。勿論、大将全てを含めて全員が裏切者だった場合は通るが、そんなことがあり得るのならばとっくにユニオンは重桜の属国になっている。ユニオン海軍の上層の一部などという可愛い範囲ではない場所に裏切者がいる。たった一つの考え方でユニオン全てを動かすことができる存在が何処かにいる。考えられる場所は一つしかなかった。
「ユニオンの上――アズールレーンの評議会……そこの全てが裏切者だということよ」
ヨークタウンの言葉を聞いていた全ての艦船は、多少の大小はあれど等しく驚愕の表情をしていた。
「――ユニオンの艦隊が一隻も沈まなかった?」
「えぇ。おかしいことに」
テスターの言葉を聞いたオブザーバーは、珍しく表情を動かしていた。困惑の中に一筋の歓喜が含まれているその表情を見て、テスターは口許に笑みを浮かべた。
「私達の算出に狂いがあるはずがない……とは言え一分先の未来は那由多でもきかない程の数がある。見落としも……いや、あり得るはずがない」
「これが『特異点』の影響なのかもしれない。私達が『特異点』を観測するのは初めてだから」
「……そう。なら、余計にしばらくはこの世界線に集中しなければいけないわね」
人類から見ておおよそ万能にも見える程の力を持つセイレーン達ですら、神代恭介を中心とした『特異点』の影響を未だ計算しきれていなかった。数年前に突如この世界に現れた『特異点』の観測を始めてから、一度として彼女達セイレーンは神代恭介を計算することができていなかった。
「本当にあの存在一つで世界が変わると思ってる?」
「それを、貴女に確かめて欲しいのよ」
「えっ!? いいの!?」
戦闘することもなくただ計算にリソースを割き続ける作業に飽き飽きしていたピュリファイアーは、オブザーバーとテスターの会話にも興味なくただユニオンと重桜の戦闘データだけを眺めていた。面白半分で聞いてみた問いに、予想外の答えが返ってきたことにピュリファイアーは驚きながら歓喜していた。
「えぇ……許可するわ、ピュリファイアー。タイミングばかりはこちらに指定させてもらうけれど」
「それくらいなら許してあげるよ! あはははは!」
「神代恭介を殺してはダメよ?」
「それくらいはわかってるよ!」
オブザーバーの許可と同時に、艤装が十全に使えると確信できる程力が湧いてくる感覚に、ピュリファイアーは上機嫌で返した。そのまま艤装のテストの為に、と言って部屋から出ていくピュリファイアーの背中を見つめてテスターはオブザーバーへと向き合った。
「いいの?」
「えぇ。ああ見えて、手加減は上手なのよ?」
「それは知っているわ。それと、それは手加減ではなく嬲っているだけよ」
「それはそれで面白そうじゃない」
ピュリファイアーとは全く方向性の違う狂気的な笑みを浮かべるオブザーバーに、テスターは呆れて意見することを止めてしまった。
オブザーバーにとって、神代恭介は初対面からしてとても興味を惹かれる存在だった。存在を知られていないはずの個体名すら知っていた彼こそが、この世界線における最も重要な人物だということも理解できていた。狂愛とも言える程の興味を神代恭介へと持っているオブザーバーは、ただその未来を算出し続けていた。
「綾波、小破です」
「霧島、中破」
「榛名、中破」
「夕立……小破なのか?」
「瑞鶴……一応中破で済んでるかな?」
「夕立中破、瑞鶴大破な」
全員から自己申告の損傷を聞いて、恭介はこちらの損害を全て把握していた。交戦時間が短く、アウトレンジから一方的な攻撃しかしていなかった空母機動部隊は無傷。一航戦と神通率いる部隊は基地航空隊の助けもあって綾波の損傷と夕立の損傷のみ。恭介率いる部隊は損傷も無視して突っ走った霧島と榛名が中破に、エンタープライズと真正面から戦闘をした瑞鶴が大破。ユニオンの損害に比べればなんてことはない損害だった。
「これで指揮官様はまた重桜の中で権力を強めますわね」
「……俺に実権を握らせて何がしたいんだか」
ただ単純に重桜全てを恭介が握ってしまえば、それは自分にとっても素晴らしいことになるとしか考えていない赤城は、恭介のため息の理由もわからずに首を傾げていた。
「……何故撃滅させなかった」
「理由がないからだ」
「敵は殺すべきだ」
「いずれこちらの戦力となる」
「ふざけるな」
神代恭介を妄信していると言ってもいい赤城とは反対に、今回の決定に対して不満を持っている加賀は敵を殺すことを途中で止めさせたその理由を聞いていた。しかし、恭介から加賀に向けられるのは機械的な受け答えと憐れみの瞳だけだった。
「お前の敵とは何だ? 重桜を脅かす者か? 赤城を脅かす者か? 自分を殺そうとする者か? 世界を破壊する者か?」
「全てだ。私の前に立ち塞がる者全てが、私の敵だ」
「そうか。ならもう何も言わん」
「っ、指揮官!」
「加賀、指揮官様にこれ以上突っかからないの」
冷めた目のまま加賀の問いに答える恭介に、加賀は怒りのまま恭介へと掴みかかろうとして赤城に止められた。優しい言葉で妹を止めているように見える赤城だが、近くにいた全員がその身体から発せられている強烈な敵意を感じていた。例え義理の妹であろうとも、指揮官を傷つける存在を許す訳にはいかないのだろう。
「……指揮官、この後はどうする?」
「俺は一回長門の元へと戻る。お前もだろ?」
「まぁ、な」
少し遠くから我関せずと状況を眺めていた江風は、加賀が掴みかかろうとした瞬間には既に恭介の傍にいた。普段から重桜の重要人物である長門と恭介の警護をしている江風からしても、如何なる理由があろうと恭介に掴みかかろうとする者は敵とみなす必要があった。彼女にとって戦争は美醜善悪で語るものではないのだから、仲間を傷つけることは簡単でなくとも成すことができるのだろう。
「……取り敢えず、今回の戦いは一応俺達の勝ちってことになる。俺の我儘に付き合わせて結局一隻も沈められなかったこと、そして基地を捨てるようなことに関しては素直に謝る。すまなかった」
「使う人間がいなければ、それはただのガラクタ。放置して敵の前線基地にされるくらいならば、こちらの手で破壊することは、拙者はいいと思うが」
「そうね……まぁ、いいんじゃない?」
高雄の言葉に一応の同意を示した時雨に、夕立は意味がわからないのか首を傾げていた。
「満足できたか?」
「んー……まぁまぁだった。綾波の方が手応えありそうなのと戦ってたし……」
戦闘狂とも言える夕立のその言葉に、恭介は苦笑していた。加賀と言い、夕立と言い血気盛んな艦船が多くて困る、と内心思いながらも恭介はこれからのことを考えていた。だが、そんなことよりも一番気にしなくてはならないことが恭介にはあった。翔鶴に看病されながら寝転がっている瑞鶴に近づき、すぐ傍に腰を下ろした。
「翔鶴、少しだけ離れていてくれないか? できれば聞いて欲しくない」
「……何故ですか?」
「翔鶴姉、ごめん」
今から恭介が瑞鶴と何を話そうとしているのか。その一端を理解できている翔鶴は、自分がその話を聞くことができないことに不満を感じながらも、瑞鶴に謝られてため息を吐きながら渋々離れていった。
「何故、エンタープライズを沈めなかった」
「……わからないよ。でも、絶対にここで死なせちゃダメな奴なんだって、確信に近い何かがあっただけ。それが何かは分からないし、エンタープライズを死なせなかったらこの先何が起こるかなんて……えーっと……」
「もういい。半分くらいは理解できた」
要領を得ない瑞鶴の言葉に、恭介は苦笑してから水平線へと視線を向けた。ユニオンが撤退していった先には、当然ユニオン艦船達が休息できる基地が存在する。生き残ったエンタープライズと沈めなかった瑞鶴。恭介の示す道とは違う場所へと歩いていく二人の艦船がこれから何を成すのか等、恭介にも予測できるものではなかった。
「ん……」
「エンタープライズちゃん?」
底深く沈んでいた意識が浮上して、目を開けた瞬間に入り込んできた電球の光にエンタープライズは目を細めてから、横で腕の包帯を変えていたヴェスタルと目が合った。特に慌てた様子もなく、いつも通りのにっこりとした笑顔を浮かべながら包帯を変えているヴェスタルを見て、自分が命の危機にまで達していなかったのをエンタープライズは理解した。
「今、何時だ?」
「作戦終了から約三十時間後ぐらいですよー」
「三十? 丸一日寝ていたのか……」
意図的に生かされたとは言え、完膚なきまでに艤装も破壊されて身体にも大きな刀傷を付けられ、出血多量となったエンタープライズは既に丸一日以上の間ベットで眠っていたのだ。
「エンタープライズちゃんがここまでやられるなんて……珍しいですね。誰が相手だったの?」
「……瑞鶴だ。彼女は強い……もう私よりも、な」
「信頼できる指揮官、ですか」
「だろうな。全く厄介なものだ……私達艦船の力の源は」
信頼できる指揮官がいる。それだけのことで、駆逐艦は戦艦を大破させることができるとまで言われるメンタルキューブの力を、その身で思い知ったエンタープライズは苦笑しながら自分の身体を構成しているメンタルキューブに呆れていた。
「でも、見逃されたんでしょう?」
「そう、みたいだな」
「そんな「何で知っているのか」みたいな目をしないでください。着替えさせた時に、これが胸元のポケットから出てきたんですよ」
ヴェスタルが微笑みながら見せた手紙は、エンタープライズが瑞鶴に渡された物だった。愛嬌のある鶴のシールで閉じられているのを見て、間違いなくあの時に胸元へと入れられた手紙なのだと理解した。
「読んだのか?」
「はい」
「そうか……因みに私は読んでいないぞ」
「あれ?」
てっきり既に読んでいると思っていたヴェスタルは、エンタープライズの言葉に一人でずっこけながらも、そう言うことならば、とエンタープライズに手紙を渡した。
送り主が一発でわかりそうな程特徴的な、愛嬌のある鶴のシールを剥がして中身を確認した。
「写真?」
まず一番最初に出てきたのは、鉄血の総指揮者であるビスマルクとロイヤルメイド隊のニューカッスルとシェフィールド。そして神代恭介が同時に映っていた。研究施設の様な場所でモニターに全員が目を向けている状態の写真を見て、訝しむようにその写真を眺めていると、そのモニターに書かれている文字を読んで、エンタープライズはすぐに他の写真を確認し始めた。
「……手紙を読んでみて」
人類の裏切りを示す明確な文書が写真に収められていることに、エンタープライズは動揺しながらヴェスタルの方へと視線を向けると、険しい顔をしたまま手紙を読むことを進めてくるヴェスタルを見て、これ以上の何かが書かれているのだと確信した。
寝転がっている状態から、上体だけを起こして手紙を読み始めたエンタープライズは、その内容にただ戦慄することしかできなかった。
「……人類が、裏切っている?」
艦船を生み出しているメンタルキューブがセイレーンから与えられたという事実。艦船同士の戦争が起こっているのは、セイレーンが仕組んだからという真実。鉄血は既にセイレーンの傀儡でしかないのだという現実。そして、ユニオン含むアズールレーンすらも既にセイレーンの手のひらの上でしかないと言う実情。全てがエンタープライズにとって衝撃的すぎることだった。
「ヴェス、タル……わた、したちの正義とは……何だったんだ……人類は敵、なのか?」
「落ち着いて、エンタープライズちゃん」
「落ち着いてなどいられない! 私達は、踊らされるためだけに生まれてきたのか!?」
「エンタープライズちゃん!」
「ちょっ、どうしたの!?」
手紙を放り投げ、髪の毛を振り乱しながらエンタープライズは自分の今までの行いを思い返してきた。ユニオンの掲げる正義が正しいと信じて、レッドアクシズと対立して戦ってきた今までの全てが、戦う為に生まれてきた自分達の存在そのものがセイレーンによってもたらされたということが、それらの全てがセイレーンの箱の中で行われている実験だったのだと知らされたエンタープライズは、ただ戸惑い以上に恐怖の方が大きかった。
「エンタープライズちゃん! 手紙をちゃんと読んで!」
「っ!?」
放り投げられた手紙を手にしながら近寄ってくるヴェスタルに対して頭を振るエンタープライズだったが、激しく動いたことで不意に肩からつけられた刀傷が痛んで動きを止めた。強い意志の籠った瞳で見つめられたエンタープライズは、病室の外から騒ぎを聞きつけてやってきたホーネットの姿を見て少しだけ落ち着いた。
「てが、み……」
「ここに書いてあるわ」
ヴェスタルが差し出してきた手紙に書かれている文字を目で追って、エンタープライズは再び目を見開いた。
「指揮官が……?」
「そうみたい。だから諦めないで。エンタープライズちゃんが信じた……私達が信じた正義は、どれだけ歪な物だろう確かにここにあるから。それが偽物だったら、この世の中に本物なんて存在しないから」
自信の胸を指して強い意志を持って言うヴェスタルに、エンタープライズは自分の手のひらを見つめてから、不安気にエンタープライズを見ているホーネットを見た。守ると誓ったはずの姉妹に不安そうな顔をさせてしまったことに、エンタープライズは後悔しながらも手紙を握り締めた。
「もう一度だけ、信じてみよう。ホーネット、貴女にも手伝ってほしい」
「え……私? そっか……うん! 分かった!」
エンタープライズとヴェスタルが何を見て先程までの様に取り乱していたのかも理解できていないホーネットに、エンタープライズは瑞鶴から送られた手紙を見せようとしてから、何かを決心したように頷くホーネットに首を傾げた。
「エンプラ姉が頼ってくれるなら、私は断れないよ」
「……そうか。ありがとう」
姉から感謝されただけで心底嬉しそうに笑うホーネットを見て、自分が如何に姉として不器用だったかを思い知らされたエンタープライズは苦笑しながら、もう一度手紙へと視線を向けた。
『人類はセイレーンと組むことで生き残ることを選んだ。でも知って欲しい。私達艦船は戦う為に生まれた存在なんかじゃ決してない。そして、今もセイレーンが自分達の手で始めたこの戦争で、多くの人が苦しんでいることを。特異点に関してはまだ何も分からないけど、この状況を打開するきっかけを持っている私達艦船が本当に仕えることができる指揮官――神代恭介がいる。私達が戦うにはその理由だけで充分なんだって、いつか貴女にもわかる時が来る』
綴られている瑞鶴の想いを見て、エンタープライズは自分がまだ真に神代恭介と出会っていないことを知った。
「あの人と、二人で話がしたいな」
それがこの戦争を終わらせる唯一の方法なのだと、エンタープライズと瑞鶴は考えていた。
「エンタープライズ、起きたのね。丁度良かったわ」
「姉さん?」
手紙を丁寧に閉じてから、これからのことをホーネット、ヴェスタルと共に考えようとしていたところにやってきたヨークタウンは神妙そうな顔をしていた。エンタープライズの意識が戻ったことを喜ぶよりも重大な何かを知ってしまったかのような顔をしている姉に、エンタープライズとホーネットは眉を顰めた。
「半年後に、世界会議が行われることになったわ」
「世界会議?」
「えぇ」
ヨークタウンの言葉に一番最初に反応したのは、世界会議など意味も知らないホーネットだった。
「世界会議はその言葉通り、世界の大まかな陣営の代表が話し合う場所よ。開催場所は海のど真ん中の小さな島。どの陣営も手が出せない程遠い島で行われる予定よ」
「どの、陣営が参加するんだ?」
ホーネットへの世界会議の説明をしてから、エンタープライズとヴェスタルに向き合ってヨークタウンは本当に口が重そうにぽつりぽつりと言葉を漏らした。しかし、どの場所で行われるかよりもどの陣営が参加するかの方が大事なのは当然のことだった。前回の世界会議は数年前、セイレーン大戦直後に行われていた。しかし、どの陣営も疲弊が酷かったために四大陣営だけが参加する形で、対した方針も決まらずに終了し、直後にレッドアクシズができてしまったのでそれ以来の話である。
「主要陣営よ」
「は?」
「全てが参加を表明したらしいわ」
エンタープライズの予想では激化する戦争の為の会議として、四大陣営が席に着くと思っていたが、返ってきた言葉は想像を超える物だった。
「ユニオン、ロイヤル、重桜、鉄血に加えて、東煌、ヴィシア聖座、北方連合、サディア帝国。ロイヤルに亡命している自由アイリス教国もロイヤルの支援を受けながら一つの陣営として出るらしいわ」
「なっ!?」
「しかも、全陣営のトップが出るらしいわ」
ユニオンの大統領、ロイヤルの首相、重桜の神子、鉄血の皇帝、東煌の指導者、ヴィシア聖座の教皇、北方連合の最高主席団主席、サディア帝国の皇帝、自由アイリス教国の枢機卿。全てが顔を合わせる世界会議など異例でしかない。ようやくヨークタウンが険しい表情をしている理由を理解したエンタープライズ達は、この世界会議に向けて世界で何が起こるのか、陰謀渦巻く世界情勢の先など想像もできなかった。
大統領(人間)
首相(人間)
神子(人間)
皇帝(人間)
指導者(人間)
教皇(人間)
最高主席団主席(人間)
皇帝(人間)
枢機卿(リシュリュー)
なーんか人間じゃないの混じってるぞ