アルベド二人旅   作:神谷涼

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 初心に戻ってみました。



36:えーマジ童貞!? キモーイ

 舌と指が疲れ、粘膜が軽く痺れ始める頃。

 淫魔の肉体が持つ基本スキル〈再生能力・弱〉で回復するまでの、わずかな間。

 二人はぴったりと肌を寄せ合い、吐息を絡め合うようなピロートークを楽しむ。

 

「はぁ……やっぱりアルベドは最高だな♡」

「モモンガ様にそう言っていただける以上の喜びはありません♡」

「私はお前と触れ合っている以上の喜びはないぞ♡」

「まあ、ずるい……でも、モモンガ様だって、触れているよりこちらの方が……♡」

「あっ♡ こ、これだって、触れ合いだろうっ♡」

「ええ、触れ合いですっ♡」

「はは、淫魔の体は本当に際限がないな……きっと、魂も淫魔のお前なら、なおさらだろうな♡」

「はいっ! モモンガ様が欲しくて欲しくてたまりませんっ♡」

「では……お願いだ、好きなだけ貪って、お前が満足するまで私を……んんんっ♡♡♡」

 

 まあ、次の行為への息継ぎ程度の、ほんの短い会話なのだが。

 こうして、女神が城塞の中で延々といちゃつく――というには過激な行為に及び続ける。

 朝日が昇っても、二人の行為はまったく終わらない。

 寝食不要の体なのだから。

 

 

 

 一応警戒して一晩中、聴覚も鋭敏にしていたツアーは、ものすごく無駄なエネルギーを使った気がしていた。

 女神とやらは、ツアーに気づいた様子すらなく、ひたすらお互いを褒め合い、求め合う会話しかしない。

 あとはひたすら、喘ぎ声。

 お互いの名前をやたら連呼する。

 悪そうに計画を語ったり、不安を口にしたりもしない。

 本当にひたすら、してるだけである。

 

「……随分仲がいいんだね」

 

 ツアーはぽつりと呟いた。

 

「まったくじゃ。人間とアンデッドがこのように共存しておるとはのう」

「しかしあれは、ここの人間を容易に皆殺しにできる戦力だぞ。どうして気を許しているのだ」

 

 違う、そうじゃないと内心で思いつつも。

 二人にわざわざ教えはしない。

 ツアーは年長者なのだ。話題を二人に合わせる。

 

「そうだね。これほどの高位アンデッドがひしめく場所は珍しいよ。それに、人を襲う気配もない」

 

 カルネ村で一泊した三人は、朝日と共に動き出した村の様子を眺めていたのだ。

 イビルアイは以前にも言われたように、仮面を外している。

 おかげで表情の変化が露になり、年相応にしか見えない。

 

「さすがのおぬしも、珍しく疲れた様子じゃのう」

「無理もない。強力なアンデッドどもに囲まれていたのだからな」

 

 二人が、気遣ってくれる。

 ありがたいが、見当違いな気遣いである。

 

「それにしても、朝に見ると本当にアンデッドだらけじゃな」

「家や人の数も前より増えているな。森妖精(エルフ)もいるぞ」

「亜人種を受け入れてるし、評議国として褒めるべきなのかなあ」

 

 ちょうど村の裏門が開き、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が多数の骸骨の戦士(スケルトン・ウォリアー)を率いて来る。それらは丸太を抱えており、村に運び込んでは、ログハウスを組み立てていく。

 

「へぇ、アンデッドが家を建てるのかい」

「そーだよー。王国貴族の子女や使用人、犠牲者が、ぞーろぞろ来るからねー。住むトコ作ったげないとー。ひ弱な人間には任せられないよー」

 

 三人の背後にいた、クレマンティーヌが口を挟む。

 エンリとニグンは村で相当の仕事があり、忙しい。現状では暇で、最初に交渉もしたクレマンティーヌが、そのまま竜王たちの世話役兼監視役にされてしまった。

 

「ところで王国には森妖精(エルフ)の奴隷までいたのか?」

 

 対八本指で活動していたイビルアイとしては、なぜか増えているエルフが気になる。

 

「んーにゃ、あの子らは昨日帝国で拾って来たんだー」

 

 クレマンティーヌとしても、面倒そうな説明は先に済ませておきたい。

 モモンガたちに細かく聞かれる方が面倒だし。

 正直に答えて問題ある行動でもない。帝都に行けばすぐわかる事実なのだ。

 

「昨日? すると、彼女たちは昨日は帝国にいたのかい?」

「そだよー。一昨日、帝国の隠密部隊だかを捕まえてさー。皇帝ちゃんが女神について知りたがってるって言うんだよねー。あ、拷問も尋問もしてないよー? 元から皇帝ちゃんから、捕まったらあっさり言えって命令受けてたみたいだからさー」

「なるほど、この村は王国と帝国の境界だからな」

 

 立地を考えれば、ごく普通の対応である。

 特に王都の事件を知れば、放置はしておけまい。

 

「それで、エンリちゃんが昨日の朝にお伺い立てたら、モモンガちゃんがさー。隠密部隊は解放して、帝都へ皇帝ちゃんに会いに行こーって言いだしたんだー」

「女神というのに、行動が早いのう」

「ラナーを呼び出した時も、決めたらすぐだったな……」

 

 そうしてクレマンティーヌは、帝都での女神たちについて、特に隠しもせず説明するのだった。

 

 

 

 三人は、帝都でスカウトされたというワーカーたちに話を聞く。

 

「あれは本当に、女神としか言いようのない振る舞いだったぜ」

「最初は亜人と思ったけど、本当に規格外だったわね」

 

 戦士と半森妖精(ハーフエルフ)のレンジャーは、随分と仲睦まじく。女神に心酔しているように見える。

 精神魔法をかけられた様子はない。

 

「規格外すぎて死ぬかと思った」

 

 魔法詠唱者(マジックキャスター)の少女は、げっそりとしている。

 とはいえ、女神への反感があるわけでもなさそうだ。

 

「アンデッドの神……いえ、死の女神でしたか。そうでなければ私もすぐ改宗したでしょうね」

 

 神官は周囲で働く無数のアンデッドに居心地悪そうにしつつも、女神については認めているらしい。

 おおよそ、彼らから聞いても、クレマンティーヌの説明に齟齬はなかった。

 

「待つ間、帝都で好きに聞きこんで来ても――なんて言われたけど。それには及ばなさそうだね」

「振る舞いだけなら、まるで六大神じゃないかい?」

「まあ、王国でも死んだのは前の王と、最悪の貴族らだけだからな……」

 

 村の中、様々に聞いて回っても。

 およそ女神への悪評はない。

 

 村人らは少し狂信的すぎるようにも思えるが。女神が多大な恩を与えるのみで、何も求めてこないのだ。粗末な食事で感激してくれてもいる。

 そんな女神に対し、彼らは信仰しか捧げるものがないのだ。

 何より、ツアーたちは村人に相当数の、信仰系第1位階呪文の使い手がいることに驚いた。たとえ第一位階でも、魔法の使える神官は貴重である。数十人規模でいていいものではない。

 信仰心の結果だとすれば、重大な影響とも言えるだろう。

 

 後から村に来たという貴族関係者は、クレマンティーヌに酷く怯えていた。もっとも、彼らの親が惨殺された経緯を聞けば、ごく当然の反応だろう。子供らまで殺していない点をむしろ、ツアーは甘いと思うくらいだ。

 

 日暮れまでアンデッドと人間が共同で仕事し。

 アンデッドは夜通し活動を続ける。

 夕陽の中、人間たちはアンデッドに、労いや感謝の言葉すらかけていた。

 異常だが、平和な光景。

 

「うーん。アンデッドがこれだけいるせいか、昨日来たばかりの森妖精(エルフ)に誰も隔意を持っていないね。村の外から来たと一括りに扱われてるし、排斥されるわけでもない」

「というか、レンジャーと森祭司(ドルイド)神官(クレリック)だからと、随分頼られていたが」

「フォーサイトというのもそうじゃが、漆黒の剣というのも、随分な女神信徒になっておったな。精神魔法の痕跡はまったく見かけられんのじゃろう?」

「ないね。リーダーも言ってた“すてーたす異常”ってのは、ぜんぜんないよ。むしろ元奴隷の子たちのそれを、信仰魔法を使える人たちが頑張って治そうとしてる様子じゃないか」

「むぅ。認めたくないが、あれだけ派手な騒ぎは起こしたが、大義に則って動いているのか?」

「正義や大義があればいいってものじゃないけどね。それにしても、以前に旅をした時は、鎧を盗もうとした輩もいたのに……誰も私の甲冑姿なんて気にしないね。確かに、あの死の騎士(デス・ナイト)に比べれば普通なんだろうけど」

「そうじゃのう。そういう意味では、他の亜人種や異形種でも、容易に馴染めそうに思えるわい」

「私が吸血鬼だともバレているしな」

 

 諦めたような安堵したような顔で、イビルアイが犬歯を見せて笑った。

 リグリットが軽く頭を撫でてやる。

 

「子ども扱いするな!」

「どう見ても子供じゃろ!」

 

 二人は村への警戒もゆるんでいた。

 だが、ツアーは警戒は続ける。

 よかれと思って世界を侵害する輩ほど、やっかいなものはない。

 まあ、当の女神らは日中もひたすら、同じことをしていたが……。

 

(どんな種族か知らないけど、“インマ”ってのはずっと交尾してるんだなぁ。八欲王もそっち方面に貪欲だったけど、あの二人は心配になるくらい延々と続けてるし……)

 

 ドラゴンの超感覚は熱感知、空気振動感知、そして魔法的な精神感応を併用したものだ。

 溜息混じりに、女神の会話(ピロートーク)から得た数少ない情報を。

 何とか己の記憶から掘り起こさんと、試してみるのだった。

 

 

 

 

 そしてすっかり日は暮れ。

 村人らは夕食を終える。

 夜が来る。

 

「んっ♡ んんっ♡ アルベドっ♡ 好きっ♡ 好きぃっ♡」

「んじゅっ♡ んじゅるるるっ♡ モモンガ様ぁっ♡」

 

 女神には、まるで変化がない。

 いや、細かい変化は無数にしているのだが、実質同じだ。

 これで細かい変化や波長がなければ、影武者や幻影かと疑いたくなるほどである。むしろ、そうならよかったのにと、ツアーはまた溜息をついた。

 

(はぁ……会ったとして、女神って本当にちゃんと会話できるのかな。ものすごく語彙力低そう)

 

 呆れつつ。

 ふと、この村には他の二人に危険なアンデッドも多数いたなと思い出す。

 女神へ集中させていた感覚を切り。

 村全体を改めて細かく、探った。

 昨夜村に来た時、今日の朝と日中、それなりに調べてはいるが。

 どうせしばらくは待つしかない。

 アンデッドの作業音が柵の外でしているが……村の中はもう眠り始めているだろう。

 念のための確認として、村を精査し始める。

 

 これは大きなターニングポイントだったかもしれない。

 ツアーは、決定的な異常に気づいてしまった。

 最初は振動音。

 それが、ぎしぎしと寝台が壊れそうなほど軋む音とわかると同時に。

 ドラゴンの超感覚が、無数の声を探り当てていく。

 

「エンリっ、そ、そんな激しすぎるよぉっ♡」

「っんっ♡ まだ回復魔法使えるからっ♡ もう一回っ♡ もう一回、ねっ♡」

 

 ここでも。

 

「あ、あなたっ、そんなに毎晩したらネムの妹か弟がっ♡」

「大丈夫だっ、今年は税もないっ、もう一人くらい……っ!」

 

 ここでも。

 

「イミーナっ! きょ、今日はいいだろっ!?」 

「バカっ、きょ、今日は危ないのにぃっ♡」

 

 ここでも。

 

「嫌……痛いの嫌、です……助けて……」

「姉さん、大丈夫……わたしがいるから。痛いコトなんてしないから……」

 

 ここでも。

 

「毎晩わりぃな、エドストレーム」

「はぁ、なんであたしが……っ♡ んぶっ!」

「いやだって、村の女に手出すの恐いんすよ……」

「ぶはっ、だからって毎晩四人相手とかっ! んぐぅ!」

 

 ここでも。

 

「昨日……あいつに胸掴まれてたけど大丈夫?」

「ん。痛いかも……っ♡ やさしくっ、ね♡」

「耳も……痛そう♡」

 

 ここでも。

 

「なあ、モルガーからも頼まれたんだ。俺たち、幼馴染だったろ」

「そうだけど……あの人が今も働いてるのに……ぃっ♡」

 

 ここでも。

 その他、村人夫婦やら貴族子女やら元使用人やら元奴隷やら娼婦やら。

 兄弟姉妹でしているらしいのやら、一人で処理しているのやら。

 信仰系魔法を使える者は、回復魔法もフルに活用しているらしい。

 

「MUUUUGEEEENNNN!!!!」

「アーーーッ! クロマル殿! そっちは違う穴でござる!」

 

 柵の向こうでも……あの魔獣か。

 

「クレマンティーヌさん! 惚れてます! どうか一夜の思い出を!」

「まーた、お前かー。おねーさん仕事中なんだけどー?」

「そこを何とか!」

「仕事中だって言ってるだろが」

「そこをなんとか! お願いします!」

「はぁぁぁ……おら、このまま踏むだけ踏んでやるから、粗末なモノ出しな」

「ありがとうございます!」

 

 寝泊まりしてる家の前でも。

 

(……人間ってこんなに発情する生き物だったかなぁ)

 

 ツアーは首をかしげる。

 

(いや、リーダーと旅してる間はそんなことなかったよね。あの女神の影響なのかなぁ)

 

 リグリットやイビルアイ――キーノに影響はない。

 表で、ルクルットとかいう雄の相手をしているクレマンティーヌも、至極冷静かつ投げやりだ。

 

(意識的にやってるとは思えないけど……あのワーカーやエルフは昨日来たばかりだったよね。この辺りは聞いた方がいいのかなぁ……)

 

 どうにも勝手の違う異常性ばかり見せて来る女神に、深々と溜息をつく竜王であった。

 

 

 

 ユグドラシルのフレーバーテキスト曰く。

 

『淫魔が盛んに活動する時、周辺一帯に淫らな影響が与えられる。淫魔が強大かつ、活動が盛んであるほど、発生する影響力も強い。精神耐性のない者は異様な劣情に駆り立てられるだろう』

 

 活動とはもちろん、淫魔としてのアレである。

 データ上では何の意味もないため、モモンガも覚えていない。アルベドは知っているが、教えて行為を控えられても困るため、聞かれるまで教えるつもりはない。

 




 久しぶりにエロ回。
 深い海に潜って、ようやく息継ぎした気分。
 ジルがオギャったトコとか好きだけど、この話の本分はあくまでこっちなんで……。
 既にエロゲ村と化していたカルネ村!


 あれこれやってるメンバーがわかりにくいので、順番に。

・ンフィーとエンリ:村内で一番激しい、騎乗スキル活用、回復魔法も使用、ポーションも使用、ンフィーはリインフォースアーマー(粘膜)もたぶん使用、ベッドは近く壊れる

・エンリの両親:ネムがすぐ傍で寝てます、寝てる?

・ヘッケランとイミーナ:ごく普通

・ニニャとツアレ:メンタルケアックス

・六腕:村人怖いから身内で集まってる、デイバーノックさんはいません

・エルフ奴隷トリオ:傷舐め合いックス

・モブ村人とモルダーさんの嫁:モルダーさんアンデッドになっちゃったからね……親友に嫁をね……

・クロマルと森の賢王:まだハムスケという名は与えられていない、エンリや村人は存在も関係も知ってる

・クレマンさんとルクルット:村人は人間関係固まってるし、元奴隷に手出すのはルクルット的にアウトなので

 クレマンさんは土下座してお願いしたらやらせてくれる率トップ(カルネ村)。確認したのは恐れを知らずに挑んだルクルットだけです。

 名前の出てない男性陣も、たいていは元奴隷や娼婦や貴族らと関係持ったりしてます。


 サキュバスのフレーバー効果は、D&D5版の一部モンスターが持ってる「環境に及ぼす効果」から。
 ステータス異常ほどのものはなく、人間の認識としてはちょっとむらむらする程度です。
 でも、女神がいたしてる最中はめちゃ強くなる。
 何日も暮らしてると、どんどん募っていきます。
 セルフサービス()をこまめにしないと、流されやすくなります。
 エンリとンフィーは実際、すぐ流されました。
 来たばかりのアルシェやロバーは、ちょっともやっとしてる程度でもう寝てます。
 ヘッケランとイミーナはもともとカップルなので、そういうムードになるとあっさり……。
 エルフたちはエルヤー忘れたいので、同性同種族の関係で慰め合ってます。
 女神が人前でも(当人らとしては抑えてるけど)いちゃつくので、カルネ村は同性愛を普通に受け入れます。
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