アルベド二人旅   作:神谷涼

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 忙しくなってるので、短めにちょいちょい投下します。
 モモンガさんが、体に教育受けてる間。
 連絡の途切れたクレマンティーヌさんはというと。

注意:キャラと行動の性質上、今回ややグロよりです

追記:当初は「閑話」扱いでしたが、よく考えると本編にもかなり影響与える話なので、普通に17話としました



17:殺して解して並べて揃えて晒してやんよ

 国境に近い、ある貴族の屋敷。

 法国と内通しており、またクレマンティーヌ他、スレイン法国の使者にも無体を働いて来た当主は……今、無惨な姿を晒していた。いや、彼だけではない。

 夫が捕らえて来る娘らを虐待した夫人。

 かつて現当主と変わらぬ行いを重ねた先代夫婦。

 “おさがり”を弄んだ若き後継者ら。

 さらに執事、使用人頭、庭師、兵士長。

 ずらり並んだ無惨な肉塊。

 克明に描写すれば、読者の気分も損なうであろう有様だ。

 犠牲者複数から聞き出した情報をもとに拷問すると、芋づる式に処罰対象が膨れ上がったのだ。

 

「けっきょく、一族使用人ほぼ全員になっちゃったねー。人間って、権力に近づくとこーなっちゃうのかなー?」

 

 クレマンティーヌは深々と溜息をついた。

 ここは屋敷のロビーであり。

 扉の外には、悲鳴と絶叫に駆け付けた衛兵たちが囲んでいる。

 もっとも、踏み込む勇気のある者は、既にいない。最初に踏み込んだ数人は、速やかに絶命した。

 隣の領主に早馬は送られたが、来るのは早くとも明日の午後だろう。

 

「はー。拷問大好きなあたしでも、さすがに飽きちゃうねー。衛兵ちゃんたちは悪いことしてないかなー?」

 

 ゆらりと振り向き、衛兵らをねめつける。

 

「へ、兵士長以外は、村から徴収された人たちですから……」

「そーなんだー? よそ者を襲ったりしてないー? だいじょうぶー?」

 

 犠牲者だった女の一人が、おどおどと保証する。

 傭兵を雇う金も惜しんだ貴族は、代々の兵士長以外は徴兵した兵ばかりだ。一年程度の任期持ち回りで使われる彼らは、じきに平民に戻る。“悪さ”をする気にもなれまい。

 屋敷には貴族の“お気に入り”――連れ込まれた平民の女が、五人ばかり囚われていた。

 彼女らは今、貴族たちの無惨な姿に歪んだ笑みを浮かべている。

 だが、傷つけられずこれを見ているのは、犠牲者たちだけでない。

 罪を犯していなかったまだ若い令嬢、そして幼い後継者らがいた。

 

「どーかなー? 平民でもいじめると、いじめ返されちゃうんだよー」

 

 にまーっと、少女と子供の顔を覗き込む。

 既に令嬢は何度か失神を繰り返した後で、絶望で目が濁り。

 最初こそクレマンティーヌに抗った子供たちも、すっかり怯えきり。

 クレマンティーヌの視線が向くと、びくりと身を震わせる。

 彼らが歯向かう勇気も残っていないと確認し、窓の方を眺めた。

 外はそろそろ、明るくなり始めている。

 

「んー、そろそろ夜も明けちゃうねー」

(困ったなぁ、モモンガちゃんから全然連絡こないんだけど。まーた、ヤってるのかなー)

 

 クレマンティーヌは二人の生活を断片的にでも知る身。

 他に連絡をよこさない理由もあるまい。

 モモンガがアルベドに夢中だとはよくわかっている。

 なぜか、モモンガの情事を想像すると、苛立ちと疼きを感じるが……クレマンティーヌはそれを認めない。

 気晴らしに、切り落としてあった当主の生殖器を蹴り飛ばし、壁の汚れに変えた。

 

「さて、こいつらどうしよっかねー」

 

 貴族たちは短時間で効果的に体を破壊され、かろうじて生きている状態。

 絶命すれば、過度の破壊ゆえ生命力があろうとも蘇生は困難。

 彼らが平民なら、このまま五体不満足で生き恥を晒させるのだが。腐っても貴族、しかも法国と関係がある。高位の回復魔法を受けたりせぬとも言えまい。

 老いた先代夫婦は残念ながら死んでいた。

 心身共にショックを与え過ぎた以上、仕方ない。

 

「ただ殺すのもなー……あーそうだ、そうだ」

 

 ぜんぜん使っていないスキルを思い出す。

 クレマンティーヌは生前の記憶や能力把握が中心で、新たに得たスキルをあまり使っていない。

 

「服はほとんど脱がしてないもんねー。このままでいけるいける――〈不浄の刃(インセイン・ブレイド)〉」

 

 スティレットが、邪悪な光に包まれる。

 これは死の騎士(デス・ナイト)が常時発動しているスキルと同じ効果を、一定時間発揮する。集中すれば常時発動もできるが、拷問に向かないし、アンデッドの取り巻きを置こうとも思わず、使っていなかった。

 

「ほいほいほいっと」

 

 拷問に次ぐ拷問で、空ろな目となった貴族らが注意を向けるより早く。

 眉間を貫いて全員を殺す。

 気合も覚悟もなく、適当に、雑に、殺す。

 苦痛に満ちた時間から、彼らはようやく解放され――

 

「はい、それじゃーみんな立ってせいれーつ!」

 

 パンッ、とクレマンティーヌが手を叩けば。

 拷問され尽くし、命まで失った彼らが、よろよろと立ち上がった。

 

「ひっ!」

 

 見ていた娘らか、子供らか、あるいは衛兵か……全員か。

 悲鳴があがった。

 

「だいじょうぶだよー、人は襲わせないからねー」

 

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)に変えられたのだ。

 高レベルアンデッドである、クレマンティーヌが作ったそれは、死の騎士(デス・ナイト)が生み出すものより、さらに強化されている。スペックだけなら、死の騎士(デス・ナイト)に近しいレベルの強度。

 そのまま周辺を襲わせれば、近隣を滅ぼしかねない戦力。

 だが。

 クレマンティーヌにしてみれば、恥をかかせ、蘇生を封じる手段に過ぎない。一度アンデッドになった死体は、もはや(この世界で知られる魔法では)復活不可能なのだ。

 

「じゃ、これでいっか。お前が先頭ねー」

 

 屋敷のロビーにあった紋章の盾を、当主の体に縛り付けて固定。

 平民にはわからずとも、貴族関係者には身元が明確になる。

 

「おじいちゃんは、これねー」

 

 腰の曲がった先代当主を無理やり立たせ、口から紋章旗をねじ込む。

 太い柄が胴体を串刺しにし、ついには股間から柄が出る。

 

「あとはまー……適当にシーツとかテーブルクロス、持ってきてくれるー?」

 

 あまりの状況に固まっていた女たちに声をかけるが。

 咄嗟に返答できるはずもない。

 

「おーい、聞こえてるー?」 

「「ひっ!?」」

 

 己らが話しかけられていると気づいた女らが飛び上がる。

 

「シーツとかテーブルクロス、持って来てー。ついでにお金くすねていいからさー」

「「ひゃい! わかりましたぁ!」」

 

 この場を逃れられるなら、と子供らや令嬢まで駆けだした。

 ほどなく、大量のシーツやテーブルクロスが持ち込まれる。

 勘違いしたのか、金品まで積み上げられる。

 クレマンティーヌは無視して、シーツやテーブルクロスを広げさせた。

 

「そいじゃ……これに書いとくかー。血は消えにくいからねー♪」

 

 そして、次々と白い布地に、貴族ら自身の血で書く。

 筆に使うは、切り落とした当主夫人の髪。

 

『この者、外道なり。女神モモンガの名のもとに天罰を下す』

 

 こう書かれた布が。

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)となった貴族たちに、マントの如く結びつけられる。

 全員に結びつけ。

 最後に、屋敷ロビーの壁にも書いた。

 

「はい、準備かんりょー! それじゃ王都の……王城前まで、しゅっぱーつ♪ 邪魔されたら押しのけるだけにして、攻撃は一切禁止だよー。盾と旗とマント()は、なるべく奪われないようにねー」

 

 朝日が昇り始める中。

 屋敷の主であったアンデッドが、ぞろぞろと行進を始める。

 残虐な拷問を受けたことが明らかな姿……男らは下半身裸で局部を切り落とされた姿で。

 紋章も明らかに、女神の罰を喧伝しながら。

 衛兵らは呆然とし、かつての主でもあるこのアンデッドを止めようともしなかった。

 

「そんじゃ、あたしは次の貴族のトコ行くから。アンタたちは、地元にいづらかったらエ・ランテル近くのカルネ村に行くといいよー。女神モモンガ様が守ってくれるからねー♪ このお金もアンタたちで仲良くわけるよーに」

 

 言うだけ言って、クレマンティーヌはマントの力で透明化し、〈疾風走破〉で衛兵らの間を風のように駆け抜け。

 金貨袋を一つだけ掴むと……屋敷から完全に離脱する。

 本人の宣言通り次の貴族――ニニャの仇の元へ向かうのだ。

 

 残された者たちは、しばらくぼんやりと顔を見合わせ。

 よろよろと歩き去るゾンビと化した暴君どもの後姿を眺め。

 脱力した様子で、それぞれが手に持てるだけ……金貨を掴み始めた。

 

 

 

 そして、その後も。

 クレマンティーヌは、複数の貴族に同様の始末をつけつつ。

 王都へと近づいてゆく。

 

「はー、八本指で顧客リストを手に入れるのが手っ取り早いかなー? 個別だと誰がどうなのか、めんどくさいんだよねー」

 

 狙いは、貴族が手籠めにした娘を買い取っている人身売買組織であり。

 彼女らの流れ着く先だ。

 

「大貴族連中も王都にいるし……王族自体も腐敗してるなら、ぱぱっと始末しちゃおっかー。情報も持ってそーだもんねー」

 

 なるべく地位の高い連中を始末し、宣伝に使った方がモモンガの名も売れる――そう考えてのこと。

 効率的な彼女の選択は、ある王子の寿命を大幅に縮めようとしていた。

 

 

 

 以来、王都へ向かう街道で、異様なアンデッドの集団が見かけられるようになった。

 無惨に過ぎる姿で、その身を腐らせ朽ちさせながら押し寄せ。

 これらは人を襲わず、ただよろよろと街道を歩くのみ。

 石を投げようと、棒で殴ろうと、攻撃してこない。

 ただし、恐ろしく頑丈。

 神官らの魔法も歯が立たず。

 立ち向かう兵士や冒険者は押しのけられ。

 不眠不休で街道を歩く。

 紋章、拷問跡、アンデッド化。

 その家門から婚姻や養子で他家に移っていた貴族は、大いに恥をかいた。

 これらは一体も欠けず王都に至り……王城への侵入を防ぐべく、戦士団が決死の攻撃を重ね、ようやく倒せたという。

 この集団は次から次へと王都を訪れ、いくつもの家門を貶めた。

 王都の戦力は疲弊し。

 女神モモンガの名も王国全土に知れ渡ったのだ。

 

 

 

 街道のアンデッドが騒ぎとなる中。

 王国内に、もう一つひっそりとした動きがあった。

 これに気づいたのは、エ・ランテルの都市幹部や門番たち。

 確かな人の流れが、各地からエ・ランテルを通行点として、帝国方面……いや、あの“帰らずの村”ことカルネ村へ向かっていたのだ。その多くは女性であったが、明らかな貴族子女、武装した男、使用人などもいた。彼らは着の身着のままといった様子であり、汚れたままふらふらと、どこか空ろな目で街道を旅してきたのだ。

 性別も階層も異なる彼らは、なぜか豊富な旅費を持っており。

 エ・ランテルで宿と食事をとり、装備を整えたり、食料を買いこむと……そのままカルネ村に向かう。

 護衛を雇おうとする者もいるが、行き先を聞けば冒険者すら拒む。エ・ランテルでは自ずと、同じような連中が集まり、一団となって、カルネ村を目指した。

 そして彼らは誰一人、エ・ランテルに戻らない。

 

 わずかに言葉を交わした者らは、女神モモンガに守っていただくのだと……聞いた。

 時に、追い詰められて救済を求める貧民も、彼らについてカルネ村に向かった。

 だが、やはり帰る者はなく。

 カルネ村の伝説は、恐怖に彩られていくのだった。

 

 クレマンティーヌが出発して、一週間程度の間の出来事である。

 




 デス・ナイトの能力を、高位デュラハンが持っててもおかしくないよな……ということで。
 スキル名は適当です。
 下位はワイトとかから、けっこう使いそうですし。たぶん上位ゾンビ系のスキルかなと。
 調べるとスクワイア・ゾンビは、ユグドラシルでは生前準拠、転移後はデス・ナイトの半分程度のレベル……とのことでした。クレマンさんが70レベル級アンデッドだとすると30レベル代ってことで、十分強いのが作れます。
 とはいえ、当人のミッションは無差別殲滅ではなくて暗殺っぽいピンポイント。
 ゾンビを率いても邪魔なだけなので、戦力とは考えてません。
 趣味の拷問もできませんしね!

 まだ言うほど日はたってないのですが、状況が異常すぎるのでカルネ村に“帰らずの村”とか異名がつきました。
 唯一生還したイグヴァルジさんは、かなりの勇者扱いです。

 今回の貴族一家惨殺事件は、クレマンさん出発から二晩目の出来事。
 死を撒く剣団全滅の翌日。
 その後、貴族の家から逃げ出した子ら、脱走した衛兵、貴族子女が、2日くらいでエ・ランテルに到着。
 翌日には別の家の同様の境遇の人らもエ・ランテルに。
 さらに翌日にも……。
 と、ぞろぞろ来て、なぜか全員がカルネ村を目指してます。
 エ・ランテルの視点ではものすごく不気味です。

 これらの騒動がわかる前に、蒼の薔薇がカルネ村に出発。
 帰ってきません。

 ンフィーはまだまだカルネ村逗留中。
 エンリの愚痴とか聞いてます。
 漆黒の剣も、同じく逗留中。
 一週間目にはギリギリ帰ろうとしてるかもしれません。
 リイジーさん、かなりパニックになってるかも。
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