アルベド二人旅   作:神谷涼

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 ちょっと間空きました。

 それと前回ちょっと原作設定との乖離がありました……。
 アルシェ、不可視化した相手の魔力は看破できないんですね。
 てっきりできると思って書いてました。
 さすがに修正すると面倒な箇所なので、本作ではこのままとします。
 フールーダも同じ目なので、二人そろって原作より若干スペックアップします。

 そして今回の話も、原作と細かいところで引っかかりそうなんですが……。
 初期にかなり逃げ回った大事なトコなので、原作とズレがあってもこのまま行きます。
 宗教観や神話について、原作と細かな乖離があるかもですが、どうかご容赦ください。



30:神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ

 

「決して己の力に溺れず……それが神の在り方ですか」

 

 ロバーデイクは、目の前の光景に、確かな聖性を感じていた。

 一連のやりとり。

 演技と思えぬ、アルシェへの態度。

 どこまでも冷静な、皇帝への賛辞。

 アルシェが言うだけの力あらば、自らの思うまま解決してもよかったはずだ。

 いや、それ以前に無理矢理連れ去るのも簡単だろう。

 だが、彼女は、アルシェの意志を尊重してくれた。

 目の前にいるのが本当に女神ならば。

 本当に、神ならば。

 

「すみません。少し質問を。この問いに答えていただくことが、私の願いです」

「かまわんが……それでいいのか?」

 

 アルベドに撫でられ、目を細めていたモモンガが首をかしげる。

 その様子はどこまでも無邪気で穢れなく。

 妖艶な美貌ながら、下劣な欲望を抱く者に罪悪感を抱かせる。

 

「はい。どうしても、女神たる貴方に聞きたいのです。神殿の在り方を是となされるか。私の在り方を否となされるか」

「ふむ?」

 

 事情のわからぬ様子の女神に、ロバーデイクは説いた。

 神殿による回復魔法の独占と有料化。

 救うべき人を救えぬ現状。

 そんな状態を悔やみ、神殿を辞してワーカーとなった己。

 とはいえ、一人の言葉からでは判断しづらい。

 モモンガとアルベドが、クレマンティーヌを同時に見る。

 

「はいはーい。補足ねー。あー、ニグンちゃんがいれば任せるのに、もー」

 

 面倒そうに、クレマンティーヌが補足説明する。

 モモンガがかいつまんで理解した限りでは。

 リアルで言えば富裕層ばかり厚遇する医療施設で勤めていたが、貧困層の在り様を見て自らボランティアに身を落とした、ということだ。

 

(…………いい人じゃん)

 

 モモンガとしては、ロバーデイクの姿勢は良いことだ。

 ただ、神殿を一概に罵るのもどうかと思う。

 問題とすべきは、神殿が僻地にないこと、緊急時でも同様の報酬を得ようとすることだろう。

 

(このあたり、冒険者の回復魔法も仲間以外に使うべきじゃなくて、仲間以外だったら割り増しでお金とるのが普通って話だっけ? 神殿を罵るのは簡単だけど、社会に根付いた組織なんだし、術者の数とかの問題があるんだろな)

 

 アルベドに任せると冷たい言葉で終わらせてしまいそうだ。

 何より、彼女にいいところを見せたい。

 己の全てを既に見られたからこそ、彼女には見捨てられたくない。

 ありていに言えばモモンガは、アルベドを独占したいのだ。

 

(ん? 独占?)

 

 そうだ。

 独占だ。

 かつて、アインズ・ウール・ゴウンも稀少鉱物の独占による相場操作を行った。何をしているかよくわからなかったが、確か……。

 

「ロバーデイクよ。お前の行いは素晴らしい。称賛されてしかるべきだろう」

 

 目を閉じて考え込んでいたモモンガが、目を開き言った。

 

「だが、私は神殿を非と言うつもりもない。お前は、お前の選んだ在り方に誇りを持てばよい」

「ですが、今の神殿の在り方では、救うべき人が――」

 

 曖昧な返答に納得いかず、ロバーデイクが言葉を続けんとするが。

 モモンガは手を前に出し、封じた。

 

「救うべき人とは何だ? 傷を負った者すべて、病に苦しむ者すべてか?」

「すべてとは言いません。しかし、目についた人を救えぬなら、何の意味があるのです」

「なるほど。誰かが困っていたら、助けるのは当たり前、ということだな」

 

 モモンガは、懐かしむように微笑を浮かべる。

 アルベドが少し、表情を曇らせた。

 

「そうです! だから――」

「だから、お前は今の生き方に決めたのだろう? それでいいではないか。私に神殿を責めさせても意味はないぞ」

「しかし、神たる御身ならば、神殿の在り様を変えることもできるのでは?」

「神殿を作ったのは神ではない、お前たち人間の社会だ」

「そ、それは、そうかもしれませんが……それでも、神の言葉なら――」

「お前は正しい行いをしているが……神について、誤解していないか?」

「は?」 

「私は私について、細かく説明もできるが……そのためには、前提となる知識がお前たちに足りん。ゆえに、便宜上のわかりやすい存在として、神を名乗った」

「「えええっ!?」」

 

 モモンガのみならず、アルベド以外の全員が呆けた声を出した。

 エンリやクレマンティーヌも、である。

 

「え? では、モモンガ様は神ではないのですか?」

 

 エンリが眩暈すら感じながら呟く。

 

「いや。神だぞ。お前たちが私を神と認めるならば、な」

「そ、それでは神でもなんでもないではありませんか!」

 

 ロバーデイクが少し激昂して言う。

 

「そこが誤解なのだがな……とりあえず、私が人間でないこと、見てわかるだろう? 一方で、お前たちの中で人間について説明できる者はいるか? お前たちは何を以て人間を名乗っている?」

「それは……」

 

 そういうものとしか、わからない。

 使う言葉は、亜人とて同じ。

 能力面の細かな差異はあるが、能力が人間の証明なのか。

 

「私の目から見れば、人間も森妖精(エルフ)小鬼(ゴブリン)も大差ない。お前たちにとって私は神と大差ないであろうし、神と称した方がわかりやすかろうと思ったまでだ。言っておくが、私はこの場にいる者が信頼できると考えて、この話をしている。他言はするなよ。音は外に聞こえんようしている」

「モモンガ様……っ! 私にそんな重大な秘密を!」

 

 エンリが感動の涙を流すが。

 

「俺たちが聞いて大丈夫な話なのか?」

「わ、私まだ何も返事してないんだけど……」

「…………」

 

 ヘッケランとイミーナは困惑し。

 ロバーデイクは考え込んでいた。

 

「さて、意地悪な質問をしたな。ロバーデイクよ、お前にとって神とは何だ? 信仰系魔法とはどのように唱えられていると思う?」

「神とは、我らに加護を与え、救いをくださるものです」

「正しくないな」

「では何だとおっしゃられるのです」

 

 ロバーデイクは元神官であり、神学もそれなりに修めている。

 このような議論はある意味で親しんだものだが。

 目の前の“女神”の言葉は、よく知る形式的な議論ではない。

 

「加護を得ているのはお前だ。そして、神ではなくお前が、人々や仲間に救いを与えるのだ」

「そ、そのような傲慢な!」

「元神官だと言ったな。神殿に入ることを選んだのは誰だ? 神官の道を選んだのは? その道を捨て、今の在り方を選んだのは? もっと言ってしまうなら、魔法を使う対象を決めるのは誰だ?」

「…………私、です」

「お前は天にいる神を信じる前に、己自身をまず信じたのだ。それが信仰であり、お前に魔法と言う力を与えている」

「信仰系魔法とは、私の祈りに対し神が与えてくれるものではないのですか?」

「ない。同じ神を信仰する神官がどれだけいる。彼らの祈りを個別に聞き、適切な術を与えるとでも言うのか?」

「無論です。神の御力は無限であり、我らはその力を得ているはず」

「神の力は有限だ。お前たちから見て、あまりに大きすぎるから、無限と思っているに過ぎん」

「な、な……」

 

 目を見開き、言葉に詰まってしまう。

 

「私はお前を罵っていない。お前はお前の力で人を救い、お前の意志で善行を為しているのだ。だから、胸を張れと言っている。ただ、都合よく神を言い訳にしないでほしいが」

 

 そうだ。

 女神はどこまでも彼を誉めている。

 神を貶めるのでなく、ロバーデイクを持ち上げている。

 

「言い訳、ですか」

「そうだ。小鬼(ゴブリン)人食い大鬼(オーガ)を倒したことはあるか?」

「あります」

「彼らに、回復魔法をかけたことは?」

「ありません」

「かけた場合、回復魔法は発動しないと思うか?」

「いえ、私が望めば……発動するでしょう。相手がアンデッドでもなければ」

「つまり、お前は傷ついた者といっても、かける相手を選んでいるのだろう?」

「そうですね……」

「それを、神の教えだとか、神の判断などと言うな。お前が、お前の意志で決めているのだ。その責任を持て」

「そういう、ことですか」

 

 ロバーデイクは顔を上げた。

 

「さて、私は騙りの神かもしれん。私の誘いを受けるかどうかは、お前がお前自身の意志で決めるのだぞ、ロバーデイクよ」

 

 女神が微笑んでいた。

 





 なにげに女神とめっちゃ長話してるフォーサイト。
 これだけでカルネ村だと妬み殺し案件。
 そしてエロの気配はどこに……。

 ジルやラキュースがこんな話するのもなって感じで今回はこんな話になりました。聖王国組では別の意味でこんな話できないでしょうし。

 実際のロバーは、神殿についてもっと割り切ってる気もするんですが。
 原作内で最も善良な神官だったと思う、ロバーデイクさんに議論かませ犬してもらいました。
 ロバーとしては、神殿に本気でクレーム付けてほしかったわけでなく、もうちょっと枠を緩めさせてくださいよー程度です。
 そしたらなんか、女神からマジレスがって感じで。

 と、前回のアルシェの目のことですが。
 信仰系魔法の位階は、ロバーを基準で「たぶん」「だいたい」とつけつつ、仲間に数値で伝えています。
 実際にはハッキリとわからなくても以下の感じで見えてます。

ロバー:基準値、第3位階まで使える(という本作での設定)
エンリ:ちょっと下、たぶん第2位階
アルベド、ペイルライダー:倍くらい、第5~7位階?、モモンガ見たので高く見積もり
クレマンティーヌ:なし、呪文使わない
アイボールコープス:魔力系第8位階(という本作での設定)
モモンガ:魔力系超位


 そして、いろいろ忙しくなってきましたので、また投下がまばらになります。
 短めでも、なるべく投下していきたくは思っていますが……(汗)。
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