新世紀エヴァンゲリオン takeⅡ   作:周小荒

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第13話 アスカ、来日

 

 「シンジ君。明日は私とクルージングデートよ!」

 

 朝食の席で突拍子もない発言をしてレイの反応を楽しむ悪趣味なミサトにシンジは冷静に苦情を言う。

 

「ミサトさん。綾波をからかうのは止めて下さい!」

 

「私、からかわれたの?」

 

 レイもミサトの性格を熟知しているので、シンジの苦情に瞬時に冷静さを取り戻して、ミサトに氷点下の視線を浴びせる。

 

「うっ!」

 

 レイの氷点下の視線に、あっさりと降参したミサトは、正直に弐号機とパイロットの出迎えに行く事を伝えたのである。

 

「最初から正直に言えば良いのに」

 

 シンジも呆れながらも、弐号機とパイロットの出迎えに行く事を承知する。

 

「仕方がないよ。本部を空にする訳には行かないから」

 

 シンジと離れる事に不満と不安を隠せないレイを宥めるシンジ。

 

「何か有れば、すぐに戻ってくるからね」

 

「弐号機のパイロットは可愛い女の子だけど、私が浮気しないように監視するから安心してね」

 

 レイを宥めるシンジを見て、懲りもせずに再びレイをからかうミサトにシンジは冷たく断罪する。

 

「ミサトさん。今日と明日は休肝日です!」

 

「ちょっと、シンジ君!」

 

 シンジはテーブルに出していたビールを無情にも取り上げて冷蔵庫に入れる。自業自得の見本となるミサトであった。

 

「そんな事より、新しいパイロットが来るなら、引っ越しの必要も有りませんか?」

 

「えっ!」

 

「新しいパイロットも同じ場所に居ないと警備や使徒が来た時に困るでしょう」

 

 ミサトは一瞬だけ考えると、シンジの意見の正しさに納得する。

 

「そうね。じゃあ。今から引っ越しをしましょう!」

 

 ミサトの行動の速さにシンジとレイも驚く。

 

「明日の夕方には新しいパイロットが来るから、今日中に引っ越しをする必要があるわ」

 

「はあ」

 

 ミサトはシンジとレイに引っ越しの為に荷造りをさせるとネルフ本部に連絡を入れる。

 

「そう。家族向けの部屋を提供して欲しいの」

 

 シンジは受話器の向こうはパニックになっていると思ったが、意外な事に電話一本で新しい部屋と引っ越しの準備が出来た。

 

「新しい部屋は隣のコンフォート18で同じ場所よ」

 

 あっさりと引っ越し先から運搬の人手まで手配するとミサトはネルフに出勤するのであった。

 

「流石はミサトさん。やる事が早い!」

 

 その日の夕方には引っ越しも終わり明日の為に早めにベッドに入るシンジであった。

 

(明日にはアスカと再会する事になるのか)

 

 シンジにはアスカに対して罪悪感があった。

 

(あんな事をしてアスカを汚したからなあ)

 

 シンジにとって、レイが初恋の女性なら、アスカは憧れの女性であった。

 シンジと違い才能に恵まれていて、自信と自尊心を持つ強い女性であった。

 人は自分に備わってないものを持つ人間に憧れる。

 

(アスカも絶対に守る!)

 

 シンジはアスカを守る事を誓うが、決して一方的に庇護する気もなかった。

 

(アスカが来てくれたら、これからの戦いも楽になる)

 

 シンジはアスカの強さも脆さも理解していた。その上で、アスカにはサードインパクト阻止に協力してもらうつもりである。

 

(何時かは綾波にも相談しないとな)

 

 シンジはネルフの大人達を信用していなかった。使徒打倒を免罪符に道義に反する事を行った事を知っていたからである。

 それでも、何時かはミサトやリツコに加持と発令所の面々に協力を仰がなければならない事も理解していた。そのタイミングが難しいのである。

 

(すぐに答えが出る事でもないよな)

 

 シンジは苦笑をすると引っ越しの疲れが出て眠りにつくのだった。

 

 翌朝、シンジは紙袋に自分のプラグスーツを入れるとミサトと共にヘリに乗り込む。

 

「綾波。心配は無いよ。すぐに帰って来るからね」

 

 手を振るレイに笑顔で応えるのであった。

 

「シンジ君。一応、セカンドチルドレンの事を教えておくわね」

 

 前回の時は、シンジだけではなく、部外者のケンスケとトウジが居たので、ミサトも何も言わなかったのであろう。

 シンジは表情の選択に困り神妙な表情を作り、ミサトの説明を聞いた。

 

「凄いエリートなんですね」

 

 シンジは当たり障りの無い感想を口にする。

 

「まあ。エリートと言えばエリートだけど、中身は普通の女の子よ。優しくしてね」

 

 今度は天然の神妙な表情が出たシンジである。

 

(アスカが普通の女の子?)

 

 アスカを知る人間なら当然の感想と言えた。

 ミサトとアスカの話をしている内にヘリは国連軍の虎の子と言える空母に着陸した。

 ヘリを降りるとヘリと海風が吹く強風であった。

 シンジは大きく伸びをして筋肉をほぐすとミサトも強風に髪を乱されるのを防ぐ為に髪を押さえながら歩く。

 

「ヘロー、ミサト。元気にしてた?」

 

「あら、貴女も背が伸びたんじゃない?」

 

「他の所も女らしくなっているわよ!」

 

「シンジ君。紹介するわ。彼女がエヴァンゲリオン弐号機パイロット、セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ」

 

 ミサトが言い終わった途端に一陣の風が吹く、シンジは反射的にクルりと後ろを向いた。

 シンジにしたら、ビンタをされてまで見たい物でもない。

 

「ミサト。その子がサードね」

 

「そうよ。シンジ君、もう前を見ても大丈夫よ」

 

 シンジが振り返るとアスカが値踏みをする様にシンジに近付いて来た。

 

「へえー。意外と紳士じゃない」

 

 アスカはシンジに片手を出して握手を求めてきたので、シンジも片手を出して自己紹介をする。

 

「僕が碇シンジです。宜しくお願いします」

 

「此方こそ、宜しく!」

 

 シンジの挨拶に握手をしながら返すアスカであったが、それで、終わらないのがアスカであった。

 

「使徒を既に三体、倒したらしいけど、私が来たからには貴方の出番は無いわ!」

 

 シンジの記憶の内に残るアスカらしい発言であった。

 この生命力に溢れた元気な少女が傷心の為に痩せこけてベッドの住人になったのである。

 その少女を自分は汚した上に見捨てたのである。

 過去の自分の所業の罪悪感と元気なアスカを見た喜びが化学反応を起こした結果、シンジ自身も予想外の行動に出た。

 シンジはアスカを抱き締めて子供の様に泣き出したのである。

 

「ちょっと、何?」

 

 アスカもシンジの予想外の行動に困惑するばかりである。

 

「ちょっと、シンジ君!」

 

 ミサトもシンジの行動に一瞬だけ驚いたが、すぐに納得したのである。

 

(そうよね。今まで実質、一人で戦ってきたものね。無理もないか)

 

「ちょっと、ミサト!」

 

 アスカはミサトに助けを求めたが、ミサトは両手で拝む仕草をする。

 

「なっ!」

 

 アスカもミサトが頼りにならないと判断するとシンジを宥めに掛かる。

 

「何があったか知らないけど、私が来たからは安心なさい」

 

 アスカは優しい声で幼児をあやす様にシンジに呼び掛ける。

 数分後、シンジが落ち着くとアスカはミサトを残してシンジを連れて行く。

 

「ミサトは事務手続きがあるんでしょ。私達は食堂に居るから」

 

 ミサトはアスカの変わらずに優しい部分に安堵した。

 

(結局は優しい娘だもん。シンジ君やレイと上手くやっていけるでしょう)

 

 ミサトはシンジとアスカが衝突するのではないかと内心は心配していたが、自分の杞憂だった事に安心して艦橋に向かったのである。

 ミサトは安心したが安心されたアスカの方は困惑していた。

 

(まさか、何か地雷を踏んだのかしら)

 

 二人が食堂に着く頃にはシンジも落ち着いてきたのでアスカはシンジが話す事を辛抱強く聞いた結果は、アスカも同情する内容であった。

 シンジの話を聞くと長年離れて暮らしてた父親に呼ばれ第三新東京市に来た日に使徒と国連軍の戦闘に巻き込まれ、なんとかネルフ本部に到着した途端に、初めて見るエヴァに搭乗して使徒と戦わされる。

 使徒を倒した翌日には、起動実験での事故で大怪我したファーストチルドレンの存在を知りエヴァのパイロットにならざる得なかった事。

 二体目の使徒も運良く倒したが、訓練とは違い劣化ウラン弾は爆煙を起こして使徒に通用しない上に一般人が見物に来ている状況だった事。

 三体目の頃にファーストも戦線参加する様になったが、当初の作戦では使徒の加粒子砲の餌食になっていた事。

 まさに三体の使徒を倒したと言っても、全て薄氷を踏む様な勝利だった事。

 そこに、自分とは違い訓練を受けたアスカの登場で安心して泣いてしまった事。

 アスカもシンジの話を聞いて同情してしまった。

 シンジも最後だけは事実では無いが、その他の事は全て事実なのでアスカも信じてしまった。

 

「今まで、良く頑張ったわね。でも、ファーストも訓練を受けているし、私も居るから、もう心配する事はないわ」

 

 アスカはシンジの両手を握り、孤軍奮闘してきた素人の少年を一生懸命に勇気づける。

 

「此れからは、三体のエヴァで使徒を袋叩きにしてやりましょう」

 

 アスカは気付いていないが、アスカはシンジの話を聞いて仲間と協力する事を自然と選択したのであった。

 この事が、これからの使徒戦に大きく影響する事になる。

 

 

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