アルベド二人旅   作:神谷涼

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 昨日はぜんぜん違うオバロ二次を、勢いで投下しました。
 「それぞれの事情」とゆー作品です。
 モモンガさんはやっぱり女の子になります。
 よろしかったら一読ください。



23:ペロッ……これは

 

 食後。

 女神は長椅子に寝そべり、アルベドに膝枕され。

 質素かつ豪勢な晩餐も、かたづけられる。

 二柱の女神の左右を使徒ニグンと神官エンリ。

 背後に神獣クロマル。

 また、ブレイン、漆黒の剣、蒼の薔薇、ンフィーレアといった面々を傍に置き、作業を終えた村人らも全て戻りつつあった。

 

「良き夕食だったな。私の(この世界に来て)初めての食事にふさわしいものだった。皆ありがとう」

 

 膝枕から身を起こし、モモンガが村人らに礼を言う。

 それだけで、村人が感激の涙を流さずいられない。

 

「はぁ……このまま眠ってしまってもいい気がするが。王女には会っておかねばな」

「モモンガ様が心砕かれずとも、と思いますが」

 

 起き上がってもなお、もぞもぞと身をすりつけながら、けだるげに呟くモモンガを。

 アルベドは飽きず撫で、さすり続けながら答える。

 

「そうも行くまい。蒼の薔薇は、私のために人手を貸してくれたのだ。私もまた、彼女らの働きに応えねばならん」

 

 アルベドの髪を指に巻き付け、弄りながら言う。

 

「ん……よし、会うとするか。あちらも食事は終えただろう――〈次元の目(プレイナー・アイ)〉」

 

 身を起こし、既に場所はわかっているのだ。

 再び占術系呪文で状況を見る。

 モモンガの目が、王城の中へと入り込み――暗い部屋の中、一人鏡に向かう彼女を見つける。

 彼女は何かを呟きながら、表情を変え。作り。変え。

 

「ん? ふむ――ああ、そうか。王女殿もたいへんだな」

 

 一人王女の姿を見て、モモンガは頷き、アルベドの髪を撫でた。

 

「アルベドよ。彼女との対話は、途中からお前が行え。私は……お前の膝で休ませてもらおう」

「くふーっ、喜んで!」

 

 歪んだ笑みを浮かべるアルベドを、モモンガがやさしく撫で、額にくちづける。

 アルベドとしては久しぶりの直々の命令である。

 奮起せずにいられない。

 

「さて……とりあえず王女のエスコート役を呼ぶか……〈第六位階死者召喚(サモン・アンデッド・6th)〉」

 

 ゆらりと、その場に艶めかしくも無表情な女性が現れる。

 耳はエルフのように尖り、眼球は黒く、瞳は紅く輝いていた。

 

吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)!? 呪文で呼び出せるのか!」

 

 イビルアイが驚愕する。

 確かにアンデッドだが、吸血鬼系を呪文で呼び出すなど聞いたことがない。

 実際にはスキルや能力にもよるのだが……そこまで説明はしない。

 

「天使や精霊では、目立つ。醜悪な怪物や、見知らぬ男が現れては、彼女も気分がよくないだろう。隠れて連れ出すなら、彼女が適任と思ってな」

 

 モモンガが召喚した吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)の髪を撫でる。

 美しい吸血鬼が目を細め、悦びを見せた。

 アルベドは小さく唇を尖らせる。

 

「〈転移門(ゲート)〉――行け。その先にいる娘を、丁重に連れて来い」

 

 頷き、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が〈転移門(ゲート)〉に入った。

 

 

 

 

 ほんの数瞬で、リ・エスティーゼ王国第三王女ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフは連れ出され、見知らぬ土地にいた。

 微笑む吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)に抱き寄せられ、抵抗も無意味と悟り……覚悟して、奇妙な黒い穴をくぐったのだ。

 ラナーは目を見開き、息を飲む。

 そして、素早く周囲を見回した。

 心配そうに見るラキュースたち。

 仮面をしていないが……おそらくイビルアイ。

 そんなものは些事だ。

 それよりも……。

 漆黒の城塞。

 双子の女神。

 神話級魔獣。

 法衣の死者。

 女暗黒神官。

 瞬時に観察し、判断し――跪いた。

 

「――ここはカルネ村、ですか。失礼ながら、そちらの白いドレスの御方が女神モモンガ様……でよろしいでしょうか?」

 

 土に顔を擦り付ける。顔の汚れなど気にしてはいられない。

 

「そうだ。私がモモンガ……此の地に降りたる神。よくぞ来た、ラナーよ」

 

 敢えて威圧はせず、アルベドに身をすり寄せたまま応じる。

 

「私如き小娘に何を求め、お呼びなされたのでしょう」

 

 まだ顔は上げない。

 彼の女神も、その配下も……蒼の薔薇は無論、王国全軍も容易に滅ぼしうる存在だろう。

 

「ああ、それについてだが……そうだな。これからの対話は王国の密事に関わる。ラキュース殿ら蒼の薔薇は立ち合いこそすれど、内容は聞こえぬようさせてもらうとしよう」

 

 ラナーではなく、ラキュースらの方を見て言う。

 問いかけではない。

 宣言だ。

 圧倒的な実力差を、いやというほど見せつけられたのだ。

 ラナーも、蒼の薔薇も、ただ頷くほかない。

 

「では――」

 

 ラキュースらに、その続きは聞こえなかった。

 無詠唱化か、アイテムか……いずれにせよ、音が遮断されたのだ。

 しかも、うっすらとした霧が渦巻き、中の詳細を隠す。

 これでは読唇術も意味を為すまい――実際、蒼の薔薇で読唇術が使えるのはティアとティナ。ラキュース達では、会話の詳細など伺い知れない。

 ただ、ラナーが暴れる様子があれば……飛び込まねばならないと覚悟した。

 

 

 

 

「ラナー殿、顔を上げるがいい。椅子も用意した、しっかり話し合おうではないか」

 

 ラナーが顔を上げれば、今しがたまでなかった高級な椅子がある。

 モモンガが〈道具作成(クリエイト・アイテム)〉で作った、特に効果もない椅子だが。

 そんな魔法自体、ラナーにはほぼ未知の領域だ。

 座れば目の前には、美しき双子の女神――モモンガとアルベド。

 

「私如きにこのような機会をくださったこと、感謝を申し上げます。偉大なる女神モモンガ様」

 

 恐縮した様子で、いかにも無垢な魅力に溢れた姫君といった様子で言う。

 

「こちらこそ二対一ですまないな。だがアルベドは私の半身。離れるわけにはいかないのだ」

「なるほど。アルベド様、ですね。戦士長からはモモンガ様の名しか聞いておらず……まことに失礼をいたしました」

 

 ぴったりと密着したままの二柱に、ラナーはあどけなくも見える様子で詫びる。

 そんな彼女を、モモンガは冷たい目で見ていた。

 

「……王都では仮面が流行っているのかな?」

「仮面、ですか?」

「愛らしい少女の仮面を外させたばかりだからな」

「ああ、イビルアイですか。彼女は魔法詠唱者(マジックキャスター)ですからね。特殊な装備なのでしょう。彼女の素顔は、私も初めて見ました♪ あんな愛らしい顔をしてらしたのですね」

 

 にこやかに笑うラナーは、無害な少女にしか見えない。

 

「ほう。ラナーはどんな魔法系統を使うのだ?」

「私が……?」

「仮面は特殊な装備なのだろう?」

「……女神様は全てお見通しなのですか?」

 

 ラナーの表情と声が“ずれた”。

 

「いいや。見通してこんな質問をしては、趣味が悪かろう」

「…………覗いてらしたのですか?」

「ふふ、ラキュースの言った通り賢いな、ラナー」

 

 どこまでもやわらかく、アルベドに頬ずりしながら、モモンガは答える。

 

「その上で私を呼ばれたと――何をお求めなのですか?」

「ラナー次第だろう。とりあえず、聞きたいが……お前は、私たちの利用方法を考えている。崇めるつもりなどない。間違っているか?」

「……隠す意味もありませんね。その通りです」

「ならば私もまた、お前を利用してかまわんな?」

「取引、とも言えませんね。利用で済ませてくださるなら、何なりと」

 

 観念したようにラナーが肩をすくめる。

 

「では、もう一つ質問だ。ラナー、お前は退屈なのか? 何かに夢中か?」

「……夢中なものがあります」

「そうか。ではアルベドよ、後は任せる」

 

 モモンガは、アルベドにもたれ、身を寄せ滑らせるようにして……長椅子に横たわってしまった。

 猫のように、アルベドの膝に顔を乗せ。

 彼女の黒い翼や髪をいじり始める。

 もう、ラナーを見てもいない。

 そんなモモンガを、アルベドも心底愛おしそうに撫でる。

 

「では、続きは私が。頭はいいのでしょう? 仲良くしましょう、ラナー」

「……はい」

 

 己の内を見透かすようなアルベドの目に。

 底知れぬモモンガとは別の……己と同等かそれ以上の知性を、ラナーは感じた。

 

 

 

 

「――意義ある話し合いだったな。おかげでアルベドも久しぶりに楽しそうにしていた」

「いえ、こちらこそ。私もクライムと、お二方のように仲睦まじくなりたいものです」

「あまり搦め手にこだわらず、時には直球でもいいと思うのだけれど」

 

 おおよその予定が定まり、時間はすっかり真夜中。

 三人は、和やかに会話する。

 とはいえ、アルベドとラナーは今も腹を探り合う状態だ。 

 

「そういえば、ラナーの睡眠時間を奪ってしまったな。戻って眠るか?」

「……いえ。お二人と話せる時間はそれ以上の価値がございます。お邪魔でなくば、可能な限りは」

 

 ふと思いついたように言うモモンガに、少し緊張を込めてラナーが答える。

 ラナーとしては、アルベドよりモモンガの真意がわからない。

 二人の間の愛情、欲情、上下関係は見えるが。

 何を考え、求めているか、よくわからないのだ。

 

「そう構えずとも、何もしないぞ」

 

 鷹揚に笑うモモンガは、相変わらずラナーをろくに見ない。

 アルベドを見つめ、陶然と触れるばかり。

 会話中も、二人が互いを見る目には、ラナーがクライムに向けると同じ執着や依存や狂気の混じった愛情があった。

 

「モモンガ様、ラナーを帰す前にクレマンティーヌにも連絡を取られては?」

「ん? ああそうだったな。お前の膝が心地よくてすっかり忘れていた」

「くふーっ、それほどでも!」

 

 いや、ラナーよりアレかもしれない。

 

(クレマンティーヌ……貴族を殺戮してアンデッドに変え、王都に進軍させている存在、ね)

 

 ラナーが対話から得た情報はその程度。

 直接の映像も見ていない。

 後で、帰してもらう前にラキュースと情報交換する必要がある。

 

「〈伝言(メッセージ)〉――私だが、状況はどうだ? ああ、第一王子を名乗る男がいた? ん? ああ……そうか。無論、王族だろうと平民だろうと区別する必要はない。今回は人数も多いのだろう? 門で騒ぎが起きるまで、しっかり思い知らせろ。乱入者の対応もお前に任せる。罰するべき者には罰を。苦しんできた者には救いを、だ」

 

 モモンガが、耳に手を添えて合間を置きつつ、見えない誰かと会話するように言う。

 助けてやる気などないが……女神はラナーの意向を、問いもしない。

 

「あなたの兄かしら?」

「たぶんそうですね。八本指――犯罪組織との関係は知っておりました」

 

 アルベドとラナーがそんな話をする間にも、通話が終わる。

 

「バルブロというのはラナーの兄か?」

「はい。恥ずかしながら」

「……特に大事でもなさそうだな。ならばかまわんか」

「はい。如何様(いかよう)にでも」

 

 どうせ、既に取り返しのつく状況でもなかろうに――とは口にしない。

 

「そういえば第一王子は先の話にも出てこなかったな」

「愚物ですので」

「ただ愚かなだけなら、私も気にかけなかったが。愚物かつ外道ならば仕方ない。ああ、己を知り賢く生きるならば、外道でも気にしないぞ」

「……ありがとうございます」

 

 思いっきり失礼なことを言われているのだが、実力差と状況が反撃を許さない。

 それに……事実でも、ある。

 ラナーにはしっかり、身に覚えがあるのだ。

 

「明日は王都も王宮も忙しくなるだろう。当人の愚行ゆえとはいえ……ふふ、ラナーの思惑通りに進みやすそうだな」

「……ありがとうございます」

「では、戻るがいい」

「あのっ!」

「モモンガ様が戻るよう言っているのよ、ラナー。不敬ではないかしら」

「よい。私も意思確認をしなかったからな」

 

 冷たく言ったアルベドを、モモンガが抑える。

 

「あ、あの、すみません。ラキュース達と少しだけ、話をしてきてもよろしいでしょうか? モモンガ様とこうしてお会いできた以上、彼女らと今後を話し合っておきたく……」

「そうだな。彼女らは王都に戻るため、また数日はかかるのだったか。かまわんぞ。遮蔽も解除しよう」 

 

 霧が消え、外部の音が戻る。

 

「ラナー!」

 

 その途端、無事を問うようにラキュースが声をかけた。

 ラナーは安堵の息を漏らす。

 少なくとも、ラキュース達に妙なことは吹きこまれていない。

 彼女は今も、ラナーの良き親友(どうぐ)だ。

 

「だいじょうぶ、ラキュース。モモンガ様とはきちんとお話できたから。ただ、直接に説明いただくのも手間でしょう? ラキュースの見たことも、教えて?」

 

 いつもの表情、いつもの声で。

 ラナーは席を立ち……ラキュースの方へ駆け寄った。

 女神とこれ以上対峙するのはつらい。

 愛らしい親友(おもちゃ)に慰めてもらいたくもなる。

 

 

 

 

 女神は語らう。

 

「随分と気に入った様子だな、アルベド」

「モモンガ様は気に入らない様子ですね」

「ふふ、私が人間と会話する時……お前が苛立つ理由を理解できた。私も、己が思うより、独占欲が強かったようだ」

「あの娘は会話相手として面白かっただけで……そんなつもり、ありませんよ?」

 

 本来は同じ体の二人だ。

 互いの感情は相互に干渉し合う。

 そんなつもりがないとも、感じ取れる。

 感じ取れるのだが……。

 

「だが、この世界に来て見た中では、間違いなく美少女だからな」

 

 主が、己のために嫉妬し、やきもちを焼いているのだ。

 光栄過ぎて、アルベドは芯から蕩かされてしまう。

 

「……私が愛するのはモモンガ様だけですよ」

「なぁ、アルベド」

「なんですか?」

「…………ごめんなさい」

 

 その言葉と表情だけで。

 アルベドは絶頂してしまった。

 

 嫉妬したこととか。

 やきもちを焼いたこととか。

 かつて他の者と親しく会話したこととか。

 吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)を撫でたこととか。

 さっきの会話中に下半身を悪戯したこととか。

 

 いろんな全てを、主たるモモンガが。

 本来は下僕たるアルベドに。

 謝ってくれているのだ。

 

 下半身が、少しどころでなくまずい状況になったアルベドは、主が〈転移門(ゲート)〉でラナーを送る時も。

 同じく裏娼館から保護した娘らを回収し、ティアとティナが帰還した時も。

 陶然とした顔で、席から立たなかった。

 

 結局、アルベドは主の〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉で城塞内に帰るまで座ったままだった。

 

 

 

 

「ペロッ……これは発情雌臭!」

 

 ただ一人、帰還した双子忍者の片方が、素早く女神転移後の長椅子を舐めて真実を知る。

 もっとも、魔法で創られていた長椅子は、その数秒後に消滅したのだが。

 





 賢者モード終了。
 もちろん、転移して城に帰ったら、ヤることは一つです。
 週末ラブホ前十代の空気です。
 本当は保護した子たちの回復をアルベドがしたり、モモンガが手遅れな子をアンデッド化するはずでしたが。
 頼れるニグン&エンリにぶん投げました。
 ンフィーとダインも助けてくれることでしょう。

 ニニャはまだまだ王都でクレマン先輩と、復讐執行中。
 カジットさんもストッパーとして滞在中。
 バルブロ王子は、ニニャの姉を暴力的にアレしてる最中で、がっちりニニャの怨みを買って清算中。クレマン先輩が、一思いで殺したりしないよう、しっかり指導していることでしょう。
 当初はこのあたりも一話割こうかと思ってましたが、先日のクレマンさん話以上にリョナ色強くなるのでスキップ予定です。

 モモンガさんが目撃したのは、原作でもあった一人でヤバイ顔してる時のラナー。
 なので、そのへんでマウント取ってつついてます。
 アルベドとラナーが話してる間、モモンガさんはずっと、アルベドのスカートの中ごそごそしてました。ドレスデザインは同じなので、例の腰骨露出してる、手突っ込みやすいトコからなんかしてます。
 アルベドが他の人と仲良さそうで嫉妬。
 小学生か。
 ラナーはそんないちゃつきを見せつけられつつ、緊張感保って会話してました。
 原作で弟子がカジットさんの名前出した時にバカ決定したモモンガさんなので、既に教えたクレマンさん以外の名前はラナーに教えません。そのままさっさと帰らすつもりでしたが、本人が蒼の薔薇と情報交換するなら、邪魔はせず。モモンガさんなりのテストってことで。
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