最果ての航路   作:ばるむんく

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何か書いてるとポロポロ艦船が出てくるな……それだけ一キャラ事に与えれる役割がある程キャラが濃いんだろうな、としみじみ思うのであった。

関係ないけど、以前ハーメルンにアズレン投稿してた時は匿名使ってたっけ(記憶喪失)



衝突

 エンタープライズが一航戦と戦闘を始めた瞬間に、後方で待機していた飛鷹と隼鷹が一斉に彗星と烈風を全機発艦させて基地全体を混乱へと陥れていた。一航戦が放った艦載機にはエンタープライズが対応したにも関わらず、第二波として

 

「はぁ……何で隼鷹が迎えに行けないのかしら……」

「そういう作戦だからな。飛龍も瑞鶴も翔鶴も満足に動けない今、一航戦がグレイゴーストとやり合っていたらその間は私達がやるしかないだろう?」

「それはそうだけど……でも「あの時」みたいに私が迎えに行きたかったなぁ……」

「そうかい」

 

 相変わらず時々訳の分からないこと言う妹に呆れている飛鷹は、一航戦が予定通りエンタープライズの動きを止めていることを確認してから、指揮官奪還に動いている艦船達に通信を行っていた。

 

「川内、鳥海、指揮官は見つかったか?」

『まだだな。思ったより独房が多い』

『こっちもまだです。もしかして、指揮官はかなり好待遇だったのかもしれませんね』

「その可能性はある」

 

 何せユニオンからしてみれば謎の多すぎる人物なのだ。簡単に殺されることもなければ耐え難い拷問にかけられていることも無いだろう、とは療養中の軍師神通の言葉である。実際、作戦の総指揮官であれだけの数の艦船を従えていた指揮官を殺せばどうなるのかぐらい、ユニオンも考え付くだろうとは赤城も判断していた。だからこそ今回の奪還作戦を開始するまでに万全の準備をしてから始めたのだ。少しでも指揮官に命の危険性があったのならば、誰の言葉にも耳を貸さずに赤城は一人でユニオンへと突っ込んでいただろう。

 

「作戦通り手早く終わらせてくれよ。一航戦の二人が暴走しないうちにな」

『分かってる』

 

 独房の壁を破壊する音と共に川内は呆れた声を返して通信を切った。ため息を吐きたいのはこっちだと言わんばかりに、飛鷹は目を閉じて肩を竦めた。

 

「そろそろユニオンも動き出す。隼鷹も警戒しろ」

「分かってるわ」

 

 先程から二人の放った彗星と烈風が何機か撃墜されていた。基地に備え付けられた対空機銃によって撃墜されたのかと最初は考えていたが、どうも撃墜された数からしてユニオン側にも動ける正規空母がまだこの基地に残っていたらしいことが飛鷹と隼鷹には理解できていた。

 

「エセックス級か、それとも軽空母か」

「んー……あの子が残ってるじゃない」

「あの子?」

 

 隼鷹の言葉に飛鷹は首を傾げるが、妹の指し示す方向へと視線を向けてその正体を理解した。青色のペイントに白の星マークが描かれた戦闘機が空中を縦横無尽に駆け巡り、烈風と彗星を撃墜していた。

 

「ワイルドキャット……ヨークタウン型の末妹か」

「私と指揮官の邪魔をするなんて……くたばれぇ!」

「……全く。全機発艦! あの野良猫を撃ち落とせ!」

 

 基地を次々と爆撃していた烈風と彗星を撃墜していたのは、ユニオンの戦闘機であるF4Fワイルドキャットだった。艦船が多く揃っていないこの基地でこれ程の戦闘機が飛ばせるのはまず間違いなく正規空母だと判断した飛鷹は、相手が誰なのかを即座に悟った。エセックス級は満足に戦える艦が多くなく、ネームシップであるエセックスは前回の海戦で瑞鶴と共に中破している。エンタープライズが一航戦の相手をしているのならば残っているのは末妹しかいない。

 飛鷹と隼鷹はワイルドキャットが爆撃の邪魔をしているのだと判断した瞬間に、烈風を爆撃から対艦載機の動きへと変え、巻物の様な不思議な甲板から更に数を増やして烈風を全機発艦させた。例えヨークタウン型の正規空母とは言え、搭載数も正規空母と遜色のない飛鷹と隼鷹二隻の烈風全てを相手取って防ぎきれるほどの優秀さはない。

 

「これで計画通りに動ける」

 

 ましてやヨークタウン型の末妹、ホーネットから飛鷹と隼鷹の姿は見えていないのだから反撃に打って出ることもできはしない。既にこの基地は重桜の作戦に絡めとられていた。

 


 

「完全にこっちの動きが読まれてる! どうすりゃいいのさ!」

『慌てないでホーネット。冷静な判断ができなければ相手の手のひらの上で終わってしまうわ』

「重桜の目的はあの男の奪還でしょ? こんな大規模な攻撃より、隠密の方がいいんじゃないの?」

 

 烈風の攻撃を避けながらワイルドキャットを放つホーネットは、作戦指揮代理をしている姉のヨークタウンへと指示を仰いでいた。大規模な空襲によって指揮系統が混乱している状態で、まともに動けているのが艦船達しかいないのは、重桜の作戦なのだろうとヨークタウンは考えていた。

 

『エンタープライズをおびき寄せると同時にこの基地の作戦司令室を最初に攻撃している。初めから指揮系統の混乱を狙っていたのよ。一航戦の練度なら簡単に司令室を木端微塵にできるもの』

「成程ッ、指揮系統が狂えば指揮に空白の時間ができるから、そこを狙って指揮官をってことね! 随分えげつない作戦を思いつくじゃない!」

 

 ワイルドキャットでかなりの数を撃ち落としているにも関わらず、一向に減る気配のない艦載機の群れを見て、ホーネットは相手が一航戦ではなく後方待機している空母なのだと気づいて舌打ちをした。

 

「ヨークタウン姉! 後方待機して艦載機を放ってきてる敵空母がいる!」

『最初から一航戦は囮ってことね。そうすると、もう既に基地内に侵入してる艦船がいるって考えるのが妥当ね』

「あぁもう! 踊らされてる気分で腹立つ!」

 

 空を飛んでいる彗星と烈風へと意識を向けてワイルドキャットを放とうとしたホーネットは、エンタープライズ達が戦闘をしている方向から大量の烈風が飛んできていることに気が付いて更に表情を硬くした。

 

「ヨークタウン姉、多分私がいることバレた」

『どうしたの?』

「かなりの数の烈風が飛んできた。零戦は積んでなかったみたいだけど……かなりヤバいかも」

『ッ、何とか耐えて! もうちょっとで空母部隊が来るから!』

「頑張ってみる!」

 

 ヨークタウンの言葉を聞いて空を駆ける烈風へとホーネットは視線を向けた。正規空母二隻並の烈風の数に、若干苦笑しながらホーネットは甲板を向けた。

 

「ワイルドキャット全機発艦! やっちゃえ!」

 

 自分の持てる全てのワイルドキャットを発艦させたホーネットは、背後から迫る彗星の爆撃を紙一重で避けながら周囲へと意識を向けた。空母としての視力の良さを最大限に発揮して、周囲を見渡したホーネットの視界の隅に見慣れない人影が映った。服装だけで重桜の艦船だと判断することは難しいが、特徴的な形状をした刀剣を持っているその姿は正しく重桜艦船のそれだった。

 

「ヨークタウン姉! 重桜艦船がいた! もうあの特別監房の方向に走ってる!」

『ありがとう。ウィチタとセントルイスが近くにいたはずだからすぐに向かわせるわ』

 

 ヨークタウンの少し焦るような声を聞きながらホーネットは走って海へと出た。後方でひたすら艦載機を発艦しているであろう空母の顔を一目でも見ておかないと今後の戦闘に影響すると判断したホーネットは遥か海の彼方へと視線を向けた。

 

「やってやろうじゃない!」

 

 ホーネットは一人燃え落ちる艦載機の間を走りながらまだ姿すら見えない敵へと向かって吠えた。

 


 

 指揮官が囚われている場所を探しながら鳥海は無機質な廊下と階段をひたすら走っていた。監房と思われる場所の壁を片っ端からその手に持つ刀で切り裂いて確認しながら、鳥海は目当ての人物を探している。

 

「ここも違う……一体どこに」

「ハハッ! 同じ重巡とは運がいい!」

 

 走りながら壁を斬っている鳥海の真上から天井を破壊して突然降ってきた声に、鳥海は咄嗟に後ろに飛んで距離を取った。次の瞬間には鳥海が先程まで立っていた場所に赤い髪を振り回しながら好戦的な笑みを浮かべている艦船が重巡砲を砂煙の中から覗かせていた。

 

「私が海の猛将ウィチタだ! 相手頼むぞ!」

「そんな暇はありません!」

「そうかい。どっちにしろお前にはここで死んでもらうがな!」

 

 笑みを深めて砲門を鳥海へと向けたウィチタだったが、何かを感じ取って手に持っていた鞭を咄嗟に上へと振るうと、金属と衝突した甲高い音が鳴ると同時に鳥海とウィチタの間にそのまま介入者は着地した。

 

「お前は……」

「……鳥海、早く行け」

「うん! ありがとう摩耶!」

 

 鳥海の持つ刀よりも刃渡りの長い刀を振るう黒い制服の白髪艦船──摩耶は鳥海へと視線を向けずに先を促した。摩耶が見るのは少し驚いたような顔をしているウィチタだけだった。

 

「前回の戦いで決着がつかなかったんだ……今日こそお前を沈めて見せよう!」

「耳障りな声だ」

 

 同時に放った主砲は周囲を巻き込んで一際大きな爆音を基地へと響かせた。コンクリートが崩れる音と共に摩耶は刀を構えたままウィチタへと真っ直ぐに突っ込んだ。

 

『ウィチタ! 戦闘に入ったの?』

「あぁ、相手はどうやらツーマンセルで動いてるらしい。探索役と露払い役と言ったところだろうな」

「ぼくを前にしてお喋りする余裕があるとはな」

「チッ! 報告は後にする!」

 

 爆音に聞いて少し焦った様な声で通信を行ってヨークタウンにウィチタは最低限の情報を返すが、その一瞬の隙を付いて摩耶は爆炎の中を突進してウィチタへと迫った。即座に反応して副砲を発射するが、麻弥は当然の様に刀で全てを弾いて斬撃を放つ。

 

「……」

「相も変わらず無口な奴だ」

「敵と話す言葉は持ち合わせていない」

 

 再び同時に砲撃したウィチタと摩耶だったが、爆炎に紛れて摩耶はあっという間に鳥海の後を追いかけるように走り出した。視界を一瞬奪われたウィチタは反応が一瞬遅れて摩耶を追いかけるように走り出す。

 

「あくまで指揮官の奪還が最優先って訳か! やり辛いことこの上ない!」

 

 真正面から馬鹿正直に戦闘をしてくれるとはウィチタも最初から考えてはいなかったが、牽制の砲撃と隙を狙った斬撃だけで素直に退いて行く摩耶にウィチタは舌打ちする。

 

「鳥海!」

「大丈夫です!」

 

 背後のウィチタに警戒しながら走る摩耶は、前方を走る鳥海へと声をかけると戦場に似つかわしくない笑顔を浮かべて振り向いた。そんな自分の同型艦の姿を見て、摩耶は少し呆れた様に息を一つ吐いてから主砲を自分の足元と天井に放って盛大に崩落させた。当然被害を受けるのは摩耶を追いかけるように後ろを走っていたウィチタである。

 

「クソッ!」

 

 艦船の身体能力を持ってすれば床に開けられた穴を飛び越えることなど容易く、上から降ってくる瓦礫も艤装から放たれる弾薬を使えば簡単に吹き飛ばすこともできる。しかし、そのどちらも実行した後には一瞬の硬直ができてしまう。その一瞬を見逃す程摩耶が甘い相手ではないことは、前回の海戦で直接殴り合ったウィチタが一番良く理解していた。

 

「摩耶! きっとあの建物です!」

「走り抜けろ」

 

 指揮官が囚われているだろう建物に目星をつけたのを確認すると、摩耶はその場で止まってウィチタの方へと振り向いた。牢屋一つ分の穴を挟んで相対する摩耶とウィチタだが、無表情の摩耶とは違ってどうしようもできない悔しさがウィチタの顔には浮かんでいた。

 

「最初の奇襲が成功した時点でお前達の負けは決定していた」

「そうかい……ヨークタウン聞こえるか? してやられた」

『……会話は聞こえてたわ』

 

 苦々し気にヨークタウンへと通信をするウィチタを、摩耶は全く油断もせずに見つめながら通信機に手を当てた。

 

「重巡洋艦ウィチタを止めた。鳥海が指揮官の居場所を奥の一番高い建物に目星を付けたらしい。フォロー頼む」

『了解』

 

 摩耶の通信に短く反応したのは川内だった。返事を聞いてから摩耶は通信を切ってそのまま切っ先をウィチタへと向けて動きを止めた。

 

「動けば殺す」

「……ここまでとは、な」

 

 実質戦闘不能状態へと陥ったウィチタは重桜側の作戦立案者に内心感心していた。

 


 

 重巡洋艦が派手な音を出しながら戦闘をしていた場所とは反対に位置する建物内にいた川内は、部屋一つ一つを細かく確認している自分の相方へと視線を向けた。

 

「おい雪風、指揮官はあの塔らしい。鳥海が向かってる」

「おぉ! 流石なのだ!」

「俺らも行くぞ」

 

 川内と雪風は空が見えるまで天井を全て破壊して屋根の上から塔に向かって走り始めた。雪風が道中()()()()発見した見取り図を川内は眺めながら塔へと全力疾走していた。

 

「おい鳥海、どうやら指揮官はそこの上じゃなくて下にいるらしい」

『え? 地下ですか?』

「地下じゃなくて一階の奥にある廊下から繋がってる離れだ。見取り図を()()()()手に入れてな。その監房の壁を真っ直ぐ破壊していけば海がある」

『了解しました!』

 

 たまたま、幸運にも手に入れたという言葉に鳥海は通信の向こうで苦笑しながら川内の言葉に従った。走る川内の隣で随分と誇らしげな顔をしている雪風を見て川内は苦笑しながら見取り図を畳んで更に加速した。

 


 

「この奥……うぅ、無駄に広いです」

 

 川内からの情報を受けて塔内部へと侵入した鳥海は階段を無視して奥へとひたすら進んでいった。先程までこの場所に人がいたような痕跡が残っていることに鳥海は警戒しながら進んでいた。まだ湯気を立てているコーヒーを横目に、鳥海は廊下の奥で大きな鉄の扉を発見した。

 

「きっとこの先ですね……」

 

 手に持っていた刀で鉄の扉を豆腐の様に切り裂いた鳥海は、残骸を飛び越えて扉の先へと進もうとしてその足を止めた。黒い鉄で覆われた質素な廊下で鳥海は視線の先の人影に警戒して刀を構えた。こんな場所に立っている人影が人間なはずがないと考えた鳥海は、この基地に残っている艦船が多くないことも理解している。

 

「誰ですか」

「誰だと思う? ヒントあげようか?」

「いえ結構です。その艤装の形には見覚えがありますから」

 

 少しふざけた様な言葉を返す艦船に鳥海は構えを解くことなく艤装の主砲を起動させた。油断は全くするつもりのない瞳で立ち塞がる艦船を鳥海は見ていた。

 

「まさか本当にここまで来る艦船がいるとは思わなかったなぁ……ただの牢番で終わると思ってたのに」

「どいてください。クリーブランド級の誰かさん」

「誰か分かってないじゃん!」

 

 艤装の形からクリーブランド級軽巡洋艦の誰かだと判断した鳥海は摩耶の様な鋭い視線を敵へと向けた。指揮官が目の前にいるはずなのに邪魔をする艦船など、鳥海からすれば邪魔以外の何者でもなかった。

 

「まぁ退く気が無いことぐらい理解できるでしょ? 頭良さそうだし」

 

 丁寧さに欠ける口調と話し方で喋っていた艦船は砲塔を鳥海へと向けてにっこりと笑みを浮かべた。

 

「クリーブランド級軽巡二番艦コロンビア。次は覚えておいてね!」

 

 おおよそ敵へと向ける物ではない、狂気の欠片も存在しない楽しそうな笑みを浮かべながらコロンビアは鳥海へと静かに砲塔を向けた。

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