アルベド二人旅   作:神谷涼

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 クロマル組の成果が上がってくる!



48:みんな いっしょうけんめい たたかっている

「快楽も激しすぎると、つらいというか……苦しいだろう?」

「ひゃめ、ひゃめてっ……!」

「ダメだ。お前もやめてくれなかったからな」

「んぃぎいひぃぃぃぃぃ♡♡♡」

 

 冷酷な主の声に、アルベドは二重三重の意味で達し。

 のけぞって突き出した舌さえ吸われ、溺れる。

 最初の内は残っていた冷静な部分も維持できず。

 並列思考をする余裕もなく。

 ただただ、主に貪られる。

 

 

 

 一方その頃。

 城砦の外、ザリュースとクルシュ、そしてニグンが話し合う。

 

「救援を求めた折にも見たが……ニグン殿、この湖を我々に?」

「我々では釣りくらいしかできんのでな。上が霧のため、船を出すにも適さん」

 

 蜥蜴人(リザードマン)が暮らせるよう、既に霧の中の死霊(レイス)らは退かせている。

 

「住居は勝手に建てていいの?」

「本来は村に住んでもらうべきだが……思わぬ人数だ。湖畔や水路沿いの区画をいくつか提供しよう」

「あまり岩場でない方が助かるな」

「とはいえ、クルシュ殿の魔法は我々にも重要だ。できればザリュース殿も含め、二人には村に住んでほしいのだが」

 

 クルシュへの期待は大きい。

 彼女は早期の内に、妊娠を見分けられる。

 現に、村の重要人物たるエンリにも懐妊の兆しありと宣言した。

 村の労働力を安定させるには、早めの情報が不可欠。また、かつて悲惨な境遇にあった者らも、素早い処置で母体の負担を最低限にできる。新たに愛を育み、想い人の子を授かるため、クルシュは重要な存在なのだ。

 とはいえ。

 

「仲間を安心させないと。住居の建造にも、私の魔法は必要なのよ」

「来たばかりでは皆が不安なのだ。どうかわかってほしい。私もクルシュも、なるべく村に顔を見せる。しばらくは仲間と共に暮らさせてほしい」

「……確かに、急激な変化だ。指導者は必要だろう。しかし、二人は大湿地の代表でもある。みだりな扱いはできん。支援はする。なるべく早く、立派な居住区を築いてもらいたいな」

「承知した。ところで、ロロロ――俺の多頭水蛇(ヒュドラ)についてだが」

「人やアンデッドを襲ったり、耕作地を荒らさねば、湖で自由に動いてくれてかまわんよ」

「ありがたい」

(大湿地のように、窮屈な思いをさせず済むのは助かるな……農耕や防衛への協力も、自主的に言うべきだろうか)

 

 村の戦力を考えれば、さしたる脅威とも見られていない可能性もある……と、ザリュースは冷静に思案する。

 

「ただ、ここはあの湖に比べれば狭い。ヒュドラを住まわせ、魚も採取するなら、川の方に居住区を広げてもらうべきかもしれん」

「なに?」

「川も使っていいの?」

 

 あっさりと川の領有まで許され、リザードマンの二人は驚く。

 川の流域は重要な土地だ。

 人間は流域ごとに占有権を主張するし、大森林においても多くの種族が水場として川原を奪い合っていた。川に入り込んだ者は、流域を縄張りとする亜人や魔獣に襲われるが常。リザードマンが川沿いに居住区を伸ばせなかったのも、その過酷な状況ゆえであった。

 

「ここからエ・ランテル――人間の都市まで、他の村は先日あった人間同士の騒動で滅ぼされてしまったのだよ」

 

 我々が起こしたものではないぞ、と念を押してくる。

 正直、うさん臭いが疑っても仕方ない。

 

「また、この平原に我々と競合する種族も特にいない。君たちリザードマンが先に来てくれたのだ。他に、水辺に強い種族が加わる予定もない。ひとまずは水場を獲得しても問題あるまい」

「ありがたい。それならば、魚を増やす手段もあるだろう」

「そうね。ひとまず、いくつかの小集団に分け、個別に水場を与えていけば……」

「ああ、溜め池もいくつか作成している。いずれはそちらも拠点に使ってくれたまえ」

「至れり尽くせりだな……」

「番兵を逐一配置するよりは安かろう。我々は田畑や飲用に使う水が必要なのだ。水をやたらと汚さねば、魚を採ったからと文句は言わんよ」

「いずれにせよ、まずは生活を始めてから……ね」

「そうだな」

 

 実際の生活を始めれば、細かな問題は多々あるだろう。

 だが、食糧不足が見え始めていた故郷より、未来はある。

 人間と混じっての生活を強いられるわけでもないのだ。

 彼らは新たな日々に向け、確かな希望の灯を得た。

 

 

 

「――っ♡ ふーっ♡」

「まったく。わかったか? 今度から私にも、あまり激しくするなよ? 私はこうして、アルベドと離れず……共に穏やかな時間を過ごせることが、大切なのだからな」

「ひゃ、ひゃい……♡」

「よしよし♡ ん……♡」

「あっ♡ ひぁっ♡」

 

 モモンガの攻めが終わり、穏やかな愛撫とキスのみを与えられるのだが。

 三日三晩狂わされたアルベドは、何をされても痙攣し、軽い絶頂を繰り返してしまう。

 何をされても、達する状態になってしまっているのだ。

 優しく肌を撫でられ、甘いキスを受けるだけで。

 激しい攻めを想起し、体が反応してしまう。

 

 

 

 イミーナたちが森林探索を始めて三日が過ぎた頃。

 

「ははーっ、このリュラリュース・スペニア・アイ・インダルン。御身らに絶対の忠誠をば誓わせていただきます!」

 

 “西の魔蛇”と呼ばれたナーガが、その巨体を縮こまらせていた。

 一瞬で空間を超えたのか。

 今いるのは、森の外。

 水路が絡み合う平原である。

 

「忠誠を誓う必要はない。私はニグン・ルーイン。お前と共に女神モモンガ様に仕える身だ」

「も、モモンガ様、ですか」

「そうだ。偉大なる女神は慈悲深い。供物も奴隷も求めぬ」

「で、では、儂は何をすれば……」

 

 周りに人間が見えたため、人間風情の使い魔と侮ったが運の尽き。

 彼の魔獣にはあらゆる魔術が効かず。

 手下どもも簡単に無力化され。

 無謀にも立ち向かった人喰い大鬼(オーガ)どもは挽肉と化した。

 ならば人間どもを人質に……と手下を向かわせたが。奴らもそれなりに手ごわく。それより前に、魔獣に肉薄され白旗を上げたのだ。

 そのすぐ後、異様な黒い空間が現れ。

 魔獣と共にいた人間どもに、入るよう言われた。

 

 そして今……空間を潜り抜けた先、明らかに尋常でないアンデッドらしき存在がいる。

 あの空間を作ったのは、目の前の男だろう。

 ナーガが小手先の術を使ったからとどうにもなるまい。

 

「今まで通り森を支配していればよい。ただ、我らが女神がお前の上にいると忘れぬことだ。そして、我々がお前を呼ぶとき、拒否は許されん」

「ははーっ、全て仰せのままに!」

 

 よくわからないが、無茶な要求ではない……ように聞こえる。

 リュラリュースはプライドをかなぐり捨て、土に額を擦り付けた。

 

「我が女神は、配下たる者に限りなく慈悲深き御方。森に大きな問題があれば解決してくださるだろう。現状での問題や異常があれば言うがよい」

「先日森で起きた、恐るべき大魔樹の暴走が大事件でございましたが……なぜか魔樹は消え、森も元に戻っておりました。目下は大きな問題もないかと」

 

 お前らが来た以外はな!とは口に出さない。

 

「ほう……あれのことか?」

「は? な……あ、あれは……!」

 

 男の指さす方を見れば。

 あのおぞましい魔樹が、村を守るかの如く立っているではないか。

 

「あの魔樹はモモンガ様によって鎮められ、この地を守るべく配置された。もはや森を破壊したりすまい。女神に救いを求めたリザードマンたちに感謝するのだな。さもなくば、魔樹は森全てを滅ぼしていただろう」

「お……お……」

 

 リュラリュースは絶句し、呆然と……あの森を破壊した恐怖。おぞましき魔樹を眺めるのだった。

 

 

 

「そろそろ、お風呂に行きましょうか?」

 

 互いの汗や唾液で、匂いをまとい始めている。

 アルベドとしては少し、気になるところだが。

 

「ん……もう少し。もう少し、こうしてお前の香りに包まれていたいのだ」

 

 そう言われては、抗えない。

 

「もう。そんな風に髪に顔を埋められていると、モモンガ様の(かんばせ)が見えませんのに」

「ずるい言い方をする」

「ふふ。さんざんモモンガ様に意地悪されてしまいましたから」

「お前の方が意地悪だったろう」

「そんなことはありませんよ。私は親切ですから……ふふ、さんざん攻めてばかりで疼いてらっしゃることも、察していますよ」

「ひゃっ♡ うう……や、やりすぎるなよ!」

「ええ。ではお風呂に向かいながら……まずは一度、気を遣っていただきましょう♡」

「し、仕方ないな……」

 

 ひさしぶりの受け身に、期待してしまうモモンガであった。

 

 

 

 さらに三日が過ぎ、イミーナたちは帰還した。

 もう一体の支配者を置き土産に連れて。

 

「ぐわぁ! バ、バカなこのグ様が……!」

 

 小さな人間風情に吹き飛ばされ、“東の巨人”と呼ばれた妖巨人(トロール)が呻きをあげる。

 

「賢王殿とリュラリュース殿は聞き分けがよかったのだが。こういう手合いがいると、かつての我が活動にも意義はあったと安心させられる」

「あ、あんな臆病者どもと俺をいっしょに……ぎゃああああ!」

 

 ニグンが錫杖を振るい、トロールを打ち据えた。

 圧倒的な能力値差に頼った、力任せの攻撃。

 それだけで空間が消滅したかのように、その肉が(えぐ)()ぜる。

 火でも酸でもない攻撃ゆえ、すぐにトロール特有の再生が始まるが……。

 

「〈再生阻害(リジェネート・ジャミング)〉〈苦痛増大(エンチャントメント・ペイン)〉」

「ひ!? いだいいだいいだい!」

 

 傍にいたレイナースの呪文が再生効果を封じた。

 トロールの再生能力は強い。

 肉体の損傷はすぐに圧倒的な回復力で打ち消されるため、炎や酸でなければ痛みすら感じない……のだが。回復封じのデバフにより、通常の生命と同じ苦痛を味わわされる。

 

「とりあえず暴れないよう、四肢を奪っておくとしよう」

 

 次々と四肢が破壊される。

 

「ぎゃあああああ!! いでええええ! どごいっだああ! お前ら、俺を早ぐ助けろおおお!」

 

 手下に助けを求めるが、ここにいるのはグだけ。

 そもそも、森をうろつく人間を手下らと囲んだ後……共にいた魔獣にさんざん痛めつけられ、手下も散り散りに逃げたのだ。

 再生能力でどうにか意地を通していたグだが、最後には魔獣に蹴り飛ばされ……妙な黒い穴に放り込まれた。

 そして穴を通って出て来た場所が、ここである。

 

「残念ながら、お仲間のいる森は遠くでしてよ。モモンガ様の耳障りにならぬよう、外部への音も封じておりますし」

「我らに従属を誓うまで、付き合ってやろうではないか。どうしても無理だと言うなら、君にはこのまま……そうだな、再生能力を利用して魔獣なり魔樹なりの栄養源となってもらおうか。殺しはせんよ、安心したまえ」

「ぎゃああああああ!!!!」

 

 森の一角を支配したトロールが泣きわめき叫ぶ。

 

「イミーナ殿たちも戻った。法国も未だ来ず」

「あちらが拙速を尊んでいれば、少し困りましたが……どうやら万全の体制を整えておけそうですわね」

 

 雑談交じりで与える責め苦。

 日が暮れ、夜明けが訪れるより早く。

 “東の巨人”グは、女神への服従を誓った。

 

 

 

 そしてさらに一日が過ぎ。

 

「はぁ……♡ 気持ちよかったぞ♡」

「その賞賛に勝る喜びはありません」

「こら。嘘を言うな。今だって攻める一方だったから少し不満なのだろう?」

「そ、そんな……これは“喜び”、あれは“悦び”ですから」

「悦びはいらないか?」

「……欲しいです。もう、本当に意地悪ですね、モモンガ様」

「ふふ、だがまあ……今日あたりは食事もしたい。気分を切り替えてから、また楽しもうではないか」

「外はまだ朝のようですが」

「ああ、朝のうちに言っておいた方がいいだろう。準備もしておいてもらえるしな……〈伝言(メッセージ)〉」

 

 あの自虐的な気持ちはすっかり去った様子で。

 アルベドとしても喜ばしい。

 食事の提案は、アルベドを休ませる意図もあるのだろう。

 〈伝言〉の間も、モモンガはアルベドの髪や肌を撫で続けてくれている。

 多幸感に、アルベドは目を細めた。

 

 

 

「ニグンさん! モモンガ様が今日の夕餉に降臨なされるそうです!」

 

 エンリへの神託に、村中がいろめきたった。

 

「さすがはモモンガ様! 大森林の主だった連中を全て支配下に置いたこのタイミングとは!」

「エンリさんは懐妊報告もしなければいけませんもの。雑事は私とニグン殿にお任せくださいませ」

 

 ニグンとレイナースを中心に、アンデッドらが外部の労働に出され。

 村人らは女神を迎えるべく、最大限の歓待準備を進める。

 特に料理は、アンデッドには参加できない。村人の領域だ。

 

「ンフィーの子ができたって報告しなきゃ……」

「それがしも懐妊報告でござる! クロマル殿の主に、元気な子を産めるよう祝福をもらうでござるよ!」

「わ、私も……しないとかな? ま、まだ現実味がないっていうか、恥ずかしいんだけど……」

 

 妊娠宣告されたエンリ、森の賢王、イミーナがそれぞれに喜びを見せ。

 

「いよいよ、あの奇跡を起こしたモモンガ様を間近で見ることになるのか」

「失礼がないよう気をつけないと……不興を買えば、どうなるかわからないわ」

 

 リザードマンたちは不安を抱え。

 

「め、女神様が儂如きそのように気になされずとも……」

「お、俺が顔を見せて、殺されないか……?」

 

 〈転移門(ゲート)〉で顔合わせに呼び出されたリュラリュースとグは、絶望的な面持ちで立ち尽くすのだった。

 




 主人公たちが蕩け溺れてる間も、みんながんばってる!

 クロマル組の戦法は、偉そうなのにクロマルが突っ込んで蹂躙。
 人間らはがんばって自衛する……という形。
 たいてい、ボスをいたぶる段階に入ったら、上の立場の奴を聞き出します。
 そうして行き着いたのがリュラリュースとグ。
 どちらも同じ戦法に入った後、アルシェからニグンに連絡してゲートを開き、クロマルに蹴り込ませました。
 リュラリュース情報で残るはグだけとわかってたので、蹴り込んだ後にクロマル組は帰還してます。
 ブレインの活躍をまるで書けない……実際、たいしたことしてないし。

 さらっと流してますが、エンリも妊娠してました。
 他にも村人の懐妊発覚は多数いるはず。
 さんざんやってますからね……。
 
 最近さんざん出してますが、説明忘れてたので。
 最近のオリジナル呪文について。
 他は原作にもある呪文のはず……。

●〈再生阻害(リジェネート・ジャミング)
 呪い系デバフ。回復封じ。
 一定時間、回復量を減少させる。中位以上の回復魔法には、あまり意味がない。持続回復効果の相殺に役立つ。

●〈苦痛増大(エンチャントメント・ペイン)
 呪い系デバフ。本来はダメージ増加。精神ダメージ扱いのため、精神耐性持ちには効かない。
 転移後世界では、普通にめちゃくちゃ痛くなる呪文。拷問効果も増大、ただしショック死の可能性も増える。

●〈植物操作(コントロール・プラント)
 代表的なドルイド系呪文。移動困難あるいは移動不可の植物系地形を、移動可能にする。
 敵が茂みの中や樹上にいれば、弱めの拘束呪文としても使える。他にも応用範囲は広い。茂みを発生させる呪文などとも相性はいいが、洞窟や建造物内ではほとんど使えない。

●〈上位生命探知(グレーター・ディテクト・ライフ)
 広範囲の生命体を詳細に感知する。不可視状態の存在も感知可。毒や病気などの生命系ステータス異常も識別できる。HP量も瀕死状態かどうか程度だけ可。アンデッドやゴーレム、悪魔、天使等、純粋な生命と呼べない存在には無効。
 元の呪文が第一位階程度なので、上位といっても第三位階程度。
 転移後世界では範囲は視界内。妊娠もステータス異常として早期発見できる。
 感染症予防としても便利……だろうけど、無症状だとわからないか。
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