最果ての航路   作:ばるむんく

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(久しぶりだから起き逃げしていこう)


絶望

 混沌とした戦場へと早変わりした海を横目に、恭介は机を力いっぱい叩いてこちらを威嚇するように視線を向けてくるユニオントップの男へと意識を向けた。

 

「図に乗るなよガキが……重桜などいつでも滅ぼせると言っているのだ」

「ほう? それは随分と大きく出たな。流石に、戦争を始めてから大国となった陣営は違うな。戦争がしたくてしたくてたまらないらしい」

 

 全てを知り尽くしているとでも言わんばかりの雰囲気と発言をする神代恭介に、ユニオン大統領はひたすらに怒りを露わにしていた。しかし、大統領にどれだけ脅しに近い言葉を使われたところで、重桜の神子である恭介には全く届かない。何故ならば、この集会にいる人間程度では運命を変えることなど全くできるはずもないのだから。

 

運命(さだめ)の羅針盤を上から眺めている俺に、羅針盤に踊らされているお前たちが何かできると思うのか? 寝言は寝て言うんだな」

「図に乗るなと言っているんだッ! 貴様ら重桜など簡単に潰せると言っているんだ!」

「はいはい、うるさいわよ」

 

 散々煽られた怒りで声を荒げたユニオン大統領が、今にも恭介に掴みかからんとするのを止めたのは、恭介ではなく鉄血皇帝が座っていた椅子に勝手に座っていたクイーン・エリザベスだった。全員が緊急事態で立っている中、余裕の表情で座ったままの恭介とクイーン・エリザベスの視線が合った。

 

「何を考えているの?」

「何を考えているかだと? 俺はただ運命を変える為に動いている。人類滅亡の時は近い」

 

 一見すると世迷言をほざいているだけのガキであるが、クイーン・エリザベスは神代恭介の秘密を幾つか知っている。その中の情報の一つに当てはまることが、真実であるとすれば……今の恭介の言葉は真実だと言えるだろう。

 

「それは、神木の見せた未来?」

「さぁな。神木は具体的なことを喋る訳でもないし、別に俺に特別な力を授けてくれる訳でもない。言うならば、自然にそこに生えていて、自然に信仰が集まってしまっただけの桜だからな」

「そう……貴方がどういう奴なのかは大体把握できたわ」

 

 自然に生えただけの桜が果たしてあそこまでの大きさに成長するのかどうか、そもそも信仰が集まったところで特別な想いの奔流を神子に流し込むことなどできるのか。気になる点等幾つもあると言うのに、さもそんなことは知らないとでも言わんばかりの恭介に、クイーン・エリザベスは溜息を吐いて紅茶を飲んだ。

 

「それで、貴方はどこまで考えてユニオンの英雄を焚きつけたのかしら?」

「焚きつけた? 俺が? 瑞鶴が勝手にやったことだろう」

 

 あくまで自分は関与していないと主張するかのように肩を竦める恭介に、クイーン・エリザベスはそれ以外に聞くことはないと言わんばかりに何かを聞くのをやめた。

 

「……瑞鶴が何をしようが、俺には関係のないことだ」

「き、恭介……」

 

 隣でずっと恭介とクイーン・エリザベスの会話を聞いていた長門は、小さな声を発しながら揺れたままの瞳を恭介へと向けた。

 神代恭介という人間が艦船にとって光だと確信しながらも、必ずや世界の敵にならない訳ではないと理解していたクイーン・エリザベスだったが、長門の表情を見てある程度のことを察していた。

 

「そう……自分で自分が理解できていないのね」

「なに?」

 

 クイーン・エリザベスの何かをわかったかのような言葉に、恭介は初めてまともに表情を動かした。あからさまに不快そうな表情をする恭介に、クイーン・エリザベスはため息吐いてから椅子から立ち上がった。

 

「もう聞きたいことも聞いたし、知りたいことも大体知れたわ。私は行くから」

「女王陛下の意のままに」

 

 女王の言葉を聞いて、ロイヤル首相は仰々しく頭を下げた。王族に対する態度を損なうほど冷静さを失っていないと確認したクイーン・エリザベスは、つまらなさそうに鼻を鳴らしてからそのまま出て行った。向かう先は戦場……女王の号令を待つロイヤルの艦船たちがいる場所なのだと、恭介は理解した。

 

「……女王、か……侮りがたい存在だな。江風、ここはいいから戦場へと赴け」

「……わかりました」

「すまないな。後、途中で綾波を拾って、今のところはアズールレーンとやりあう気はないとだけ伝えておいてくれ。一航戦は()()が来てからこちらから声をかける」

 

 恭介の言葉を全て聞いてから、江風は風のような速度であっという間に会場から姿を消した。

 

「さて……俺もそろそろ動くとしよう」

「何処へ行く」

 

 廊下の外から激しい砲撃音と爆発音、そしてプロペラ機が発する独特の音を背に、神代恭介は椅子から立ち上がって会議場から出て行こうとしていた。その姿に全員が更に警戒度を上げている中、サディア皇帝だけが静かに同盟相手の行動の理由を知りたがっていた。

 

「何処へ? 勿論戦場へさ……全てはセイレーン撃滅のために、な」

 

 怪しい笑みを浮かべながら、恭介は長門と共に会議場を後にした。

 

 


 

 

「っ……ニーミちゃんは、本当にこれでいいの?」

「黙りなさい!」

 

 叫ぶ心を押しのけながら、Z23はジャベリンとラフィーに向かって砲撃を放ち続けていた。普段のZ23を知る者が見れば、誰でも理解できる程狙いの定まっていない砲撃だが、ジャベリンとラフィーに距離を取らせるには十分すぎる弾幕量だった。悲痛そうな表情のまま砲弾の雨を降らせるZ23を横から眺めていた綾波は、こちらに向かって急速接近してくる人影に視線を向けた。

 

「綾波、今アズールレーンと敵対する必要はないそうだ」

「江風、さん……」

「さんはいらない、と前から言っているだろう……それを伝えに来た。それ以降のことは好きにしろ」

 

 通常の駆逐艦からしても異常な程の速度で綾波へと近づいてきた艦船は、恭介から綾波に言伝を頼まれていた江風だった。Z23とラフィーとジャベリンが戦闘しているのを、寂しそうな目で見ていた綾波が何を考えているのかなど、江風にも理解できていた。

 

「止めたい、です」

「ならお前の心に従え。それが許されるのが、わたし達艦船だ」

 

 それだけだ、と言い残して再び江風は目にも止まらない速さで戦場へと向かって駆けて行った。

 

「心に……従う……」

 

 自分の胸に手を当てて綾波は数秒考えてから、右手に持っていた大型の機械刀の切っ先を三人の間に向けた。

 突如として三人の間に放たれた弾幕に、三人は一歩下がって放たれた方向へと目を向けた。いつも通りの感情の薄い顔の中で、少しだけ困惑の色を滲ませながらも綾波はそのまま固まったジャベリンとラフィーを背にしてZ23の前に立った。

 

「重桜は……鉄血と敵対するつもりですか?」

「違う、です……ただ、綾波は自分で考えて動いていいとの許可を貰っただけです」

「なら何故私の前に立つのですか!」

「友達を殺せば、きっと後悔でニーミは押し潰される。そう思ったからです」

「っ!? とも、だち?」

 

 出会って数時間も経っていないはずの存在を友達だと綾波に断言されて、Z23は言葉の意味が理解できていなかった。Z23とは対照的に、ジャベリンは自分を庇うようにして立ってくれた綾波の、友達という言葉に歓喜の色を宿してその背中を見つめていた。

 

「ニーミ……武器を降ろして欲しいのです」

「そんなこと、できる訳が……ないじゃないですか」

「……これでどうですか?」

「あ、綾波ちゃん!?」

 

 綾波が口から出す言葉一つ一つに心を大きく揺さぶられるZ23に、綾波は自らの持つ機械刀と魚雷発射管を海上へと投げ捨てた。突然の行動にジャベリンは驚愕の声を挙げ、ラフィーもZ23も目を見開いて固まっていた。

 

「正気、ですか?」

「綾波は誠意を見せているだけ、です」

「……私は鉄血の艦船です。皇帝が戦えと言うのならば、友だろうとこの手にかける覚悟がある」

 

 あくまでも戦う姿勢を示すZ23は、主砲を綾波へと向けて視線を鋭く尖らせていた。引き金を引けばすぐにでも綾波を沈めることができる状況にも関わらず、Z23の震える手はそれ以上の引き金を引くことができなかった。綾波もまた、このまま沈んでしまってでもZ23を止める覚悟をしていた。故に武器をいくら突き付けられようとも、そこから動くことはなかった。

 

「っ……撃て、動いてくださいっ……何でッ!? 私の手なのに……撃て、ない……」

「ニーミ……」

 

 震える左手を右手で抑えようとしても震えは一向に収まらず、Z23は崩れ落ちるようにして膝をついた。綾波はジャベリンとラフィーにそこから動かないように目で制してから、打ち捨てられている自分の武器を手に取ってZ23を支えて立ち上がらせた。

 

「……また、会えるといいね」

「会えるですよ。すぐに」

「ううん……今度はただの友達として」

「……難しいですけど、いつかはきっと」

 

 ジャベリンの縋るような声に、綾波は微笑みながらも優しい声で返してからZ23に肩を貸す形で支えてから、会議場へと向かって動き出した。

 アズールレーンの艦船として背中を向けている二人を撃つことは容易くとも、ジャベリンには絶対にできないことだった。

 

「敵なのに……殺したくない、なんて……ダメな兵器かな?」

「大丈夫。ジャベリンは普通」

 

 少しだけ苦しそうに心情を吐露するジャベリンに、ラフィーは気怠そうにしながらもジャベリンに気遣いを見せていた。

 

「ここにいましたか、ジャベリンさん」

「あ、ニューカッスルさん」

「ロイヤル海軍はこれより、鉄血率いるセイレーン艦隊を撃滅しますよ」

「え? ロイヤルだけでですか?」

 

 水平線を覆いつくす程の艦隊を前にしてロイヤル海軍だけで対処できるとは到底思えないジャベリンは、不安になりながらニューカッスルに聞くと、不安な心境が顔に出ていたのか、優しい笑みを浮かべながら首を左右に振った。

 

「ユニオンと重桜は協力的ですよ」

「じゅ、重桜がですか?」

「まぁ、重桜にとってセイレーンは不倶戴天の敵とも言える存在なのでしょう」

 

 不倶戴天の敵……同じ天の下に存在することを許しておけない相手であることを意味する言葉であるが、それならば何故重桜はアズールレーンを脱退してしまったのかが、ジャベリンには理解できなかった。

 

「……鉄血との、全面戦争?」

「まだ様子見、と言ったところでしょうか」

 

 ラフィーの言葉に、ニューカッスルは平穏がまた一歩遠のいたことにため息を吐いた。以前から小さくぶつかることが何度かは当然あったが、ここまで大規模な艦隊を使っての戦闘にまでは発展していなかったにも関わらず、鉄血が何故今になって戦闘に踏み切った理由がニューカッスルにも理解できていなかった。

 

「嫌な予感もします……早く行きましょう」

 

 鏡面海域の中心部分である会議場に向かって吹く風が、段々と強まっていることを肌で感じているニューカッスルは、ロイヤル艦隊がクイーン・エリザベスの号令の元戦っているであろう場所に向かって動き始めた。

 

 


 

 

「はぁ……いくら指揮官様の命令とはいえ、貴方と肩を並べて戦うだなんて……」

「いいから手を動かせ!」

 

 襲い来る波のようなセイレーン艦の数に圧倒されながらも、エンタープライズと赤城は艦載機を放って手前から順に沈めていた。統率のあまり取れていない量産型程度に後れを取るはずもない歴戦の二人は、海を埋め尽くすのではないかと思う程の弾幕を華麗に避けながらも適度に反撃していた。

 

「貴方に命令される筋合いはないのだけれど? 今すぐその胸に牙を突き立てて心臓を抉り出してもいいのよ?」

「恐ろしいことだ……やはり、お前みたいなのは味方にいてくれた方が安心できる」

「お黙りなさい。全く……」

『勝手なことをするなよ』

 

 今な仮初とは言えタッグを組んで寡兵で敵と戦っていると言うのにも関わらず、物騒な言葉を平然と口から放つ赤城に、エンタープライズはある種の頼もしさを感じながら背中を預けていた。何故そこまで信頼されながら戦わなければならないのか理解できない赤城は、がら空きの背中にいつでも攻撃を加えられる状況でも攻撃しない理由は単純に、エンタープライズを討つことよりも恭介の命令の方が重要だからだった。

 

「分かっていますわ指揮官様。ですが、私にも許容できる限界というものが――」

『後でいくらでも付き合ってやる』

「任せてください!」

「やれやれ」

『全くだ』

 

 通信越しにとは言え、意見を合わせて同時にため息を吐く恭介とエンタープライズに多少のイラつきを感じながらも、赤城はエンタープライズではない敵へと視線を向けた。当然、赤城がイラつく理由など自分を差し置いて恭介と一見すると仲が良さそうに喋るエンタープライズにだが。

 

「……加賀さん。戦況は……あまり良くなさそうですね」

「江風か。丁度いい所に来たな」

 

 赤城とエンタープライズが躍るように弾幕を避けながら艦載機を放っている少し後ろで、量産型空母から放たれている艦載機をひたすら撃ち落としていた加賀の傍に、江風が現れた。

 

「丁度いい、とは?」

「言葉通りの意味だ。あれを食い止めてくれ」

 

 加賀が視線だけでその方向を指し示すと、そこには猛然と加賀へと近づいてくる鉄血艦船が見えた。一応鉄血とは敵対するつもりもない重桜としては、ロイヤルに全て押し付けるのが最適なのだが、ロイヤル艦隊は既にビスマルク、グナイゼナウ、シャルンホルスト、プリンツ・オイゲンの相手をして動けない状態だった。

 

「あれは……鉄血の駆逐艦?」

「あん? 敵かと思ったら重桜じゃねぇか。でもセイレーン艦隊に攻撃してるんだから……やっぱり敵なのか?」

「さぁな。わたしには関係のないことだ」

 

 加賀から少し離れた場所へと移動してその駆逐艦の到着を待つと、江風の前で綺麗に停止したZ1――レーベレヒト・マースは頭の上に疑問符を浮かべているような顔をしながら首を傾げていた。

 

「……取り敢えず、上に仰ぐか」

「意外に冷静そうだな……」

 

 言動からして馬鹿の一つ覚えの様に突進してくるかと思った江風だったが、長女としての性格がそうさせるのか、Z1は最高指揮官とも言えるビスマルクへと判断を仰ぐことにして、取り敢えずの戦闘を避けた。

 

「……えー? まぁ……いいか」

「どうなった?」

「重桜と争ってもどうにもならないから別にいいってよ」

「そうか」

 

 こうも明らかに鉄血へと攻撃していると言うのに、全く争う必要もないと言われてしまえば江風も毒気が抜かれた様に密かに腰の刀へと伸ばしていた手を力なく降ろすしかなかった。先に相手が武器を降ろしたと言うのに、いつまでも刀に手を置いておくこともできないと判断していた。

 

「俺の名前はレーベレヒト・マース。めんどくさかったらZ1(レーベ)でもいいぜ」

「そうか。わたしは江風……基本は長門様か指揮官の護衛しかしてないから、二度と会うことは無いからも知れないが名乗らせて貰おう」

「へー……ただの駆逐艦に見えるのに、そんな重鎮の護衛してんのか」

 

 ただの駆逐艦がどの様な駆逐艦を指す言葉なのか理解できないので、江風は言い返すこともせずに目を閉じで何も反論がないことを告げた。

 

「それにしても、随分と大きくでたものだな。セイレーンを扱うなど」

「そりゃあ……こう言っちゃなんだけど、あの皇帝は本気でアズールレーンに勝てると思ってるからな」

「……まるで、勝てないと思っているかのような言葉だな」

 

 平然と口にしているが、Z1の発言は鉄血とその皇帝の侮辱とも取れるものだった。自らの陣営に対して客観的な視線を持てることには素直に尊敬する部分もあるが、江風としては末端ではないとはいえ、駆逐艦にすら見限られるような陣営をしているのかと思わせるには十分な言葉だった。

 

「当たり前だろ。セイレーン大戦時に大きな打撃を受けて、領地の復興もままならない陣営がどうして連合軍に勝てるんだよ。『戦いは数』ってのは真理だが、結局練度が伴ってないとただの案山子だしな」

「……だろうな」

 

 今まさにその圧倒的な数でアズールレーンを飲み込もうとしているセイレーン艦隊も、所詮は量産型の集まりだからなのか、赤城とエンタープライズに片っ端から消滅させられているのを見れば頷ける言葉だった。

 

「圧倒的『個』の前では数なんて大差ないだろ。一騎当千、なんて言葉がこの世にはあるぐらいなんだからな」

「だが、セイレーンにも圧倒的『個』は存在するだろう?」

「……上位種が言うこと聞くと思うのか?」

「思わんな」

 

 あれだけのセイレーンを操ることができる背景には、必ず上位個体が存在しているとこの戦場にいる誰もが確信していることだったが、未だにその姿を現さないことを見れば鉄血と連携するつもりがないことなど明白だった。

 

「まぁ本当に現れたら俺らもヤバいことになるから、あんまり期待して――」

 

 肩を竦めながら笑うZ1の言葉を遮るようにして、曇天の空に一筋の光が走った。遠目で見ても圧倒的と言わざるを得ない程の熱量を感じたZ1と江風は、同時にその青白い光を放った方向へと索敵能力を割いた。

 江風とZ1が視線を向けた先にはエンタープライズと赤城が、先程までの余裕を何処かへ消して警戒していることを身体全体で表しながらも乱入者へとそれぞれ武器を向けていた。

 

「はーいどうもー!」

「……何故このタイミングで現れた。()()()()()()()()

 

 エンタープライズは憎々し気にその名を口にした。かつてのセイレーン大戦で連合軍に甚大な被害をもたらした災厄の名に、赤城も無意識のうちに身体を強張らせていた。

 エンタープライズのそんな言葉も気にせずに愉快そうな笑顔を浮かべながら、ただただ満足そうに戦場を見渡して頷いているピュリファイアーは、視線をエンタープライズと赤城へと移した。

 

「何故? そりゃあ鏡面海域なら何処でも出現できるからだけど?」

「それは嘘ね。そうだとしたら鏡面海域ではない場所に出現したことのある過去の記録が改竄されていることになるわ」

「うん。嘘だよ! アハハハハハ!」

 

 狂気としか言葉で表すことができないその笑い声に、赤城は式神を持つ手が自然と強くなっていた。復讐の炎を目に滾らせながらピュリファイアーを見つめるその瞳に、エンタープライズが危うさを感じると同時に腹を抱えて笑っていたピュリファイアーが急にその笑い声を止めて顔をあげると、そこには光を捉えていない深淵の瞳があった。

 

「めんどくさいから全部潰せばいいよね」

 

 ピュリファイアーの背後に鎮座していた大型艤装から突如として光が放たれる瞬間を、エンタープライズと赤城は反応することもできずに見ていることしかできなかった。瞬きできるかどうかの短い間に放たれた破壊の光は、エンタープライズと赤城の間を通り抜けて鏡面海域の中央である島へと伸びて、巨大な爆発を起こした。

 

「……見え、なかった」

「ッ!? 指揮官様!」

「その焦った顔……オブザーバーに何か言われてなかったら、全員丁寧に潰したのになぁ……」

 

 島の一部を消滅させるほどの威力を放ったピュリファイアーは、少しだけつまらなさそうに手を振って自律行動型の小型艤装を展開させた。

 絶望的な火力差を見せつけられた後で、このピュリファイアーに勝てる光景が思い浮かぶ程、エンタープライズと赤城は自らの力に自惚れてはいなかった。

 

「じゃあ、さっさと殺してあげるね」

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