アルベド二人旅   作:神谷涼

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 転移した草原で、一歩も動かず夜を明かしました。



2:頭がフットーしそうだよおっっ

「――はっ」

 

 太陽が完全に頭上に昇った頃。

 ようやく、モモンガは我に返った。

 

(モモンガ様、大丈夫ですか? おっぱい揉みます?)

 

 反射的に揉んでいた。

 

「ふぅ……と、ともあれ、アルベドよ、ここがどこかわかるか? なぜおまえの体に私がいる?」

(いえ、申し訳ありません。私にもまるで……モモンガ様が私の胸を揉んだ瞬間、ここに転移していたかと)

 

 落ち着いているのだろう。

 冷静な言葉でアルベド(脳内)が言う。

 モモンガの手はまだ、アルベドの胸を揉んでいる。

 

「ううむ……ここは……それにさっきまでの行為を思えば、明らかにユグドラシルではない……」

(そうなのですか? アルフヘイムあたりかと思ったのですが)

 

 モモンガは(己の肉体の)胸を揉みながら思案する。

 現在進行形のR18行為は、リアルでだって普通ありえない。

 何より、肉体感覚が男のそれとはまったく違うのだ。

 鈴木悟がそこまで、性的想像力豊かとは思えない。

 

(リアルで頭がおかしくなって、妄想のアルベドと楽しんでいる可能性……ないとは言えんが、あの鮮明すぎる上に、延々と繰り返した感覚を考えると……)

(はい! 私とモモンガ様の初体験が妄想なんてありえません! はっ、でも常々に妄想されるほど私のことを……!?)

 

 頭の中で考えても、筒抜けである。

 プライバシーも何もない。

 おかげで、アルベドの愛情というか欲望も、裏表なく直球でぶつかってくる。

 

「うう……お前が心から愛してくれるのは嬉しいが……もう少し恥じらいというか、その手心を……」

(そんな! 至高の御方を愛するに、どうして恥じる必要がありましょう!)

 

 声に出した方が、無軌道な思考を避けられると、敢えて言葉にする。

 己に言い聞かせるように、言葉として思考を形にするのだ。

 だが、アルベドはモモンガの羞恥を知った上で、ガンガン愛情をぶつけてくる。

 頭の中で何度も「くふーっ!」と、多幸感と情欲を混ぜ合わせた笑みを浮かべ。

 汲めど尽きぬ泉の如く、多大な好意と愛情が浴びせられる。

 アルベドの感情が、モモンガが制御しているはずの肉体を一部動かし、翼をぱたぱたさせた。

 モモンガとて嬉しい、とても嬉しいのだが……やはり照れてしまうのだ。

 

「ま、まあいい。リアルを想像すると、いろいろ恐い考えになる。手だてを考えよう」

(はぁはぁ♡ 私はこのままモモンガ様と二人きりでも)

「いやいやいや、体は一人じゃん!」

(くふーっ! 一心同体ですね! 結合する前に完全合体してしまいましたね!)

「う……そ、そういうこと言うなよ」

(あっ、モモンガ様、体が反応しましたね! 私、こんなこともあろうかと考案したテクニックが――)

「うわああああ、卑猥な想像やめろよ! そんなポーズしちゃダメだろ!」

(うふふふふ、そんなこと言いながら、ものすごーく反応してらっしゃいますね?)

 

 明け透けなやり取りは、(性的な意味でなく)心地よかった。

 鈴木悟にとって、裏表なく接せられる相手など、今まではギルドメンバーだけだったのだ。

 それとて、おっかなびっくりのやり取りで。

 常に遠慮し、己を抑えていたのだが。

 同じ肉体を共有するアルベドは、何も隠させてくれないし。

 なのに、己を上位者と認めてくれる。

 それがとても心地よくて。

 つい、隠すべきことも普通に言ってしまった。

 

「はぁ、これもタブラさんにビッチ設定つけられてたせいか?」

(は? ビッチ? 私が……? タブラ・スマラグディナに?)

「ま、まて、その前に現状確認だ!」

 

 酷く怖い感情が、ぞわりとモモンガの意識を撫でて来た。

 彼女が、己の造り手であるタブラに好感情を抱いていないとわかる。

 だからごまかすように、ずっと懸案していた行動をする。

 両手は乳房を掴んだままだが。

 

「GMコール……ダメか。運営に連絡が取れん。〈伝言(メッセージ)〉……ダメだな。〈伝言(メッセージ)〉〈伝言(メッセージ)〉〈伝言(メッセージ)〉〈伝言(メッセージ)〉。どれもつながらんか」

(ジーエムコール? モモンガ様、ウンエイとは……ええ? ゲーム?)

 

 モモンガが運営に連絡を取り、連絡の魔法で運営側NPCやプレイヤー、またナザリックNPCにも連絡してみるが。いずれも返答はない。ゲームの中でない以上、まったく理解できない状況に陥っているようだ。

 だが、これはこれで悪手だった。

 アルベドが質問するごと、モモンガの精神は無意識に彼女の質問する言葉を考えてしまう。一般人の鈴木悟には並列思考や精神思考制御などできない。言われるまま浮かぶ記憶を、アルベドが芋づる式に読み取ってしまうのだ。

 

(では、私に書かれていた設定とは……)

「ああ、それはな……」

 

 結局、隠し立てしても仕方ないと、モモンガは全てを明かした。

 脳内で、だが。

 

 ユグドラシルというゲーム。

 鈴木悟というプレイヤー。

 リアルという過酷な世界。

 ナザリック獲得とNPC作成。

 離れていったギルドメンバー。

 

 アルベドがこれらを知って怒りはせず。ただ、他のギルドメンバーについての悲しみや怒りを、モモンガと共有するのみ。逆に、アルベドはこの世界に来る以前、己が自律行動できなかった点を、ただ“そういうもの”としか認識していなかった。

 

「……意外だな。書き換えについて怒らないのか?」

(至高なるモモンガ様の行いを、どうして否定いたしましょう! それに、ビッチなどという下賤な設定を、モモンガ様への想いに書き換えていただけるなんて……)

「ありがとう……そんなお前に私は……」

(えっ? 私が……他のギルドメンバーの慰み者に……?)

 

 もっとも最終日、モモンガに書き換えられる以前の記憶は、アルベドにとって曖昧。

 書き換えられてから全身を視姦され、乳房をわしづかみにされた認識だけが明確。

 その記憶をアルベドにぶつけらると、モモンガは――あのギルメンに失礼な妄想を思い出してしまう。

 

「うあ……ち、違うぞ、お前の設定を見てつい、想像してしまっただけなんだ!」

(ああ、ビッチとはそういった……私がかつてそのような穢れた立場だったとは……モモンガ様! これからの私は、モモンガ様ただ一人のための体でございます! 今もしているように、存分に私の体を味わってください!)

 

 脳内に響くアルベドの感情は冷たいのに熱く、おぞましさすら感じる。

 なのに、未だにモモンガはアルベドの豊満な乳房から手を離せていなかった。

 

「あっ! いや、これはだな……お、お前の体があまりに魅力的だから……その)

(くふーっ! 魅力的! も、モモンガ様っ! アルベドは、アルベドはもうっ♡」

 

 脳内で押し倒される(?)。

 肉体の制御が奪われ、そのまま……。

 

 結局、日が暮れ始めるまで、延々とアルベドの火照りと快楽に翻弄されるのだった。

 

 

 

 とっぷりと日も暮れた中。

 ようやくアルベドが再び満足したらしい。

 いろんな液体でどろどろになった体を、よろよろと、モモンガが起こす。

 

「う、うう……アルベド、とりあえず、この二人で一つの体はさすがに問題だっ」

(そうですか? 私としては常にモモンガ様に入られている状態、まさに頭がフットーしそうなのですが!)

 

 また体が火照り始める。

 アルベドが欲望を募らす限り、これは延々と続くのだと、モモンガはようやく気付きつつあった。

 

「やめろっ! いつまで続ける気だっ!」

(は。申し訳ありません)

 

 怒鳴られれば、アルベドがしゅんと委縮する。

 体を奪った身で悪かったかなと、悩んでしまう。

 ひょっとしたら、アルベドは普段から日常的に暇さえあれば……。

 

(はい! モモンガ様のお望みとあらば、暇さえあればいたします!)

「ヤメテ!」

 

 いずれにせよ、この状況は疲れる。

 

「そ、それより、さっきは直感的に使ったが……アルベドは〈伝言(メッセージ)〉が使えるのか?」

(いえ……私が使える呪文は信仰系第6位階までです。MPも高くありませんし)

 

 そう。

 アルベドは戦士系である。ブラックガード等の聖騎士系クラスによって信仰系呪文を最低限取得しているのみ。

 だが、モモンガは直感で魔法を使っていた。

 先刻の〈伝言(メッセージ)〉も、発動した上でつながらないと、理解できている。

 だとすれば。

 

「……〈龍雷(ドラゴン・ライトニング)〉」

 

 草原を雷が走る。

 威力の詳細まではわからないが、第5位階魔力系呪文を普通に撃てた。

 乳房から名残惜し気に手を離し、足元の小石を拾い上げてみる。

 そして指を離しながら。

 

「〈時間停止(タイム・ストップ)〉……アルベド、動けるか?」

 

 空中に石が止まる。

 

(はい。私の意識は止まっておりません)

 

 智者と設定された彼女は、即座に主の意図を読む。

 

「では武器を……ん? これは真なる無(ギンヌンガガプ)だと?」

(は。タブラめが私に持たせました)

「ちょ呼び捨て……って、世界級(ワールド)アイテムを勝手に持ち出したのか! むぅ……来たなら私に一言断るべきだろうに」

(まったくです! 私にも変な設定持たせましたし!)

「お、おう。そうだな。まあ、私の装備も失われたと見ていい、この場合は一つでも世界級(ワールド)があって助かったと……」

 

 そりゃ、あんな設定されたら恨むよな……などと思いながら会話する間に、時間が戻った。

 ぽとりと、石が落ちる。

 

「……第10位階魔法〈時間停止(タイムストップ)〉は、使い手の魔法攻撃力によって効果時間が決まる。体感だが、今のは私の使用時と変わらなかったな」

(は。私の知識でも、この身の拙い魔法攻撃力では不可能な効果時間だったかと)

 

 つまり、モモンガの魔法能力を引き継いでいるということだ。

 

「MP消費はどうだ? 私は問題ないが……お前だけ疲労したりはしていないか?」

(いえ、まったく問題ありません)

 

 第10位階を使ってほぼ影響なし。

 

「〈生命の精髄(ライフ・エッセンス)〉〈魔力の精髄(マナ・エッセンス)〉……おおおおおお!」

(これは……!)

 

 そしてHPとMPの残量をチェックしてみれば。

 HP総量はアルベド、MP総量はモモンガ。

 リソース総量にして1.5倍以上。

 

「……〈絶望のオーラV〉」

 

 震える声で、次はスキルを試す。

 周囲の草が一瞬で枯れ果て、モモンガ=アルベドを中心に円形の荒れ地となる。

 

「〈上位アンデッド作成〉集眼の屍(アイボール・コープス)

 

 無数の眼球を持つ、浮遊した肉塊が現れる。

 

「スキルも全て問題なく使えるとはな……周囲を調査してこい」

 

 浮かれた声で、作成した集眼の屍(アイボール・コープス)を周囲の偵察に飛ばす。

 

(昨日から、まるでモンスターもプレイヤーも見かけませんね)

「あんな痴態を見られなくてよかったがな……」

 

 己の能力変化への興奮と共に、昨夜の行為を思い出すと体が火照る。

 

(あっ! いたしますか?)

「せん! 本当は昨日の内に周辺を調べたかったのだからな!」

 

 激しくツッコミを入れる。

 というか、この一人でわめいている状況の方が、見られると問題かもしれない……とは、気づかないモモンガである。

 

(申し訳ありません。あまりに素晴らしい状況だったので……)

「ま、まあ私もその……確かによかったが」

 

 しかも、アルベドが少し申し訳なさそうにすると、すぐ折れる。

 

(くふーっ! も、モモンガ様っ!)

「さんざんしただろうが! ひとまず待て! まずは周囲の把握が急務だ!」

 

 精神内で飛び掛かってくるアルベドを留める。

 

「……お前の得意は長柄武器(ポールウェポン)だったな」

(は。その通りです)

 

 即座に冷静な思考へと切り替えるアルベドに、呆れ感心しつつも。

 モモンガは真なる無(ギンヌンガガプ)をハルバードに形態変化させる。

 

「使えるか……? 〈凶撃(ドレッド・スマイト)〉!」

 

 ブラックガードの基本スキル。

 大地に叩きつけたハルバードが、衝撃によって巨大クレーターの如き穴を作る。

 真なる無(ギンヌンガガプ)の対物破壊効果。同時にクレーター内と周囲が凍てつき、さらにドス黒い瘴気で、飛び散る土が瞬時に塵に変わって、モモンガの身を穢す前に消滅する。

 〈凶撃(ドレッド・スマイト)〉は武器特性に氷属性と負属性の重複ダメージを加え、さらに継続ダメージのバッドステータスを与えるのだ。

 

「おお……アルベド、お前は何か念じたか?」

(いえ、私は何も……)

 

 モモンガの中にじわじわと歓喜が満ちる。

 

「ふ……ふふ、ふはははははははは!!!!」

(おめでとうございます。私の体を気に入ってくださり望外の喜びです!)

 

 そうだ。

 今のモモンガは、100レベル魔法職の能力のままに、100レベル戦士職の身体能力とスキルを備えた。

 かつての体が持っていた装備を失ったのは、正直悔しいが。

 能力値はいいとこ取り、スキルが単純に考えて二倍、武器防具装備も戦士準拠。

 

「すばらしい! すばらしいぞアルベド! こんなチートを得たプレイヤーは他にいまい!」

 

 それもアルベドは防御において、ナザリック最高。

 つまり100レベルの最高峰。

 そしてモモンガも、魔法の持ち札ではプレイヤー最高峰。

 多種多様な魔法を使いこなすタンク。

 使い勝手の悪かった接触系魔法も使い放題。

 防御系バフだって、ただの保険ではなくなる。

 プレイヤーの夢の結晶だ。

 モモンガはひとしきりテンション高く歓喜し。

 

「さて、次の実験だ。さすがに二人で一つの体を共有は、緊急時の対応に難がある。手数でもな」

(……名残惜しいですが、おっしゃられる通りです)

 

 思考を読み取ったアルベドが、残念そうに頷く。

 とはいえ、本当に名残惜しそうに思念が絡みついてくるのだが。

 

「……〈複製体作成(クローン)〉」

 

 第9位階魔法により、モモンガの前にもう一つのアルベドの肉体が現れる。

 自身の複製の肉体を作り、倒された時の予備とする魔法だ。装備は失うし、術者自身にしか使えないが、蘇生魔法と違ってレベルダウンがないし、HPも最大値に回復する。もっとも、予め唱えておいた場所(他者に破壊されてはいけないので基本的に本拠地)に戻る。何より1体しか作っておけないため、さほど使い勝手のいい呪文ではない。

 本来のモモンガの肉体が現れるかと心配していたが……杞憂だったらしい。

 ただ、ユグドラシルでは薄布をまとった形だったのに。ここでは全裸で肉体のみ。

 

「アルベド、どうだ。移れそうか?」

(外見が同じですが……かまわないのでしょうか? 私の肉体をモモンガ様が使われるのでしたら、同じ姿は不敬かと思うのですが……)

 

 全裸のアルベドから目をそらしつつ、己の中からアルベドを押しやるようにする。

 同一人物としてカウントされるなら、アルベドの精神のみでも移れるはず。

 

「何を言う。私がお前の肉体に……その、なんだ、魅力を感じたから、このような事態に陥ったのだ。お前はそのままが美しい。早く移って何か着ろ。目の毒だ」

(くふーっ! 承知いたしました! 私の体で私にするというのも、倒錯的でいいですね!」

 

 あっさりとアルベドの精神のみ、新たな肉体に移り。

 そのまますり寄って来るアルベド。

 順応が早いというレベルではない。

 

「飛びついて来るな! ほら、お前だけでは呪文も使えないだろう! この鎧はお前が装備しておけ!」

「もう……わかりました。この体に移っても、モモンガ様との確かなつながりを感じますし……」

 

 魔法職の能力が、モモンガの精神体に由来するなら、アルベドが同じ能力を持ったりはすまい。

 アイテムボックスから慌てて、彼女用に用意されていたスーツアーマー、バルディッシュ、カイトシールドといった装備一式を渡す。

 確かに、アルベドとはじんわりと精神的につながっているを感じる。

 しかも、本来は術者自身しか移れない肉体に、アルベドが移った。今のモモンガとアルベドは完全に同一アカウント扱いなのだ。

 

「……つまり、我々は自身のみを対象にした呪文やスキルを互いに使えるのだな」

「はっ、確かに……」

 

 ますます夢が広がる。

 モモンガは大いに喜びで満たされた。

 

「私は戦士としての技倆に欠けるからな。戦士装備は基本、アルベドがしてくれ。ただ、真なる無(ギンヌンガガプ)はこちらで持たせてくれ」

「は、承知いたしました……♡」

 

 万一、同じ世界級(ワールド)アイテムを使われた場合、本体たるモモンガが第一に保護されねばならないのだ。

 そうして鎧を身に着けて行くアルベドをガン見しつつ、アイテムボックスを探る。

 だが、アルベドのアイテムボックスは、恐ろしく品数が少ない。

 

「あとは……防御補強アクセサリ系と。騎乗動物召喚用のアイテムか。予備装備も消耗品も入っていないとは……タブラさん、設定ばかり凝ったんだな」

「まったく、タブラは最低ですね!」

 

 いや、言い過ぎだろ……と思うが、この内心が伝わる様子はない。

 ただ、アルベドからの好意、タブラへの怒りは伝わってくる。

 強い感情だけ、互いに感知できるらしい。

 

「どれ……アルベドの騎乗動物は……ほう、双角獣(バイコーン)か」

「はい。戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)とも呼ぶべき、100レベル魔獣です」

 

 モモンガが召喚アイテムを使ってみると、恐るべき負のオーラを放つ強力な魔獣が現れる。

 

「これは助かるな! 100レベルオーバーになった私、100レベル戦士職のアルベド、それに100レベル騎乗魔獣が加われば、十分にパーティーとしての連携が取れるだろう! よし、乗ってみ……」

 

 戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)が身を震わせていなないた。

 乗ろうとしたモモンガを振り落とす。

 

「なっ! この獣、モモンガ様に無礼な!」

 

 アルベドが近づけばこれも嫌がる。

 魔獣は弱り切って座り込んでしまった。

 

「ど、どういうことだ? お前の騎獣ではないのか? ……いや。もしや……まさか」

「知っているのですか、モモンガ様……っ、あっ、そんな、また視姦だなんてっ♡」

 

 モモンガが、じっとアルベドを見る。

 悶々とした感情が、アルベドにも伝わってくる。

 

「ちちちち違っ! バイコーンは処女を嫌い、淫らな女を好むという設定を思い出しただけだ! ビッチだったお前の体が処女のわけもない、要因は別にあるだろう!」

「いえ、私……ソロプレイならともかく、そういった経験はないのですが……」

 

 早口&大声で言うモモンガに、アルベドがぽつりと……少し恥ずかしそうに言う。

 

「えっ」

「いえ、ですから処女ですよ?」

「マジで?」

「マジですよ」

「…………」

 

 モモンガから伝わってくる安堵の感情が、アルベドにはとても嬉しい。

 本気で他のギルメンにどうこうされているとでも思っていたのか……とも言えるが。

 

「モモンガ様」

「な、なんだ?」

 

 アルベドの肉体だが、貌を赤くして慌てるモモンガが、ひどく庇護欲をかきたてさせる。

 

「この魔獣は戦力上必要です」

「ん? そうだな」

 

 きょとんとしつつ、頷く。

 狡猾な己と違い、無垢で少女性を持った主が愛らしい。

 アルベドはモモンガと違い……己の感情を敢えて制御する術を知っている。

 

「ですから、モモンガ様。せっかく二人になりましたし、お互い処女じゃなくなりましょう」

「なるほど……ん?」

 

 意味が咄嗟にわからなかった様子で、首をかしげている。

 悟られないよう、アルベドは己の内心の欲情すら隠す。

 

「大丈夫です。指でも舌でも、きっと喪失カウントされますよ!」

「指? 舌? ま、待て! なんで鎧を脱い……んむーっ!」

 

 何となく察し始めた主の口を、プレイヤースキルの差で塞いで。

 アルベドは戦力増強のため、互いの肉体から純潔をなくさんと動き始めた。

 なんといっても女淫魔(サキュバス)の体である。

 

 草原に響く声が悲鳴から嬌声に変わるまで、さしたる時間はかからなかった。

 




 いまだに草原から動いてません。
 集眼の屍(アイボール・コープス)さんは、最中にカルネ村を見つけますが、空気読んで黙ってます。
 時間軸上、まだ村は襲われてません。

 カンスト課金勢だったモモンガさん、100レベルを遥かに超える能力を得てご満悦。
 能力は上乗せではなく、肉体能力値とHPがアルベド、精神能力値とMPがモモンガです。
 戦士系スキルは、アルベドが指導すれば使いこなせます。魔法系スキルや呪文は、アルベドの精神に付随するので、モモンガは使用できません。このあたりは幕間で検証した扱いになるかと。
 それでも、超位魔法使うガチタンクなんで、原作モモンガさんよりめっちゃ強いです。
 あと、アルベドとお互いに「自身」のみを対象とする呪文やスキルを掛け合えるのも、相当なチートです。
 ただしナザリックはないし、ポーションもスクロールもありません。二人同時にフル装備も不可。

 〈凶撃(ドレッド・スマイト)〉はD&Dから。
 防御系だと使ってみても効果わからないかなってことで、適当な攻撃能力として出しました。クレーターができてるのは、あくまで真なる無(ギンヌンガガプ)の対物破壊効果です。

 〈複製体作成(クローン)〉はD&Dの呪文から。
 お金やら準備やら必用な儀式呪文ですが、ユグドラシルでそういう呪文はなさげなので。さらっと使えることにしました。装備喪失がでかいですしね。本来は自身にしか使えない上、死霊術系高位魔法なので使い勝手あまりよくないです。捨て装備で敵陣に行ったり、超位魔法デコイこなす時に使う的な。
 でも、モモンガ=アルベドは、同一アカウント扱いなので今の体で死んでも、モモンガの肉体に戻るだけです。両者が別次元とか時空にいない限り、距離がどれだけ開いていても問題ありません。モモンガは即座にクローンを再作成して、HP満タンのアルベド(ただし全裸)を送り出せます。
 必要時間は呪文を唱える、肉体に入り込む、で2アクション分。
 その間に肉体を破壊されると厳しいですが。
 モモンガさんが、タンク役できるようになってるので……(カバーリング系スキルいっぱい)。アルベドさんが全裸を開き直れば、MPが続く限り繰り返し使えるエインヘリヤル(シャルティアの最高スキル)みたいにもできますね。
 
 戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)、100レベルバイコーンって言ってたから100レベルとして扱ってます。
 けど、アウラの下でも100レベルモンスターって聞いた覚えがないし、これはかなりヤバイのでは……という気も。召喚系でも100レベルモンスターを召喚できる魔法ってあまり聞きませんしね……。
 今後において、いろいろ過剰な強さにしたり、100レベルにしては弱すぎない?ってなるかもですが、そのあたり適当に読み流してください。
 いきなり二人旅じゃなくなった気もしますが、騎獣なんで……。


 ▼は♡への変換忘れです……PCでテキストで書く時、♡は書けないので……こっちに写してから手作業になるんですよね……修正しました。
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