アルベド二人旅   作:神谷涼

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 レベルキャップ、公式には決まってないと思ってましたがゴンドについての、モモンガさんの考察にばっちり出てたんですね……。
 ガゼフの指輪とか100レベルオーバーいける程度に考えてました。アルシェ、クライムは現クラスがマックスになってて、目先変えて別クラス取得するまで不可とかそゆアレかと(汗)。
 ご指摘いただかなければ、何も考えずにエンリさんを成長させる気満々でした(汗)。
 原作でも天運持ちの少女エンリさんは、とりあえず20レベルまで成長可としておきます。
 今のエンリさんは10レベル程度。フールーダ討伐経験点により、原作覇王時より強いですが、取得クラスはばらけてます。


35:『僕は悪くない』

 前回――ラキュースらと訪れた時と同じだった。

 ただ、前回よりかなり村に接近できたのは僥倖か。

 あるいは不幸だろうか。

 黒い城塞へ近づくイビルアイたちの前に、闇より暗い異様な空間が現れる。

 

「来たぞ」

「手下だよね?」

「この転移魔法……魔神と同格の連中と思った方がいいね」

 

 〈転移門(ゲート)〉から現れたのは。

 朽ちた法衣の高位アンデッド。

 恐るべき魔獣を駆る暗黒神官。

 凶悪な笑みを浮かべた女剣士。

 さらに、目には見えぬ恐るべき気配が周囲に散開している。

 

「王国からの使者……ではなさそうですな、イビルアイ殿」

「どのような用件か、聞いてもいいですか?」

 

 交渉役、ということか。

 アンデッドと神官が、呼びかける。

 

「手下に用はないよ。女神っていうのを呼んでほしいんだけど」

 

 鎧が、緊張感のない口調で言う。

 

「あ゛? 誰が手下だってぇ!」

 

 だが、その言葉が黙っていた女剣士の逆鱗に触れた。

 

「いかにも。私はモモンガ様に生まれ変わらせていただいた身。いわばモモンガ様の被造物! 手下などと、いつ裏切るとも知れん存在のようには、言わないでもらいたい!」

「私は、厚かましくもモモンガ様に側仕えを許された身。モモンガ様に糧を与えられるだけの小動物以下。偉大なるモモンガ様が、私如きに利用価値を見出すなど。不敬に過ぎます!」

 

 他の二人も真面目な顔で言う。

 

「MUUUGEEEEN、MUGEEN!」

 

 魔獣も何か訴えるように嘶くが、残念ながらこの場に獣の言葉がわかる者はいない。

 

「ちょ、ちょっと待ってよー。私はモモンガちゃんより下でもなんでもないって意味でさぁ」

 

 怒りの顔を見せていた女剣士が、毒気を抜かれた様子で二人をなだめる。

 しかし、考え方の異なる二人相手では、言葉もすれ違うばかりだ。

 

「まあ、お前はペットだからな」

「モモンガ様に撫でていただけて、羨ましいです」

「誰がペットだお前ら!」

 

 三人……というか、二人と一人で言い争っている。

 

「なんで漫才が始まってるんだい」

 

 老婆――リグリットは呆れた様子で眺めるしかない。

 

「前はかなり連携できてたんだけどな……あの貴族殺しの女がいるせいか? 足並みがそろっていないなら攻撃のチャンスだな!」

「このバカ!」

 

 とりあえず攻撃しようとするイビルアイを、リグリットは殴りつける。

 

「うん、まあ別の意味で同程度の人たちってことだね」

 

 二人のやりとりと。

 三人の言い争いを眺めて。

 白金の甲冑は呟くのだった。

 

 

 

 

 蒼の薔薇が来た時を思えば、随分と平和的に自己紹介がなされた。

 とはいえ、村の中には迎えられず、城塞の前にいるだけだ。

 イビルアイと共に現れたのは、スレイン法国でも相当の地位にいた二人にとって、大いに問題ある存在だった。

 

 十三英雄の一人たる“死者使い”リグリット・ベルスー・カウラウ。

 アーグランド評議国永久評議員“白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)”ツァインドルクス=ヴァイシオン。

 

「な、なるほど。アーグランド評議国の竜王殿でしたか」

「……やばくなーい?」

 

 ニグンとクレマンティーヌが緊張感を漂わせる。

 アンデッドと化して得た戦闘感覚で探れば、竜王の危険性がひしひしとわかってしまうのだ。

 ゆえに二柱の女神についても、おおよその情報を開示した。

 竜王にこんな場で暴れられては、女神の邪魔をしてしまう。

 だが、運命は常に無情。

 

「とりあえず、そのモモンガとアルベドっていうのに会わせてよ」

 

 やわらかな、しかし有無を言わさぬ口調で、竜王が言った。

 ニグンとクレマンティーヌは、互いに目を合わせる。

 今すぐとか無理である。一度籠れば、出てはこない。

 しかし。

 相手について何も知らないエンリは、強気である。

 

「逗留なら許可します。中の様子を見てもかまいません。ですが、モモンガ様、アルベド様との謁見は三日ばかり待ってもらいます。あなたがどれだけ偉い人でも、これは譲れません!」

「うーん、待ってていいっていうのはありがたいけど。私だってこれでも忙しいんだよ?」

 

 ツァインドルクス――ツアーの口調はやわらかいが。

 目の前の娘を鋭く観察している。

 

「転移で、また来たりできないんですか?」

「いや、そりゃできなくはないけど。いったい、どうして会えないのさ」

「お二人が、大事な儀式の最中だからです!」

「……その儀式で、この世界に深刻な問題を起こされるかもしれない」

 

 静かに、しかし威圧を込めてツアーが言う。

 

「そんなこと、ありえません!」

「貴様、何を根拠にそんなことが言える!」

 

 胸を張って言うエンリに。

 イビルアイが食ってかかるが。

 

「はー。そゆ儀式じゃないから、ホントに。ていうか、儀式ですらないから」

 

 唯一、二人の生活の詳細を知るクレマンティーヌが、疲れた様子で言った。

 

「へぇ。それは気になるね」

 

 ツアーが、視線をクレマンティーヌに向けた。

 

「えーと……んー。竜王サマと十三英雄サマだけ、ちょーっとこっち来て。他の三人はいい子だから、黙って待っててねー。この二人に私が攻撃したりはしないし、私が攻撃も……されないよね?」

「あんたが何もしなきゃ、わしからは何もしないさ」

「私も同じくだよ」

 

 リグリットとツアーが頷いた。

 

「ちょ、なんで私だけ外されてるんだ!」

「人質に決まっているだろうが。あいつに何もないよう、互いの信用の担保だよ」

「クレマンティーヌさん、自らあんな役目を……」

 

 薄々、女神が何をしているか気づいているエンリは、竜王らと共に離れる同胞(エンリ認定)を尊敬の念と共に見送るのだった。

 

 

 

 

「モモンガちゃんとアルベドちゃんが何してるかだけどー……竜王サマは察してくれたりしないかなー?」

「いや、さすがにわからないよ。確かに、あの城塞はたいした隠蔽もされてないし……中で強力な力を持った二体が、何か体力を消耗しながら激しい行為をしているのはわかるけど。具体的に何のための儀式かまでは、わからないな」 

「そこまでわかれば、十分わかるでしょー」

「わしにもさっぱり、わからんよ。いったい、何の儀式をしてるって言うんだい」

 

 クレマンティーヌは気まずげに、がしがしと頭をかく。

 

「まず、あれは儀式じゃない」

「儀式じゃなけりゃ何なのさ」

 

 察しろよと口の中で毒づきながら。

 彼女としては最大限愛想よく、説明する。

 

「……えーと、ドラゴンって人間の言い回しとかわかる? 混乱する? 止めた方がいい?」

「わしの経験から言えば、率直に言った方が間違いがないのう」

「酷いことを言うね。私だって、ここ百年でかなり、人間の本を読んだのに」

「え、えーと。あの二人は恋人同士でねー。だからさ、恋人がすることを今してるわけ」

「女神と女神じゃなかったのかい」

「最近は女同士の恋愛の本も多いよ」

 

 多いのかよ、と内心のツッコミを抑えるクレマンティーヌ。

 

「ふぅむ。すると色に溺れておるというのかい? なんで三日も待つんだい?」

「あー、そうか。交尾か。女同士だからちょっと違うのかな?」

「あの二人はねー、飲食とか睡眠とかなくても大丈夫だからその……一回始めると終わんないんだよ……マジで」

「三日間?」

「そういう動物いるよね」

 

 そうか、そういう動物って思えばよかったのか……と、竜王の英知に感心するクレマンティーヌである。

 

「で、途中で割り込むと、めちゃくちゃ機嫌悪いしー。最低限三日は待たないと、どうなるかわかんないんだよー。これはホントにホントだから」

「あー、うん。それでずっと二人でくっついて、時々なんか痙攣してるんだ……」

「そこまでわかるなら、最初から察してほしかったなー……」

「真面目な話と思っておったのに……」

 

 ようやく状況を理解し、改めて呆れる二人。

 

「できたら今、私がそういうこと言ったってのも、当人の前じゃ知らないふりしてくれた方が、交渉するにもいいんじゃないかなーって」

「あー……まあ、チクったりはせんわい」

「うん、戦いにならなかったら大丈夫だよ」

 

 わー安心できなーい、と空を見上げ。

 損な役目を買って出た己を、悔やむのであった。

 

 

 

 

「じゃあ、最低でも三日は村にいさせてよ」

「わしもアンデッドと共存しとる村には、興味があるわい」

 

 戻って来た二人は、すんなりと謁見までの待機を認めた。

 リグリットは脱力し。

 ツアーはそういう生態なんだろうと納得したのだ。もっとも、城塞内への警戒は怠っていない。確かにさっきからそういう行為しかしていないが……途中で彼らも知らない、危険な儀式や行動をする可能性がある。二人が転移などすれば、一気に踏み込んでやるつもりだ。

 

「……わかりました。しかし、アンデッドも含め、村人に危害を加えたりしないでくださいよ!」

 

 そしてエンリは相変わらず、強気だった。

 




 当初はニグンと真面目な話させようと思ってましたが、どうあがいても衝突になるし、女神不在時に評議国と戦争開始ってわけにもいきません。女神がエルフ保護してきたの知ってますしね。
 エンリさんは狂信者なので、もっとお話しになりません。
 しかし、クレマンさんが勝手に動いてくれました。
 ありがとう! 作者も助かった!
 今のニグン&クレマンはある程度は相手の強さも読めるでしょし、ツアーが強キャラなの自覚してます。
 イビルアイとリグリットは、現メンバーでどうとでもなりますが。ツアーは三人+クロマル+ペイルライダーでも瞬殺できなければ、最中の女神がお怒り間違いなしです。そして勝手に他の国とコトを構えたとなると、あとでどんなお叱りを受けるかわかりません。
 最中に呼びに行ったら怒るクセに、なんで呼ばなかったって叱られるでしょう。ひどい。

 公式でも断片情報しかありませんが、10レベル差あれば勝てないとは言われていて。
 ツアーが100レベル級とすれば、クロマルしか対抗できません。それもクロマルは、アルベドの乗騎つまり支援役なのでバフ中心のタンクです。アルベドが乗ってれば、ツアーにも普通に勝てるでしょうが。エンリでは勝てません。
 ニグン、ペイルライダー、アイボールコープスも、100レベル相手では勝てません。
 ツアーはアンデッド特攻持ちっぽい話もあるので、クロマル以外全員消滅の可能性もあります。
 そして怒れるモモンガ&アルベドが現れて、これまで積み重ねた諸々が消滅したでしょう(汗)。
 ある意味二人旅に戻るとも言えますが!

 ともあれ、ツアーは三日間、二柱をしっかりドラゴン知覚力で観察します。エチ以外の危険なこともするかもしれませんからね!

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