最果ての航路   作:ばるむんく

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出港

 仮称「新生アズールレーン」本部である母港は、現在全員が慌ただしく動いていた。ロイヤルの女王クイーン・エリザベスよりもたらされた情報によって、膠着していたロイヤルとヴィシアの関係が本格的に悪化し始めたことを知った恭介はすぐさま艦隊を編編制した。主力艦隊として戦闘海域へと向かう艦船が戦闘準備を進め、参加しない艦船達もトップである恭介不在の間、母港を正常に動かす為の準備に追われていた。

 

「天城、長門、留守は頼む」

「はい。どうか指揮官様のお心のままに」

「うむ……気を付けてな」

 

 執務室で天城と長門に向かい合っていた恭介は、横に立っているニューカッスルへと視線を向けてから二人に留守を任せるように指示していた。重桜の象徴たる長門をセイレーンとの戦いでもない戦場に連れて行く訳にもいかず、戦うことができない天城も同様に連れて行くことができないと判断した恭介は、信頼のおける二人に指揮官代理として母港の全てを委託した。

 

「艤装の完成の目途が経っていないティルピッツを連れて行くことはできないし、ロイヤルとヴィシアの戦闘原因も基本的には鉄血にある以上、オイゲンとニーミも連れて行くことはできない」

「当然ね。顔見ただけでどっちからも攻撃されるわ」

 

 天城、長門と共に執務室に呼び出されていたオイゲンは、恭介の言葉に肩を竦めていた。数ヶ月この母港で生活し、ようやくフッドやフォーミダブルとまともに話せるようになったオイゲンだが、当然ロイヤル本国に所属する艦船からしたら全く関係のない話である。

 ヴィシア聖座とロイヤルの間接的な戦闘原因となっている鉄血艦船を連れて行くことはできないとする恭介の判断に、フッドとエンタープライズも同意するように頷いていた。

 

「幸いなことに、今回のいざこざにユニオンが介入する気配はない。今のところは、だが」

「ユニオンは精神的に重桜と鉄血に挟まている形だからな」

「ただ、当然だがロイヤルとヴィシアの確執が長引けば、必ずユニオンも鉄血もこの戦闘に介入する。最終的には全ての陣営が入り乱れる泥沼へと発展すると考えていい」

 

 一度でも世界中で戦争を起こしてしまえば、今度こそ修復不可能な傷が外交にできてしまう。そう考えた恭介は、一番初めとなるであろうロイヤルとヴィシアの戦闘に介入することは前々から決めていた。

 

「戦闘海域はメルセルケビール沖。戦艦四隻と他艦船数隻が停泊している」

「戦艦四隻か……鉄血に渡るのを恐れるというのも、無理はないか」

 

 エンタープライズは陣営間の問題ほど解決し辛いことは無いと思っているが、今回のロイヤルによるヴィシアへの降伏勧告も、一筋縄ではいかない話だろうことは理解していた。互いが己の陣営の為に動いている以上、ぶつかり合うのは互いの正義である。人は正義の為ならどこまでも残酷になれる生物だと、エンタープライズもユニオン国民の持つ反重桜感情を思い出していた。

 

「ヴィシアの教皇が何を考えているかは知らないが、国民感情としてはまだ反鉄血寄りではあるはずだが……今回の攻撃でヴィシアの主張をなにも受け入れずにロイヤルが攻撃すれば、ヴィシアは一気にレッドアクシズに近づいていく。そうなればアイリスとヴィシアの統合など……どちらかが滅びるまで不可能になる」

「……血で血を洗う戦いになる、か」

「それだけは避けねばなりません」

 

 恭介の言葉に頷いたエンタープライズとフッドは、表情を強張らせていた。常に艦隊を率いるような立場で戦ってきた二人だが、今回の様に戦いを止める為に武器を取ることは初めてだった。指揮官として恭介が後ろでサポートをするとは言え、二つの艦隊の旗艦になるエンタープライズとフッドにとって慣れない戦いになることは間違いなかった。

 

「ロイヤル艦隊を足止めして、ヴィシアの教皇と艦船を説得するしかない。ヴィシアを不用意に刺激しない為にも、俺とエンタープライズはヴィシア側の説得、フッドはロイヤルの足止めを頼む」

「わかった」

「期待に応えて見せますわ」

 

 肩に力の入った様な二人の反応に苦笑いを浮かべ、ニューカッスルに視線を向けた。エンタープライズは恭介が共にいるのでどうとでもすることができるので、フッドを暴走しない程度に抑えておいてくれと思って視線を向けた恭介だが、言いたいことは理解できると言わんばかりに、ニューカッスルは薄く微笑みながら小さく頷いた。

 

「じゃあ準備頼む。長門達もな」

「うむ」

「じゃあ私はもう用事もないから帰るわよ」

 

 話が終わったのを察したプリンツ・オイゲンは、手をひらひらと動かしながら誰よりも早く執務室を出ていった。面倒くさそうな顔をしながら、その実誰よりも仲間のことを考えているプリンツ・オイゲンの行動に、天城は苦笑しながら長門と共に執務室から出た。

 

「指揮官様が元気そうでよかったですわ」

「そうだな……天城、お主も無理はするなよ」

「お気遣い、痛み入ります」

 

 廊下を歩く天城の言葉に、長門は少し心配そうな表情を浮かべていたが、天城はいつも通り笑顔のまま応えた。あまり心の内を見せようとしない天城の行動に、長門は口から出そうになったため息をゆっくりと飲み込んだ。

 

 


 

 

「さっさと出発するか」

「即断即決、です」

「時は金なり、って言葉もあるしな」

 

 明石と夕張によって整備されていた船を見ながら、指揮官は出撃準備の整った艦船達を見渡した。指揮官の言葉に綾波が最初に頷き、クリーブランドも頷きながら人生の格言と呼ぶべき言葉を口にしていた。

 

「あー……クリーブランドの口癖なんだ。気にしないでくれ」

「口癖って……重桜の人間が使う「時は金なり」とユニオンの人間が使う「Time is money」は意味が違うだろ」

 

 ボルチモアのフォローを聞いて、恭介は若干呆れながらもそのまま空気を引き締めることも無く船に乗り込んだ。

 船内でなにかデータを取っていた明石と、その周辺のうろうろとしているオフィサーユニットを見ながら、恭介は目を閉じて船の全体を感じ取った。メンタルキューブが改造に使われている故なのか、恭介が船に同期するように目を閉じると、人間の感情の様なものが船から流れ込んでくる。

 

「……悪かったって」

 

 恭介が出かける用事がしばらくなかったので数ヶ月ぶりに動かしたのだが、それがどうやら不満だったらしく、怒っているような拗ねているような感情が流れ込んでくるのを感じながら、恭介は一人で謝っていた。

 

「全員いるな」

 

 同期することによって艦内に存在する全てを支配した恭介は、艦隊の全員とオフィサーユニットと黄色い謎生物である仮称「饅頭」を感知してから力を入れるように全ての電源を動かした。

 

「指揮官、出発するのか?」

「あぁ……エンタープライズ」

「なんだ?」

 

 艦橋へとやってきたエンタープライズは、恭介が一人で笑みを浮かべている姿を訝し気に眺めていた。船と一人で対話していた恭介は、目を開いてエンタープライズへと振り返った。

 

「この船の名前……何がいい?」

「またその話か。結局決まらなかったじゃないか」

 

 名称がある方が指揮しやすいのではないかと考えた恭介達によって、この船の名前決めは以前に行われたのだが、どの陣営の言葉で名前をつけるかで議論が終わらずにそのまま決まらずに放置されていた。ただ、実際に戦闘になることが予想される今回の出発前には、恭介は名前を決めておきたいと考えていた。

 

「じゃあ俺の一存で決めていいのか?」

「いいんじゃないか? 多分、誰も文句は言わないと思うが」

 

 神代恭介の名の下に艦船が集まっている新生アズールレーンにとって、彼の決定は全員の意見よりも重いものである。本人はそんなことを考えもせずに、民主主義の様にしてしまえばいいと思っているが、指揮官を上にすることで力を発揮する艦船にとっては大事なことらしい。

 

「じゃあ……『アルゴー』かな」

「アルゴー?」

「だめ?」

「いや……ダメではないが」

 

 急に名前を決めようと言い始めた恭介に首を傾げるエンタープライズだが、恭介の考えた名前そのものには反対するつもりなど無かった。

 

「セイレーンの歌声は人を惑わし破滅へと導く。かつてアルゴーに乗船していたオルフェウスは、竪琴をかき鳴らしてセイレーンの音を打ち消して誘惑からアルゴナウタイを守った」

「だから、アルゴーなのか?」

「丁度いいだろう? 願掛けってやつだ」

 

 全てを裏側から操っているセイレーンに逆らおうと決めた時から、恭介はオルフェウスの伝説を思い出していた。自分が艦船を指揮することしかできないが、セイレーンから仲間を守るためにはオルフェウスの様に対抗するしかない。

 

「アルゴー船に乗っていた数々の英雄が艦船のみんなで、俺はセイレーンからみんなを守るオルフェウスになるさ」

「……オルフェウスも立派な英雄だろう?」

「そう言われるとそうだな」

 

 苦笑を浮かべるエンタープライズに、恭介も純粋な笑みを見せた。

 もう一度、恭介は船……『アルゴー』と同期するように目を閉じると、準備は万端と言わんばかりに期待の声無き声を挙げていた。

 

「アルゴー、出発するぞ」

 

 恭介の言葉に反応して、アルゴーは独特な金属音を立てながら錨を引き上げた。艦船十数人を乗せた希望の船アルゴーは、新生アズールレーンの想いを乗せて海を走り始めた。

 

 


 

 

「……そろそろメルセルケビールが見えてくるはずだ」

「そう……」

「上も相当焦っているようだ」

 

 ジブラルタルから出た艦船達は、ヴィシア聖座の艦船が停泊しているメルセルケビールへと向かって進んでいた。アーク・ロイヤルが偵察機を発艦させながら、旗艦として無表情でいようと努めているハウへと視線を向けた。かつて盟友だったはずのアイリスに対して、武力を行使しなければならないこの状況に、乗り気になっている艦船など一人もいない。

 

「ヴィシア聖座所属の戦艦が鉄血の手に渡れば、間違いなくロイヤルは終わりだ。ユニオンの手を借りると言っても限界は存在する」

「わかってるわ……けれど、こんな役目をしなければいけないことに、少し気が滅入っているだけよ」

「……そう、だな」

 

 ハウの言葉に、アーク・ロイヤルは明確な言葉を持って返すことができなかった。再現の様に繰り返される「大戦」の記録通りならば、ハウが今指揮を執っている艦隊は本来フッドが率いるものだった。フッド他数名の艦船が行方を眩ませてから、急遽ジブラルタルへとやってきたハウとしては、かつて背中を預けた者に銃口を向ける行為そのものが多大なストレスになっている。旗艦が暗い顔をしていては、艦隊もそれに引っ張られてしまうと思っているハウだが、そもそも艦船全員がこの交渉に消極的なのだ。

 

「…………あーッもう! やってらんない!」

「お、落ち着けヴァリアント」

「はぁ……あほらしい」

 

 唐突に叫び始めたヴァリアントに、アーク・ロイヤルは焦った様な声を見せた。基本的には明るくポジティブな性格をしているヴァリアントには、このどんよりとした空気が身体中に纏わりつく様で不満を爆発させていた。わちゃわちゃとしているヴァリアントとアーク・ロイヤルを横目に、アリシューザは呆れた様な疲れた様なため息を吐いた。

 

「ふぅ……命令は絶対よ。指示通り、アーク・ロイヤルはメルセルケビールに到着次第、機雷を投下して」

「本当にやるのか? まだ交渉があるだろう」

「ヴィシア聖座がこちらの提示する条件をのむと思っているの?」

「それは……」

 

 アーク・ロイヤルは、ジブラルタルの港で最後までこの『カタパルト作戦』に反対していた。あまりにもヴィシア聖座が取れる選択肢が少なく、攻撃をしに行くようなものだと訴えていたアーク・ロイヤルだが、最終的には押し黙ることしかできなかった。当然、アーク・ロイヤルとてダンケルクやプロヴァンス、ブルターニュなどの強力な艦船が鉄血に渡ればどうなるのかなど分かっている。それでも、かつて共に戦った相手に不条理な条件を叩きつけなければならないことに、理不尽さを感じていた。

 

「私達に求められているのは、敵戦力の無力化。沈めろとまでは言われていないわ」

「そうだとしても……本当にそれで済むはずがない」

「……どちらにせよ、この作戦はロイヤルの戦術的敗北が確定している様なものよ」

 

 今からロイヤルがヴィシア聖座に要求することは、明らかに鉄血との休戦条件を破る行為である以上、ヴィシア聖座は拒否することしかできないことが分かり切っていた。そして、ヴィシア聖座が要求を拒否した時にロイヤルが取る行動は、速やかなにヴィシア聖座の艦船を無力化することだった。そこに、ヴィシア聖座の事情など介在する余地はない。

 

「この作戦が成功した場合、ヴィシア内の反ロイヤル感情は大きなうねりとなって返ってくる。もう……回避することもできないの」

「くっ……」

 

 ハウの言葉に悔し気な声を押し殺したアーク・ロイヤルを見て、アリシューザはもう一度呆れた様なため息を吐いた。極めて冷静になるように振舞っているアリシューザだが、内心ではアーク・ロイヤルやヴァリアントと同様にロイヤルへの不信感が爆発寸前まで来ていた。

 士気が最低まで下がっているロイヤル艦隊の面々は、全員が下向きな感情を抱えたままメルセルケビール港近海まで近づいていた。

 

 


 

 

「急ぎなさい」

 

 メルセルケビール軍港では、すぐそこまでやってきているであろうロイヤル艦船に対抗する為に準備を進めているダンケルクの姿があった。要求を聞くまでもなく、鉄血と手を切って再びアズールレーン側に来いと言われることは理解していた。ダンケルクはすぐに動ける他の艦船達をいつでも脱出できるように指示を出し、ロイヤルとの交渉には自分一人が出るつもりだった。当然、メルセルケビールに停泊していた戦艦のプロヴァンスやブルターニュはダンケルクの作戦に反対したが、ヴィシア聖座周辺を監視するように動くセイレーンとの戦いで傷を負っていた為、艤装を捨ててでもヴィシア聖座を守護する護教騎士団の未来の為にと無理やりに説得した。

 

「頼んだわよ……ストラスブール」

 

 自分の妹であり、唯一艤装が問題無く動かせる状況だったストラスブールに他艦船とメルセルケビール軍港で働いていた人間全員を乗せ、ダンケルクが囮になっている間にストラスブールの船体ごと全員を脱出させる。これがダンケルクの考えた作戦の全てだった。当然、ダンケルクは自分だけでロイヤル全員の相手をできると思い上がっている訳ではないが、湾内にはストラスブールとダンケルクの艤装以外にも、メルセルケビールに停泊していた全ての艦船の艤装だけが浮かべてある。勿論フェイクとしての役割しか果たすことができないが、それだけでもストラスブールを逃がしきれるとダンケルクは確信していた。

 

「大いなる父と聖霊の加護があらんこと……貴女達に、ヴィシアの……アイリスの未来を託すわ」

 

 誰も居なくなった船の上で、ダンケルクは一人で呟いた。陸の上で慌ただしく脱出の準備を進める人影を何処か遠く感じながらも、ダンケルクはこれからの世界の未来を考えるだけの余裕があった。

 

「私は恐らく……ここで、沈むわ」

 

 カンレキのことなどダンケルクにもよくわからない話ではあるが、確かにダンケルクはこのメルセルケビールの海に沈んだことがある。とても悲しい『大戦』の記憶でもあり、ダンケルクの存在を確立する根柢のものでもある。どうやっても自分が助かる方法など無いのだろう、と『大戦』の記憶を元に物事を考えていると言うのに、記憶通りにブルターニュが沈むことは無いと都合よく考えてしまう自分に、ダンケルクは苦笑を浮かべた。

 

「ふぅ……枢機卿はロイヤルへと行ってしまった。ジャン・バールは……枢機卿のことで目の前が見えていない状態。教皇は何を企んでいるかわからないし……」

「だ、ダンケルクさん!」

 

 二つに割れてしまったアイリスとヴィシアの、見れもしない未来を憂いていたダンケルクは、船の外から大声で呼びかけてくる男性の声に反応した。今メルセルケビール軍港に残っている男性など、整備員ぐらいであり、彼らは脱出準備の為に手が離せない状況のはずだった。故に、声をかけられることを想定していなかったダンケルクはゆっくりと船から降りて整備員の前までやってきた。

 

「どうかしたのかしら?」

「そ、その……近づいてくる船影があって、ですね」

「船? 幾らなんでも早すぎるわ」

「いや……その……一隻だけなんです」

「……わかったわ」

 

 ロイヤルの艦隊がやってきたにしてはあまりにも早い到着に、ダンケルクは眉を顰めた。仮にロイヤルの艦隊だった場合は交渉によってなんとか時間を稼がなければならないと考えたダンケルクは、すぐに踵を返そうとして、男の声に反応して一瞬足を止めてから、海へと飛んだ。淡い光を伴って戦艦を全て艤装へと変換して身に纏ったダンケルクは、決意を秘めた瞳のまま湾口へと向かって自分の出せる最高速で飛び出した。

 一隻でやってきた艦船が何者なのかはダンケルクにも想像できなかったが、少なくとも戦闘をする為にやってきていないことは確実だった。なにせダンケルクが視認したその船には、兵装と呼ばれるものが対空砲しか積まれていないのだから。

 

「所属はどこの船かしら。作りは鉄血のようだけれど……」

 

 戦艦の兵装を無理矢理全て外し、装甲の厚い客船の様な姿へと変貌している艦船などダンケルクも聞いたことが無かったが、近づいてから外装が鉄血の艦船の扱う艤装と似ていることに気が付いた。対等に話し合う為に船を艤装として欲しかったダンケルクだが、船の先から顔を覗かせた人間の顔を見て、それができないことを悟った。

 

「そっちから来てくれるとは思わなかったな」

「貴方、人間ね。この船を動かしているのは誰かしら?」

「俺だよ」

「は?」

 

 顔を出した男の言葉を、ダンケルクは理解することができなかった。ヨットやボートならまだしも、戦艦級の船を一人で動かすと主張する男に、ダンケルクは目を細めてから艤装を構えた。

 

「敵なのかしら?」

「味方ではないな。俺はお前達と話をしに来た」

「……信じられるとでも?」

「信じて貰うしかない。少なくともアルゴーには砲塔なんて積んでないだろ」

「…………」

 

 男の言うアルゴーがこの奇妙な船の名前であることは理解したが、やはりダンケルクの記憶にはアルゴーなる艦船は存在しない。ますます不信感を募らせたダンケルクは、男が後ろを向いて誰かと言葉を交わしている隙に砲塔を起動して沈めてしまおうと考えていたが、船から飛び降りてきた陰に反応してそちらへと砲塔を向け、その姿を見て目を見開いた。

 

「そう焦らないでくれ。指揮官の対応についてはこちらから謝ろう」

「……ユニオンの英雄」

「私は知っているのか? 確かに、私はエンタープライズだ」

 

 船から出てきた予想以上の人物を前にして、ダンケルクは一瞬怯んでから彼女の言葉を思い返した。

 

「指揮官、ですって?」

「そうだ。あの人は神代恭介……私達、新生アズールレーンの指揮官だ」

「まだ仮称だけどな」

 

 新生アズールレーンと名乗る神代恭介とエンタープライズに、ダンケルクは何も言うことができなかった。




ダンケルクは神代恭介の顔は知らなくても、名前は知ってます。
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