ある程度溜まったなーと、つなげていったら。
えらく長くなってしまいました。
きりがいいところもないので、一括で。
レイナースがアンデッドと化して一週間が過ぎた。
トブの大森林では。
今、一人の
「うぐ……うう……お、俺、立ち直れないですよ、クレマンティーヌさん……」
「おー、よしよし」
ルクルット、本気の涙であった。
そんな彼の頭を、クレマンティーヌが撫でる。
どうでもよさそうな態度だが。
彼女をよく知る者なら、殺しもせず宥める姿に驚愕しただろう。
その筆頭となる人物は……既に生きていまい。
「その……元気だしましょうよ、ルクルット。ンフィーレアさんに比べたらマシですよ」
横で見ていたニニャも、珍しく同情の声をかける。
「あ、あんな人外勇者といっしょにすんなぁ!」
「あはは! そりゃンフィーちゃんはすごいもんねー」
「そうでしょうか……あの人もかなり嫌がってましたが」
エンリと結婚したせいで、ンフィーレアは精神性においてセカイ系主人公の如き存在と考えられていた。
実際、彼は今回も危険な前線の方に向かっている。
後詰で、裏方として活動した漆黒の剣とは、ステージが違うのだ。
……彼が望んだ在り方かどうかは、さておいて。
「とりあえず、茂みに隠しましたよ」
「ご老人には申し訳ないが、今回ばかりは仕方ないのである」
ペテルとダインが、茂みから出てくる。
女神が見てはあまりに見苦しいと、“それ”はアンデッド化して活用もされなかったのだ。
「うっ、うっ、お前らはそりゃいろいろ終わった後だから抵抗も少ないだろうけどよぉ」
ルクルットは涙声である。
「まー、私も今回はちょーっと残念な役回りになっちゃったしねー」
肩をすくめながら、まだ撫でている。
なんだかんだで、彼女は面倒見がいいのだ。
「先輩も、お疲れ様でした」
「いやー? 単に、あのクソ兄貴は、私の手で殺したかったなーってだけー」
泣いている男を気遣ったのか。
クレマンティーヌは、同じ笑みをよく浮かべるニニャにだけ。
その復讐者の顔を見せた。
「「……」」
ニニャのフォローで慣れたペテルとダインは、木石と化してやり過ごす。
こういう時、余計なことを言ってはいけないのだ。
と。
かすかな地響き。
ずずず……と巨大な何かが動く音がする。
「おお……凄まじいのである」
「あんなのと戦っても勝算十分だったなんて……女神様は本当にすごいですね」
森から突き出す巨大な影に、ペテルとダインは溜息をついた。
嫉妬する気にもならない。
影はゆっくりと、カルネ村に向けて移動している。
「よーし、うまくいったみたいだし。戻ろっかー。婆さんは蘇生できないよう壊したけど……ちゃんと、埋めてきたんだよねー?」
クレマンティーヌが一度
「ドルイドの魔法を使ったのである」
「深い上に、通常の地面に戻ってますから。普通の調査方法じゃ見つからないはずですよ」
二人が頷いた。
「おーけー、おーけー♪ カイレの婆さんを潰せたのはホントに僥倖だよー。あれも手に入ったしねー♪」
森の木々を薙ぎ倒しながら進む巨大なそれは、生物とはとても思えない。
「
「まー、これで法国のちょっかいも気にしなくてよくなるねー♪」
「ちょっ、クレマンティーヌさん」
まだぐずっているルクルットを、クレマンティーヌが引き寄せ、抱きかかえた。
お姫様だっこである。
「いや、さすがに男として恥ずかしいって!」
暴れるルクルットだが、彼女の腕力に敵うはずもない。
「さんざん、恥さらしなプレイしといて今更言うかー?」
「ちょ、クレマンティーヌさん、それは!」
少し、ルクルットの調子が戻る。
「まー、今日はあんたたちの中じゃ、お前が敢闘賞だしねー」
「そうそう。わたしなんて、あの服に〈
「私など死体を埋める穴を掘っただけである!」
「死体を運ぶしかしてないんだけど……」
「胸を張りなって。あんたがささーっと、婆さんの服を脱がしたから、あれを支配下に置けたんだよー?」
「うぐ……く、口に出して言わないでくださいよ……ああああ、思い出したくねぇ~!」
ルクルットが顔をしかめつつ、頭をかきむしった。
久しぶりに、漆黒の剣の面々に、爽やかな笑いが起きる。
クレマンティーヌも、そんな輪に自然と交ざっていた。
今回、このチームの動きは。
老婆――カイレによる
別動隊が分断し、そのままクレマンティーヌは戦線離脱。
後ろに控えていたエンリ、ンフィーレア、漆黒の剣と合流する。
ルクルットが、その衣装――全てを精神支配できる
老婆がいろいろと漏らしていたため、ニニャが魔法で清め。
ンフィーレアが装備し、
確認後に、クレマンティーヌがカイレを蘇生不可能な形で始末。
ペテルとダインが、死体も隠した。
エンリとンフィーレアは、報告と確認のため
森の中で、散発的に聞こえていた戦闘音は既にない。
漆黒聖典は既に始末されたのだろう。
「さーて、それじゃ凱旋しよっか♪ みーんなに、ルクルットくんの脱がせっぷりを教えてやらないとねー♪」
「やめてくだ――ひぃぃぃ!?」
言いかけて、ルクルットの声は悲鳴に変わった。
クレマンティーヌが村に向けて、疾風走破し始めたのだ。
そんな姿も、残された三人は笑って見送り。
彼らは自身のペースで、カルネ村へと戻り始める。
その足取りは軽い。
今回の作戦のため、大量のアンデッドが森に放たれているのだ。
森の賢王も味方である。
道中でモンスターに襲われる心配などほぼない。
ニグンやアルシェ、レイナースから連絡がない以上、問題なく進んだのだ。
全てがまるで夢。
まるで華々しい神話の世界にまぎれこんだようで。
たとえ限られた働きであろうとも、その一助となれた誇りが、三人の胸に宿っていた。
この世で誰より愛する人にぴったりと密着し。
誰もが恐れる魔獣の背に(エンリの後ろだが)乗っている。
いつもなら、少なからず誇らしい顔になっていただろう。
だが、今は違う。
チャイナドレスを着ているし。
衣装の都合上、横座り……女の子座り。
深いスリットのせいで、少し風が吹けば見えてしまう。
というか実際、チラチラと見えている。
女性なら太腿の付け根の方で済むだろうが。
このひと月ばかりで急に酷使されたそれは、やたら黒くなっていた。
彼の体で最も鍛えられた場所と言えるかもしれない。
肌が白く、チャイナドレスが白いせいで、すごく目立つ。
恥ずかしい。
もう何度目になるだろうか。
ンフィーレアは、妻に問いかけざるをえない。
「ね、ねぇ、エンリ。そろそろ着替えちゃダメかなぁ」
「ダメだって、女神様も言ってたじゃない」
夜には頼んでいないことまでしてくる妻だが。
女神の意志は夫より優先されるらしい。
実際、老婆が下着をつけていなかったばかりに……他の服を着ていると失敗するかもと、ニニャたちの横で全裸に剥かれたのだ。妻は夫を剥くことに、手慣れてもいた。
老婆が脱がされる間、ンフィーレアもまた脱がされていたのだ。
ニニャが妙にチラチラと見ていたのが、印象に残っている。
「も、もうちょっとゆっくりにしようよ……風で、見えちゃうからさ」
「森の中で何気にしてるの? 別に誰も見てないよ?」
元から泉や川で水浴びする、田舎育ちのエンリにはわからない。
いつもスリットの深い法衣のまま、勇ましくクロマルに跨っているのだから。
ンフィーレアは今、支配した
何せ、女の子座りで乗っているのだ。
速度を上げられると、内股になってエンリにしがみつかねばならない。
夫として、男として、あまりに恥ずかしい。
「だ、だってこのままじゃ村に着いちゃうよ?」
村人にこのチャイナドレス姿を見られたくない。
男として当然である。
というか、見たこともない上質の生地でできたチャイナドレスが、ンフィーレアの股間をさらさら擦り刺激する。
変な性癖に目覚めそうで怖い。
実際、少し硬くなっている。
「このまま村に行くんだよ?」
何言ってるのといわんばかりに、エンリが残酷に断言した。
「嘘……だよね?」
ンフィーレアの顔色は、青を通り越して白くなる。
「もう! 女神様が言ってたでしょ。それを装備してないと、効果は続かないんだから! ンフィーが脱いだら、あれは止まらなくなって、村にぶつかっちゃうかもしれないんだよ?」
そう、エンリの言うことは正しい。
正しいが。
「ね、ねぇ、それじゃせめて下着だけでも」
「そういう実験は村に帰ってからって、女神様が言ってたじゃない」
実験じゃない。
夫のプライドの問題なのだ。
「じゃあ――」
「ほら、早く行こう! 最近、勘違いし始めてる元貴族もいるんだから! 女神様の力をしっかり見せつけないと!」
弱々しい夫の声は、妻の言葉に打ち消される。
問答無用とばかりにそのまま、クロマルがスピードを上げ始めた。
「ひゃああああ! ダメぇ! 見えちゃう! ていうか見えてるよぉ!」
「もう、自分のおちんちんでそんな大騒ぎしないでよ、ンフィー!」
都市育ちと農村育ちの、意識の違いであった。
今でこそトイレが設置されたが、かつてのカルネ村では用を足すところを見られる時だって、ままあるし。水浴びを覗いたの覗かれただので、騒ぐこともないのだ。
やがて少年の悲鳴は止まり。
(悪い夢だと信じたい……これは夢……きっと僕には秘められた女装願望とかあって、そのせいで……)
空ろな瞳で、ぶつぶつと呟くばかりになっていたが。
エンリは大仕事を終えた満足感で、まるで気づいていなかった。
森の中で油断なく監視を続けながら。
レイナースとニグンは互いを褒め合っていた。
「ニグン様、さすがでございました。指揮経験のろくにない身として、今回は勉強になりましたわ」
「いえ。おかげさまで、うまく物量作戦を行えました。上位アンデッドらのみの奇襲と勘違いしてくれたのは幸いでしたな」
女神が追加の
漆黒聖典が
おかげで、絶好の機会を狙い打てたのだ。
カイレが
そして、わずかに遅らせてクレマンティーヌによる、カイレの無力化と拉致。
さらに、ニグンとレイナースは〈
追加で可能な限りの中位アンデッドを召喚してぶつけ続け。
二人は一切、姿を見せないまま……大量のアンデッドで漆黒聖典を擦り潰したのだ。
「それにしても、まだ帝国で忙しかったでしょうに。今回は、私の我儘でお呼び立てして申し訳ない」
追加戦力として、レイナースを急遽呼び出したのはニグンだ。
「そんな、今回は私にとって重要なものを得ることができましたわ。やはり大規模戦術では、ニグン様の支援魔法の方が価値が高いですね。私の専門分野である妨害魔法では、姿を現さざるをえません」
「いやいや相手が対等かそれ以下なら、十分に有効ですぞ。自ら囮役として、敵陣を惑わすこともできましょう」
「帝国四騎士は、シンボルとしての強者でしたもの……実際に精鋭を率いていたニグン様の経験に、学ばせていただかねばなりませんわ」
「ははは。しかし、私では女神様の護衛はこなせませんな。レイナース殿の妨害魔法ならば、刺客や不埒者、女神様を不快にする輩を、いち早く無力化できましょうぞ」
「ありがとうございます。女神様の護衛となれるよう、私も努力いたしましょう」
二人の距離は近い。
互いに互いを褒め合う言葉が、自然と口から出る。
これは、二人の種族によるフレーバーテキストゆえであった。
上位アンデッドモンスター
今回の作戦においても、お互いが阿吽の呼吸で動ける。
なぜか相手の行動が察せられて。
長年のパートナーのように動けるのだ。
「はは。このようなアンデッドになって、神話の如き戦いをするとは……思ってもみませんでしたな」
「まったくですわね。これほどの力を得るなんて……そしてモモンガ様はこれ以上とは」
残った高位アンデッドたちが、漆黒聖典の装備を回収している。
そのアンデッド一体でも、帝国軍全軍を容易に滅ぼすだろう。
「この力が必要な敵が、この世にどれほど存在するか……疑問でもありますがな。それに今回のように、実際の戦闘をせずとも勝利は掴めましょうぞ」
「……そうですわね。それも、元々個人で動いていた私には、まだまだ難しいやり方ですけれど」
「何。学ぶ時間はいくらでもありましょう。我々はもはやアンデッドとなっておりますからな」
「ふふ、では帝国からこちらに戻りましたら……ニグン様が教えてくださいますか?」
「無論、私でよければ。元よりレイナース殿は名高き帝国四騎士。すぐに私に追いつけるでしょう。むしろ、追い抜かれぬよう精進せねば」
「あら、ニグン様が努力なされては、私など置いていかれてしまいますわ」
そっと、互いに手を重ねる。
恋ではない。
そんな熱い感情は、精神抑制された二人にはない。
どちらも、互いに互いの異性の好みからは外れている。
他を利用し、任務を優先する冷酷な指揮官。
誰も信じず、目的のため手段を選ばぬ騎士。
その本質も、正反対と言えよう。
だが、それでも。
ニグンとレイナースは、互いに傍にいたかった。
傍にいると、安心できるのだ。
相手の傍が、居場所のように思える。
ささくれた現実に生きて来た二人にとって。
まるで運命で約束されたような相方との、この時間は……本当に、夢のようで。
だから。
高位アンデッドらに、装備と遺体を回収して先行させ。
二人でゆっくりと。
互いに愛情を込めて語り合いながら、カルネ村に帰還するのだった。
((もうすぐずっと二人でいられるなんて……本当に、夢のよう……))
心の中でも、互いを想いながら。
フォーサイトの面々は、今回の経緯をただ眺めているだけだった。
すべてが終わった後も、しばらくはぼんやり眺めるばかり。
最初に口を開いたのは、意外にもアルシェ。
「……実際、女神様がいる時は、もう何も心配しなくていいと思う」
もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな宣言である。
「そうね。討ち漏らしが出たら……って聞いたけど」
「ミンチよりひでぇや。装備はしっかり残ってるから、あいつら相当すげぇ装備で固めてたんだろな」
「しかし、戦術的に有利だからと、あれほどのアンデッドを扱うのはやはり……」
漆黒聖典がいた場所を、しげしげと眺めながら三者三様に呟く。
イミーナは、実質何もしていない脱力感。
ヘッケランは、女神側にいるという安堵。
ロバーデイクは……まだまだ悩んでいた。
「けど、私たちがここに呼ばれた意味を考えておくべき」
アルシェが、冷静に言う。
さすがに女神の膨大な力も見慣れた。
妹たちが女神にじゃれつくのは……今でも怖いが。
「……実力を見せつけとくってこと?」
イミーナの言葉に、アルシェがこくりと頷く。
「まあ……俺たち、女神様の力とか知らないしな……」
「明らかに只者でないのは、よくわかりますけれどね」
ヘッケランとロバーデイクも頷く。
あの巨大な怪物により、森は広範囲にわたって荒れていた。
一面が枯れ木の森と化している。
特に湖のあった場所は酷い。
そも、今回の事態を最初に告げて来たのは、この湖に棲む
彼らの代表が、最初にクロマルと森の賢王に接触。
カルネ村へと案内されてきたのだ。
彼らの話では、湖のほとりに巨大な植物モンスターが現れ、森を枯らしているという話だったが。
「確かにあの、
実行したのはニグンとクレマンティーヌとンフィーレアだ。
それに、あれは戦力の増強ではあっても。
助けを求めた者たちへの救済ではない。
「これほどの破壊と災厄の後では……」
ロバーデイクが痛ましげに湖跡を見る。
水が完全に枯れて、枯れた水草と干物のようになった魚が底に積もっている。
干からびた湖の縁は半ばひび割れ。
その荒廃した臭いが、ここまで漂ってくる。
ほとりには、多数の
彼らは湿地に棲み、魚を食べる種族。
湖そのものがなくなった今、新天地を探し旅立つか……このまま滅ぶ他ない。
「……そうね。いくら力があってもこんなの、どうしようもないわ」
「女神様は死を司るって言ってたし、さすがにこりゃ専門外だろうな」
悲痛な面持ちで、荒れた光景を眺めるイミーナ。
ヘッケランが彼女の手を握り、諦めるよう諭す。
そんな時、湖跡の上。
空中に何かがふわりと飛来した。
「あれは……モモンガ様とアルベド様?」
二柱の女神が寄り添い合って、浮かんでいる。
二柱は、じっと湖の様子を見ていた。
その目も、フォーサイトと同じものを映し。
同じように思っているのだろうか。
「湖を救えなかったと、彼らに告げにきたのでしょうか」
ロバーデイクが、わずかな失望を感じつつ呟く。
と。
突如、女神の周囲を無数の魔法陣が球状に取り巻き、回転を始めた。
「え? 何あれ。アルシェ、魔法なの?」
「し、知らない……すごい魔力……っ、だ、第十位階より上……」
「えっ、俺たちここにいて大丈夫なのか?」
「し、しかし、退避するにも――」
戸惑い、ただ身構えるしかできない。
女神をとりまく魔法陣は力を高め。
内に輝きを孕み……もう女神の姿も見えない。
その魔法陣が限界まで魔力を高めた瞬間。
「「っ――!」」
世界そのものを変えるような、膨大な力が発され。
目の前の枯れた湖を侵食し。
荒廃した場所を……“作り変える”。
「……え?」
「うそ……」
ヘッケランとイミーナが、呟きを漏らす中。
アルシェとロバーデイクは、ありえぬ光景に言葉すら発せぬまま、へたり込んだ。
湖がある。
太陽の光に水面がきらめき。
魚が跳ねる。
干からびた岸辺すら、肥沃な泥に戻っている。
荒廃した臭いはない。
ただ爽やかな水と生命の匂いだけが、ある。
「夢でも見てるのか……それとも、さっきまでのは幻……か?」
ヘッケランの問いに、誰も答えられない。
幻だったなら、その方がわかりやすい。
だが、
彼らが故郷を見誤り、惑わされるとは思えない。
「あの村の周りの湖も、城塞も、モモンガ様が作ったって言ってた……本当に、何もないところに、創った?」
うわごとのようにアルシェが呟く。
だとしたら、それは本当に神の領域。
湖や城塞があるなんて聞いたことはなかったが。
女神が創ったとは信じていなかった。
きっと何らかの元からあったものを活用したと思っていたのだ
しかし、これは……。
そんな思いを察したかのように。
宙に浮かぶ女神が、荒廃した森の上空へと滑るように移動する。
再び魔法陣で包まれる女神。
(あの枯れ木の森には私だって入った……幻じゃないわ。樹は完全に朽ち枯れて、地面はひび割れ……)
再び、あの力が放たれる。
「あ……あ……」
「うそ……だろ……」
唖然としていた
「森が……」
森が、完全に元の……荒廃前の鬱蒼と茂る森に、戻っていた。
(神話……これは神話の領域……私は神話の世界に踏み入り、真の神と話をしたのですか……!)
ロバーデイクはいつの間にか、地に伏して。
一心に祈りを捧げていた。
己の神ではなく……自ら議論を交わしてくれた彼の女神へと。
「ふぅ。今日の〈
「お疲れ様でした、モモンガ様」
ぴったりと寄り添ったアルベドが、超位魔法を連続行使したモモンガをねぎらう。
「何、ニグンたちのおかげで、あのレイドボスと直接戦う必要もなくなったからな」
「あれを手に入れられたのは僥倖でしたね。
「まったくだな。ツアーに聞いたが、厳密には竜王でもないらしいし」
「一定以上の強さのモンスターは全て、竜王と呼ばれるのでしょうか」
世界を汚すの歪めるのと言われては困るので、事前にツアーに話は通している。
モモンガはすっかり忘れていたが、ニグンがそのあたりのやりとりもしてくれた。
漆黒聖典を始末することについても、むしろ歓迎されたそうだ。
一応最終的には、ツアーと直接の話もしている。
「しかし、お前と別行動の時を考えて、切ったままだった攻性防壁だが。どうやら随分と覗かれていたらしい」
「モモンガ様との時間を覗くなんて不埒な連中ですね」
正直、アルベドとしては露出プレイも大いに推奨なので、気にしてはいないが。
モモンガが気分を害しているなら、乗るべきである。
今回の漆黒聖典襲撃への反応を遅らすため、モモンガは破壊力優先で攻性防壁を発動させていた。
実際、これにより法国では巫女姫二人とその護衛らが爆死。
神殿自体もほぼ崩壊していた。
ついでに、日課のように女神を調べていた帝国の逸脱者も酷い状態になったが……高レベルな彼は、かろうじて行動不能ダメージに抑えられていたという。
「うむ。目下、お前とは離れるつもりもない。どうしてもという時は、私の中に……いや違うな。アルベドに、本来の体に戻ってもらうぞ。今回のような
「も、モモンガ様っ……」
(もももももモモンガ様っ♡)
(くふーっ! くっほぉ♡ んほおおおお♡)
(あ、やば、忠誠心が下からこぼれそう)
(ていうか膝まできてるし。足先から地面に糸引いたらばれるし)
感極まったアルベドが、ひしと抱き着きつつ。
少し不自然な内股になった。
「それにしても、レイドボスに
「そうです……ね」
こればかりは、ずっと色事にかまけたアルベドの責任でもある。
しゅんと、落ち込んでしまう。
「そんな顔をしないでくれ」
「はい……」
そんなアルベドを、主は優しく抱きしめてくれる。
「とりあえず、情報は重要だ。あの漆黒聖典とやらも適当なアンデッドにするとしよう」
「残念ですが、少し外に目を向ける必要もありそうですね」
今回も、ニグンとクレマンティーヌ、ツアーからの情報あらばこそだった。
モモンガとアルベドだけなら、
魔法で探った限り、相手は80レベル以上90レベル以下といったところ。
100レベル2人でも、時間はかかるが勝てる。
アルベドがクロマルに騎乗すれば、余裕だったろう。
だが、タイミングが悪ければ、その隙をついて漆黒聖典により……アルベドが精神支配されていたかもしれない。
「強者、アイテム、プレイヤー……はぁ。私はアルベドがいれば、それでいいのにな」
「くふーっ! 私もモモンガ様さえいれば、かまいません!」
今回のような脅威を、初期に見つけていたら……二人で誰もいない場所にこもって隠れただろう。
「夢のような世界、夢のような時間と思っていたが……ここもやはり、“
初めて感じた明確な脅威。
最悪の予想。
モモンガは、ここが都合のいい夢ではないと……初めて実感していた。
41話にして、初めて危機感をシリアスに感じたモモンガさん!(おそい)
誰もピニスンに会ってないので、ザイトルクワエという名を知りません。
ツアーは知ってたかもですが、わざわざ教えるような情報じゃないですし。
外見特徴と、伝聞の能力を教えたくらいでしょうか。
ピニスンは運が良ければ生きてます。
変なカップル二組、ほぼ成立。
クレマンとルクルット、レイナースとニグンがなぜかくっつきました。
まったくそんな予定ありませんでしたが、書いてたら勝手に……。
レイナースとニグンは、めっちゃプラトニックかつ熟年夫婦みたいな関係です。
モモンガ&アルベドの発情効果も受けませんしね。
クレマンさんは、しょーがねーなーって思いつつ、ルクルットに愛着持ち始めてます。
ンフィーは周りからメンタル逸脱者扱いされつつあるので、チャイナドレスで帰っても村人ら特に気にしません。
クレマンさんとかが、似合うーってからかう程度。
女装癖くらい、エンリさんと結婚した事実に比べればたいしたことじゃないんで……。
今回は出陣前、ニグンが徹底的に森を調査し、ツアーともめっちゃやりとりしてます。
そして漆黒聖典が森に入り込んでるのも発見。
カイレがいるので狙いを察知したニグンは、ツアーと話し合って今回の方針を確定しました。
カイレのアイテムを聞いたモモンガさんは、元プレイヤーの判断で攻性防壁を再起動。
仕掛ける魔法も極悪化させてます。
味方には自分に感知系絶対使うなって厳命。
スレイン法国は占星千里その他の予言と魔法捜査で、破滅の竜王覚醒を察知。
亜人殲滅の戦力および、女神への交渉カードとして、原作通りの破滅の竜王の精神支配を目指してました。
原作でシャルティアと遭遇したメンバー全員いるので、メンバーは漆黒聖典ほぼ全員とカイレ。
モモンガ&アルベド&クロマルは、傾城傾国が効かなかった時のため待機してました。
攻性防壁発動と天地改変した以外、この三人なにもしてません。
ニグンがだいたい全部やってくれました。
漆黒聖典については、女神を脅すため破滅の竜王を支配するつもりだと村人その他に喧伝してます(ニグンが)。
今回の作戦、ほぼニグンさん立案&実働。
そら横で見てたレイナースも惚れるわってなりました。
なんで自分、こんなにニグンさん贔屓でやってるんだろ……って書き終わって、かなり唖然としました。