アルベド二人旅   作:神谷涼

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 エ・ランテルに向かう途中、謎の建造物を見つけたクレマンティーヌ。
 その中では二人の超越者が猿のように盛っているが!
 彼らはまだ互いの存在を知らない。



7:アッーーー!

 

 クレマンティーヌは隠れ、迂回しつつ、奇妙な城塞に近づく。 

 

(陽光聖典が出張(でば)ってたんでしょ? 僻地の開拓村で……焼き討ちさせて回るって任務のはず。作戦中のドサクサだから、抜けやすいって思ったんだけど……)

 

 そんな様子はない。

 こんな国境に、王国が城塞を築いたりすれば、帝国が止める。

 帝国の城塞にしては、飛び地過ぎるし補給路もない。

 これほどの城塞が築かれれば、クレマンティーヌだって知っているはず。

 陽光聖典が、そんな場所で何の作戦行動をするのか?

 建設初期ならともかく、ここまで完成しては妨害も無意味。

 城塞へのいやがらせか、兵糧攻め?

 それ以前に、王国にこんな城塞を築く余力があるのか?

 

(いや、もっと根源的な問題があるよな)

 

 クレマンティーヌ自身、作戦行動でこの街道を一度ならず通っている。

 頻繁ではなくとも……こんな建物を築いていればわかる。

 ひと月やそこらで築けるようなものではない。

 

(えぇっと……前に来た時は辺鄙(へんぴ)な村しかなくて……素通りしたはず)

 

 建てるなら、人も物も金も情報も、流れるのだ。

 この先の都市エ・ランテルでも、大きな動きが起きる。

 

(じゃあ何だっつーの? 幻術? あんな大きさの幻あるわけないし……)

 

 匍匐前進で近づいていく。

 城塞の周りには誰もいない。

 漆黒の城塞は真新しいのかと思えるほど月光に輝き。

 門は重厚な石の扉で閉ざされている。

 

(新築だからかなー……今まで見たどの城より立派に見えるんだけど)

 

 ぐるりと回り込めば、街道側の半分のみが城壁で覆われているとわかった。

 途中からは、急ごしらえの丸太の柵。

 石の城壁がすっぱりと終わり、石組の予定すら見えず置かれている様子があまりにも不自然。

 まるで最初から建っていた城塞を、何者かが利用しているだけのようでもある。

 

(後ろに城壁を築く予定はないっての? 柵で中を隠して、麻薬栽培でもしてるわけ? 朝になれば、隙間から中を見れるかなぁ)

 

 びっしりと丸太を立てて柵にしており、土地を囲んでいる。

 モモンガたちがこもっている数日の間に、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)が休みなく働いて仕上げたものだ。クロマルも時には力を貸していたが、絶賛発情中のモモンガとアルベドは知らない。

 柵の外には、まばらに兵士が立っている。

 

(ええ……マジで前線基地? こんな夜中まで警備だってぇ?)

 

 城塞都市の類でも、城壁を見張りなど形だけだ。

 壁の外に武装した兵を配置するなど、ありえない。

 しかも、この兵たちは痩せてはいても背筋を伸ばしており、一流の戦士並みの気配を漂わせている。

 

(ヤバ……どんだけ精鋭置いて……ん?)

 

 月光が兵士を照らした。

 それらは目を赤く光らせる白骨の戦士。

 

(あれれ~? アンデッド? ズーラーノーン関係? 聞いてないんだけど)

 

 スレイン法国を抜け、秘密結社ズーラーノーンの幹部として席を得たクレマンティーヌだが。

 こんな場所に拠点があるなど、聞いていない。

 

(どっちにしても、夜が明けてからもう一度様子見かな? 忍び込むにもアンデッド相手じゃ、昼の方が視界も広くなって有利だし。魔法詠唱者(マジックキャスター)か知性あるアンデッドがいれば、匿ってもらえる可能性も高いはず……。カジッちゃんが主なら助かるけど、さすがに――)

 

 距離を置こうとしつつ。

 そんな風に展望を考えていた時。

 

――ズン!

 

 と、クレマンティーヌの上から、周囲の土をめり込ませて何かが降って来た。

 

「は?」

 

 這っていた体の周囲にちょうど、四本の棒。

 机でも降ってきたかと、間抜けな声をあげてしまう。

 少なくとも殺気を持った人間ではなかったし。

 魔法の類でもなかった。

 どう反応すればいいか、英雄級の彼女にもわからなかったのだ。

 それが己の前足の間……下にいるクレマンティーヌを覗き込んだ時、ようやく上から降って来た物体が馬だと、気づいた。

 反応するにはもう、遅かった。

 獣は口を開き……

 

――MUUUUUGEEEEEN

 

 朦朧(もうろう)化のブレスを吐く。

 カルマ値がマイナスに振り切った魔獣のそれは、凶悪なドラッグの混成物同然。

 圧倒的なステータス差が、抵抗を許さない。

 

「な……ぐ……これ、はぁ……」

 

 酔ったような、高揚感と眩暈(めまい)が襲う。

 体が熱く、脱力と緊張が、不規則なリズムで訪れる。

 

「うぇ……あつ、あつい……」

 

 のたのたと、無様に蠢きながら、武器を探るが。

 

――MuGeNN!

 馬の口が、クレマンティーヌのマントを咥え、引きはがす。

 

(あ……すずし……)

 

 下着同然の部分鎧が(あらわ)になり、野原を転がる。

 異様に火照る体には、夜風が心地よく。

 朦朧とした頭は、己に起きることを他人事のように感じていて。

 

(あ……そうだ……にげ、なきゃ)

 

 汗ばんだ体で、なんとか這うように逃れようとする。

 いつもの動きのキレはない。

 普段の状況でもろくに抵抗できなかったろうが……。

 下半身を覆う鎧と下着を、馬が噛み……ひきずり下ろした。

 

――MUUUUGEEEEENNNN

 

 そして、剥き出しになった下半身に直接もう一度……粘膜部へと直接、朦朧(もうろう)化のブレスを浴びせる。

 

「おおおおおおおああああああ♡♡♡」

 

 腸粘膜からドラッグを注がれた如く。

 クレマンティーヌは悲鳴とも嬌声ともつかぬ声をあげ、脱力した。

 馬が、クレマンティーヌの上に乗りかかる。

 大きく、逞しい体は人間の比ではない。

 そのまま、馬は彼女を押しつぶさんばかりにのしかかり――

 

「アッーーーーー!!」

 

 

 

 そう。

 彼女を襲った馬は、戦用双角獣王(ウォーバイコーンロード)クロマルである。

 主たちが色に溺れる間も、彼は労働に従事し。

 今も村を守護するよう頼まれていた。

 

 とはいえ、クロマルは不純を司る超高位魔獣。

 ユグドラシルでは淫獣と名高き種族である。

 己の主たるアルベドの欲情が、召喚主のリンクで流れ込んで来るし。

 村には年ごろの人妻や村娘や未亡人も、いないわけじゃないしで。

 性質的には襲いたくて仕方ないが、命令上それもできない。

 神と崇める女性はいても、馬を誘ってくる女はいなかった……。

 彼は下半身にも備わった双角と、やたら高い精力を持てあましており。

 アルベドとモモンガをセットで味わうという、贅沢すぎる行為を経験したばかりに、性的妄想が尽きず。R18制限のあったユグドラシルでも、ありえなかったほどに昂ぶってしまい。

 100レベル魔獣でありながら、屈辱的にも夢精せんばかり。

 それが今夜の、彼である。

 

 幸いにも、彼は〈カルマ感知〉というスキルを持っていた。

 これは周囲のカルマ値を自動的に感覚として把握する、バイコーンやユニコーン独自の感覚。一部の悪魔も所持する感覚だ。もっとも、認識できるのはカルマ値のみ。中立の獣や虫はたいてい見過ごすし――中立の者が不可視化していても、ろくに気づけない。

 だが、カルマ値が偏った存在ならば、かなり遠くからでもわかる。単なる不可視状態では隠れられず、カルマ値をごまかそうとしてもわかる。バイコーン自身にもアルベドにも、善よりの者に高ダメージを与えるスキルが複数ある。入り乱れての乱戦の中、最大限の戦果を出すべく、彼の感覚は有効とされたのだ。

 

 これにより、クロマルは村を探るカルマ値マイナスの存在を感知した。

 中立の多い森のモンスターとは、明らかに異なる。

 その“悪なる存在”は注意深く村に近づいてきて……脅威と感じたか、退こうとしていた。

 この時にはギリギリ、匂いも感じられた。

 雌である。

 魔獣か悪魔か亜人か人間かわからないが、とにかく雌である。

 カルマ値マイナスの存在が村を探り、逃げ出そうとしている。

 これを捕らえることは、“村を守る”に含まれるのではないか?

 彼は最大限、命令を拡大解釈した。

 

 そして。

 朦朧化のブレスを用い、クレマンティーヌと言う雌を手に入れたのだった。

 

 

 

 数日を経ても、二人はなおも城塞の玄関にいた。

 

「ふぅ……風呂かベッドでするべきだったかな」

 

 べたつき、臭気すら放ち始めた入り口絨毯(じゅうたん)がさすがに気になってきたモモンガである。

 

「少し身も清めてはいかがでしょう?」

 

 アルベドが浴室の使用を提案する。

 

「そうだな。アルベドの美しい体を穢したくはない……〈道具破壊(ブレイク・アイテム)〉」

 

 モモンガが床に手をつき、絨毯を消滅させる。

 

「あら……よかったのですか?」

 

 裸体のまま、アルベドが首をかしげる。

 絨毯がなくなった入り口は、随分と寒々しい。

 

「誰かに洗わせるのも恥ずかしいではないか。それに……また玄関でする時は、〈道具作成(クリエイト・アイテム)〉を使えばいいし……」

「くふーっ! ですねですねっ! 問題ありません!」

 

 主の言葉に、アルベドはいろいろと昇天寸前である。

 

「さて、では風呂に……」

 

 そうして二人で風呂場に行こうとした時。

 ドンドンと、要塞の扉が叩かれた。

 

「モモンガ様! アルベド様! 昨夜クロマル様が侵入者を捕らえました!」

 

 村長ではない、まだ若い娘の声だ。

 

「……ふむ。さすがに風呂に入ればまたしてしまいそうだな。アルベド、お預けになってすまないが、身づくろいになる呪文はあるか?」

「は。承知いたしました――〈魅力祝福(ブレス・アピアランス)〉」

 

 アルベドが己に実験として用いてみる。

 体中にべったりとついていた体液やキスマークが消え、肌が汗ばみ、甘い香りが漂う。

 うまくいったと、アルベドが微笑を浮かべて見せた。

 

「おお、見事だ! 私にも頼むぞ」

 

 その姿に、モモンガはまた欲情してしまうが。

 異常が起きたなら、己を崇める者らを待たせるわけにはいかない。

 理性で抑え、アルベドを急かす。

 

「はいっ、お任せください♡」

 

 アルベドは、主の反応に満足を覚えながら。

 モモンガの容姿を整え、互いに装備を身に着けるのだった。

 そして城塞を出た途端、身づくろい前の己たちより遥かに酷い有様の侵入者――クレマンティーヌを見ることとなる。

 





 童貞社畜サラリーマンが、TSサキュバス転生。
 同じ外見で、めっちゃ慕ってくれて、言うことなんでも聞いてくれる分身がいます。
 ……もう、この子だけいればいいやってなるのもやむなし。
 猿になっちゃうのも仕方なし。

 感情抑制、精神耐性がついてた原作とは違うのです……。
 あと、守るべきギルドもNPCもないし、お金もアイテムも身に着けてたのだけなので、本来の慎重さを失っています。アルベドは肉体破壊されても、モモンガがいる本体に精神で帰ってきますし。
 脅威らしい脅威とも会ってない今、モモンガさんはかなり迂闊なことするし、自分の欲望に振り回されるポンコツですが、ある程度すれば戻っていくと思われます。

 クレマンティーヌは、クロマルのカキタレになりました。
 当初はエンリを、女神の巫女として取り込んだ後、それを仕事にさせるつもりでしたが……バイコーンは非処女厨なんすよね。既にンフィーレアと肉体関係持ってるのも変だし、モモンガたちが手を出すのもなということで。
 転移後世界きってのカルマ値マイナス女子かつ、二次での非処女率も高いクレマンさんを配置。まあ、エンリがいた場合でも、彼女は同じ役目が想定されてたんすけどね。

 〈魅力祝福(ブレス・アピアランス)〉はオリジナル魔法です。
 信仰系の浄化魔法でもいいかなと思いましたが、アルベドが使うには不自然感あって……。
 サキュバスが使う能力値バフで、魅力なら他スキルとシナジー作ったりできそうと思い、魅力上昇にしました。
 事後跡消えるのは副次効果で、実際にはフェロモン出たりいろいろしてます。
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