最果ての航路   作:ばるむんく

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 二週間ぐらい空きましたが私は元気です()

 戦闘終わったと思ったらまた戦闘始まるのか……自分で書いておいてなんだけど、アズールレーンの世界殺伐とし過ぎじゃない?


会議

「それでは、第四回世界会議を始めさせていただきます」

 

 太平洋のど真ん中に存在する小さな島に建てられている建物。それは第一回から第三回までの世界会議全てで使われた中立の場所に位置する会議専用の建物。それ以外の物は船が止まれる港と出席者が泊まれるホテル程度しかなく、娯楽の類どころか生活することすら難しい場所だった。尤も、こんな太平洋のど真ん中でなくとも今の世界には娯楽など殆ど存在しないが。

 アズールレーンから派遣されている会議の公平性を保つための司会進行役である艦船――ベルファストは時間をかければかける程陣営ごとの緊張が高まることを危惧してすぐさま会議を始めた。

 

「まずは会議の予定を大まかに説明いたします。第一にセイレーンによる各陣営ごとの被害報告。第二にセイレーン海域と言える中立海域に対する権利。そして第三に、アズールレーンとレッドアクシズの話し合い。これらをもって第四回世界会議とさせていただきます」

「ふむ……まぁ問題なかろう」

 

 ベルファストの説明を聞きながら手元の資料へと視線を向けていたユニオン大統領は、重桜代表である神子――神代恭介から視線を向けた。大統領から視線を受けていることに気が付きながらも、恭介は全く視線を返さずに目を閉じて資料すら見ていなかった。

 

「各陣営の被害報告を順番にお願いします」

「では先陣を切らせていただく。我らユニオンに第三回世界会議から与えられたセイレーンによる被害は、死傷者で語ることができない程である。とは言え、未だに主要都市への本土爆撃は受けていないので人口が大きく減少したことはない。しかし、太平洋と大西洋どちらからでも発生する量産型艦への対処が難しく、海軍への被害は大きいと言わざる得ない状況だ」

「ありがとうございます」

 

 周囲の代表を品定めするように見ながら報告をしあ大統領は、ベルファストの感謝の言葉を聞いてそのまま目を閉じた。もうこちらから話すことはないと、態度で示している姿に鉄血皇帝は鼻を鳴らした。

 

「では我々鉄血が次をいかせてもうら。率直言えば、我が鉄血は存亡の危機と言ってもいい状態だ。セイレーンが地中海を跋扈し、資源を無暗に使うことすらできない状況である。幸い、艦船部隊の総指揮を執っているビスマルクが優秀なこともあり海軍兵に甚大な被害は出ていないが、爆撃された都市も多く、治安も年々悪化している」

 

 資料に書かれていることしか喋らない大統領にならって、鉄血皇帝もまた資料に書かれていること以上の情報を他所へは流そうとしなかった。

 

「では私達ロイヤルですね」

 

 ベルファストの横に座っていた妙齢の女性は、静かに眼鏡をかけて資料を持った。

 

「ロイヤルは重桜と同じく島国です。故に状況は似ているかもしれませんが、空路での貿易がほぼ不可能な現在では海路を艦船に護衛してもらいながらでしか動くことができません。国民も既に中心の内陸へと移動しており、海辺周辺は既に軍人しかいない状況となっています」

 

 一度に多くの言葉を喋ったロイヤル首相は、一息吐いてからペットボトルで用意されていた水を飲んだ。

 ユニオン、鉄血、ロイヤルと報告を済ませたが故に、四大陣営最後の代表へと全員の視線を向く。そこで始めて目を開けた恭介は、資料も取らずにただ前を向いた。

 

「周辺海域の安全を確保し、海中資源を使いながら生き残っている。最初の侵攻の時点で首都が絨毯爆撃された重桜にはすでにそれほど多くの国民が残っている訳ではない。故に資源に今のところ困ることもなく生活できている。以上だ」

 

 あまりにも簡潔でありながら、それでいて四大陣営の中で一番余裕があるとすら聞こえるような報告をした重桜に、アズールレーンに所属している陣営の代表たちは視線を鋭くした。そんな視線に気が付きながらも、再び恭介は目を閉じて黙った。

 

「東煌は艦船の絶対量が元々少ない。しかし近海のセイレーンは重桜を恐れてか予想よりも侵攻が強くないのでまだ余裕があると言える。しかし東煌の人口は今でも世界一となっている故に、食料が一番最初に尽きるのは我らだろう」

「北方連合は不凍港の死守を最優先としながら、今だに不規則に発生する王冠の対処に追われている状況だ。セイレーン大戦には参加できたが、次の反撃作戦にはおそらく参加できないと言っていいだろう」

「我らサディア帝国は地中海の一部の支配権を奪取し、安定した海路を確保した。故にしばらくの間は戦うことができるだろうが、軍も民も疲弊していることには事実だ」

 

 東煌の指導者、北連の主席、サアディアの皇帝がそれぞれの現状を簡潔に述べた。様々な理由で四大陣営よりも一歩劣った立場にいると言える陣営達は、アズールレーンという結束の下にいながらもその心は一つとはなりきれないものだった。そもそもサディア帝国はレッドアクシズに席を連ねる側であり、ユニオンとしてもロイヤルとしても厳しい目で見なければいけなかった。

 

「ヴィシア聖座、近海にもセイレーンが出現して大層困っている最中です。と言ってもセイレーンも無駄にうろつくだけで何故か本土への攻撃をしないのですがね」

「ほう、それは貴方がセイレーンに与しているからではないのですか? ヴィシアの教皇よ」

「いえいえ、そもそもセイレーンに与しているのならば、さっさと周囲の海を制圧していますよ」

 

 ヴィシア聖座の教皇の言葉にロイヤルの首相は目を細めて少しだけ責めるかのような声を挙げるが、老獪とも言える口振りでひらりと挑発で躱していた。

 

「私、リシュリューが枢機卿として導くアイリスは、現在ロイヤルの皆さま方への恩義を返すために、一時的にロイヤル海軍の下で動いております」

「それはそれは。では、リシュリュー卿はいつでもロイヤルの力を借りてヴィシアを取り戻すと?」

「平和的解決を望む以上、私はその問題に関してロイヤルの方々に力を借りる予定はありません」

 

 現在はロイヤルに亡命しているとはいえ、一つの代表者として人間と同じ椅子に座っている艦船――リシュリューは毅然とした態度のまま教皇へと言葉を返した。それぞれの代表者の傍らには、護衛目的兼重鎮としての役割を果たす艦船が控えているが、リシュリューだけは代表者として席に座っていた。

 

「陣営同士の揉め事を世界会議に持ち込まないでいただこう」

「理解しております。偉大なるユニオン大統領よ」

 

 大統領の苦言に対しても礼節を持って弁えるリシュリューの姿に、恭介は一瞬視線を向けてからすぐさまベルファストへと視線を向けた。

 

「では、被害をまとめさせていただきます。ユニオンは太平洋、大西洋からの挟撃を受け、国土も広い関係上全てを守り切れていない状態。国民への被害は少ないが海軍への被害は大きい。鉄血は地中海を封鎖され、本土でも爆撃を受けて壊滅状態と言わざる影響であるが、艦船部隊を使って被害を最小限に抑えている。ロイヤルは島国であることも加えて沿岸部への対応が間に合わずに人口が内陸に集中しているが、海軍に被害は大きく見られない。重桜は最初の侵攻の時点で大量の死者数を出しているので人口がこれ以上減少する確率は低いが、周辺海域の安全を確保して海中資源で生きている。東煌はセイレーンの行動が大きくないので被害はそれほどではないものの、人工の面で食糧問題が起きるのも時間の問題。北方連合は時折出現する王冠の対処で他陣営と足並みを揃えることが難しい。サディアは周辺海域と安全な航路を確保したが軍と国民が疲弊。ヴィシア聖座は周辺海域を制圧されて思うように外に出れない現状。アイリスはロイヤルの庇護下でセイレーン撃滅を手伝っている――これでよろしいでしょうか?」

 

 ベルファストの問いに対してユニオン大統領とロイヤル首相は頷き、鉄血皇帝はと重桜の神子は反応せずに肯定を示した。

 

「では次ですが――」

 

 状況と被害の報告が終われば当然次の議題に向けて話が進み始める。ベルファストの言葉を聞きながら各陣営の代表者達は書類を捲って書かれている内容を確認し始めていた。

 


 

「…………」

「はぁ……」

「うぅ……」

「なぁ……いつまでこうして睨み合っているつもりなんだ?」

 

 代表者達が会議をしている中、各陣営艦船達のトップと言える者達が待機していた。無言で珈琲を口にするビスマルクに、溜息を吐くクイーン・エリザベス、重苦しい雰囲気に堪えれずに縮こまっている長門、そしてその様子に苦笑しながらもやめにしようと口にしたエンタープライズだった。他にも、部屋の隅でただ外を眺めているジャン・バールや、ただ目を閉じて会話に加わるつもりもなさそうなザラがいた。東煌と北連の艦船は代表者しかついてきていないようで、この部屋にはいなかった。

 

「仲よくしよう、とは言わないが……せめて会話くらいは――」

「くだらんな。仲良しごっこなら本国でやってな」

 

 エンタープライズの声を遮って立ち上がったジャン・バールは、一度だけキツイ視線をクイーン・エリザベスとビスマルクに向けてから部屋から出ていってしまった。それに続くかのようにザラも立ち上がって退室し、部屋には四大陣営の代表者しか残っていなかった。

 

「それで? 何を話すのよ?」

「これからのことだ」

「はぁ? これからあんた達をぶっ飛ばしますわよ! とでも宣言するつもり?」

「いや、そうじゃなくてな」

 

 相も変わらず言葉がキツイクイーン・エリザベスに、エンタープライズは苦笑しながらもなんとか宥めようとしていた。

 

「わかった。回りくどいことは止めにするよ。神代恭介についてだ」

「ッ!? 我らの指揮官に、何かあるのか」

「いや、こんな手紙を瑞鶴に貰ってな」

 

 恭介の名前を出した瞬間にわかりやすいほどの敵意を周囲に向ける長門に、エンタープライズは笑いながらも瑞鶴に貰った手紙を四人が囲むテーブルへと投げた。散らばる写真を見てビスマルクは顔を顰めてからカップを置いた。

 

「それで、これを知った貴女はどうするの? ユニオンの英雄」

「セイレーンの動きを確かめたい。何故彼女たちが表舞台から姿を消したのか……何故アズールレーンを裏から操っているのか」

「アズールレーンを、ね……違うわよ。世界中の陣営全てを裏から操っているのよアイツらは」

 

 エンタープライズが切り出した情報はビスマルクとクイーン・エリザベスを反応させるのに足る情報だったのか、先ほどまでずっと黙っていたビスマルクはエンタープライズの目的に関して話を促し、クイーン・エリザベスはセイレーンの手の広さに溜息を吐いてから紅茶を飲んだ。

 

「長門、はっきりと答えてくれ……あの人は、神代恭介は何者なんだ」

「……言えぬ。それは重桜でも限られた者にしか伝えることができぬ情報だ。余と陸奥、江風と天城しか知らぬ情報……他陣営に決して漏らしてはいけないものだ」

「それでもだ。あの人の存在が……指揮官の存在が私達には必要なんだ」

 

 真っ直ぐに長門を見つめるエンタープライズの瞳に、鋼のような固い意思が含まれていることに気が付いた長門は目を逸らして座り込むことしかできなかった。

 

「……あの人は私達の希望。セイレーンに対抗することができる世界の特異点……あらゆる干渉を受けない台風の目のようなものよ」

「世界の……特異点?」

「えぇ。この世界線の特異点、と言った方が正しいわね」

 

 ビスマルクの言葉を聞いて、エンタープライズはすぐに理解した。この世界線の特異点という言葉から推察されること……それはセイレーンが他の世界線から訪れた者だということだった。

 

「事実よ」

 

 困惑するエンタープライズが真偽を問うかのような瞳をビスマルクへと向けると、ビスマルクの隣で紅茶を味わっていたクイーン・エリザベスが代わりに答えた。ありえない、と一蹴するには辻褄が合い過ぎていることも、多くのセイレーンを打倒してきたエンタープライズには理解できていた。

 

「でも、貴方達重桜が隠している神代恭介の秘密はそれではないのよね?」

「……言えぬ」

「わかっているわ。私も、そこの女王も話せないことなど沢山あるもの」

「貴女ほど胡散臭くはないけどね」

 

 ビスマルクの言葉に顔を顰めながらクイーン・エリザベスは返事をした。

 

「艦船の希望とも言えるあの人に関して、何の話があるのかしら?」

「あぁ……あの人は、重桜から離反しようとしているのではないのか?」

「そんなっ、こと……」

「思い当たる節はあるはずだ」

 

 エンタープライズの率直な感想は、今までの彼の行動からの予測だった。簡単に言えば、あまりにも不可解な点が多い部分がその証拠してエンタープライズの理論を作っている。

 

「この間の作戦でも、その前の作戦でも、その前も、その前もそうだ。私達ユニオンの艦船に轟沈艦はいない」

「不思議な話よね」

「腑抜けだからじゃないの?」

「貴女は確か……彼のことを『光』と称していた記憶があったのだけれど」

「忘れなさいっ!」

 

 ビスマルクの口から漏れた言葉に反応したクイーン・エリザベスは、少し乱雑にティーカップを置いてビスマルクに掴みかかった。顔を羞恥で真っ赤にしながら掴みかかるクイーン・エリザベスと身軽な動きで避けるビスマルクを無視して、エンタープライズは長門へと向き合っていた。

 

「すまない。まだ憶測でしかない話なのは事実なんだ……だが、瑞鶴も神代恭介も、今の重桜の体制に疑問を持っているのではないかと思って……」

「…………そうだな。否定しきれない事実だ」

「そう、か」

 

 初めてエンタープライズは言葉をはっきりと肯定した長門に、ビスマルクとクイーン・エリザベスも手を止めて長門を見た。まるで認めたくない事実だったのにも関わらず、それが真実なのだと知らしめられたかのような反応をする長門に多少の疑問を持ったからだった。

 

「余は……重桜の暴走も止められぬ無能な神子だ……本来ならば余が恭介の代わりに世界会議に出ているはずなのに……いつもあやつにばかり任せきりで、本当に余は……私は……」

「……一つ、このメンバーだからこそできる話がある」

「へぇー興味深いわね」

「……新生アズールレーンを作るべきだ」

 

 自分が何もできない無力であることを涙と共に零れさせた長門の頭を、話してくれたことに対しての礼も兼ねて優しくエンタープライズは撫でていた。普段なら子ども扱いされているような感覚になって怒りだす長門だが、今だけはこうして泣いていることが自分にとっても恭介にとってもいいことになると直感的に悟っていた。

 代表者達しか集まっていないからこそ話せることに興味を持ったクイーン・エリザベスは、息を吐いてから座りなおして紅茶を飲んだ。それに倣うようにビスマルクも椅子に座って珈琲に口をつけた。しかし、続くエンタープライズの言葉にビスマルクもクイーン・エリザベスも泣いていた長門も動きを止めた。

 

「正気?」

「勿論正気だ。私達に立場があり、すぐにでも和平を結べる訳ではないことなど理解している。それでも、あの人を中心に据えた艦船主体の同盟ならば……必ず上手くいく」

「それは世界中に喧嘩を売る、ということよ」

「理解している」

 

 先ほどまでふざけているかのようなやり取りをしていたとは思えないほど鋭い空気を、身体から醸し出しているロイヤルと鉄血の代表者達に対しても、エンタープライズはユニオンの代表としてではなく一人の艦船として返した。

 

「余は! さ、賛成だ……これ以上悲しい戦争を繰り返すなど……」

「それには同意するけど、こちらとしても王家の面子があるのよ」

「鉄血に属している以上は、私も迂闊頷くことはできない。私は部下の命を預かっているの」

「そうだろうな……」

 

 長門は既に神代恭介と瑞鶴の行動から、ある程度彼らが近いうちに離反することは理解できていた。そして、今の重桜が行きつく先が悲しい戦争による破滅しかないこともうっすらと神木から感じ取っていた長門は、すぐにエンタープライズの意見に賛成した。しかし、ユニオンや重桜よりもリーダーとしての責務が重いビスマルクとクイーン・エリザベスは、仲間を想うからこそ簡単に頷くことができない状態だった。

 

「まぁ? ユニオンの矜持である自由と正義を求めて戦うのなら、貴女らしいことよね。大体鉄血やヴィシアやセイレーンの相手にアイリスの復興なんかで忙しいのよ」

「生憎だけど、私はセイレーンの研究で忙しいの。陣営の情勢まで気を配ることもできなければ、鉄血皇帝の命令でもなければ動くことなんてないわ」

「っ! ありがとう!」

 

 回りくどいことを言っているが、簡単にまとめると忙しいから黙認を決め込むと言っている二人に、エンタープライズは頭を下げた。

 

「長門、何か……策はないか?」

「……策?」

「策も無しに新生アズールレーンなんて作ったところで、ただの烏合の衆。それも一瞬で潰されてしまうだろう……何か、監視の目を掻い潜りながらできる方法があればいいのだが……」

「…………三笠様」

「なに?」

 

 ユニオンの代表であるエンタープライズと、重桜の神子である長門が大きく動くことはできない。いくらビスマルクとクイーン・エリザベスが見逃したところで逃げられる時間は限られている。何の考えも無しにレジスタンスなど作ったところで鎮圧されるのがオチでしかない。しかし、長門は何かを思いついたような顔をしてエンタープライズを見た。

 

「そうだ。三笠様なら、今は重桜の重鎮にいる訳でもなく、恭介の事情も知っている……余の考えも理解してくださるし、瑞鶴にとってもいい稽古相手になってくださる……完璧だ!」

「その、ミカサというのが……協力者として入ってくれるのか?」

「うむ。三笠様はかつて連合艦隊を率いていた本物の猛者であり智将。あの方ならば世界の情勢が動くまでの間、新生アズールレーンを匿えるはず」

「そうか……よし。ならそのミカサと指揮官を中心に新生アズールレーンを結成して、徐々に大きくしていくしかない」

 

 エンタープライズの決定に長門も頷き、ビスマルクとクイーン・エリザベスも三笠の情報を頭に入れていた。

 今までの自分とは違う、自分自身で正義を見つけてみせると決意したエンタープライズは、希望の見えてきた現状に目を輝かせていた。

 

「そうと決まれば後はこの世界会議が――」

 

 少しだけ弾んだ楽しそうな声で、世界会議が終わるのを待つだけと言おうとしか瞬間に、会議場の方面から突如として爆発音が鳴り響いた。明らかに人間が投げるような爆弾の爆発音ではなく、戦艦級の艦船による砲撃音に気が付いた四人はすぐに動き始めた。

 砲撃音に反応して会議場へと走り出した四人は、同時に艤装を展開して同時に会議場の扉から飛び込んで目の前の光景を見て驚愕していた。

 

「さぁ、戦争を始めようではないか……アズールレーン」

 

 会議場の中心で、謎の物体を手に持ちながらそう言った鉄血皇帝は笑いながら『ソレ』を掲げた。

 

「ここがその戦場だ……ユニオン大統領が死亡する最期の戦場だッ!」

 

 掲げられた『ソレ』から発せられる異様な圧力に、それぞれの代表者についていた護衛の艦船が一歩前に出て鉄血皇帝へと敵意を向けていた。ユニオン大統領の前にはヨークタウンが、ロイヤル首相の前にはウォースパイトが、重桜の神子の前には江風が、北連主席の前にはアヴローラが、東煌指導者の前には逸仙が、サディア皇帝の前にはリットリオが、ヴィシア教皇の前にはル・マランが、アイリス枢機卿であるリシュリューの前にはル・トリオンファンがそれぞれを守るように立っていた。

 

「見るがいい……これが、これが鉄血の力だ!」

 

 発せられる異様な圧力が強まったと思ったら、次の瞬間には会場の空気が一変していた。そして、四人が飛び込んだ廊下の窓から見えるその海は赤黒く染まり、快晴だった空は瞬く間に黒い雲に覆われ、水平線の向こうからは大量の艦影が確認できた。

 

「これは……鏡面海域、だと? 馬鹿な……作り出したというのかっ!?」

 

 ユニオン大統領の悲鳴のような声に、鉄血皇帝は高らかに笑っていた。

 

「諸共死ね! アズールレーン!」

 

 世界会議の場は、既に戦場へと変わっていた。

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