それと前回ちょっと原作設定との乖離がありました……。
アルシェ、不可視化した相手の魔力は看破できないんですね。
てっきりできると思って書いてました。
さすがに修正すると面倒な箇所なので、本作ではこのままとします。
フールーダも同じ目なので、二人そろって原作より若干スペックアップします。
そして今回の話も、原作と細かいところで引っかかりそうなんですが……。
初期にかなり逃げ回った大事なトコなので、原作とズレがあってもこのまま行きます。
宗教観や神話について、原作と細かな乖離があるかもですが、どうかご容赦ください。
「決して己の力に溺れず……それが神の在り方ですか」
ロバーデイクは、目の前の光景に、確かな聖性を感じていた。
一連のやりとり。
演技と思えぬ、アルシェへの態度。
どこまでも冷静な、皇帝への賛辞。
アルシェが言うだけの力あらば、自らの思うまま解決してもよかったはずだ。
いや、それ以前に無理矢理連れ去るのも簡単だろう。
だが、彼女は、アルシェの意志を尊重してくれた。
目の前にいるのが本当に女神ならば。
本当に、神ならば。
「すみません。少し質問を。この問いに答えていただくことが、私の願いです」
「かまわんが……それでいいのか?」
アルベドに撫でられ、目を細めていたモモンガが首をかしげる。
その様子はどこまでも無邪気で穢れなく。
妖艶な美貌ながら、下劣な欲望を抱く者に罪悪感を抱かせる。
「はい。どうしても、女神たる貴方に聞きたいのです。神殿の在り方を是となされるか。私の在り方を否となされるか」
「ふむ?」
事情のわからぬ様子の女神に、ロバーデイクは説いた。
神殿による回復魔法の独占と有料化。
救うべき人を救えぬ現状。
そんな状態を悔やみ、神殿を辞してワーカーとなった己。
とはいえ、一人の言葉からでは判断しづらい。
モモンガとアルベドが、クレマンティーヌを同時に見る。
「はいはーい。補足ねー。あー、ニグンちゃんがいれば任せるのに、もー」
面倒そうに、クレマンティーヌが補足説明する。
モモンガがかいつまんで理解した限りでは。
リアルで言えば富裕層ばかり厚遇する医療施設で勤めていたが、貧困層の在り様を見て自らボランティアに身を落とした、ということだ。
(…………いい人じゃん)
モモンガとしては、ロバーデイクの姿勢は良いことだ。
ただ、神殿を一概に罵るのもどうかと思う。
問題とすべきは、神殿が僻地にないこと、緊急時でも同様の報酬を得ようとすることだろう。
(このあたり、冒険者の回復魔法も仲間以外に使うべきじゃなくて、仲間以外だったら割り増しでお金とるのが普通って話だっけ? 神殿を罵るのは簡単だけど、社会に根付いた組織なんだし、術者の数とかの問題があるんだろな)
アルベドに任せると冷たい言葉で終わらせてしまいそうだ。
何より、彼女にいいところを見せたい。
己の全てを既に見られたからこそ、彼女には見捨てられたくない。
ありていに言えばモモンガは、アルベドを独占したいのだ。
(ん? 独占?)
そうだ。
独占だ。
かつて、アインズ・ウール・ゴウンも稀少鉱物の独占による相場操作を行った。何をしているかよくわからなかったが、確か……。
「ロバーデイクよ。お前の行いは素晴らしい。称賛されてしかるべきだろう」
目を閉じて考え込んでいたモモンガが、目を開き言った。
「だが、私は神殿を非と言うつもりもない。お前は、お前の選んだ在り方に誇りを持てばよい」
「ですが、今の神殿の在り方では、救うべき人が――」
曖昧な返答に納得いかず、ロバーデイクが言葉を続けんとするが。
モモンガは手を前に出し、封じた。
「救うべき人とは何だ? 傷を負った者すべて、病に苦しむ者すべてか?」
「すべてとは言いません。しかし、目についた人を救えぬなら、何の意味があるのです」
「なるほど。誰かが困っていたら、助けるのは当たり前、ということだな」
モモンガは、懐かしむように微笑を浮かべる。
アルベドが少し、表情を曇らせた。
「そうです! だから――」
「だから、お前は今の生き方に決めたのだろう? それでいいではないか。私に神殿を責めさせても意味はないぞ」
「しかし、神たる御身ならば、神殿の在り様を変えることもできるのでは?」
「神殿を作ったのは神ではない、お前たち人間の社会だ」
「そ、それは、そうかもしれませんが……それでも、神の言葉なら――」
「お前は正しい行いをしているが……神について、誤解していないか?」
「は?」
「私は私について、細かく説明もできるが……そのためには、前提となる知識がお前たちに足りん。ゆえに、便宜上のわかりやすい存在として、神を名乗った」
「「えええっ!?」」
モモンガのみならず、アルベド以外の全員が呆けた声を出した。
エンリやクレマンティーヌも、である。
「え? では、モモンガ様は神ではないのですか?」
エンリが眩暈すら感じながら呟く。
「いや。神だぞ。お前たちが私を神と認めるならば、な」
「そ、それでは神でもなんでもないではありませんか!」
ロバーデイクが少し激昂して言う。
「そこが誤解なのだがな……とりあえず、私が人間でないこと、見てわかるだろう? 一方で、お前たちの中で人間について説明できる者はいるか? お前たちは何を以て人間を名乗っている?」
「それは……」
そういうものとしか、わからない。
使う言葉は、亜人とて同じ。
能力面の細かな差異はあるが、能力が人間の証明なのか。
「私の目から見れば、人間も
「モモンガ様……っ! 私にそんな重大な秘密を!」
エンリが感動の涙を流すが。
「俺たちが聞いて大丈夫な話なのか?」
「わ、私まだ何も返事してないんだけど……」
「…………」
ヘッケランとイミーナは困惑し。
ロバーデイクは考え込んでいた。
「さて、意地悪な質問をしたな。ロバーデイクよ、お前にとって神とは何だ? 信仰系魔法とはどのように唱えられていると思う?」
「神とは、我らに加護を与え、救いをくださるものです」
「正しくないな」
「では何だとおっしゃられるのです」
ロバーデイクは元神官であり、神学もそれなりに修めている。
このような議論はある意味で親しんだものだが。
目の前の“女神”の言葉は、よく知る形式的な議論ではない。
「加護を得ているのはお前だ。そして、神ではなくお前が、人々や仲間に救いを与えるのだ」
「そ、そのような傲慢な!」
「元神官だと言ったな。神殿に入ることを選んだのは誰だ? 神官の道を選んだのは? その道を捨て、今の在り方を選んだのは? もっと言ってしまうなら、魔法を使う対象を決めるのは誰だ?」
「…………私、です」
「お前は天にいる神を信じる前に、己自身をまず信じたのだ。それが信仰であり、お前に魔法と言う力を与えている」
「信仰系魔法とは、私の祈りに対し神が与えてくれるものではないのですか?」
「ない。同じ神を信仰する神官がどれだけいる。彼らの祈りを個別に聞き、適切な術を与えるとでも言うのか?」
「無論です。神の御力は無限であり、我らはその力を得ているはず」
「神の力は有限だ。お前たちから見て、あまりに大きすぎるから、無限と思っているに過ぎん」
「な、な……」
目を見開き、言葉に詰まってしまう。
「私はお前を罵っていない。お前はお前の力で人を救い、お前の意志で善行を為しているのだ。だから、胸を張れと言っている。ただ、都合よく神を言い訳にしないでほしいが」
そうだ。
女神はどこまでも彼を誉めている。
神を貶めるのでなく、ロバーデイクを持ち上げている。
「言い訳、ですか」
「そうだ。
「あります」
「彼らに、回復魔法をかけたことは?」
「ありません」
「かけた場合、回復魔法は発動しないと思うか?」
「いえ、私が望めば……発動するでしょう。相手がアンデッドでもなければ」
「つまり、お前は傷ついた者といっても、かける相手を選んでいるのだろう?」
「そうですね……」
「それを、神の教えだとか、神の判断などと言うな。お前が、お前の意志で決めているのだ。その責任を持て」
「そういう、ことですか」
ロバーデイクは顔を上げた。
「さて、私は騙りの神かもしれん。私の誘いを受けるかどうかは、お前がお前自身の意志で決めるのだぞ、ロバーデイクよ」
女神が微笑んでいた。
なにげに女神とめっちゃ長話してるフォーサイト。
これだけでカルネ村だと妬み殺し案件。
そしてエロの気配はどこに……。
ジルやラキュースがこんな話するのもなって感じで今回はこんな話になりました。聖王国組では別の意味でこんな話できないでしょうし。
実際のロバーは、神殿についてもっと割り切ってる気もするんですが。
原作内で最も善良な神官だったと思う、ロバーデイクさんに議論かませ犬してもらいました。
ロバーとしては、神殿に本気でクレーム付けてほしかったわけでなく、もうちょっと枠を緩めさせてくださいよー程度です。
そしたらなんか、女神からマジレスがって感じで。
と、前回のアルシェの目のことですが。
信仰系魔法の位階は、ロバーを基準で「たぶん」「だいたい」とつけつつ、仲間に数値で伝えています。
実際にはハッキリとわからなくても以下の感じで見えてます。
ロバー:基準値、第3位階まで使える(という本作での設定)
エンリ:ちょっと下、たぶん第2位階
アルベド、ペイルライダー:倍くらい、第5~7位階?、モモンガ見たので高く見積もり
クレマンティーヌ:なし、呪文使わない
アイボールコープス:魔力系第8位階(という本作での設定)
モモンガ:魔力系超位
そして、いろいろ忙しくなってきましたので、また投下がまばらになります。
短めでも、なるべく投下していきたくは思っていますが……(汗)。