新世紀エヴァンゲリオン takeⅡ   作:周小荒

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第15話 第七使徒イスラフェル

 

 アスカが転入して一週間になる。既に校内の有名人となっていた。

 

「しかし、惣流の奴、碇以外の男子には当たりが強いのう」

 

 ぼやくトウジにケンスケが応じた。

 

「しかし、性格は写真には写らんからね」

 

 二人はアスカの盗撮写真で小遣い稼ぎをしていた。

 確かにアスカは類まれな美少女であり男子生徒だけじゃなく、女子生徒にも人気があった。極度の男嫌いなのも原因であろう。

 下駄箱に入っていたラブレターの山を全て未開封のままゴミ箱に捨てたのである。

 

「ふん。私の外見しか見ない奴と付き合う気になるはずないわ!」

 

 ある意味、正論とも言えるのである。

 

「それでも、読まずに捨てるのは失礼だと思うよ」

 

 シンジの諫言にもアスカは耳を貸さないのである。

 

「百歩譲っても、男の癖に直接に告白が出来ないヘタれには興味無いわ!」

 

 アスカは力強く断言するのであった。

 

「惣流さん。格好いいわ!」

 

 一部の女子からは支持されている。シンジも苦笑するしかない。

 レイとの関係も逆行前よりも良好である。最初はアスカを警戒していたレイもアスカがした耳打ちの一つで関係が改善してしまった。

 

「レイったら、最初は私がシンジを誘惑すると思って警戒していたけど、私が『シンジは浮気とかしないから安心しなさい』と言ったら顔を真っ赤にして可愛いんだもん」

 

 どうやら、アスカは小型のミサトの様である。

 

「シンジ。私が嘘つきにならない様にしなさいよ!」

 

「ぼ、僕は浮気なんかしないよ!」

 

 自宅では一応は、お客様扱いで家事は日本の生活に慣れるまではと免除している。

 シンジもレイとアスカ二人に家事を教えるのは手間なので、二人でキッチンに立っている間はシンジのDVDを観賞してもらっている。

 

「古い作品ね。特撮技術も稚拙だし、衣装の作りも雑ね」

 

 悪態を吐きながらも往年の名作だけあって、アスカは夢中になって観ている。

 

「おやっさんって、ナイスミドルよねえ」

 

 確かにナイスミドルだが、中年のサブキャラがお気に入りなのは、思春期の少女としては、どうなんだろうと思うシンジであった。

 

「ええっ。新しい主人公!」

 

「ああ。それは、最初の主人公の役者さんが怪我して入院したからテレビ局の苦肉の策なんだよ」

 

 シンジが日本では有名な裏話で解説する。

 

「まあ。1号よりは衣装のセンスも良くなったわね。怪我の功名って奴ね」

 

 アスカはDVDを観賞をする様になって、難しい日本語も覚えてきた。

 

「ただいま。また、アスカはDVDを観ているの。アスカもすきねえ」

 

 ミサトもアスカが来てからは残業名目でネルフ本部に避難する事が少なくなった。

 

「そう言うミサトも、最近は帰りが早いけど、仕事の方は大丈夫なの?」

 

「最近は使徒も来ないから暇なのよ」

 

「そんな筈はないでしょ。弐号機が来て色々と忙しい筈なのに、日向さんに仕事を押し付けてるんじゃないの?」

 

「そ、そんな事は、な、無いわよ!」

 

 どうやら、日向の災難は続く様である。

 

「それより、アスカ。日本の学校はどう?」

 

 露骨な話題転換にアスカも呆れながらも、真面目な話にアスカも真面目に返事をする。

 

「酷いわね。教師のレベルが低過ぎるわ。それに、ナンセンスなルールも多いわ」

 

「いや、アスカ。そういう事じゃないの」

 

「大丈夫よ。委員長をしている娘でヒカリという友達も出来たし、レイやシンジも居るから」

 

「そう、それなら安心ね」

 

 アスカを通じてヒカリとレイも交流を持つ事が出来た。三人が揃えば、大抵はレイがシンジとの事で質問責めになるのは仕方がない事である。

 この日も体育の授業で男子は水泳。女子はバレーボール。コートの外で待機中の三人はレイとシンジの事で話の花を咲かせていた。

 

「綾波さん。碇君の第一印象は、どんな感じだったの?」

 

 ヒカリにすれば、漫画の様な返答を期待したのだが、現実は散文的なものであった。

 

「分からない人」

 

「えっ?」

 

「レイ。分からない人って、どんな状況だったの?」

 

「私が入院している時に葛城一尉が紹介してくれたの」

 

「それで?」

 

「その時に碇君。私の手を握ると泣きながら何度も謝るの」

 

 アスカもヒカルもシンジの泣いて謝る理由

に見当がついた。

 

「何も碇君は悪くないのに……」

 

 期待していた甘い初対面ではなく、黙るしかないアスカとヒカリであった。

 

「でも、やっぱり、羨ましいわ!」

 

 アスカが突如、レイにヘッドロックを掛ける。

 

「痛い!」

 

 レイも長年、ネルフで訓練を受けた身である。アスカのヘッドロックを外すと構えを取る。

 

「どういうつもり、アスカ!」

 

「だって、羨ましい話だからよ」

 

 片手を腰に当て、反対の手を真っ直ぐに伸ばしてレイを指差すアスカであった。

 横では腕組みをしたヒカリが何度も大きく頷きながらアスカを支持する。

 

「それなら、洞木さんはどうなの?」

 

 レイがヒカリの腕を掴み詰問する。

 

「えっ、どういう事なの?」

 

 アスカもレイの突然の発言に困惑する。

 

「洞木さんも鈴原君が居るでしょう!」

 

「いえ、私と鈴原は何も関係ないし!」

 

「私の目は誤魔化されないわよ。洞木さん。鈴原君の事を何時も見ているわ」

 

 ヒカリの抗弁もレイの赤い瞳には通用しなかった。

 

「うっ!」

 

 観念したヒカリにアスカが肉食獣の笑みで通告する。

 

「レイだけじゃあ。不公平よ。ヒカリ」

 

「たく、油断も隙もあったもんじゃない!」

 

「さっさと、ゲロして楽になりな!」

 

 何処で覚えるのか。アスカが下卑た口調でヒカリを促す。

 

「その、鈴原も妹さんが居るじゃない。それで、妹さんの面倒をみる。優しいところ!」

 

 ヒカリは白状すると顔を朱に染めて背けた。

 

「えっ!」

 

「そう」

 

 驚愕の表情で固まるアスカとは対照的に無表情で納得するレイ。

 

(好みは人それぞれだけど、ヒカリ。あんた確実に趣味が悪いわよ)

 

 アスカは親友の趣味に驚くばかりであった。

 平和な午後が過ぎようとした時にネルフの警備部員が現れた。

 

「非常呼集だ。車は既に運動場に待機させている!」

 

 アスカとレイは思春期の少女からパイロットに瞬時に切り替わった。

 

「使徒は紀伊沖で発見されて、国連軍の攻撃を受けながら第三新東京市に接近中よ」

 

 ミサトが既に指揮車で使徒の上陸ポイントを戦場と定めて急行していた。

 

「今回は水際で使徒を捕捉、近接戦闘で波状攻撃を掛けて殲滅するわよ」

 

「支援兵器のある場所まで誘導はしないのですか?」

 

「折角、エヴァが三機あるのよ。それに、街中だと三機の運用は難しいのよ」

 

「はあ」

 

「シンジ君とアスカがオフェンス。レイがアシストよ」

 

「了解!」

 

「じゃあ。シンジ。今回は私に花を持たせなさい!」

 

「わかったよ。アスカ。でも、油断したら駄目だよ」

 

「分かっているって!」

 

 セカンドインパクトで水没したビルの屋上が海面から顔を出している場所での戦闘であった。

 

「アスカ。深い様で遠浅の浜だからね。気をつけて!」

 

 ミサトもアスカに危惧を抱いたのか気を引き締める為に警告する。

 

「出来るだけ、足場はビルを使うわ」

 

 アスカはミサトの警告を受け入れて油断をしない様に自分自身を戒めた。

 アスカとシンジが待ち構えていると沖から第七使徒イスラフェルが接近して来るのが見えた。

 アスカは間合いを見切ると弐号機は突然に大きくジャンプして空中で1回転して、手にしたソニックグレイブに加速を与えてイスラフェルを唐竹割りに一刀両断にした。

 シンジはアスカがイスラフェルを両断すると同時に叫んだ。

 

「まだだ。まだ終わってない。アスカ、離れろ!」

 

 シンジの声に反射的にアスカは弐号機を跳ぶ様に後退させる。

 アスカが後退した次の瞬間にイスラフェルは二体に分裂した。

 

「ぬゎんて、インチキ!」

 

 ミサトが指揮車で臍を噛んだが、パイロット達は既に体勢を整えていた。

 

「なるほど。シンジが油断をするなと言う筈ね!」

 

 初号機と弐号機とで2対2の戦いが始まる。

 

「コイツら切っても直ぐに再生するわ!」

 

 アスカがミサトに悲鳴に近い報告をしながらも初号機と弐号機はイスラフェル相手に優勢に戦っていた。

 しかし、決定打を与えられないので長期戦になれば、パイロット達の体力が尽きるのである。

 ミサトがN2兵器の使用も考え始めた時にシンジが意味不明の事を叫んだ。

 

「行くぞ。一文字!」

 

 シンジの叫びにアスカが応じる。

 

「おう。本郷!」

 

 初号機と弐号機はイスラフェルを遠くの沖に投げ飛ばすと二体の使徒は融合をして一体に戻ろうとする。

 初号機と弐号機は見事なユニゾンで同時にジャンプすると融合途中のイスラフェルに向かって飛び蹴りを放つ。

 

「エヴァダブルキック!」

 

 イスラフェルの胸のコアに初号機と弐号機のキックが炸裂した。

 イスラフェルは更に沖に蹴り飛ばされると墓標と思える十字の火柱を発生させた。

 

「パターン青。消失。使徒の殲滅を確認」

 

 指揮車でマヤが宣告するがミサトや発令所に居たリツコは唖然とするばかりだった。

 ミサトとリツコを唖然とさせた張本人のシンジもエントリープラグ内で唖然としていた。

 

(まさか、本当に成功するとは!)

 

 

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