超絶☆マイクラン 〜心の底からお前を見ている〜 作:エクセレント☆アックア
大聖堂の長椅子に2人の男がいた。
「ロナート様…」
灰色の髪の男。アッシュである。アッシュは何やら曇った表情をしていた。
原因は分かっている。ロナート郷の反乱である。
ロナート郷は、アッシュの義理の父親であり、騎士としてアッシュが目指している理想の人なのだ。
本来ならば、アッシュがロナート郷の事を思い浮かべるときは、とっても誇らしい気分になるばずなのだが。
そんな理想の人がどうして教会に槍を向けるのか、アッシュには分からなかった。
一方、アッシュの反対側、包帯で顔を隠した男がそこに居る。そう、彼もまた頭を抱えていた。
スティーブである。
原因はロナート様……………では無い。
「ルナティック……」
ルナティック。日本語にすると【狂気】の意味で、ファイアーエムブレム風花雪月では最高難易度を示す。
ベレト先生の言葉によって、この世界の難易度を知ってしまった俺は、例えるなら、夏休みの宿題の量が急に3倍に増えた時の様な絶望感に襲われていた。
3倍に増えたら最後の1日じゃ終わらせられない。毎日コツコツやらなきゃだめだ。
そう、今日から始めなくては。
「温室へ行かざるを得ない」
農家に転職する必要がある。
「ドゥドゥ!」
今まさに温室へ入ろうとしている大男、ドゥドゥを発見した。
「…なんだ……今日は温室に登るのか?」
「そうそう、温室へよじ登ってガラスを残らず全てピカピカに………って違う! いや、確かにそろそろ磨き時だけど…」
「ん?」
ドゥドゥは困惑している。そういやまともに話した事無いから距離感が難しい。
「あ、あのードゥドゥ…良ければガーデニングについて色々聞きたいなーなんて思ってましてね……」
…………………。
………………。
……………。
…………。
………。
なんか冷や汗出てきた。
…………………。
………………。
……………。
…………。
………。
「……いいぞ」
「よっしゃ」
雑草って何処にでも生えるんだな。俺はドゥドゥと共に余計な草を抜いていた。
「…お前は清掃員だから、温室の当番が回ってこないのか…」
「あ、なる程! 特別待遇だったのか俺」
そういえば、ゲームでは他のクラスの先生をスカウトしてクラスに入れる事が出来るんだが、俺と同じように先生方は他にやる事があるから、完全にクラスの一員って訳でも無いのかもしれない。
「結構面白いんだな温室って」
温室、ゲームプレイ時はただ種を渡してドーピングアイテムを作成する工場だと認識していたが、デカい植物の葉っぱがあったり、小さいけど匂いが良い花があったり、野菜や果物も育ててあって、見てるだけでも面白い。
しかもコレ、管理人さんがいるとはいえ生徒が当番制で世話しているから、食堂とかで自分が作った野菜を食ってるって事になるよな。もちろん作った野菜は全体の一部だろうけどなんかすげー。
「……好きなのか?」
「え?」
いきなり恋バナですか?
「……植物のことだ…」
心が読まれている!?
「……表情に出ているぞ…」
目と口しか露出してないのに!?
「……ああ…」
なんてことだ。因みに、目と口どっちから読んでる?
「……両方だ…」
「嘘だろ…」
エスパーかよ。……いや、まてよ。ちょっと実験してみよう!
「すー。はー。」
俺は深呼吸をした。
ウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコウンコ「やめろ」
………ウコン
「…」
………ウンコ
「……やめろ」
場面は市場へ変わる。
「メーチェ…この後街へ遊びに行かない?」
「あらあら、アン、今日は温室の当番ではなかったかしら?」
メーチェはメルセデス。アンはアネットの事である。どうやらアネットはうっかりしていたらしい。メルセデスのうっかり属性をうつされてしまったのだろうか。
「いっけなーい。ドゥドゥもう行ってるよね! 急がなきゃ!!」
アネットがクラウチングスタートをする寸前、メルセデスは釣り池方面からやって来る二人組を発見した。
「待ってアン。ドゥドゥと……誰かしら? よく見えないわ」
「あれは、スティーブ…なのかな?」
なぜこうも歯切れが悪いのか。それはスティーブの影が尋常じゃなく薄い訳……でもなく、好きでも嫌いでも無い為興味が全く無い……という訳でもなく、単純に、奇妙な動きをしていたからだ。
「……でさあ、盾が欲しいわけよ。あ、ドゥドゥ。アネットとメルセデスがあっちにいるぞ」
「……やめろ」
「幾らで売ってるのかなあ。給料は殆ど包帯代と弓代で消えちゃうから安いと有り難いんだよね」
「……やめろ」
一見ドゥドゥがスティーブとの会話を嫌がっている様に見える。実際には、スティーブがドゥドゥの方を見ながら、高速でドゥドゥの周りを移動していた。
二人はそのまま武器屋へ行き、盾を購入し、アネット達の方へ向かってきた。
よく見てみると、ドゥドゥが「……やめろ」と言うタイミングに、とある規則がある様に思えた。
高速で動いてるはずのスティーブの動きが一瞬遅くなり、何故かドヤ顔をしていたのだ。そのタイミングで、ドゥドゥが「……やめろ」と言っている。
しかも、何というか、子供が下ネタを言うときの喜々とした表情そのものだった。
「……やめろ」
「よお! 二人とも!」
「あらあら、新しい遊びかしら?」
「ドゥドゥゴメン! 完全に忘れてた」
頭を下げるアネット。
「……気にするな。…そういう時もある」
ドゥドゥはあまり気にしてないようだ。
「……やめろ」
「次は私がドゥドゥの分もやるよ」
「…気にするな。一緒にやろう…」
ドゥドゥは懐も大きい男だった。そして、アネットはスティーブについてのツッコミを放棄していた。
「あらあら」
メルセデスはドゥドゥとスティーブの遊びを微笑ましく眺めていた。何故なら、ドゥドゥがいつもより穏やかな表情をしていたからだ。まるでアホな弟の悪ふざけを見ているかのような……。
「……やめろ」
この状況を1番止めたがっている男が居た。スティーブだ。植物の世話が終わった際に、ドゥドゥに「心が読まれないように訓練したい」と言って、現在まで至る。
ドゥドゥがあっさり承諾してくれたので、早速始めた訓練だったが、やっているうちに、完全に止める機会を失った。
実際にはいつでも止める事が出来るのだが、なんかこう、いい感じで終わりたかった。
そこで偶然見かけたアネットとメルセデスに白羽の矢がたったのだ。
ところが、二人はスティーブ達を観察したあと、普通に会話を始めてしまった。少し戸惑いの様子があったが、受け入れてしまったのだ。
こうなると、どうしようもない。地獄の時間が始まったのだ。
と、そこにアドラークラッセの筋肉担当。カスパルが通りかかった。
「お? 何だ何だ? 面白そうだ俺もやりたい!!」
「やめなよカスパル。って、もう遅いか…」
カスパルを止めきれなかったのはリンハルト。こっちはアドラークラッセの回復担当である。
ルールが分かっていないカスパルはただドゥドゥの周りを高速で移動するだけに留まった。
「貴様ら、何をしている!?」
それから時は流れて。
スティーブとカスパルはそれぞれ額に《私はウンコです》《私はアホです》と書かれた紙を貼り付けられ、正座をしていた。
そこに孤児院の少年が通りかかった。彼は他の子供達に分かるように指を指しながら叫んだ。
「ウンコが座ってるぅ〜」