最果ての航路   作:ばるむんく

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予定してたより進まなかった()

8話で重桜まで帰るつもりだったのに……


鉄血

 警報音が鳴り響く中、恭介は軍港を歩いていた。敵が軍港に迫り、今はポケット戦艦が対応しているということを聞いて恭介は研究施設を歩いていた。後ろに続く瑞鶴は先程から静止の言葉をかけているのだが、聞く耳持たずに歩いている状況だった。

 

「ねぇってば!」

「静かにしろ瑞鶴。それで、なんだ?」

 

 諦めずに何度も声を挙げている瑞鶴が憐れになったのか、恭介は立ち止まって振り向いた。仮にも鉄血の最重要施設とも言っていい場所に無断で入り込んでいるという状況に、全く罪悪感も無いのかいつも通りの表情で瑞鶴を見ていた。如何に同盟国と言えどもこのようなことを無断でして許される訳もないと考えている瑞鶴は、全く悪いとすら思っていない恭介に呆れていた。

 

「無断で入ってどうするの? 怒られるだけじゃ済まないよ? というか普通に外交問題だよ!」

「安心しろ。俺は避難シェルターに逃げたことになってる」

「そういう問題じゃないんだよ……もぉ!」

 

 瑞鶴の質問に答えてから再び歩き始めた恭介を見て、このままだと自分も共犯扱いになってしまうと理解していながらも、敵襲がある中国の最重要人物を放置することもできず、瑞鶴は護衛として付いていくことを渋々決めた。

 

「それで、何が目的なの?」

「……奥にもしかしたらいるのかもしれないと思ってな」

「何が?」

「メイド隊だ」

「メイド隊……メイド隊……ロイヤルメイド隊……はぁ!?」

 

 現在鉄血海域へと侵入しているのは間違いなくロイヤルだろう。鉄血とロイヤルは重桜とユニオン様に戦争状態なのだから、ロイヤルが遂に全面戦争を仕掛けてきたのかと瑞鶴は思っていたのだが、既に研究施設の中にまでロイヤルが入り込んでいるのだと恭介が平然と言うので、驚愕の声を挙げた。

 

「誰ですか!?」

「ひぃっ!? 勝手に入ってごめんなさい!?」

 

 大きな声を挙げた瑞鶴の声に反応していきなり銃口を眉間に突き付けられた瑞鶴は、鉄血の研究員の人物かと思って反射的に頭を下げて謝った。そんな瑞鶴に対して呆れた様な顔でため息を吐いた恭介は、瑞鶴へと銃口を突き付けた人物を見た。

 

「久しぶりだな、シェフィールド」

「……貴方達は、重桜ですか」

「え、ロイヤル!」

 

 恭介の声に反応して、瑞鶴は反射的に謝った時よりも更に早く艤装を展開して自分の指揮官とシェフィールドの間に入り込んで刀を構えた。先程までの気の抜けた女性から、一気に尋常ではない殺意を放つ強者へと変わった姿にシェフィールドは無意識のうちに息を呑んでもう片方の手にも艤装を持った。リーチと初速で圧倒的有利な条件を持つはずのシェフィールドは、目の前にいる艦船は自分が一歩でも動けば即座に首を刎ねることができると確信していた。それだけの殺気と敵意を瑞鶴は放っていた。一航戦から甘いだの未熟だの言われているが、瑞鶴の実力は既に艦船の普通を超えていた。

 

「剣を降ろせ瑞鶴」

「止めておきなさいシェフィ」

「指揮官?」

「ニューカッスルさん……」

 

 恭介は強張っている瑞鶴の肩へと手を置き、ニューカッスルはシェフィールドの手を横から包み込んだ。その二人の行動によって、瑞鶴とシェフィールドに張り詰めていた緊張の糸が切れて同時にため息を吐いて艤装を降ろした。

 

「目的はまだ先だ」

「え? もしかしてロイヤルと一緒に行くの?」

「嫌か?」

「いや、指揮官が行くなら行くけど……」

「……随分と指揮官に惚れ込んでいるようですね」

「うぇ!? 違うから!」

 

 シェフィールドの視線と言葉に瑞鶴は顔を真っ赤にして否定した。ロイヤルは敵なのだという態度を出しておきながら、恭介が言えばすぐに頷いてしまう姿を見れば誰だろうとそう思うだろう。実際、ニューカッスルは微笑ましいものを見るような目で瑞鶴を見ていたのだから。

 

「そ、それで? 指揮官は何を探しに行くの? もうメイド隊にはあったじゃん」

「セイレーンの艤装を探しに行く。鉄血の欺瞞を晴らす……って訳じゃないが、予想通りなのだとしたら人類はもう滅亡寸前だ」

「そんなに?」

「そんなにです。どうやら神代恭介様、貴方は鉄血の研究資料を読んだ様ですね」

「……お前達はまだ見つけてないのか」

 

 そもそもロイヤルメイド隊は鉄血がセイレーンと絶対に繋がっているという確信を持って行動している訳ではなかった。ロイヤルが今回動いた理由は、重桜の重要人物が訪れいてる今ならばセイレーン艤装に関する研究結果が手に入る可能性が高いと踏んだからだった。

 

「それを探しに来たんです」

「そうか……なら予想以上に良いものが見つかるかもしれないな」

「と、言うと?」

「設計図だ」

 

 恭介が見た資料には、鉄血はセイレーンの艤装を設計図を持っていなければ分からない程の細かい情報が載っていた以上、奥にはセイレーン艤装の設計図、もしくはその()()()()()()()()()()()()()()()がいるのではないかと判断していた。

 

「ビスマルクには悪いが……暴かせてもらうぞ」

 

 鉄血が持っているであろう闇へと手を伸ばすために恭介は更に奥へと向かって歩き始めた。

 


 

「ちぃ!?」

「まだまだ!」

 

 鉄血が誇る装甲艦であるドイッチュラントは、苦戦を強いられていた。相手も一人とは言え、歴戦の戦艦である以上ドイッチュラントは不利な状況であった。加えてキング・ジョージ5世は多少のダメージを覚悟で特攻を仕掛けてくるが、ドイッチュラントはキング・ジョージ5世の主砲に対して特攻など仕掛けることはできない。圧倒的に火力が違うのだから当然と言えば当然ではあるが。

 

「さぁここからどう出る!」

「調子に乗ってるじゃない……イラつくわね!」

 

 余裕を見せるロイヤルの騎士長に対して、ドイッチュラントは怒りで持って応えていた。ドイッチュラントの感情が昂るにつれて艤装の動きは激しくなる。感情を糧に活動するかのように激しく動くドイッチュラントの艤装は、主砲を連射し始めた。

 

「主砲の連射とはな! 熱量で艤装が動かなくなるぞ!」

「関係無いわ……ここであんたを沈める!」

 

 艤装に無理をさせて主砲を連射するドイッチュラントは、更に追加で魚雷を全弾放ちながらキング・ジョージ5世へと肉薄した。捨て身の特攻とも言えるその行動に、キング・ジョージ5世はあくまでも楽しそうな顔をして迎え撃つために構えた。

 

「そこまでよ」

 

 無謀な特攻を仕掛けるドイッチュラントは進行方向を手で遮られて海面に倒れこんだ。勢いそのままで海面を滑るように倒れこんだドイッチュラントは、遮ってきた手の持ち主に対して抗議するように顔を近づけた。

 

「あんたねぇ! いきなり何するのよ!」

「あら、自爆特攻を止めてあげたんだもの。感謝し欲しいわね」

「しないわよ! 大体止め方にももう少し方法があるでしょう!?」

「我儘ねぇ……」

「どっちがよ!」

 

 突然現れた乱入者にキング・ジョージ5世は心底嬉しそうに笑みを深めた。新手の登場に先程まで戦闘を傍観していたエイジャックスとオーロラが旗艦を守るように前に立って主砲を乱入者へと向けた。

 

「プリンツ・オイゲン、ですわね」

「えぇそうよ。一応ビスマルクがいない間を任されているから、見過ごせないのよ。爆撃されていないからと言って防衛しないっていうのはただの馬鹿でしょう?」

「もっともな意見だな。我々の目的は貴方達と戦うことだが……ビスマルクかティルピッツに出会いたかったものだ」

「ざーんねん。どっちも今はここにいないわよ」

 

 主砲も動かさずにプリンツ・オイゲンは惚けるように肩を竦めていた。まるで戦う意思のないプリンツ・オイゲンに、エイジャックスは更に警戒を高めながら周囲を警戒していた。

 

「さぁ、キング・ジョージ5世は私に任せて、貴女はあの軽巡でも相手にしてなさい」

「はぁ!? 何であんたがわたしの獲物取るのよ!」

 

 唐突な物言いに大層不満げなドイッチュラントだったが、抗議の声を無視する様にプリンツ・オイゲンはこの戦場唯一の戦艦へ向けて砲塔を向けた。

 

「悪いけど、私は貴女を沈めるために来た訳じゃないの……精々時間稼ぎさせてもらうわ」

「面白い」

 

 プリンツ・オイゲンの挑発にわざと乗るように反応したキング・ジョージ5世は、戦場から母港へと向けて走り始めたプリンツ・オイゲンを追いかけ始めた。まだ抗議し足りないのかドイッチュラントがその後ろを追いかけようとした瞬間、前方に弾丸が飛んだ。

 

「私を無視するなんていい度胸ですわね」

「……ふぅ……まぁいいわ。あんたたちから沈めればいいのね」

 

 先程までキング・ジョージ5世に追い詰められていたとは思えない程の殺気を振りまきながら、ドイッチュラントは怪しく笑っていた。

 

「鉄血の力、思い知るといいわ」

 

 獣が叫ぶかのような音を艤装から放ちながらドイッチュラントはエイジャックスとオーロラへと沈める対象を変更した。

 


 

「この扉の先が最奥のようですね」

「結局何も見つかってないじゃん……」

 

 研究室を片っ端から調べながら歩き回っていた恭介と瑞鶴、そしてロイヤルメイド隊の二人は認証付きの扉の前で止まった。パスワードが分かっても研究員の証明となるカードが無くては入れない場所にも、パスワードとカードを気絶させた研究員から奪って入ってきた恭介達だったが、指紋認証によって一部の人間しか入れないようになっている扉はどうにもできない状態だった。

 

「……どうするの?」

「勿論破壊します」

「えぇ……メイドってこんな荒々しいの?」

「少なくとも俺が今まで出会ったロイヤルメイドは全員武闘派だな」

 

 瑞鶴が頭を悩ませてどう侵入しようかと考えている横で、艤装を構え始めたシェフィールドに瑞鶴は助けを求めるように恭介へとしがみついた。

 

「壊されてしまっては困る」

「っ!?」

 

 主砲のトリガーへと指をかけた瞬間、扉の中から声が響き、認証付きの扉が内側から開けられた。誰かしらがいることは明白で、シェフィールドとニューカッスルと瑞鶴はすぐに戦闘態勢へと移行して敵を見た。中では何かの研究をしていたのか、液体が入ったガラスのケースやら、割れた試験管等が転がっており、真ん中には椅子に座った艦船が一人だけいた。

 

「ビスマルク……やっぱりここにいたか」

「えぇ」

 

 中にビスマルクがいたことを恭介はある程度予測していたのか、全く警戒もせずにビスマルクへと近づいて行く。試験管や薬が散乱する中、気絶したというよりは何かしらの要因で眠らされたと思われる研究員が何名か床に転がっていた。

 

「お前がやったのか?」

「そうよ。調べものの邪魔になるから」

「調べもの? 貴女は鉄血の旗艦であり総指揮官であるはず。今更何を調べると言うのですか?」

「大体皇帝に会いに行ってたんじゃないの?」

「裏口にエレベーターがあるの。知らなかった?」

「……ニューカッスルさん。だから研究施設の見取り図は手に入れた方がいいと言ったのです」

 

 刀を降ろした瑞鶴と主砲をビスマルクの頭に向けたままのメイド二人は、気になることを全て質問していた。瑞鶴の言葉に一番最初に答えたビスマルクだったが、その答えに関してシェフィールドがジト目で横のニューカッスルを見つめた。小さく謝るニューカッスルに対してシェフィールドはため息を吐きながら銃口をビスマルクの眉間にそのまま当てた。

 

「ニューカッスルさんの質問に答えてください」

「…………私が皇帝の傀儡で、何も知らないからよ」

「何ですって?」

 

 ビスマルクの淡々とした抑揚の少ない言葉を聞いて、ニューカッスルとシェフィールドは驚愕していた。ビスマルクは所詮傀儡でしかなく何の決定権も無いこと。恭介は当初から理解していたが、自信を傀儡と例える程だと思っていなかった。

 

「セイレーンの研究なんて、艦船である私達は関わることすら許されない。それも当然のことね……繋がりが一瞬でばれてしまうもの」

「繋がり? 何の繋がりですか」

「セイレーンと鉄血上層部……皇帝が繋がっているって話だろ」

 

 恭介の言葉にシェフィールドは苦虫を噛み潰したような顔をしてビスマルクの眉間から主砲を引いた。シェフィールドに銃口を向けられながらも全く動揺せずにキーボードを叩いていたビスマルクは、ある資料を見つけてそれを開いた。

 

「これね」

 

 発見したファイルをその場にいる全員に見えるように大きな画面へとパソコンの画面を映した。そこに書いてある文字を読んで、ニューカッスルはあり得ないものを見たかの様に目を見開いて口を震わせていた。

 

「これ、は……」

「貴女が予想している通りのものよ」

 

 そこに書かれているのは、艦船を生み出すメンタルキューブはセイレーンがもたらした技術であり、彼女達から四大陣営全てが多かれ少なかれ支援を受けていること。艦船を使った戦争をしているのはセイレーンが望んでいるからということが端的に書かれていた。

 

「ここまでは予想通りだな。ビスマルク、鉄血が調べたセイレーンの艤装はどうした」

「……」

 

 恭介の言葉に反応してビスマルクは次々とファイルを展開して中身を確認していた。最初は撃退したセイレーン艦隊の残骸から得られたデータなどが並んでおり、日付はセイレーン大戦よりも前のものだった。しかし日付がある一定の場所を超えてから、セイレーンとの戦闘ではまず得られないデータが綴られていた。

 

「セイレーンから与えられた上位個体が扱う艤装の設計図を解析した結果、排熱システムが特殊なことが判明した、か……流石鉄血。真っ黒なのはお家芸だな」

「質の悪い冗談ね」

 

 次々と展開されるデータにはセイレーン艤装の設計図が含まれ、それを組み込んだ鉄血が扱う生体艤装の設計図まで発見された。鉄血が既にセイレーンと繋がっているという事実に、シェフィールドもニューカッスルも瑞鶴も覚悟はしていただろうが、人類の裏切りを目の当たりにして人類を守るという艦船自身の存在意義が揺れていた。何せ艦船のリュウコツを成すメンタルキューブは、セイレーンからの贈り物なのだ。

 

「……っ!? ハッキング!?」

 

 鉄血の中にある黒い裏切りを全て閲覧しようとしていたビスマルクが操っていたパソコンとモニターが急にハッキングされ始めた。どれだけビスマルクがコードを入力しようとも明らかにおかしなコードで全てが上書きされてデータが片っ端から削除され始めた。

 

『こんにちは。艦船の皆さん』

「……セイレーン」

『えぇ。私は確かにセイレーンよ』

 

 全てのデータが消去されてから、モニターには何も映らずに音声だけが流れていた。これ以上鉄血の闇を暴くことができないと判断したビスマルクは立ち上がってモニターへと向かって呟くと、その声を拾って画面の向こうのセイレーンは応えた。

 

「まさか鉄血と繋がっているとは、思いたくなかった」

『私達も、まさか単純に戦争してくれない艦船がいるなんて思いもしなかった……なんて、口が裂けても言えないわね。でも予想外なのは本当よ? こんなに早く自分達の国を疑い始めるなんて』

「お生憎、私は鉄血の仲間は信じていても、無意味に戦争に踏み切った国のことはそんなに信じてないの」

『あはは! 面白いわね。それも貴方のお陰なのかしら? ()()()カミシロキョウスケ』

 

 セイレーンの特異点という言葉に恭介とビスマルクは等しく顔をしかめた。特異点という言葉が何を示しているのか理解できていないシェフィールドとニューカッスル、瑞鶴はただ神代恭介を見た。

 

「……何が目的で接触してきた」

『言ったでしょう? 予想外だったからよ。ビスマルクがこの国の機密を調べるのはもっと後だと思ったもの。実際、貴方に会っていなければそうなるわ』

「……特異点という言葉に、まるでその未来を本当に見たかの物言い。やはりお前達は、()()()()()()()()なんだな。しかも、幾つもの時間軸、平行世界を渡り歩いてきた」

『ふふふふ……やっぱり貴方は面白いわ』

 

 先程までの面白がっているような楽しそうな声ではなく、底冷えする様な冷たい声を向けてきたセイレーンに、シェフィールドと瑞鶴は無意識のうちに艤装を構えていた。二人にそうさせるだけの迫力と恐怖がその声には含まれていた。しかし、その声に何の反応もせずに恭介は真っ直ぐに画面を見つめていた。

 

『あんまり面白がり過ぎて時間かけたら怒られちゃうかもしれないし……そろそろお暇するわ』

「また会えるといいな。()()()()()()

『ッ!? アッハハハハハ! いいわぁ……本当に、予想以上の人間よ。貴方』

 

 オブザーバーと呼ばれたセイレーンは心底楽しそうに笑い声を挙げてから通信を切った。消されたファイルが再び画面に映りこんだまま、全員がしばらくそのスクリーンの先にいたセイレーンを見つめていた。

 

「個体名「オブザーバー」の上位個体なんて発見されていない。貴方は何を知っているの?」

「……ピュリファイアーとテスターの会話記録でも見返してみるんだな」

 

 今まで人類の前に一度も姿を現したことがないセイレーンの名を告げた恭介に、ビスマルクは少しだけ警戒の色を見せながら問うが、適当にはぐらかしながら当の恭介は散らばっている資料を手にした。

 

「駄目だな。パソコンの中身を全て消されたんじゃ、手掛かりなしだ」

「……貴方のことは信用してる。でも、分からないことが多すぎる。貴方は何を考えているの?」

 

 艦船達にとっての希望であると信じているビスマルクだが、それにしても彼は誰も知らないようなことまでも知っていることに警戒しない程神代恭介という人間を知っている訳ではなかった。そんなビスマルクの視界に急に入ってきたのは瑞鶴だった。

 

「し、指揮官は……」

「瑞鶴止せ」

「……神木から意思を汲み取ることができる人間なんだ!」

「瑞鶴!」

「だからっ」

「もういいわ」

 

 何かを喋りだした瑞鶴とそれを止めようとする恭介を見て、ビスマルクはため息を吐きながら瑞鶴の言葉を止めた。それ以上喋れば国に関わることなのだと理解できたからこそ、ビスマルクは瑞鶴の言葉を止めて恭介の意思を優先した。

 

「……ロイヤルのメイドにも、貴方達重桜にも伝えておきたいことがあるわ」

「それは、陛下に対する言伝と考えても?」

「えぇ。でも上層部の人間には絶対に漏らさないで頂戴」

 

 真剣な表情で言うビスマルクに恭介とニューカッスルは頷き、瑞鶴とシェフィールドは目を逸らして自分達が今から聞いたことは記憶しないと意思表示をした。

 

「鉄血は死んだも同然……皇帝は既にセイレーンの傀儡。そして、皇帝の言葉に従うことしか許されない私達艦船もまた、セイレーンの傀儡よ」

 

 鉄血の情勢を簡潔に述べたビスマルクの言葉が、研究室に響いた。

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