新世紀エヴァンゲリオン takeⅡ   作:周小荒

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第20話 第十使徒サハクイェル

 

 マトリエル戦が終わり、シンジ達は束の間の平和を楽しんでいた。

 

「すまんなあ。碇」

 

「急な雨だったからね」

 

「本当に天気予報も信用が出来ないんだから!」

 

「ヒカリはこっちね。それとミサトが寝てるから静かにしなさいよ!」

 

「了解。惣流」

 

「碇君。はい、タオル」

 

 シンジ達は、下校直前に雨が急に振りだした為、送迎車にクラスメートを同乗させて、一旦、葛城宅に雨宿りさせた。

 

「ヒカリ。傘が足りなくて、悪いけど、鈴原と一緒に帰ってくれる」

 

「相田君は鈴原君達と反対方向だったわね」

 

 実際は傘が2本しかないのではなく、ヒカリとトウジを二人きりにする為のアスカとレイの策略であった。

 

(鈴原はシンジ以上の朴念仁だし、ヒカリは奥手だから)

 

(洞木さんと鈴原君がカップルになれば、私も学校で碇君と遠慮なく一緒にいられる)

 

 アスカはシンジが聞けば不機嫌になりそうな事を考え、レイはクラスメート達が聞けば『あれで、遠慮してたのか』と言われそうな事を考えていた。

 

「あら、今日は。皆、来ていたの」

 

「あ、ミサトさん。お邪魔してます」

 

 トウジが一同を代表して挨拶するとヒカリとケンスケも頭を下げる。

 

「そんなに改まらなくても」

 

 ミサトも苦笑するしかない。

 

「あっ!」

 

 突然、ケンスケが驚きの声を出したので全員がケンスケに注目する。

 

「これは、御昇進、おめでとうございます!」

 

 ケンスケがミサトに祝いの言葉を言うので、ケンスケ以外は呆気にとられる。

 

「おい。碇達も一緒に暮らしていて、一尉から三佐に昇進したのを知らなかったのか?」

 

「そうなんだ。それなら言ってくれたら良かったのに、ミサトさんも水臭い」

 

「そんな、照れ臭いじゃない」

 

 シンジの言葉に珍しくミサトも少し照れている。

 

「それじゃあ。ミサトの昇進パーティーを開きましょう!」

 

 アスカが提案して、シンジとレイも賛成したのでミサトの昇進パーティーは速やかに開催されたのである。

 

 パイロット達は恒例のシンクロテストを行っていった。

 

「しかし、シンジ君は素晴らしいですね。まるで、エヴァに乗る為に生まれた来た様な子です」

 

 技術部の職員が感嘆するのも無理はなかった。シンジのシンクロ率は第四使徒以降、常にトップの数字を出している。

 シンジにしたら、初号機の中に母親のユイが存在する事を知っているので、シンクロ率の操作等は簡単なのである。

 しかし、真実を知らないミサトにはシンジが不憫に思えていた。

 

「本人の意思を無視してだけどね」

 

 ミサトは思う。もし、シンジにエヴァの

パイロットとしての適性が無ければシンジの人生は平穏なものではなかったか。大人達の道具になる事もなかったと思うが、エヴァのパイロットだから、レイという恋人を得る事が出来たのではないか。

 

(本当に人生は塞翁が馬よね)

 

「はい。三人ともお疲れさま。実験終了よ」

 

 ミサトが思考の海を泳いでいる間に実験は終了していた。

 

「シンジ君は安定しているわね。アスカとレイも着実に数字を伸ばしているわ。この調子で、これからも頑張ってね」

 

「はい」

 

 リツコが総括すると解散の流れとなった。ミサトは部屋を出て行くシンジの後ろ姿を見て、本当に不思議な子だと思う。

 

(以前のアスカなら、数字に拘りシンジ君を敵視していた筈なんだけどね)

 

 悪い言い方をすればアスカを手懐けてしまったのだ。

 そして、シンジはネルフ職員に自分達が本当に守るべき相手を常に示している。

 

(私達、役人の縄張り意識や利権とか、下らない物より大事な事を分かっているのね。だから、アスカもシンジ君を信用しているんだわ)

 

 ミサトは自嘲してしまう。三佐に昇進しても嬉しくない理由が理解が出来たのだ。

 実際は、この時期、シンジは使徒戦については何も考えていなかった。

 次の第十使徒サハクィエルに対してはミサトの作戦が最上策でシンジが修正する部分が無いのである。

 更に第十一使徒イロウルに関してはシンジは何も聞かされて無いので対策を立てる事が出来ないのである。

 シンジにしたらネルフ本部の大人達を信用するしかないのである。

 そして、シンジも所詮は中学生である。恋人であるレイとの何気ない日常に幸せを感じて堪能していたのである。

 その証拠として、ミサトの昇進パーティーでは、レイとイチャつくのである。

 

「はい。綾波。アーンして!」

 

 素直に口を開けて肉団子を食べるレイがいた。

 

「少しずつで良いから、綾波も肉を食べれる様になろうね」

 

 シンジに食べさせてもらった肉を咀嚼しながら、コクりと頷くレイである。

 この状況を見せつけられる参加者の精神汚染を半ば本気で心配するリツコであったが、中学生達とミサトは慣れたものである。加持とリツコだけが唖然とするのである。

 

「ちょっと、ミサト。これが日常風景なの?」

 

 ミサトが諦めた表情で頷く。

 

(それなら、ミサトが残業したがるのも理解が出来るわ)

 

「アスカ。あの二人、学校でも、あの調子なのか?」

 

 加持がアスカに小声で尋ねると予想外の返答がきた。

 

「今日は大人達がいるから、大人しい方よ」

 

 アスカの言葉に加持は思わずミサトに同情してしまった。

 

 息子が腑抜けている頃、父親は真面目に仕事に取り組んでいた。

 人類補完計画の鍵の一つである、ロンギヌスの槍の回収に南極に来ていたのである。

 

「死の世界、南極か。また、同じ過ちを繰り返すのか?」

 

「その為の人類補完計画だ」

 

 冬月の皮肉に皮肉で返すゲンドウであった。

 ゲンドウにしたら、ユイと再会さえすれば、世界がどうなろうと関係ないのである。

 冬月にしたら、ゲンドウとユイが再会する事の副産物として、ゼーレの人類補完計画を頓挫させる事が出来るからゲンドウに協力しているだけなのである。

 ゼーレ、ゲンドウ、冬月と三者が互いを利用しているだけなのである。

 

(それでも、今は使徒を倒す事が最優先だがな)

 

 冬月が歪な関係を皮肉に思っていると、警報が鳴り響いた。

 

「ネルフ本部より入電。インド洋上空、衛星軌道上に使徒発見!」

 

「二分前に突如、現れました」

 

「至急、碇司令に連絡。国連軍に協力を要請。それと使徒のサーチを」

 

 ミサトは日向の報告と同時に指示を出しながら、スクリーン上の使徒を観察する。形態から攻撃方法を探るのだ。

 

「しかし、常識を疑うわね」

 

 サーチ開始した瞬間にスクリーンは砂嵐となった。

 

「ATフィールドの新しい使い方ね」

 

 何時の間にかミサトの横に来ていたリツコも半ば感心していた。

 更に感心する事に、第十使徒サハクィエルは自身の体の一部を切り離して落下させてきた。

 

「一発目は大外れ。二発目以降は修正してきている」

 

「次は来るわね。本体ごと」

 

 ミサトもリツコも航空写真を見るだけで破壊力は理解が出来た。

 

「碇司令との連絡は取れません。N2航空爆雷も効果ありません」

 

 

「本部の退去を始めます」

 

 青葉の報告と同時に決断をするミサトであった。

 

「ここを捨てるのですか?」

 

「その前に悪足掻きはするわよ」

 

 驚く日向の問に笑顔で応えるミサトであった。

 

「という訳で、落下する使徒をエヴァで受け止めます!」

 

「了解!」

 

 ミサトはパイロット達は何も言わずに命令を受けたので拍子抜けした。

 

「ちょっと、何も聞かないの?」

 

「ミサトの無茶ぶりは、いつもの事じゃない」

 

 アスカが一同を代表して応えるとシンジとレイが同時に頷く。

 

「大丈夫よ。私達に任せなさい!」

 

「悪いわね。終わったらステーキでも奢るわ」

 

 ミサトもパイロット達の軽い口調に気分が楽になった。

 

「じゃあ。早速、作戦の詳細を説明します」

 

 作戦の詳細と言っても、MAGIが算出した場所にエヴァを配置するだけである。

 使徒を発見次第、落下地点に移動するだけである。

 問題は間に合うか間に合わないかの話だけである。

 

「MAGIが距離一万迄は誘導します。後は各自の判断で対処して」

 

 パイロット達はエントリープラグ内でミサトの説明を聞きながら緊張感の欠片もなかった。

 

「スタート!」

 

 ミサトの合図と共に三機のエヴァが地を駆ける。ソニックブームを起こしながら一直線に落下地点に移動する。

 前回同様にシンジが一番乗りをしたが、前回と違うのは初号機が展開したATフィールドと他の二機のスピードである。

 

「凄い。初号機が使徒と互角のATフィールドを展開している」

 

「零号機。ATフィールド全開!」

 

 零号機が加わると逆にサハクィエルを浮き上がらせる。

 

「弐号機。ATフィールド全開!」

 

 更に弐号機が加わるとサハクィエルはエヴァが展開したATフィールドに包まれた。

 

「こん、チクショウ!」

 

 弐号機がサハクィエルのコアに会心の一撃を放つ。

 サハクィエルはエヴァ三体が展開するATフィールドの内で爆発したのである。

 

 

 

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