超絶☆マイクラン 〜心の底からお前を見ている〜   作:エクセレント☆アックア

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6話 大樹の節その2

 クラス対抗戦の日、俺はツィリル先輩を誘って見学することにした。俺が知りたがってたベレト先生のクラスは青、つまり青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)だった。うーんなるほどね。青獅子の学級にはマイクランの弟であるシルヴァンもいるため、因縁のあるクラスといえる。

 

 「その包帯、蒸れないの?」

 

 「先輩、人は誰でも譲れない事の1つや2つ持っているもんなんですよ」

 

 「蒸れるんだ」

 

 悲しい事実をあっさり看破されてしまった。

 

 「先輩、早くしないと良い場所取られちゃいますよ」

 

 俺は全力で話をそらした。でも、急がないと良い場所が無くなるのは事実だ。クラス対抗戦はガルグ=マクの郊外で行われる。模擬戦は人が死ぬことは無い戦いだからスポーツ観戦と同じような感じだ。

 

 スポーツ観戦でイメージが湧かないなら、運動会みたいなものだ。ほら、朝早くから親が席を奪い合っているだろう。で、生徒の立場からすれば、自分のクラスの代表者が戦い、最強のクラスを決めるってんだから盛り上がるに決まっている。そんな感じ。

 

 この模擬戦、何が恐ろしいって、模擬なんだ。つまり本番がある。本番の盛り上がりは半端じゃ無いから、前日から準備しないといけない。まあ、今日に関してはちょっと早く出る程度でいいだろう。

 

 「よし、あそこにしましょう」

 

 あそこからなら戦場の全てが見渡せるし、多分場所を狙ってくる人もいないだろ。スティーブが指差したのは、一本の大木だった。

 

 「僕、木登りそんなに得意じゃないけど」

 

 「大丈夫ですよ、俺が背負います」

 

 先輩子柄だし、いけるっしょ。

 

 「本当に大丈夫?」

 

 ツィリルは、なんだかんだで自分にしつこく話しかけてくるスティーブをうざいと思いながらも、気のおける仕事仲間として認識し始めていた。だからだろうか。信じてみたくなったのは。

 

 「じゃあ、ちょっと登ってみましょう」

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 クラス対抗戦には選ばれし者だけ、つまり強いやつが出場する。これは、出られないものが存在することを意味する。

 

 「おーい、メェーチェー、みんなー頑張れー」

 

 アネットは今回は出場できなかったものの、本番である鷲獅子戦には絶対に出てやるぞと気持ちを切り替えて、親友であるメルセデスを応援していた。

 

 そんな健気な少女に向かって怪しげな影が迫る。

 

 「うわ、大丈夫?」

 

 そこには、包帯で顔をぐるぐる巻にした人間が2人いた。

 

 「ああ、どうも」

 

 「…」

 

 スティーブとツィリルだ。彼らは大修道院の雑用係として働いている。だから彼らが一緒にいることは多いが、今回は格好もほぼ同じだし、なんだかツィリルが不機嫌だ。

 

 「いや、スイマセン先輩。いけると思ったんですけど、無理でしたね」

 

 「…」

 

 「ほら、俺とお揃いで、なんか楽しくないですか? 楽しく無い? そうですか」

 

 「蒸れる」

 

 ツィリルの反応は冷たい。確かに自分もスティーブなら或いはと思って身を任せたが、登っている途中で「あれ、頑張りゲージの消費量が尋常じゃないぞ」とか言った直後に2人とも地面とハグする羽目になり、スティーブに抱いていた友好的な気持ちと、早く家を出たアドバンテージはどっかに消えた。

 

 「そうだアネットちゃんは風の魔法ウインドが使える?」

 

 「え、使えますけど」

 

 「じゃあそのウインドを限界まで弱めてツィリル先輩に…」

 

 ツィリルのにらみつける攻撃。蒸れるけどウインドはやりすぎだ。

 

 「アハハ、冗談ですよ。俺からっすよね」

 

 まるで懲りていないスティーブはアネットまで巻き込んでまだ何かをするつもりのようだ。

 

 「ではアネットちゃん、俺に向かってウインド(弱)お願いします」

 

 ウインドを調節して放ってもらえば、蒸れるのをなんとか出来ると考えているようだ。

 

 ええ、ウインド(弱)なんて出来るかな。アネットは困った。ウインドを撃ってくれなんて注文されたことなんて今までの人生で1度も無かったからだ。しかも、もし断ったら膝を畳んで頭を地面に擦り付けるぞと言わんばかりの格好でスタンバっていた。

 

 もういいや。アネットの何かが吹っ切れた。

 

 空気中の魔力がアネットの元へと集う。

 

 「おいおい、なんだか普通のウインドより気合入ってない?」

 

 頼んだ張本人なのにも関わらず文句の多いスティーブ。

 

 「アネットちゃん、いやアネット! 弱いやつだよ!」

 

 やばい予感を感じだ他の学生達(ツィリルを含む)はスティーブを中心として半径3メートルほど距離を置いた。

 

 「やってみせる!」

 

 アネットのカットインと共にウインドが放たれた。

 

 「あ、そのセリhぁああああああああああああああああああああぁぁaa…」

 

◆◆◆

 

 

 

 「模擬戦といえども勝つのは俺達だ!」

 

 青獅子の学級の級長であるディミトリは気合十分だ。彼のクラスの代表はディミトリ、ベレト、メルセデス、アッシュ、ドゥドゥの5人だ。

 

 「殿下、勝ちましょう」

 

 「はい、僕も全力でやります」

 

 「怪我をしても私が治すわね」

 

 「いこう」

 

 メンバーの気合も高まってきたその時、空からなにか騒がしいものが降ってきた。

 

 「ああああああああああああああああああああどいてどいてどいて」

 

 包帯で顔をぐるぐる巻にしている男、スティーブである。彼の包帯はこんな時でも素顔を隠し続けていた。

 

 「あらあら」

 

 危険を察知した4人は落下地点から離れたものの、メルセデスが出遅れた。

 

 このままでは危ない。すると灰色の髪の男、アッシュがメルセデスめがけて駆け出した。

 

 「危ない!」

 

 間一髪、メルセデスは転ぶだけで済んだが、アッシュはスティーブと衝突してしまい気を失ってしまった。メルセデスのライブでも暫く目を冷ましそうに無い。

 

 これは困ったことになった。あと少しで模擬戦は始まる。その他のクラスメイトは、アネットを始めかなりの遠くにいる。

 

 ベレトはセテスやレア様に相談しようかと思ったが、地面に頭から突っ込んだ男が、ケロッと立ち上がったことに気がついた。

 

 「ゴメン、ゴメンよアッシュ死ぬな!」

 

 アッシュは死んでいない。気絶しているだけであるが、ベレトはあるアイデアを思いついた。

 

 ベレトはそっとスティーブの肩に手を置いた。

 

 「へ?」

 

 振り向くスティーブ。

 

 「俺のクラスに来るか(お前がアッシュの代わりに出ろ)?」

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