罪は憎まれ忌み嫌われる   作:無駄高容量ひきさん

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深夜、突然デュエルを申し込まれ、敗北してしまう城之内。
その事を遊戯たちに打ち明けるも、その謎は深まるばかり。
唯一城之内が口にした『罪』というキーワードを元に、遊戯の祖父・双六へ話を聞きに行くこととなったのだった。


霧の一滴

「ただいまー」

「お帰り遊戯。おや、友達も一緒かい」

「「どーもー」」

 

遊戯の祖父・武藤双六が営む小さなゲームショップ「亀」に訪れた。

メンバーの中には遊戯、城之内、本田の他、いつの間にか同行していた海馬の姿もあった。

かつて海馬は双六とのデュエルに勝利し、双六の所有していた『青眼の白龍』を破り捨てたことがある。

双六はもう気にしていないらしいが、破り捨てた当の本人はそんな事は全く意に介していない様子。

 

「今日はじいちゃんに聞きたいことがあるんだ」

「ワシに聞きたいこと?」

「うん、実は……」

 

遊戯は城之内の身に起こったことを話した。

話をしている間、双六は終始不思議そうな表情を浮かべていた。

 

「……って事があったんだって」

「そりゃ災難じゃったのう。……ところで遊戯」

「ん、なにじいちゃん?」

「話はわかったんじゃが、肝心のワシに聞きたいこととは一体なんじゃ?」

「それなんだけど……」

 

城之内がそのデュエルについて何も覚えていないということ、見たこともないカードを使っていたということ、唯一城之内の口から出た「罪」というワード。

話が進むごとに、双六の不思議そうな顔が徐々に驚きに染まっていった。

一頻り話終えると、双六は顎に手を当てて考えごとをはじめた。

 

「……じいちゃん?」

「……」

 

双六はそのまま黙りこくってしまった。

その後「少し部屋でしらべてくるわい」といって部屋に篭りきりになってしまったので、結局、その日はなんの収穫もないまま解散となった。

 

その日の夜、海馬はそのカードについて調べていた。

使い魔について記されている書物、それらを徹底的に調べていた。

その中で文献に出てくるのは殆ど「三幻神」ばかりだが、一部では『悪魔』とされる強力な使い魔も記されていた。

時計は既に日を跨いでいた。

思い立ったかのように立ち上がると、闇夜の中へ歩みを進めた。

 

「やはり来たか、『悪魔』」

「……」

 

暗闇から現れたのは、全身黒装束に身を包んだ謎の人物。

海馬とその黒装束は無言でデュエルディスクを構える。

心なしか海馬の表情は喜びが見える。

 

「貴様が誰であろうとオレには関係無い。が、そのカードには少々興味がある。オレが勝てばそのカード、渡してもらうぞ!!」

「……良いだろう」

 

「「デュエル!!」」

 

海馬    4000LP

謎の黒装束 4000LP

 

「オレのターン!ドロー!」

 

海馬が先攻でデュエルがスタートする。

海馬の最初の手札は以下の通りだ。

・青眼の白龍

・青眼の白龍

・ドラゴンを呼ぶ笛

・カイザーシーホース

・ブラッドヴォルス

・融合

 

「カイザーシーホースを召喚!」

 

カードをデュエルディスクに置くと、カードに描かれていたモンスターが実際に現れた。

これこそ海馬コーポレーションの開発した「ソリッドビジョンシステム」である。

 

「オレはこれでターンエンドだ。さぁ見せてもらおうか、悪魔とやらの力を!!」

「私のターン……ドロー……」

 

静かにドローをする。

それはまるでカードを労っているようで、その姿に海馬はある男を重ねた。

しかし、そんな事など知る由もない黒装束は黙々とデュエルを進めていく。

 

「……『強欲の大罪 マモン』を攻撃表示で召喚」

 

そこには、長く折れ曲がった耳と鼻が特徴的なモンスターが鎖に繋がれていた。

 

(なに?)

 

海馬はそのカードを見て、己の目を疑った。

それはモンスターが鎖に繋がれていることではない。

黒装束の出したモンスターが()()()()()()()()()()()()()()であることだった。

デュエルモンスターズのルール上、本来攻撃力がマイナスなど存在しないはずなのだ。

例え計算上はマイナスとなってもそれは0として扱うはず。

何もかもが謎なことには違いないが、少なくとも、それがルールから逸脱したカードであることは間違いなかった。

 

「大罪モンスターの攻撃力は、全てマイナスだ。もし攻撃表示で戦闘を行えば、攻撃力分だけダメージが増加する」

「……それを攻撃表示で場に出したということは、何か考えがあるのだろうな?」

「無論だ。『強欲の大罪 マモン』の効果発動。このカードが攻撃表示でフィールドに存在する時、1ターンに1度、手札1枚をデッキに戻し、デッキから『大罪』モンスターを特殊召喚する」

 

海馬はまるで動じることなく、フィールドを見つめていた。

今、海馬の脳内はこのカードのこと以外にない。

もっと知りたいと、もっと戦いたいと、無意識の内に口角が吊り上がっていく。

まさしく悪魔に見いられている様に。

 

「『暴食の大罪 ベルゼ』を特殊召喚し、ベルゼの効果を発動する。デッキから特殊召喚された時、『大罪』魔法・罠カードを手札に加える。私は『大罪の上塗り』を手札に加える。カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

今度は蝿のような羽と触覚を持った人型のモンスターが鎖に繋がれてフィールドに現れた。

攻撃力は-1150でありながら、このモンスターもまた攻撃表示で召喚されている。

 

「オレのターン!ドロー!」

 

海馬が引いたのは『エネミーコントローラー』。

良くも悪くもないカードだが、今の海馬にとっては無用の長物であった。

何せフィールドには光属性のモンスターを召喚する際に2体分のリリースにできる『カイザーシーホース』と、手札には彼の信じる最強カードが存在している。

ここで海馬の取る行動は言うまでもない。

 

「オレは『カイザーシーホース』を2体分の生贄に捧げ、出でよ!!『青眼の白龍』!!」

 

青き眼光は、深い夜に煌々と輝く。

その白き鱗はまるで悪魔への皮肉のようにも感じられる。

 

「ブルーアイズよ!『暴食の大罪 ベルゼ』に攻撃しろ!滅びのバーストストリーム!!」

 

『暴食の大罪 ベルゼ』の攻撃力は-1150、ブルーアイズの3000と合わせれば、それだけでデュエルの決着がつく。

しかし、相手は仮にも悪魔。

その程度で終わるはずもなかった。

 

「永続罠『大罪滅ぼし』1ターンに1度、フィールドの『大罪』モンスターをデッキに戻し、デッキから新たな『大罪』モンスターを呼び起こす。現れろ、『憤怒の大罪 サタン』。さらにサタンの効果、相手フィールドのカードを2枚まで選び、破壊する。ブルーアイズを破壊」

「くっ……よくも!」

「サタンは攻撃表示の時、『憤怒の大罪 サタン』以外の私の『大罪』モンスターの攻撃力を守備力から引いた数値とする」

 

『憤怒の大罪 サタン』が憎悪にまみれた咆哮を上げる。

すると、鎖で繋がれていた『大罪』モンスターたちが一斉に暴れだし、遂にはモンスターたちを繋ぎ止めていた鎖が引き千切れてしまった。

『強欲の大罪 マモン』

ATK -400 / DEF 400  ➡️ ATK 800

『暴食の大罪 ベルゼ』

ATK -1150 / DEF 1150 ➡️ ATK 2300

海馬には召喚権は残っていないため、カードを1枚伏せてターンを譲る他になかった。

 

「私のターン、ドロー」

 

互いにLPは4000、しかし黒装束の場には既に攻撃力2300となった『暴食の大罪 ベルゼ』と攻撃力800の『強欲の大罪 マモン』が存在している。

 

「マモンの効果、手札1枚をデッキに戻し、デッキから『嫉妬の大罪 レヴィア』を特殊召喚。レヴィアの効果により、相手の手札を1枚私の手札に加える。さぁ、手札を見せてもらおうか」

「なっ!くっ……!!」

 

海馬は苦虫を数百匹噛み殺したような形相をしつつ、黒装束に手札を見せた。

その中には『青眼の白龍』のカードもあり、海馬にとってブルーアイズを奪われるということはプライドを奪われるも同然であった。

しかし黒装束は何故かブルーアイズを奪わず、『ブラッドヴォルス』のカードを手札に加えた。

 

「貴様……何故だ!」

「何故……とは?」

「何故ブルーアイズではなく、ブラッドヴォルスを奪った!それはオレに対する侮辱か!!」

「……何の事やらサッパリだ。私はデュエルに勝つ為にブラッドヴォルスを奪いブルーアイズを奪わなかった、それだけのことだ」

「貴様ぁ……!!」

 

海馬は腸が煮えくりかえるほどの怒りを覚えた。

こんなヤツに、よりにもよってデュエルで情けを掛けられた、そう思うだけでプライドの高い海馬が怒るには十二分な発火材となるのだ。

しかし、怒りがデュエルの結果を左右することはない。

海馬がピンチであるこの状況になんら変わりはない。

 

「ブラッドヴォルスを召喚。バトルだ、ブラッドヴォルスで直接攻撃」

「ぐぅう!!」

 

海馬 LP4000 ➡️ 2100

 

「続いてマモンで攻撃」

「速攻魔法『エネミーコントローラー』!!コマンドを入力!左、右、A、B!このコマンドによって、貴様の場のモンスター1体の表示形式を変更する!オレが選ぶのは『憤怒の大罪 サタン』だ!!」

 

『大罪』モンスターの弱点、それは攻撃表示でなければ効果を発動することができないことだ。

サタンの場合、攻撃表示でなくなれば他の『大罪』モンスターたちの攻撃力は再びマイナスに戻るため、そこから大ダメージを受ける可能性が非常に高い。

特に海馬のような高ステータスのモンスターを扱うスタイルとはすこぶる相性が悪い。

再び黒装束のモンスターたちは鎖に繋がれるが、その表情を伺い知ることは出来ない。

 

「……ターンエンド」

「オレのターン、ドロー!」

 

ドローしたのは『強欲な壺』。

デッキから2枚ドローをする単純明快かつ強力なカード。

 

(来たか……!)

 

「これでオレの勝利は決した。手札から『ドラゴン・ロードードラゴンの支配者』を召喚!更に魔法カード『ドラゴンを呼ぶ笛』を発動!手札から2体のドラゴンを呼び出す!出でよ、2体のブルーアイズよ!!」

 

これで海馬のフィールドには青眼の白龍が2体、それに加えてドラゴン族を対象に出来なくするドラゴン・ロード。

これならば『大罪滅ぼし』の効果で逃げられることも、『憤怒の大罪 サタン』の効果で破壊されることもない。

そして黒装束のフィールドには攻撃力-1300の『嫉妬の大罪 レヴィア』と攻撃力-1150の『暴食の大罪 ベルゼ』が存在している。

もはや勝利以外の道はない。

 

「ブルーアイズで『嫉妬の大罪 レヴィア』に攻撃!」

「『大罪滅ぼし』の効果、レヴィアをデッキに戻し、『傲慢の大罪 ルシフ』を特殊する」

「やはりそうきたか。しかし、所詮悪あがきに過ぎんわ!もう1体のブルーアイズで今度こそ貴様にトドメだ!!」

 

白龍は口にエネルギーを溜め、今まさに解き放とうとしている。

その時、口角の上がっていた海馬の表情はたちまち険しいものとなった。

そう、ヤツなら……

 

「……ルシフの特殊効果、発動。ルシフがデッキから特殊召喚された時、そのコントロールを相手プレイヤーに移す」

「ふん……何かと思えば、穴を無くしたつもりかもしれんが、まだもう1つの穴が残っているぞ!!」

「そう慌てるな。速攻魔法『大罪の上塗り』。『大罪』モンスターがデッキから特殊召喚された場合、手札・墓地・フィールドから『大罪』モンスターをデッキに戻し、ターン終了時までそのカードと同名カードとして扱い、そのモンスターの効果を得る。手札の『怠惰の大罪 ベルフ』をデッキに戻し、互いのバトルを封印する」

 

海馬はまたもある男の姿を幻視した。

相手の手を読み尽くす頭脳、それらを的確に対処する周到さ、それを可能にするだけの勝負強さ。

外見やカードはまるで違うのに、何故か幻が頭の中から離れない。

 

「フフ……フハハハハハハハ!!!」

 

この瞬間、海馬の中で何かが変わった。

一体何が変化したのかは海馬自身にも判っていないが、それでも確実に何かが解った。

懐かしさ、好奇心、怒り、侮蔑、ワクワク、その笑い声には海馬の全てが詰まっていた。

 

 

 次回へ続く……




当作品のオリカ紹介

『大罪』
最大の特徴は、属するモンスターが全て「攻撃力がマイナス」である点。(ルール無視してるけどユルシテ)
ワイトどころか素のサクリファイスにすら殴り負ける上に攻撃表示でないと効果を発動できないというデメリット持ち。
サタンの効果で戦闘補助も出来るけどサタン自身には効果が適用されないので別途で更に補助を入れてやるといいかも。(そもそもそっちで戦闘補助する方法もあり)
デッキテーマとしては「デッキで戦う」といった感じであり、デッキから特殊召喚されることで効果を発動できるなど、周りだしてからの安定性が高い。
モチーフはそのまま「七つの大罪」。名前とか堕天使と幾つか被ってるけど気にしてはいけない。


今後もこれ以外にオリカを出していく予定なので、質問やご意見などありましたら感想にてどうぞ。
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