アルベド二人旅   作:神谷涼

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 オリキャラじゃない……オリキャラじゃないんだ……。
 クロスでもござらん!



3:MUGENの闇

 なぜかさらに数日経ってさらに次の朝。

 草原で二人を背に乗せ、魔獣が歩いていた。

 その背には甲冑の女騎士が跨り……さらに背後に、横座りで乗るドレスの女淫魔(サキュバス)がいる。

 

「……無事に乗れるようになりましたね」

「……アルベドとだけならよかったんだがな。おい、わかっているのか?」

 

 モモンガが〈絶望のオーラV〉を放ち、騎乗する獣を睨む。

 魔獣――戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)が唸りながら怯えすくんだ。

 100レベルだけあって即死耐性こそ持っているが、怖いものは怖い。

 しかも、オーラに合わせて周囲の草が枯死し、虫が死に、鳥が落ち、土中ではミミズだって死んでいる。

 密着中のアルベドだってきつい。

 

「ま、まあ、私たちがそれだけ魅力的だったということですし……」

「こいつが雄で、しかもあんな所まで双角だとはな……」

 

 あれこれした結果、二人が貞操を失った途端……興奮した魔獣に襲われ。

 後脚部の間にあった双角で、二人いっしょにいただかれてしまったのだ。

 乗る前に乗られた二人である。

 

 そもそも。

 知性の高い魔獣の前で、盛って見せたのが問題であった。

 彼は会話こそできないが、人の言葉をしっかりと理解できるし。

 不浄を好む知的魔獣として、美的感覚も人間と同じなのだ。

 一日以上耐えただけでも、讃えられるべき自制心だろう。

 だが、憑依で得たモモンガの絶対的格差が、反論を許さない。

 騎乗後……というか、モモンガがむくりと起き上がって以来、魔獣は己の愚行を後悔することしきりである。

 

「とにかく、あのような関係になった以上、名なしではいかん。アルベドはこれにどんな名を与えているのだ?」

「は。ナザリックでも最強級の魔獣として、トップ・オブ・ザ・ワールドと名づけるつもりでした」

「長っ! 呼びづらいだろ!」

「た、確かに……ではモモンガ様に名付けてはいただけませんか?」

 

 この会話に、戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)はなぜか寒気を感じた。

 

「ふむ、そうだな……やはり二本あるのが最大の特徴……山羊……黒い……」

 

 一応は馬っス、と抗議しても魔獣の心はモモンガに届かない。

 

「ヤギスケ……フタマタ……うま波兵……」

 

 ぶつぶつと名前候補を並べるモモンガ。

 アルベドは上機嫌で、己に密着する主を堪能している。

 そんな中。

 冷や汗を流し、身を震わせ、精一杯抗議する戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)

 彼はあくまでアルベドに帰属する存在であり、モモンガに直接の従属はしていない。

 センスはアルベド準拠なのだ。

 

「まあ、モモンガ様に名付けてもらえるからって、こんなに喜んで」

 

 ちがう!といななくが、振り落としたりすれば殺されかねない。

 

「よし! 決めたぞ。お前の名前はクロマルだ!」

「まあ、kuromaru! 素晴らしい命名かと!」

 

 アルベドが絶賛する。

 なぜかローマ字表記で。

 戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)、否クロマルは絶望した。

 

「MUUUUGEEEEEEENN!!」

「ふふ、この子もこんなに喜んで」

「その名に恥じぬよう、あんなことはもうするなよ!」

 

 必死の抗議の叫びすら、喜びと受け止められてしまう。

 魔獣は、心の底から己の愚行を後悔した。

 というか、その名前で他に何をしろと言うのか。

 

「それにしても、アルベドの肉体を二つ同時に味わうとか……羨ましい」

「モモンガ様……♡」

 

 そんなクロマルの背で二人はいちゃついていた。

 

「ずっと待たせた集眼の屍(アイボール・コープス)には悪いことを……ん?」

「どうなさいました?」

 

 集眼の屍(アイボール・コープス)には主に見た者を伝える能力もある。

 発見したという村を監視させていたのだが。

 

「村が襲われているな。相手は武装した兵士らしいが……ずいぶんみすぼらしいな」

「あら……どういたしますか? 情報収集の予定でしたが」

 

 じっと、集眼の屍(アイボール・コープス)の視界を共有しつつ。

 村人がろくに抵抗できず虐殺される様子を眺める。

 戦士の肉体を得たモモンガの目で見ても、たいした連中ではない。

 

「ふむ。村人を助け、騎士を数人拘束しよう。弱者についた方が、恩は売れる」

「は。では……適度にタイミングを見ますか?」

「いや、急いでやれ。村人は簡単に死んでいる。遅れると全滅しかねん……」

「では! kuromaru、行きますよ!」

 

 アルベドが手綱を引く。

 やっと戦闘の役目が訪れたと、クロマルは疾駆した。

 

「MUGEEEN!」

 

 未だ、命名への抗議のいななきを続けながら。

 

 元より、たいした距離だったわけでもない。

 一瞬と言ってもいい時間で、彼女らはカルネ村に至る。

 最後の跳躍は、天に至らんが如くであり。

 二人の超越者を乗せた、超級魔獣の接近に……村の誰もが気づかなかった。

 襲撃者たちも含めて。

 

 

 

「エンリ! ネムを連れて逃げ――」

 

 その日、必死に襲撃者に抗っていた男は奇跡を目にした。

 

「〈魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)〉〈魔法の矢(マジック・アロー)〉」

 

 数十もの輝く矢が天より降り注ぎ、襲撃してきた兵士どもを撃ち抜いたのだ。

 今にも男の背に剣を突き立てんとした兵士は吹き飛ばされ。

 男の命は、すんでのところで守られていた。

 逃げろと言った娘らも立ちすくみ。

 妻にのしかかっていた兵士など、頭を撃たれ首が折れて転がっている。

 

 兵士らとて何が起きたか理解できない。

 空から聞こえた声は〈魔法の矢(マジック・アロー)〉。

 彼らはこれでも、特殊部隊の末端。

 魔法についても少なからず知っている。

 初歩的な攻撃呪文であり、己らなら数回は耐えられるはずなのだ。

 最高位の使い手でも数本が限度……それが数十本。

 威力も桁違い。一撃で明らかに数発分の威力がある。

 

 何ごとか、と。

 誰もが天を仰いだ。

 そして、黒き獣と騎士を伴い、女神が降臨した。

 

 

 

「……おい。〈魔法の矢(マジック・アロー)〉でけっこうな数が倒れたぞ」

「最強化したとはいえ……10レベルなさそうですね」

「弱すぎないか?」

「そうですね……」

 

 50レベルくらいかなと思い、己にヘイトを集中させるつもりで放った第1位階魔法が。

 思わず、相手を半壊させているのだ。

 モモンガもアルベドも、クロマルすら唖然としていた。

 しかも、これで襲撃者側は戦意を失ったらしい。

 

「フレンドリーファイア有効っぽいし、村人らは味方ですらない。範囲攻撃は控えるか」

「絶望のオーラだけで、村ごと滅ぼせるでしょうしね」

 

 昨夜、子宮口で思い知ったフレンドリーファイアである。

 

「〈魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)〉〈魔法の矢(マジック・アロー)〉」

 

 撃ちきれなかった兵士らをさらに撃つ。

 逃げ出し始めた。

 

「〈魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)〉〈魔法の矢(マジック・アロー)〉」

 

 逃げようとしている兵士らをさらに撃つ。

 倒れ呻く兵しかいなくなった。

 

「……弱すぎるだろ」

「連携テストになりませんでしたね……」

 

 クロマルも含めた三体での連携テストのつもりで挑んだのだ。

 チャージングバッシュや、ランページの使用も想定していたのに。

 初手のヘイト稼ぎで半壊&戦意喪失など、想定外である。

 強化スキルこそ使ったが、1レベル呪文3回だ。

 消耗とも言えない。

 二人で溜息をついていると。

 

「うおおおお! 武器を捨てろッ! 魔法を使うなァッ!」

「きゃあーっ!」

「え、エンリ!」

「お姉ちゃん!」

 

 一人の村娘を後ろから捕え、一際下卑た兵士が現れる。

 モモンガは少しだけ関心を向けるが。

 

「このスレイン法国貴族ベリュース様が! こんなところで終わるわけか――ひっ」

 

 しかし、瞬時にびくびくっと身を震わせながら倒れる。

 いつの間にか背後に、目玉だらけの巨大な肉塊がいた。

 不可視化で伏兵として配置されていた集眼の屍(アイボール・コープス)である。

 

「不可視化を見破れない。麻痺の魔眼に抵抗できない、か」

「ありていに言って、ザコ以下ですね……」

 

 ため息をつき、麻痺した兵士――ベリュースにトドメを刺す。

 

「〈魔法の矢(マジック・アロー)〉」

 

 悲鳴もあげられぬベリュースに集中した十発の魔法弾は、その体をひしゃげさせ、巨獣に踏みつぶされたように変えた。

 

「本当にもろいな」

「まさしく虫と呼ぶにふさわしいかと」

 

 全力で蹂躙した方が早いのでは……と思えるが。

 まだまだ一つの村で全てを判断すべきではない。

 

「増援が来るかもしれん。一応、護衛を作っておくか……〈中位アンデッド作成〉」

 

 おぞましい音を立て、死んだ兵士の骸が、武装した巨漢のアンデッドとなる。

 防御力について信頼できる死の騎士(デス・ナイト)だ。

 その光景に、村人らはひれ伏し。

 かろうじて生き残った兵士らは絶望と共に目を閉じる。そして、多くは希望と共に、命すら失ってしまった。

 

「死体に乗り移るのか……グロいエフェクトだなぁ」

 

 思わぬ仕様変更に、モモンガ当人は困った顔をしていた。

 

 

 

「女神様! ありがとうございます!」

「女神様!」

「女神様!」

 

 救われた村人たちは一斉にひれ伏し、モモンガを拝み始める。

 無理もあるまい。

 虐殺は止まり、村人の犠牲はほぼなく終わったのだ。

 しかも、モモンガは白いドレスに身を包んだ、まさに天上の美と呼ぶにふさわしい美女。

 角や翼は人ならざる存在と示すが……同じ人間に殺戮されんとした者らには、些細な問題にすぎない。

 

「ええ…………ああ、うん、とりあえずまだ生きている兵を縛り上げなさい。それから、重傷を負った村人を連れて来るように」

 

 うろたえつつ答えるモモンガに、村人らが我先にと動き出す。

 救い手たる女神に、己の働きを見せんとしているのだ。

 

「モモンガ様、人間風情にこのような……よろしいのですか?」

 

 甲冑姿のアルベドが具申する。

 適当な個体に〈支配(ドミネイト)〉を使った方が早いのでは……と考えてだ。

 

「我々はこの世界について何もわかっておらん。味方を作っておくべきだろう」

 

 アルベドをなだめ。

 連れてこられた兵士――数人しか生きていなかった――を、クロマルに見張らせ。

 傷ついた村人らを、アルベドに回復させる。

 村人らの死者は四人……襲撃を考えれば、案外と少ないと言えるだろう。

 

(ふむ……そうすると、HPが0になったからと死亡するとは限らないか。頭を狙わず、腕や足を狙えば、兵士も全員生きたまま無力化できたかもしれんな。まあ、多数の捕虜など邪魔にしかならんが……)

 

「村人らの死体をこちらへ。我が祝福を与えよう。そして兵士の死体も集めよ。悪しき行いの罰を与える」

 

 わずかな村人は警戒を見せるが。

 多くの村人が、率先して死者を並べて行く。

 

「悪しき者に蹂躙されし子らよ、未だ怒りあらばこの地に残れ」

(……ちょっと厨二すぎるか?)

 

 モモンガ(アルベドの肉体)が、黒い翼を広げ、死した男を黒い光で包む。

 その肉体が急激に失われ、目に赤い光が宿る。

 衣服はローブに変わり、手には杖。

 生前の面影を残しつつも、それは強大な力を見せていた。

 

「こ、これは……俺は、兵士に襲われ死んだはず……! それにこの溢れる力は……!」

 

 生前の声、仕草で“それ”は言葉を発する。

 村人たちは目の前の奇跡に息を呑んだ。

 その姿は恐るべきアンデッドだが、意識は当人のもの。

 

「お前を蘇らせたるは、お前自身の未練。理不尽に対する怒りが、その姿で蘇らせたのだ。その力は村を守り、敵を討つ力と知れ」

「ああ……偉大なる主よ! ありがとうございます!」

 

 復活した男――死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が平伏する。

 

(知性あるアンデッドなら、当人の記憶が戻るのか……〈中位アンデッド作成〉もかなり使えるな。効果時間で消えたなら、成仏した扱いでいいか……記憶は死亡後時間にもよるかもしれん。残った兵士も殺して、時間差を試してみるべきだろうか……ああ、呪文でも死体に移るのか?)

 

 かくして、カルネ村に四体の死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が生まれ。

 多数の骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)が、農奴として与えられた。

 これらは彼の地を守護し続け、将来の聖地を守る存在となる。

 

 生き残った兵士らも、女神の威光に撃たれ、知る限りのことを話した。

 帝国の仕業に見せかけんとした、スレイン法国の卑劣な行いは明らかとなり。

 この地を発信源として、反法国の機運が高まった。

 

 黒翼の女神モモンガ。

 黒き守護騎士アルベド。

 暗黒の神獣クロマル。

 偉大なる三柱による、新たな神話の始まりであった。

 




 原作より少し早く来たので、エンリの両親は無事です。
 村人は犠牲者少ないですが、全員が全力でモモンガさんの信者になりました。

 さすがに毎回戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)じゃアレなので、名前をつけました。トップオブザワールドも長すぎるし……略してTOWもヒロアカ風味すぎるかなって……。
 アルベドはなぜかkuromaruってローマ字呼びします。
 ふっしぎー。
 (詳細を知りたい方は kuromaru mugen でググってください)
 原作モモンガ様に比べるとフツーのネーミングですが、露骨にエロ用語から名前つけるわけにもいかず……。モモンガさんのエロ知識を高くすると、それはそれでアルベドにリードさせづらいので。 

 呪文やスキルの解釈、一部適当になってます。
 〈魔法の矢(マジック・アロー)〉、モモンガさんは10発撃てます。他はたまに数発撃てるだけって話なので10レベルにつき1発と見て、三重化で30発。最強化してるので最大ダメージ化で平均ダメージが約2倍。能力値による効果上昇もある程度はあるでしょうから、仮に3発分として通常の90発分を一回で撃ってます。
 呪文強化スキルに使用回数制限があるとすれば、ウカツすぎる使い方の気もしますが……1回目は「一番軽い魔法で様子見しよ」、2回目は「え?今のでホントに?」、3回目は「もうこれでいいや」って感じです。気が抜けちゃってついつい……と思ってくださいませ。
 主な理由は、乱戦状態で多数の敵を選んで攻撃できる適切な呪文が、他に思いつかなかったからでもあります。召喚系ですとタイムラグ発生しますし。

 死体を媒介に作ったので、エルダーリッチその他は原作と同じく効果時間ナシで永続します。スキルと呪文で作ったため、最終的な命令権はモモンガさんが握ってます。彼ら自身、モモンガさん第一主義で、ナザリックNPCみたいな思想です(生前記憶持ちエルダーリッチも)。
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