アルベド二人旅   作:神谷涼

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 わかりづらいですが、本作モモンガは白ドレスのアルベドの肉体です。
 アルベドは全身甲冑で、兜で顔を隠してます。
 仲間に戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)のクロマルがいます。



4:やってくれた喃

 ほどなく効果時間が切れて姿を消した集眼の屍(アイボール・コープス)を追加で呼び出し、村の周辺警戒を任せる。

 

(しまった……さっきの死体から一体はこれを作っておくべきだったな)

 

 景気よく魔法強化スキルを使い過ぎたと、〈上級アンデッド作成〉スキルを温存したゆえのミスであった。

 この世界では、死体から作れば永続化できるのだ。

 死体を補充できないかな、とチラッと周りを見るが。

 

 村人たちはまだ、モモンガたちを拝んでいる。

 名前を名乗れば女神モモンガと呼ばれ……皆がぶつぶつと「モモンガ様」と呟いている。

 

(さすがに彼らを死体にするのはまずいな……)

 

 女神と呼ばれるに至った状況について、考える。

 モモンガとしては、原始人にライターを見せて崇められ始めた気分だ。

 

「女神か……やはり美人は違うな」

「そんな、美人だなんて……」

「骸骨の私では魔王がせいぜいだ。お前のおかげだぞ」

「くふーっ♡ ありがとうございます!」

 

 兜で顔を隠したアルベドが、身をよじる。

 モモンガは己が得たアルベドの肉体をとことん褒めるし、時には欲情がじわりとアルベドにも伝わってくる。

 

(ぐへへ、たまんねぇなぁ、おい)

 

 思わず、アルベドが下卑た欲望を濁流の如く垂れ流す。

 この欲望の相共鳴による高まりが、二人を三日以上も草原に留めたのだ。

 アルベドとしては下等生物(人間)どもの目など気にせず、モモンガと愛し合いたい。

 のだが!

 

(くっ、意識するとまたアルベドに欲情してしまう……!)

 

 あいにくと、モモンガは人目を気にしていた。

 理性で抑え。

 冷静に情報収集に努める。

 

「……村の代表は無事か?」

「は、女神モモンガ様、私めが村長でございます」

 

 一人の老人が進みでる。

 

「私は下界について、詳しくない。このような襲撃は多いのか?」

「いえ、村が始まって以来初めてでございます」

 

「村を守る兵はいないのか?」

「このような開拓村を守る兵など……」

 

 そうして、この世界――いや、彼らの知識の範囲で世界について聞く。

 過酷な労働、法外な税金、皆無な教育、非道な兵役、論外の搾取。

 ろくに保護義務を果たさない貴族の存在に、モモンガは呆れた。

 リアルより酷い。

 底辺社畜のモモンガとて、ゲームをする程度の余裕はあったし。

 最低限でも、セキュリティと福祉の恩恵を受けていた。

 

 しかも、貴族は先の兵士程度のザコしか、暴力手段を持たず。

 当人は戦闘力を持たないというではないか。

 見せられた貨幣も、汚く質が悪い。

 

 ついでに、捕虜に〈支配(ドミネイト)〉をかけて聞き出した情報も、大差はなく。この村の属するリ・エスティーゼ王国は、大陸でもっとも腐敗した掃き溜めの如き国と言う、酷い評価であった。

 

「アルベドよ。この国の統治と状況をどう考える」

「実に稚拙で愚昧な、私の知る中でも、この上なく無価値なシステムかと。手に入れる価値すら感じられません」

 

 深々と、モモンガが頷いた。

 

「労働には対価を与えねばならん。保護すらなく、この様では彼らは奪われるのみだ。労働意欲も高まるまい。ただ生きるためだけに働いておるに過ぎん。当人らの言葉のみを鵜呑みにはできんが……さしたるモンスターも見かけんこの世界。貴族とやらには、あまり好感が持てんな」

「私としてはこの、矮小な者たちもあまり好意は持てませんが……」

 

 苛立ちを込めたアルベドの言葉に、ぴくりとモモンガの眉が上がる。

 

「おい、アルベド。彼らは私たちを感謝し、崇めているのだ。そのように……ん? ああ……そういえば、お前はそんな風に作られていたのだな」

 

 たしなめるように言いかけるが。

 流し読みした際、チラリと見えたタブラ・スマラグディナ作の設定の一部を思い出す。

 そして彼女が、人である以前にNPCだったのだとも。

 モモンガは、アルベドの兜をいたわるように撫でた。

 

「は? タブラのクソが? じゃあ、モモンガ様のおっしゃる方が正しいですね」

「え、えええー」

 

 態度がガラリと変わり、モモンガはずっこけかけた。

 NPCとは何だったのか。

 己が作ったパンドラズ・アクターも、ダサい設定を内心すごく嫌がっていたのかも……と、少しナイーブになるモモンガ。

 

「あまり私に盲従して欲しくないぞ……私だってミスはする。ミスで、アルベドを失ったりしたら……私は、一人になってしまうではないか。思う所があらば、きちんと進言してくれ」

 

 潤んだ目で、愛する人にそう言われ、NPCが身を火照らせずいられようか。

 しかも、結合した精神から、主の不安と孤独が、すがりつくように流れ込んでくる。至高の御方が不安にさいなまれ、アルベドを心から頼ってくれているのだ。

 また、ナザリック最高の美女を自認するアルベドは、相応にナルシストでもあった。己の体と絡み合う嫌悪感など皆無……いや、むしろモモンガが己の体を褒め、欲情してくれるごと、好感度は上限突破で上昇しっぱなしである。

 

(くっふおぉぉおほーーーーッ! こ、これはアレっしょ!? 今すぐヤりたいですって言ったら、恥ずかしそうにこくんって頷いてくれるシチュっしょ!? やっべ! マジやっべ! 下等生物が周りに何匹いよーと関係ねーし! はぁはぁ、モモンガ様はヤリすぎとか言ってましたけど、まだまだ私は消化不良なんですぅー! 物足りないんですぅー! 良妻として、元が私の体でも、モモンガ様にありとあらゆる快楽を味わっていただくため、一切の労苦をいといませんし! というか、進んで開発させていただきますし! ぐへへ、うへへ、いぃぃひぃぃひ♡ それじゃあ、いただきま――)

 

 アルベドは業火と呼ぶも生やさしい、欲情を超えた情炎をモモンガの精神に伝え。

 飛び掛からんとした、まさにその時。

 

「んんん? ――なッ!」

 

 その熱量に、モモンガがうろたえ――そして同時に。

 真剣な顔で目を見開いた。

 

「いいいいいかがいたしました、モモンガ様っ!」

 

 息も荒く、欲情しすぎて捕食顔になっているアルベドだが。

 兜のおかげで、モモンガにも村人にも見られていない。

 

「さすがだな、アルベド! 集眼の屍(アイボール・コープス)より早く、接近する気配に気づくとは!」

「――は? はぁ」

 

 思わぬ言葉に、アルベドは虚を突かれ、とりあえず頷く。

 村人らは、神々の言葉にうろたえた。

 新たな襲撃者が現れたというのだ。

 まさか本隊がいたのでは……とも疑う。

 

「同じ肉体を得ても戦闘感覚は大きく違うか……私も鍛錬せねばな。思えばさっきの連中は、私の魔法で全て倒してしまった。戦士として力を振るえなんだお前が、不満を抱くのはもっともだ」

「アッハイ」

 

 主が何を言っているかわからないが、シモベとして反論は許されない。

 

「それにしても、敵らしき気配を感じただけで、そんな火傷しそうな戦意を燃え上がらせるとは。戦士として血がたぎるのだな。相手の出方次第だが、敵ならば……お前の刃を存分に振るうがよい」

「ハイ……アリガタキシアワセ」

 

 コキュートスのような口調になったアルベドに、モモンガは満足そうに頷いた。

 これがアルベドの戦闘モードか、と感慨を込めて。

 

(違う! 違うんですモモンガ様! 振るいたいのは指と舌と腰なんです! 私に振るってくれるのも歓迎です! わかってください!)

 

 思いよ伝われ、とばかりに念じるが。

 

「ははは、そう昂ぶるな。私まで戦いたくなってしまうではないか。お前の見せ場を奪わせないでくれ」

「ふしゅるるるるる」

(私のご褒美を奪わないでください!)

 

 いろいろ熱くなりすぎて、変な鼻息を出すアルベド。

 

 噛み合わない二人だが。

 村人たちは、頼もしい言葉に安堵し。

 なお一層強く、この神々へと祈りを捧げる。

 

「さて、接近してくる戦士職集団に、森近くに潜む魔法職集団――どちらが敵か、どちらも敵か」

 

 気に入ったのか、女神ロールプレイのまま。

 モモンガは呟き。

 四体の死者の大魔法使い(エルダーリッチ)たちに命令する。

 

「お前たちは骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)を指揮しつつ村を守れ。伏兵や遊撃部隊がいるかもしれん」

「承知いたしました、偉大なる主よ!」

「御身より授かった力、怨敵を討つべく……!」

 

 アンデッドたちが瞬時に部隊となり、村の四方を守る。

 

「村長よ、この死の騎士(デス・ナイト)を、お前たちの守りにつける。村人を避難させよ」

「おお……再び我らを守ってくださるのですか、偉大なる女神モモンガ様!」

 

 感動と共に村長が……そして、残る村人も頭を地にすりつける。

 

「よい。お前たちは我が加護を受けた。私はお前たちを全力で守ろう」

「ああ! なんと……!」

 

 傾き始めた太陽。

 夕陽の中で微笑むモモンガに、村人たちは失神せんばかりである。

 そして、一方で。

 

「………………」

(クソが、クソがッ! クソがああああああああああああああああああッ!! こともっ! こともあろうに、モモンガ様をいただくベストタイミングをッ……不安と孤独を、このアルベドで癒していただく最高の時をォォ……はかった喃……はかってくれた喃……ぜったいにゆるさんぞ虫ケラども!!!! じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!!)

 

 ギリギリ、めきめき、バキバキとと異様な音を立て、目から赤い光を放つアルベド。

 世界を滅ぼさんばかりの殺意の波動が噴き出し。

 紫色のおぞましいオーラを残しつつ、神獣クロマルの背に跨る。

 神獣の体がみしみしと軋み、クロマルが苦痛の呻きと共に、屈服するように頭を下げた。

 アルベドの太腿が、その屈強な胴を挟み潰さんとしていたのだ。

 並みの馬なら一瞬で挟み潰され、両断されていただろう。

 

 そんな破壊神とも呼ぶべきアルベドの姿に、村人たちは恐怖と――絶対の敬服を感じていた。

 

(なんて強そうでかっこいいんだ……俺もできるようにならなきゃ)

 

 そしてモモンガも、厨二的な意味で畏敬を感じていた。

 

 

 

 粉塵を巻き上げ、騎馬集団が駆けて来る。

 不揃いな装備だが、油断はできまい。

 油断はできまいが……アルベドがいれば、どうとでもなる。

 モモンガはそんな、確かな信頼を感じるのだった。

 

(殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺……!)

 

 アルベドの怒りは、半ば風ともなり渦巻いている!

 

(ううむ、ブラックガードか暗黒騎士(ダークナイト)のスキルだろうか。すごいな……)

 

 もはや接近する連中に見る価値はなしと。

 頼もし気にアルベドを見つめるモモンガであった。

 





 果たしてガゼフの運命やいかに!

 村人には(主のペット扱いで)やさしく接せられるアルベドさんですが、性衝動を邪魔する者には容赦しません。

 あと、自身にビッチ設定つけられたこと怒ってますってアピールしたおかげで、タブラさんについて、モモンガさんと素で会話できます。
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