その中では二人の超越者が猿のように盛っているが!
彼らはまだ互いの存在を知らない。
クレマンティーヌは隠れ、迂回しつつ、奇妙な城塞に近づく。
(陽光聖典が
そんな様子はない。
こんな国境に、王国が城塞を築いたりすれば、帝国が止める。
帝国の城塞にしては、飛び地過ぎるし補給路もない。
これほどの城塞が築かれれば、クレマンティーヌだって知っているはず。
陽光聖典が、そんな場所で何の作戦行動をするのか?
建設初期ならともかく、ここまで完成しては妨害も無意味。
城塞へのいやがらせか、兵糧攻め?
それ以前に、王国にこんな城塞を築く余力があるのか?
(いや、もっと根源的な問題があるよな)
クレマンティーヌ自身、作戦行動でこの街道を一度ならず通っている。
頻繁ではなくとも……こんな建物を築いていればわかる。
ひと月やそこらで築けるようなものではない。
(えぇっと……前に来た時は
建てるなら、人も物も金も情報も、流れるのだ。
この先の都市エ・ランテルでも、大きな動きが起きる。
(じゃあ何だっつーの? 幻術? あんな大きさの幻あるわけないし……)
匍匐前進で近づいていく。
城塞の周りには誰もいない。
漆黒の城塞は真新しいのかと思えるほど月光に輝き。
門は重厚な石の扉で閉ざされている。
(新築だからかなー……今まで見たどの城より立派に見えるんだけど)
ぐるりと回り込めば、街道側の半分のみが城壁で覆われているとわかった。
途中からは、急ごしらえの丸太の柵。
石の城壁がすっぱりと終わり、石組の予定すら見えず置かれている様子があまりにも不自然。
まるで最初から建っていた城塞を、何者かが利用しているだけのようでもある。
(後ろに城壁を築く予定はないっての? 柵で中を隠して、麻薬栽培でもしてるわけ? 朝になれば、隙間から中を見れるかなぁ)
びっしりと丸太を立てて柵にしており、土地を囲んでいる。
モモンガたちがこもっている数日の間に、
柵の外には、まばらに兵士が立っている。
(ええ……マジで前線基地? こんな夜中まで警備だってぇ?)
城塞都市の類でも、城壁を見張りなど形だけだ。
壁の外に武装した兵を配置するなど、ありえない。
しかも、この兵たちは痩せてはいても背筋を伸ばしており、一流の戦士並みの気配を漂わせている。
(ヤバ……どんだけ精鋭置いて……ん?)
月光が兵士を照らした。
それらは目を赤く光らせる白骨の戦士。
(あれれ~? アンデッド? ズーラーノーン関係? 聞いてないんだけど)
スレイン法国を抜け、秘密結社ズーラーノーンの幹部として席を得たクレマンティーヌだが。
こんな場所に拠点があるなど、聞いていない。
(どっちにしても、夜が明けてからもう一度様子見かな? 忍び込むにもアンデッド相手じゃ、昼の方が視界も広くなって有利だし。
距離を置こうとしつつ。
そんな風に展望を考えていた時。
――ズン!
と、クレマンティーヌの上から、周囲の土をめり込ませて何かが降って来た。
「は?」
這っていた体の周囲にちょうど、四本の棒。
机でも降ってきたかと、間抜けな声をあげてしまう。
少なくとも殺気を持った人間ではなかったし。
魔法の類でもなかった。
どう反応すればいいか、英雄級の彼女にもわからなかったのだ。
それが己の前足の間……下にいるクレマンティーヌを覗き込んだ時、ようやく上から降って来た物体が馬だと、気づいた。
反応するにはもう、遅かった。
獣は口を開き……
――MUUUUUGEEEEEN
カルマ値がマイナスに振り切った魔獣のそれは、凶悪なドラッグの混成物同然。
圧倒的なステータス差が、抵抗を許さない。
「な……ぐ……これ、はぁ……」
酔ったような、高揚感と
体が熱く、脱力と緊張が、不規則なリズムで訪れる。
「うぇ……あつ、あつい……」
のたのたと、無様に蠢きながら、武器を探るが。
――MuGeNN!
馬の口が、クレマンティーヌのマントを咥え、引きはがす。
(あ……すずし……)
下着同然の部分鎧が
異様に火照る体には、夜風が心地よく。
朦朧とした頭は、己に起きることを他人事のように感じていて。
(あ……そうだ……にげ、なきゃ)
汗ばんだ体で、なんとか這うように逃れようとする。
いつもの動きのキレはない。
普段の状況でもろくに抵抗できなかったろうが……。
下半身を覆う鎧と下着を、馬が噛み……ひきずり下ろした。
――MUUUUGEEEEENNNN
そして、剥き出しになった下半身に直接もう一度……粘膜部へと直接、
「おおおおおおおああああああ♡♡♡」
腸粘膜からドラッグを注がれた如く。
クレマンティーヌは悲鳴とも嬌声ともつかぬ声をあげ、脱力した。
馬が、クレマンティーヌの上に乗りかかる。
大きく、逞しい体は人間の比ではない。
そのまま、馬は彼女を押しつぶさんばかりにのしかかり――
「アッーーーーー!!」
そう。
彼女を襲った馬は、
主たちが色に溺れる間も、彼は労働に従事し。
今も村を守護するよう頼まれていた。
とはいえ、クロマルは不純を司る超高位魔獣。
ユグドラシルでは淫獣と名高き種族である。
己の主たるアルベドの欲情が、召喚主のリンクで流れ込んで来るし。
村には年ごろの人妻や村娘や未亡人も、いないわけじゃないしで。
性質的には襲いたくて仕方ないが、命令上それもできない。
神と崇める女性はいても、馬を誘ってくる女はいなかった……。
彼は下半身にも備わった双角と、やたら高い精力を持てあましており。
アルベドとモモンガをセットで味わうという、贅沢すぎる行為を経験したばかりに、性的妄想が尽きず。R18制限のあったユグドラシルでも、ありえなかったほどに昂ぶってしまい。
100レベル魔獣でありながら、屈辱的にも夢精せんばかり。
それが今夜の、彼である。
幸いにも、彼は〈カルマ感知〉というスキルを持っていた。
これは周囲のカルマ値を自動的に感覚として把握する、バイコーンやユニコーン独自の感覚。一部の悪魔も所持する感覚だ。もっとも、認識できるのはカルマ値のみ。中立の獣や虫はたいてい見過ごすし――中立の者が不可視化していても、ろくに気づけない。
だが、カルマ値が偏った存在ならば、かなり遠くからでもわかる。単なる不可視状態では隠れられず、カルマ値をごまかそうとしてもわかる。バイコーン自身にもアルベドにも、善よりの者に高ダメージを与えるスキルが複数ある。入り乱れての乱戦の中、最大限の戦果を出すべく、彼の感覚は有効とされたのだ。
これにより、クロマルは村を探るカルマ値マイナスの存在を感知した。
中立の多い森のモンスターとは、明らかに異なる。
その“悪なる存在”は注意深く村に近づいてきて……脅威と感じたか、退こうとしていた。
この時にはギリギリ、匂いも感じられた。
雌である。
魔獣か悪魔か亜人か人間かわからないが、とにかく雌である。
カルマ値マイナスの存在が村を探り、逃げ出そうとしている。
これを捕らえることは、“村を守る”に含まれるのではないか?
彼は最大限、命令を拡大解釈した。
そして。
朦朧化のブレスを用い、クレマンティーヌと言う雌を手に入れたのだった。
数日を経ても、二人はなおも城塞の玄関にいた。
「ふぅ……風呂かベッドでするべきだったかな」
べたつき、臭気すら放ち始めた入り口
「少し身も清めてはいかがでしょう?」
アルベドが浴室の使用を提案する。
「そうだな。アルベドの美しい体を穢したくはない……〈
モモンガが床に手をつき、絨毯を消滅させる。
「あら……よかったのですか?」
裸体のまま、アルベドが首をかしげる。
絨毯がなくなった入り口は、随分と寒々しい。
「誰かに洗わせるのも恥ずかしいではないか。それに……また玄関でする時は、〈
「くふーっ! ですねですねっ! 問題ありません!」
主の言葉に、アルベドはいろいろと昇天寸前である。
「さて、では風呂に……」
そうして二人で風呂場に行こうとした時。
ドンドンと、要塞の扉が叩かれた。
「モモンガ様! アルベド様! 昨夜クロマル様が侵入者を捕らえました!」
村長ではない、まだ若い娘の声だ。
「……ふむ。さすがに風呂に入ればまたしてしまいそうだな。アルベド、お預けになってすまないが、身づくろいになる呪文はあるか?」
「は。承知いたしました――〈
アルベドが己に実験として用いてみる。
体中にべったりとついていた体液やキスマークが消え、肌が汗ばみ、甘い香りが漂う。
うまくいったと、アルベドが微笑を浮かべて見せた。
「おお、見事だ! 私にも頼むぞ」
その姿に、モモンガはまた欲情してしまうが。
異常が起きたなら、己を崇める者らを待たせるわけにはいかない。
理性で抑え、アルベドを急かす。
「はいっ、お任せください♡」
アルベドは、主の反応に満足を覚えながら。
モモンガの容姿を整え、互いに装備を身に着けるのだった。
そして城塞を出た途端、身づくろい前の己たちより遥かに酷い有様の侵入者――クレマンティーヌを見ることとなる。
童貞社畜サラリーマンが、TSサキュバス転生。
同じ外見で、めっちゃ慕ってくれて、言うことなんでも聞いてくれる分身がいます。
……もう、この子だけいればいいやってなるのもやむなし。
猿になっちゃうのも仕方なし。
感情抑制、精神耐性がついてた原作とは違うのです……。
あと、守るべきギルドもNPCもないし、お金もアイテムも身に着けてたのだけなので、本来の慎重さを失っています。アルベドは肉体破壊されても、モモンガがいる本体に精神で帰ってきますし。
脅威らしい脅威とも会ってない今、モモンガさんはかなり迂闊なことするし、自分の欲望に振り回されるポンコツですが、ある程度すれば戻っていくと思われます。
クレマンティーヌは、クロマルのカキタレになりました。
当初はエンリを、女神の巫女として取り込んだ後、それを仕事にさせるつもりでしたが……バイコーンは非処女厨なんすよね。既にンフィーレアと肉体関係持ってるのも変だし、モモンガたちが手を出すのもなということで。
転移後世界きってのカルマ値マイナス女子かつ、二次での非処女率も高いクレマンさんを配置。まあ、エンリがいた場合でも、彼女は同じ役目が想定されてたんすけどね。
〈
信仰系の浄化魔法でもいいかなと思いましたが、アルベドが使うには不自然感あって……。
サキュバスが使う能力値バフで、魅力なら他スキルとシナジー作ったりできそうと思い、魅力上昇にしました。
事後跡消えるのは副次効果で、実際にはフェロモン出たりいろいろしてます。