プロの仮面ライダー   作:晩舞龍

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第三話

 今日も新崎はトレーニングに励んでいた。スポーツとしてのライダーバトルに勝てば、多額の賞金を得ることができる。それを夢見て、彼は今日も研鑽を欠かさない。

「フン! フン!」

 体を鍛えぬく者たちの集まるトレーニング場。そこに、ひときわ大きな声を上げて特訓に励む者がいた。

「ずいぶん気合が入っているな。いったいどんな奴が……」

 

 新崎は気になって、タオルで汗をぬぐいながらその声のする方へ歩いていく。

「うわっ!!」

 思わず叫び声をあげてしまった新。それもそのはず、声を上げてトレーニングを行うその男は、体から赤色の炎のようなものを噴き出していたのだ! 

 その炎のせいか、男の鍛え上げられた筋肉までも色が違って見える。

 

 叫び声に気づいて男が巨大なベンチプレスを置く。そして自分の目を疑う新に声をかける。

「やあ。ずいぶんと驚いているみたいだけど」

「え、ええ……体から炎なんて、初めて見ましたよ」

「君もプロのライダー? 新人かな」

「ええ。こうして変化形の選手を実際に見ると、圧倒されます」

 

 プロの仮面ライダーはそのほとんどが鎧を装着するアーマータイプだが、この男のように体を鍛え上げ変身する変化タイプのライダーもいる。新崎のように最初はアーマーを纏って戦うが、後天的にこのような別のタイプになるライダーも稀にいるのだ。

 彼は変化タイプの一人、鬼島雄鬼と名乗った。

 変化タイプのライダーは自分の肉体で戦闘を行う。そのため、戦闘用に用意されたエリア以外でも力を行使できる。したがって、それによる犯罪を抑止する法律などが整備されている。

 その力を使って罪を犯せば、逮捕されるだけでなくライダーの資格を失い路頭に迷うこともある。

 そして、犯罪に走るライダーを止めるための警察の秘密兵器もある。だが……

 

「!?」

 二人はトレーニング場の外から聞こえるサイレンに反応。すぐに外へ出た。

 パトカーがあわただしく往来する。

「どうやらただ事じゃないらしい」

 新崎は端末を開き、付近の最新情報をチェックする。ヒットしたのは、強盗の情報。そこには、防犯カメラの映像と思しきものが映っていた。

 鬼島もその画面をのぞき込んでくる。

 

 映像に映ったのは一人の女。変化タイプのようで、赤い炎と共に自身の体を変貌させる。彼女はプロライダーのアーカイブによると、引退した選手・朱鬼のようだ。そして、ハープ型の武器を用いて謎の音波を発生させる。セキュリティのかけられているであろうドアを破壊し、中に潜入。後ろから、さらに二人の男が入る。

「この倉庫みたいなところはなんだ?」

 鬼島の疑問。

「見てください。記事によると、ライダーシステムの開発を行っているところらしいですよ」

 強盗はライダー変身用の装備を盗みに来たのだ。

 

 その次の映像では、ライダーシステム開発所の外の映像が映し出された。強盗たちが脱走しようとしている。しかし、周囲は既に警察の対ライダー用秘密兵器・G3-Xが取り囲んでいる。その数20名。

 

 強盗の女が変貌。さらに、後ろから二人の男が変身して現れた。こちらは先ほど奪ったライダーシステムで変身していると思われる。

「こいつら、どうやって変身を……? 戦闘用フィールドでなければ変身できないはずなのに」

 紫の蛇のライダー・王蛇と、水色の鮫のライダー・アビスだ。戦闘が始まったところで映像は終わっている。

 

 この映像を見た新崎は、怒りをあらわにした。

「クソッ! せっかくライダーになったんだ! こいつらの事件のせいで大会が中止になったら、金を稼いでリッチになる夢が……」

 言うが早いか、新崎は走り出した。それを鬼島が止める。

「どうする気だ!? 君はシステムで変身するライダーだ。あの場所に行っても何もできない!」

「じゃあ鬼島さんが行ってくれますか!? 無理でしょう!」

「それは……」

 鬼島は言葉に詰まる。鬼島が行って戦えば、それは試合外での力の行使だ。彼自身も逮捕される可能性がある。

 鬼島が黙ったのをみて、再び新崎は歩き出す。

「俺は最強のライダーになって、ガッツリ金を稼いで、大金持ちになる……その為なら、何だってやる」

「新崎、君は、いったい何を……」

 新崎の真意を理解できず、しかし仕方なく走ってついていく鬼島。

 サイレンの音はまだ鳴り響いていた。

 

 

「がはぁっ……!!」

「弱いなァ、よわァい。君たち、ホントーにケイサツ?」

 王蛇に変身した男は次々と剣で警察のG3-Xを薙ぎ払っていく。一方、アビスの男は朱鬼を護衛しながら離脱の算段を整えている。

 

「応援はまだか!」「あと十分です!!」「それじゃ隊員たちが持たん!!!」

 三人組は強盗であるにもかかわらず見せしめのように隊員たちを屠る。その圧倒的な暴力性と盗まれた強力なライダーシステムにより、隊員たちは次々に蹂躙されていった。

 

 そこに、雄たけびをあげながら一人の男が走ってくる。

「うおおおおお!!!! 待てコラァ!!!!」

 新崎だ。その手にはカードデッキ。その場にいる全員の注目を浴びながら、彼は立ち止まる。

「強盗ども! これ以上の悪事は俺の夢のため見過ごせん!!!」

 大声を張り上げながら、彼はカードデッキを胸の前に勢いよく振りかざす。

 

「無理だ!」

 追い付いた鬼島が叫ぶ。新崎の腰に変身用ベルトは現れない。

「馬鹿か! 俺たちが奪ってきたロック前のデッキじゃねえんだから、変身できるわけねえだろォ」

 王蛇の男が嘲笑して言い放つ。

 

「クッソ……」

 万事休す。しかし、新崎は諦めるなどこれっぽっちも考えていなかった。

「俺にはまだやれることがあんだろ……」

 勢いよく走りだす。王蛇の男を躱し、女のところへ駆けていく。

「お前が強盗の親玉だろッ!!」

 生身のまま新崎は飛び蹴りを放つ。しかし、護衛としてついていたアビスの蹴りが新崎の足を折り、そのまま瓦礫へと吹き飛ばす。

「邪魔者は排除した」

 冷徹に言い放つアビスの男。出血量をみるに、新崎はもう生きてはいないだろう。

 

 鬼島は落胆した。将来有望そうな若者が目の前で死んでいくのを、社会のルールに阻まれただ見ている事しかできない自分に。

 

「ハハッ! 最高にバカだな、あの男!」

 王蛇の男が死んでいった新崎を小馬鹿にして高笑いする。

「もういいだろ。そろそろずらかるよ」

 朱鬼の女が、二人に言って身を翻す。

「了解」

 短くそう呟いてアビスの男がついていく。王蛇の男もそれに続こうとした……それを、誰かに止められた。

 

「は?」

 

 次の瞬間、王蛇の顔面を強烈なパンチが襲った。朱鬼とアビスの横を王蛇の体が飛んでいき、向こう側の建物に激突。

「何だ?」アビスの男が振り返る。

 

 そこには、鬼がいた。朱鬼と同じ変化タイプのライダー・裁鬼。

「お前、誰だ?」

「さっきの青年の……知り合いだ」

 鬼島だった。彼は、ライダーの資格を失い、逮捕されることも覚悟で、"変身"した。

 新崎の無念を晴らすため。悪党たちをのさばらせておかないため。

 目の前でこれ以上、人が死ぬのを見たくないため。

 

「ハァあああああああ!」

 気迫のこもった雄たけびと共に放たれる正拳突きが、アビスを襲う。それを間一髪のところでかわし、アビスは鋸型の剣で腕を落としにかかる。

「くっ」

 腕を引っ込め、一歩下がる。すると先ほどまで立っていた場所に、高速でサーベルが飛んできた。あと一瞬下がるのが遅れていたら、腹部を貫かれていただろう。

「!?」

 驚きで硬直してしまう裁鬼。サーベルは、先ほど突き飛ばした王蛇の投擲したものだった。王蛇は首を鳴らしながら近づくと、一瞬で背後に飛び移り、裁鬼の背中を猛烈に殴打した。

「テメェ、ざけんじゃねえぞオラ!!」

 暴力的な言動に違わず、その攻撃は相手の命を少しも顧みない衝動的なものだ。だからこそ、スポーツとしてのライダーバトルしか経験していない裁鬼のかなう相手ではなかった。

 

 

「がはっ!! ごふっ!!」

 警察も思わず身をすくめるほどの惨状。裁鬼はもう意識を保っていられないほどの傷を負っている。誰もが、はやくこの悲劇を終わらせてくれと願った……その時。

 

「ギイッ」

 断末魔とともに、王蛇が消し飛んだ。文字通り、跡形もなく。

「!?」

 アビスが驚き、周囲を探る。すると、その身が金縛りにあったかのように動けなくなる。それほどの、強烈な"力"。

 ゆっくりと振り返る。先ほど、新崎が吹き飛ばされた瓦礫の山。そこに血だらけの新崎の姿はなく、代わりに紫に身を包んだ人型の"力"があった。

 

「なんだ、お前は。ライダー……なのか」

 アビスが聞く。その声は圧倒的な力を前に、震えていた。

 その"力"は、答えた。

 

「俺は……なんだ? どうなってる?」

 

 新崎だった。死んだはずの新崎の声が、その桁外れの力を放つ、紫のライダーのようなものから放たれる。

 満身創痍の裁鬼が声をかける。

「新崎……なのか?」

 

「ああ。いま、俺どういう状況? なんか、吹っ飛ばされた後気絶してた?」

「馬鹿野郎、お前、血だらけで死んでて……それ、変身してるのか」

 その紫の姿は、明らかに普段新崎が変身する仮面ライダーインペラーとは似ても似つかないものだった。

 体の複数個所に、宇宙や惑星を象ったレリーフや紋章が刻まれている。そして、体の背面には青紫のマント。

 見たこともないベルトから、電子音声が鳴り響く。

 

「仮面ライダー……ギンガ!」

「……だそうです」

 

 自分でもわかっていない様子の新崎。とにかく、アビスを止めようと手を前にかざす。すると、

「ぎああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 ギンガの手から放たれた凄まじいエネルギーの奔流はアビスを包んで遠くのビルに叩き付けた。

「何だよ、この力……」

 瞬時に取り巻き二人を倒された朱鬼は気付かれないように逃走。逃げる彼女は何かにぶつかった。

「ち、何だい……」

 見上げる彼女の目の前には、いつの間にかギンガがいた。

「ひぃぃ」

 先ほどアビスと王蛇がなすすべもなく倒されるのを見ていた彼女は、恐怖のあまり失神。

 

 

 裁鬼のもとに戻ってきたギンガこと、新崎。

「とにかく、変身解除して……いや、逃げよう。警察の応援が来たら、厄介なことになる」

 そう言って裁鬼は鬼島の姿に戻る。

 しかし、ギンガは元の姿に戻らない。

 

「どうした?」

「いや、それが……戻り方が、わからなくて」

「ベルトは?」

「外れません」

「変身はどうしたんだ」

「目が覚めたらこうなってました」

 

 そう言っている間に、警察の応援が到着してしまった。

「ここか、ライダーシステムを盗み出した奴が暴れてるのは……ひどい惨状だ」

 二人の警察のエリートが変身した状態で現場に入ってくる。

 警察屈指の機動部隊の精鋭、仮面ライダーアクセルと仮面ライダードライブだ。

 

「まずい、アイツらに見つかるのは今の状況じゃ非常にまずいぞ!」

「とにかく逃げましょう、つかまって!」

 ギンガの手をつかむ鬼島。100mを超える跳躍でその場を脱する。惨劇を後にする二人。その様子を見ていたものは少ない。彼らが、これから世界を大きく動かしていく存在であると知る者は、まだいない……。

 

 

 

「いったいどうなったんだ、俺の体は。どうなるんだ、俺の大金持ちの夢は……」




登場人物
インペラー、ギンガ 新崎 新
タイガ 努井 努

裁鬼 鬼島 雄鬼

朱鬼 鬼頭 美鬼
王蛇 蛇塚 蛇九蓮
アビス 鮫口 鮫一

G3-X 警察
アクセル 機動隊員 
ドライブ 機動隊員 

シザース 堤 堤 
ベルデ 助川 佐助 
ガイ 盾山 盾
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